IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~
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number-43 all one's strength
前書き
全力。
この場合は、織斑一夏。夜神鳥麗矢。
――――試合開始。
そのブザーがアリーナに鳴り響いた。
その音は学園まで響き、驚いた者もいた。
アリーナ観客席には誰もいない。人影一つ見えない。
箒、セシリア、鈴、ラウラ、楯無、千冬、真耶、束は管制室にいた。
シャルロットは麗矢の攻撃にやられ、いまだに意識不明である。総合病院で隔離されて治療に当たっている。
だから、この場にはいない。
一夏は開始直後に牽制として《雪羅》から粒子砲を麗矢に向けて放つ。
それは真っ直ぐ麗矢に向かって進んでいくが、あっさりとさけた麗矢はいつの間に変えたのか《ドゥームブリンガー》を右手に一瞬のうちに狙いを定め、放った。
音速を超えて飛来する弾丸。
それは空気を切り裂いて、衝撃を放ちながら一夏の額に向かう。
あまりにもいきなりのことで反応できなかった一夏は動くことが出来ずにそのまま当たる。
絶対防御が働き、一気にシールドエネルギーを削っていく。
速度も然ることながら威力もライフルにしては桁が違っている。
一夏はどこか腑抜けていた気持ちを引き締める。
まだ同じ学園で同じ時を過ごした仲間と思っていたが、今は違うのだ。
麗矢は敵と認識しなければならない。
友達であるシャルロットをあんな目に遭わせたのは目の前にいるあいつなのだから。
麗矢は一夏が纏う気が変わったのを感じて、笑みを零さずにはいられなかった。
どこか戦闘狂のきらいがあるのかもしれないと思いながらも左手に持った《バルフィニカス》からレーザーを三発、右手に持っている《ドゥームブリンガー》から実弾を四発ほとんどタイムラグなしで放つ。
合計七発もの銃弾を上に上がることで避けた一夏はそこから一気に麗矢に向かって瞬時加速《イグニッションブースト》を使い、急接近する。
瞬時加速。
それは真っ直ぐにしか進めない。そのことを当然のように理解している麗矢は蒸かしていたブースターを止め、重力に引っ張られる形で落ちていく。
数瞬前まで麗矢がいたところを一夏が猛スピードで通り過ぎていく。
それを見た麗矢は再びブースターを点火し、体勢を整える。
何とかスピードを殺した一夏は麗矢の方を見るが麗矢はすでにいなかった。
何処だと探すが、見つからない。
前後左右にはいない。地面の方にもいなかった。となると――――
ばっと上を見ると、目の前にレーザーが迫っていた。
慌ててそれを避けると麗矢と目が合う。
その一夏の後ろでレーザーが地面に着弾して爆発する。
麗矢は両手に《スラッシャー》を展開していた。
このまま一夏を封殺する手もあるが、それを簡単に許してくれる一夏ではない。
だったら接近して高威力の技で決めてしまうほうが早い。
一夏は改めて《雪片二型》を握り直した。
額に汗が伝う。
一夏は麗矢との力の差を実感していた。
数手先まで読まれているようにまで思えるあの試合展開。
そこまで麗矢の思考判断力と空間把握力が高い事がうかがえる。
だが、一夏には諦めるという選択肢はない。
ただ、目の前の強大な敵を打倒すことしか考えない。愚直に。
今持っている《雪片二型》と《雪羅》この二つの武器で麗矢を倒すしかない。
一瞬の気の緩みが命取りと見た一夏は集中を極限状態にまで引き上げる。
スポーツマン用語で所謂『ゾーン』に入った。
二人が向かい合っていた時間はどのくらい長かっただろうか。
そんなに長くはなかった。
十数秒ぐらいであろうか。
同時に瞬時加速を使い、真っ直ぐに向かっていく。
その速度は肉眼では視認できないほどの速さであった。
音速に近づくにつれ、空気抵抗が強くなる。
強力な力に思わず一夏は顔を歪めるが、構わずに麗矢へと進んでいく。
麗矢は顔色一つ変えることはない。
衝突。
それは爆音と共に衝撃を辺りにまき散らして、風が吹き荒れる。
いつの間に観戦していたのか。その人たちには衝撃は届くことはないが、風と音は届く。
轟音から守るために耳を塞ぎしゃがみ込んでいる生徒たちを見かねて、千冬は放送で退避する様に命ずる。
A-ピットか、B-ピットでモニター観戦する様にと。
観戦中の生徒が逃げているとき、麗矢と一夏は鬩《せめ》ぎ合っていた。
刃同士を打ち合わせ、火花を散らしながら二人は自らの武器に力を込める。
だが、一向に動こうとしない。拮抗しているのだ。
麗矢は二刀を上に弾きあげた。
一夏の武器は上に弾かれ、胴体ががら空きにある。
そこにすぐに引き戻した《スラッシャー》を叩きこむべく、突き出す。
一夏は攻撃から何とか逃れようとブースターを使い、上に逃げようとする。
麗矢が突き出した《スラッシャー》は足に掠る程度だった。
そのことに麗矢は内心毒づきながら、距離を取る。
自身のシールドエネルギーを確認する。
5分の2ぐらい減っている。まだ半分以上ある。
まだ、こっちが有利だ。だが、あの衝突を何度も繰り返すと流石に不味い。
まだ5分の2以上あると言ったが、裏を返すとあの衝突でそれだけ減ったということだ。
負けるわけにはいかない。
麗矢を見ながら一夏も自分のシールドエネルギーを確認していた。
もう半分を切っている。
やはり、最初のクリーンヒットが大きい。
その分だけ差が開いている。
しかし、そのぐらいでへこたれる一夏じゃない。
俺は強い、人の手を借りながら強くなってきたんだ。あいつを倒すために――――
と何度も念じるように心の中で思いながら、闘志を滾らせた。
少しの休止、そしてまた同じように動き出す。
一夏が最初と同じように粒子砲を麗矢に向けて打ち出す。
無理して受けようとはしない麗矢はそれを軽く避ける。
だが、その避けた先に一夏が接近していた。いや、肉薄していた。
「うおおおおっ!!!!」
雄叫びを上げて、単一能力《ワンオフ・アビリティー》である《零落白夜》を発動させ、麗矢に斬りかかる。
そして、それは麗矢に当たる。
強制的に絶対防御を発動させて、一気にシールドエネルギーを削る。
麗矢は声も上げることもなく、後ろに吹き飛ばされた。
――――そう、吹き飛ばされたのだ。
一夏は疑問に思う。
雪片二型が単一能力を発動させている間は鋭利な刃物と同じようなものなのだ。
であるなら吹き飛ばされるはずがないのだ。
一夏は吹き飛ばされてアリーナの壁にぶつかって、土煙を上げているところを油断することなく睨み続ける。
ブオンという音とともに土煙が払われた。
それによって麗矢のことが見えるようになった。
煙の切れ間から一夏は麗矢の様子を窺う。
「――――なっ!」
一夏は思わず声を上げてしまった。
一夏が麗矢を見たとき、麗矢に対して恐怖を抱いた。
左手に青いエネルギーによって構成されたおおよそ二メートルほどのブレードを持っている。
機体は吹き飛ばされたことによって幾分かダメージを食らっている。
そのダメージは麗矢本体にまで及ぼしている。
口から血を流し、頭から血を流して、もはや満身創痍と言ったところだろうか。
だが、一夏は麗矢のけがに対して驚きの声を上げたわけではない。
麗矢の左目から青い焔が揺らいで見えることに驚いたのだ。
しかも麗矢は右手にも左手に持っている同じような青いブレードを持っている。
「…………アクティベート」
麗矢が何かを呟いた途端、麗矢を中心にして青い何かが噴き出す様に広がる。
そして、より一層青い光が強く閃光を放った。
後書き
41話の評価がなんか高かった件について。
……本編を読んで? それとも……
なのはの事を書いた後書き?
……まあ、暇つぶし程度に読んでくれればそれでいいんだけど……
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