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ヘタリア大帝国

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TURN60 義兄と義妹その六

「じゃあ俺はこれでな」
「シカゴからなのね」
「ああ、ワシントンに戻る」 
 そしてだというのだ。
「俺の戦いをはじめるさ」
「グッドラック」
「ああ、お互いにな」
 二人はそれぞれ右手の親指を立てて笑い合った。ダグラスは白い歯をきらりとさせて彼の闘いに向かった。
 キャロルは太平洋軍に入りすぐに東郷の前に来た。そこにはアメリカもいる。 
 アメリカがまずキャロルに右手を差し出した。二人はまずは笑顔で挨拶をした。
「よく来てくれたな」
「元気そうね、祖国ちゃんも」
「ああ、僕はいつも元気だぞ」
「そうみたいね」
 二人の挨拶はにこやかなものだった。
「やっぱり祖国ちゃんはそうでないとね」
「クーもいるし他の皆もいるぞ」
 アメリカは彼らしく実に明るくキャロルに話す。
「だからここでも楽しくやれるから安心してくれ」
「そうね。あたしも祖国ちゃんがいるから来たし」
 アメリカが大好きだ、キャロルの偽らざる本音だ。
「ガメリカの為に戦おうね」
「是非共な」
「そうね。ただね」
 キャロルはアメリカには親しい、だが。
 東郷には嫌な顔を向けてこう言った。
「あんたはね。日本ちゃんは嫌いじゃないけれど」
「楚国さんをそう思ってくれるだけで充分だ」
「だって日本ちゃんとも何度か会ってるから」
 これまでの外交で彼女も日本と話したことがあるのだ。それで言えることだ。
「悪い印象は受けてないからね」
「祖国さんは素晴らしい人だからな」
「ええ。ただね」
「ただ?」
「あんたは大嫌いだから」 
 東郷をその目で見ての言葉だ。
「全く、相変わらずみたいね」
「俺は俺さ」
「そういう軽薄なところが嫌なのよ」
「しかし誰にも迷惑をかけたことはない」
「どうだが。まあ姉さんはね」
 わかってはいる、だが感情ではというのだ。
「生きていないでしょうしね」
「そうだな」
 東郷もこの話題には微かではあるが暗いものを見せる。
「スカーレットはな」
「許さないから」
 キャロルは東郷に告げた。
「姉さんが生きていない限りはね」
「構わない、俺はあるがままを受け止める」
 東郷も毅然としてキャロルに返す。
「君に対してもだ」
「潔はいいのね」
「そういうことは意識していないがな」
「とにかく。あたしは祖国ちゃんと一緒に戦うか」 
 半分以上は自分に言い聞かせながら東郷に告げる。
「そういうことでね」
「それでいい。この戦いの後でガメリカには占領している国土も返還する」
「講和の条件通りそうしてくれるのね」
「帝が約束されている、安心してくれ」
「わかったわ。それじゃあね」
「これから頼むな」
「頼まれてやるわよ」
 二人はこう話した。キャロルもまた太平洋軍に加わったのだった。
 中帝国は一連の情勢を重慶から見ていた。皇帝はキャロルまで太平洋軍に加わったと聞いてまた中国兄妹に話した。
「朕は思うのだが」
「戦局あるか」
「そのことあるな」
「そうだ。間違いなくニューヨークまで陥落する」
 皇帝はこのことは確実だと見ていた。 
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