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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第67話 =協力=

 
前書き
…いやぁおかしいところもあるかも…… 

 

俺が地面に降り立つとそこは拍手や口笛、「ブラボー!」などの叫び声の嵐のど真ん中だった。リーファの話ではサラマンダーはいわゆる悪者、のようなイメージを抱いてしまったがやはり同じゲームで遊ぶ仲間だろうか、シルフもケットシーもサラマンダーも根元の方は一緒なんだな。

敵の指揮官…ユージーン将軍が蘇生されたあと、サウスのリメインライトを蘇生してもらうために渡し、サラマンダーとは反対の位置に移動する。

「…そういえば……なんでサクヤさんがここに?」

「いや…サクヤはシルフの領主だから…」

リーファに聞くとどうやらそういうことらしい。俺はそんな偉い人にあんなことをされたのか…いや、そのおかげで随意飛行が出来るようになったのだけど…。
回想している間にサウスとユージーンの両名が蘇生され、サラマンダー側に戻ったのをきっかけに再び周囲を静寂が包む。

「……見事な腕だった。俺が今まで戦った中で最強のプレイヤだ、貴様は」

「そりゃどうも」

「貴様のような男がスプリガンにいたとは……世界は広いということか」

「…俺の話、信じてもらえるかな?」

キリトの言葉にユージーンは目を細め沈黙する。その時、サラマンダーの大軍の中からランスを持った1人のプレイヤーが歩み寄ってきて、その左手で面頬を跳ね上げる。

「ジンさん、ちょっといいか」

「カゲムネか……何だ」

どこかで聞いた名前だな…と記憶を遡ぼっているとすぐ思い出せた。そういえばあの生き残りメイジのプレイヤーがその情報をくれたっけ…。ってことはあの時キリトと俺が剣を交えたあの集団のリーダー…。

「昨日、俺のパーティが全滅させられたのはもう知ってると思う」

まさにその時の話をしているのでこの世界に来て何度目か判らない冷や汗が背中を流れる。

「あぁ」

「その相手が、このまさにスプリガンとヴォルトなんだけど……確かに連れにウンディーネがいたよ」

その発言にびっくりし、声が出そうになるがぎりぎりで飲み込む。キリトも一瞬眉を動かすが、すぐに得意のポーカーフェイスに戻す。

「それにSの情報でメイジ隊が追っていた連中もこいつらだ、確か。……どうやら撃退されたらしいけど」

ユージーンは顔を傾け、カゲムネを見る。そして軽く頷くと「そうか」と軽い笑みを浮かべた。

「…そういうことにしておこう」

次いでキリトに向き直り、言う。

「確かに現状ではスプリガン、ウンディーネ、ヴォルトと事を構えるつもりは俺にも領主にも無い。この場は引こう」

そこで言葉を切り、キリトをニヤリとした表情で見つめ口を開く。

「だが、貴様とはいずれもう1度戦うぞ」

「望むところだ」

キリトが良いながら差し出した拳にゴツンとユージーンは拳をぶつけ身を翻す。カゲムネはこちらに不器用ながらウィンクをしてくるので借りは返したとでも言ってそうな顔だ。…まぁ助かったからいいけどさ。

「リクヤ君」

「美菜……サウスか、どうした?」

危うく本名を言いそうになったがギリギリで止まることは出来、言い直す。

「…アルンまでの旅に同行して良いかな」

「な、なんで!?」

「…君たちの勝った報酬の代わり…て、いうのかな…アルンまでなら行ったことがあるから何か手伝いさせてほしいなって」

ちょっともじもじさせながらそういうサウス。

「俺は良いけど……キリトたちにも聞かないとな」




で、話をしてみたら…

「俺は歓迎だ」

「あたしも…反対じゃないけど……」

ということでサウスが旅に同行することになった。キリトが言ったあの同盟に関しては「大丈夫、わたしもユージーン将軍も嘘ってわかってるから、話は合わせれるよ。気にしないで」らしい。気にするのはこっちなんだけど…というかあの将軍は嘘だとわかってて退いたってことか…。

「…それにしてもアンタたち無茶苦茶よ………」

「よく言われるよ」

「そうじゃないとこいつについてけないって」

リーファに疲れた表情でいわれたのを笑顔で返す俺とキリト。隣ではサウスが笑いを堪えている。

「……すまんが、状況を説明してもらえると助かる」


――――――

静けさを取り戻した会談場の中央でリーファは「一部は憶測だけど…」と断ってから事の成り立ちを説明し、そのあとにサウスがシルフ側から流れた情報などを話した。サクヤさん、ケットシーの領主、アリシャさんを始めとする両種族の幹部らは鎧の音1つ立てずに長い話を聞いている。だがそれもリーファが説明を終えるまで、終わると揃ってため息を洩らしていた。

「…なるほどな」

両腕を組み、綺麗な眉をひそめながら小さく頷くサクヤさん。

「ここ何ヶ月か、シグルドの態度に苛立ちめいたものが潜んでいるのはわたしも感じていたが…独裁者と見られるのを恐れ会議制に拘るあまり、彼を要職に置き続けてしまった」

「サクヤちゃんは人気者だからねー。辛いところだヨねー」

ケットシーではサクヤさんよりか長い期間、領主に君臨しているらしいアリシャさんは完璧に自分のこと棚に上げて深く頷いて

いるが…。

「苛立ち…何に対して?」

「…多分、彼には許せなかったのだろうな。勢力的にサラマンダーの後塵を拝しているこの状況が」

リーファの問いにサクヤさんが答える。どうやらシグルドはパワー志向の人物らしくキャラのステータスだけではなく権力なども強く求めていた。時々いるような自分がトップじゃないと気に入らないタイプの人間らしい。なのでサラマンダーに空を支配されて自分はそれを見上げるだけ…という未来は絶対に許せないものだとか。

「でも…だからってサラマンダーのスパイなんかに…」

「もうすぐ導入される《アップデート5,0》の話は聞いているか?つに《転生システム》が実装されるという噂がある」

「あっ……じゃあ…」

「モーティマーに乗せられたんだろうな。領主の首を差し出せばサラマンダーに転生させてやる、と。だが転生には膨大なユルドが必要となるらしいからな…冷酷なモーティマーが約束を履行したかどうかは怪しいところだな…」

「恐らく、約束は破棄したでしょう」

サクヤさんの言葉に続けるように隣のサウスが口を開く。サラマンダーの幹部がそう言うんだから疑う余地は無いだろう。残念だな、シグルド…と、ついつい同情したくなってしまうがその前にやろうとしていることが最低なのでそんな気持ちにはならなかった。

「それにしても……ALOは欲試しのゲームだってことを痛感するなぁ…」

「だな…デザイナーは嫌な性格してるに違いないぜ」

「ふふ…まったくだ」

俺たちの言葉にサクヤさんも笑って返す。不意に左の腕が誰かのと絡まり体重がかかってくるのでその方向を見るとリーファが目を閉じて体を預けてきていた。

そしてリーファがシグルドをどうするか、を訊ねるとサクヤさんはアリシャさんに『月光鏡』というものを頼んでいた。アリシャさんも快く応じ、スペルワードを高く澄んだ声で連ねていく。サウスに聞くところ有名な闇魔法らしく鏡を自分の前、相手の前にそれぞれ出現させ話をすることができる…簡単に言えばテレビ電話のようなものだといっていた。
言うとおりに鏡が出現しその中にはここから遠く、スイルベーンの一室が映し出されており、その中にワイングラスを持って偉そうにしている人物が。サクヤさんは一歩前へ出ると琴のような針のある声でその中の人物に呼びかける。

「シグルド」

呼ばれた瞬間、シグルド目を見開いてバネのように体を起こし、顔を引きつらせていた。もう、こぼれたワインなんてお構いなし、震えた声で自身の領主の名を呼ぶ。

「あぁ、そうだ。残念ながらまだ生きているよ」

それに淡々と答えるサクヤさん。

『な、なぜ……いや…か、会談は……?』

「無事に終わりそうだ。条約の調印はまだだがな。そうそう、予期せぬ来客があった。ユージーン将軍が君にヨロシク、と」

『なっ…!?』

その発言に鏡の中で驚愕に包まれていくシグルド。ゴツゴツとした男ではなく漢、と思わせるような顔はどんどん青ざめていき目線はきょろきょろとしている。その視線が不意に止まったかと思えばそれはこちらの方…正確にはリーファ、キリトを捕らえていた。

『リー……!?……無能なトカゲどもめ』

リーファの名前を呼ぼうとするがそれで察しがついたのか、開き直り始めるシグルド。

「…アイツ、斬りに行きたいんだけど」

「落ち着けって…」

こちらでは自分の種族を無能と呼ばれたことに腹を立てているのか笑顔で物騒なことを言う人がいるのに…。シグルドは役職を剥奪か懲罰金かなどと普通にありそうな罰を予想していたらしく次々と口にするがサクヤさんの対応はその普通とはかけ離れたものだった。

「いや、シルフでいるのが耐えられないならその望みをかなえてやることにした」

優美な動作でサクヤさんが左手を振ると通常とは違う大きなウィンドウが出現し、その上に指を走らせるとシグルドの前に1つのメッセージが送られるのがわかった。

『貴様ッ!?……正気か!?俺を…この俺を追放するだと?』

「そうだ。レネゲイドとして中立域を彷徨え。いずれそこに新たな楽しみが見つかることを祈っている」

権力という抗いようの無いの力によりシグルドはそこから姿を消し、鏡の中に写るのは無人の執政室だけとなった。やがてその表面が波打つと同時に儚い音を立てて砕け散る。

「……サクヤ……」

再び静寂がこの場を支配し、眉を深く寄せたままのサクヤの心配してからかリーファがそっと声をかける。それに答えるかのように左手を振ってメニューを消すと吐息交じりの笑みを浮かべた。

「……私の判断が間違っていたのか、正しかったのかは次の領主投票で問われるだろう…ともかく――礼を言うよ、リーファ。執政部への参加を頑なに拒み続けた君が救援に来てくれたのはとても嬉しい。それにアリシャ、シルフの内紛のせいで危険に晒してしまってすまなかったな」

「生きていれば結果おーらいだヨ!」

のんきな声を出すケットシー領主に自分の中の領主像と違っているのかサウスは頭を抱えて葛藤しているなか、リーファがぶんぶんと首を横に振る。

「あたしは何もしてないもの。お礼ならこの2人に言って」

「…そうだ。そういえば君たちは一体……」

何者だ?と言いたげな視線で改めてサクヤさんとアリシャさんにマジマジと見られる。

「…ねェ君たち。スプリガンとウンディーネの大使とその護衛……ってほんとなの?」

どうやって動かしているのか判らないが好奇心が自立して動いているのかゆらゆらと尻尾を揺らしてアリシャさんが言う。それに対してどうやって嘘だと言うことを伝えるか悩んでいると…

「もちろん大嘘、ブラフ、ハッタリ、ネゴシエーション」

と腰に手を当ててさわやかに言っている男が。裏で「パッパカパー」とかいう陽気なラッパでも鳴っていそうな、そんなイメージさえ抱かせるほど彼はすがすがしかった。それを見た両種族の領主は口をガクンと開けて絶句している。

「…ちなみにヴォルトとの貿易って言うのも嘘だからね」

「無茶苦茶だな、君たちは……。あの場であんな大法螺を吹くとは」

「手札がショボいときはとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

「「いや、そんなドヤ顔で言われても…」」

リーファとサウスに言われてキリトはガクっと肩を落とす。だが、そんな中悪い笑みを浮かべたアリシャさんが数歩歩み寄ってこちらへ近づいてきた。

「おーうそつきくんもめちゃくちゃ強かったけどそっちの君も気になるナァ…さっきの戦い見てたけど…彼女、ALO史上最も早く伝説級武器を手に入れたって言う名の知れたプレイヤーだヨ?そんな人を圧倒するなんて……一体何者なのかナ?」

「何者って言われても……ただの旅人B、としか答えられないね」

俺の答えに猫っぽくひとしきり笑うとひょいっと右側に移ってそのまま腕を取り胸を押し付けてくる。

「キミ…フリーならケットシーで傭兵やらない?三食おやつに昼寝つき…」

「んなっ!?」

うしろにいるリーファが今までに無いような声を上げているのが聞こえてきた。俺はと言うと三食おやつというワードに惹かれつつあったが…。だが、間髪いれず誰かが左のほうへ寄ってくる。

「おいおいルー。抜け駆けはよくないぞ」

シルフの領主、サクヤさんだ。しかもさっきよりか何かしら含んだような声、嫌な予感しかしない。案の定サクヤさんも胸を押し付けるように左腕を絡ませてくる。なにかうしろからの視線が怖いんだけど。

「彼はもともとシルフの救援に着たんだ。それに…ある貸しもあるしな。リクヤ君、個人的興味もあるので例もかねてこのアとスイルベーンで酒でも……」

「あーっ、ずるいヨ、サクヤちゃん!色仕掛けはんたーい」

「人のこと言えた義理か!密着しすぎだお前は」

俺からすれば五十歩百歩なんですけど…と言えるはずもなくどんどん密着されていく。が、さらに次の瞬間、うしろから服をぐいっと引っ張られる感覚が。

「駄目です!!リクヤ君はあたしの………」

「あたしの?」

3人して振り向き、リーファの顔を見ると言葉が出てこないのかしどろもどろになっている。さらにそのうしろではキリトとサウスが意気投合しているのかニヤニヤしながら何か話している。

「…お誘いはうれしいんだけど……ごめんなさい、俺…いや、俺たちは彼女にアルンまで連れて行ってもらうという約束をしているから今回は…」

「ほぅ…そうか。残念だな。」

本当に残念なのか、は判らないがそんな顔をしてから、キリトの場所まで行き「ならば彼なら…」と呟き、触れたところで大声でリーファが遮ったおかげで少し笑いが生まれた。
そして改めて視線をリーファへと移す。

「アルンにいくのか、リーファ。…物見遊山なのか?それとも…」

「領地をでる……つもりだったけどね。でも、いつになるかわからないけど、きっとスイルベーンに帰るわ」

「そうか…ほっとしたよ。必ず戻ってきてくれよ……彼たちと一緒に。もちろん、そこのサラマンダーの子もな」

そう、しっかりとサクヤさんの視線はサウスを捉えていた。

「え、わたしも…ですか?」

サラマンダーとシルフが仲の悪いということを身を持って知っているサウスは突然のお誘いに驚いていた。驚いていたのはサウスだけではなくこの会談場にいる俺、キリト、サクヤさん、アリシャさん以外の全員が一様に声を上げている。だが、それに対してもサクヤさんはサラマンダーとの友好な関係を結びたいと考えているらしくケットシーも同じ考えらしい。

「そちらさえよければ…私もお邪魔させてもらいます」

「途中でウチにも寄ってね。大歓迎だヨー!」

二種族の領主は俺から離れると表情を改め、サクヤさんは胸に手を当て優雅に、アリシャさんは深々と耳を倒すとともにに頭を下げ、それぞれの一礼をしていた。そして顔を上げ、何か礼は出来ないかとサクヤさんは言っていたが…。

「そんな礼なんて……なぁ、キリト」

「俺たちはそんなもののために来たわけじゃないしな…」

礼なんてまったく考えていなかったので困ってしまう。すると、リーファは何か思いついたのかサクヤさんへと口を開いた。

「ねぇ、サクヤ、アリシャさん。今度の同盟って世界樹攻略のためなんでしょ?」

「あぁ、まあ……究極的には、な。二種族共同で世界中に挑み双方ともにアルフとなれればそれでよし、片方だけなら次のグランドクエストも協力してクリアする…というのが条約の骨子だが」

「その攻略にあたしたちも同行させてほしいの。それも可能な限り早く」

その言葉に領主の2人は顔を合わせる。

「…むしろこっちから頼みたいくらいだ。時間的なことはまだなんともいえないが……しかし、なぜ?」

ちらりとリーファはこちらを見てくる。サクヤさんの質問に答えたのはキリトだった。

「俺がこの世界にきたのは、世界樹の家に行きたいからなんだ。そこにいるかもしれない、ある人に会うために…」

「へェ……世界樹の上ってことは運営サイドの人?なんだかミステリアスな話だネ?」

「違う…と思う。リアルで連絡が取れないんだけど……どうしても会わなきゃいけないんだ」

興味深いといわんばかりにまた尻尾を動かし目をキラキラさせるが、すぐにそれは無くなった。その理由は圧倒的に金がたりなくて1日2日では到底無理だから、ということだ。仕方が無いが、そういうことは1プレイヤーの俺達にはどうすることも出来ないので納得するしかない。でも最終目的が世界樹の上だからまずはアルンに行くこと、と言ってキリトは小さく笑うと何かを思い出したように呟いた。

「これ、資金の足しにしてくれ」

突然キリトウィンドウを開いて大きな皮袋をオブジェクト化させる。銀色の硬貨がたくさん見れることからどうやらキリトは自分の財産を渡すつもりらしい。それを受け取ったアリシャさんはその重さゆえに一瞬ふらついて両腕で袋を抱えなおすとその中身を見て眼を丸くしていた。

「……さ、サクヤちゃん…これ……」

「ん?………10万ユルドミスリル貨!?…しかも、これ全部…!?」

サクヤさんが言った金額にリーファ、サウス、そして側近の方々も「ありえない」といわんばかりに驚いている。財産といってもキリトが渡したのは全財産、アスナの分も合わせた分らしい。

「これだけ稼ぐにはヨツンへイムで邪神クラスをキャンプ狩りでもしない限り不可能だと思うがな……いいのか?一等地にちょっとした城が建つぞ?」

「構わない、俺には必要ない」

名残も何も無さそうにさらりとキリトは頷く。…今更だけど俺も渡した方がよかったのか、とちょっと思い始めた。結婚していたキリトよりかは少ないもののまぁ結構持っているはず。そんな俺のことは気にせず再び袋の中を見た2人はほぅと嘆息してから顔を上げた。

「…これだけあれば、かなり目標金額に近づけると思うヨー!」

「大至急装備をそろえて、準備が出来たら連絡させてもらおう」

「よろしく頼む」

キリトの言葉を聞いたあとサクヤさんが自分のウィンドウにその大金を格納する。続きは帰ってからということでてきぱきと椅子と机が片付けられていくのを見ていると、再びサクヤさんたちがこちらに振り向いた。

「何から何まで役に立ったな。君の希望に極力添えるように努力することを約束するよ」

そういって手を伸ばしてくる。

「役に立てたならうれしいよ」

「逆に俺たちも助けられたよ。ありがとう」

「連絡待ってるわ」

「…頑張ってください?」

サウスはちょっと気まずくなりそうだったが各々固く握手をした。こうしてケットシー領主は意味ありげなウィンクを残しながら夕日のある西へと飛んで行った。


――――――――

「まったくもう、浮気は駄目って言ったです。パパもにぃも!」

「「なっ!?」」

憤慨したような声とともにユイが飛び出して、思わず声を上げてしまう呼ばれた俺たち。どうやら俺たちが領主さんにくっつかれたときドキドキしてたのがいけないらしい。いかにも怒ってます、といわんばかりに頬を膨らませるがそこが可愛いなと思ってしまうのは仕方が無いことだと思う。
サウスにもリーファと同じ説明をして納得してくれてすでに2人の自己紹介はすんでいる。

「男だから仕方ないんだよ!」

「そーだそーだ、男だから逃げられないんだよ、これからは」

キリトに続いて頷きながら言うがどうやら許してくれないらしい。

「ユイちゃん、これくらい許してあげないと。じゃないと男の人はケダモノになっちゃうよぉ」

ニヤニヤしながらユイに変なことを言っているサウス。

「…パパ、にぃ……。ケダモノですか?」

「おい、サウス!!何変なこと教えてるんだよ!!」

「…フフ…………あれ、ユイちゃん……あたしはいいの?」

思わず笑っていたリーファが何か疑問が涌いてきたらしくユイに聞く。

「……リーファさんは大丈夫らしいです」

「な、なんで……」

「うーん、リーファはあんまり女の子って感じしないんだよな」

リーファの言葉に答えたのはぽろっと出たキリトの本音だった。聞き捨てなら無い言葉に、キリトに腰の刀に手を伸ばしながら至近距離まで近づく。

「い、いや、親しみやすいって言うか……いい意味でだよ、うん」

引きつった笑みを浮かべながらすいっと空中に浮かび上がったところでリーファもそれを追いかけるように浮かび上がる。

「キリト君、いい意味って言えばいいって思っちゃいけないよ」

「キリトだから仕方ないって……ほら、行くよ。ユイ」

優しくフォローしながら俺もサウスも2人を追いかけるために翅を震わして地を蹴った。

「あ、はい!…あ……にぃもねぇたちがいるのに…」

「ねぇたちって……誰のこと?」

興味を持ったらしいサウスが飛びながらユイに話しかけようとするがその間に入りユイを捕まえる。

「聞こえなかったことにしていこーかー」

「ちょっと、リクヤ君!」

あわただしくなったが、再び俺たちの旅は再開した。後ろを見ると俺が始めて降り立った街であるスイルベーンや領主たちの姿はすでに見えないが、その代わりに一番星、そして二番星が暗くなってきた空に瞬いていた。






 
 

 
後書き
リ「…いきなり仲間になったな」

涙「ずっと考えてたけどね」

リ「ふーん……」

涙「さて、前回出てきたレジェンダリィウェポンの説明を少々……

・イージスの盾
エクストラスキル…ヴァリアブルオーラ(物理、魔法など全ての攻撃をこの盾の一面のみ無力化する。ただし技で飛んできた岩、などは無効化不可。簡単に言えば万能になった幻想殺し。グラムの攻撃はあたる前に向こうが透けるため防御することは出来ない)

・キャリバーン
エクストラスキル…エフェクトキラー(イージスの盾などの特殊効果を無効化する。魔剣グラムは判定が微妙なため五分五分で防げたり防げなかったり)

さぁ、どうだ!!」

リ「ちょっと待て」

涙「どうしたんだい?」

リ「いや、キャリバーンのエクストラスキルあいまいすぎだろ!!」

涙「…ご了承ください……」

リ「うわぁ……雑」

涙「うっさいわ!!…まぁ、自分でもわかってますが…。さて、感想など相変わらずお待ちしてます!ではっっっ!!!!」 
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