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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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GGO編ーファントム・バレット編ー
  47.弾避けゲーム

 
前書き
第47話投稿!!!

GGOに潜り込んだキリトとシュウ。
そこで出会った少女とともに武器を手に入れようとするが........ 

 


「.......このゲーム、初めて?どこに行くの?」

少女の口許は、微かに笑ったように見えた。

「あー、えっと......」

キリトは、何かを言おうとするがやめる。

「はい、初めてなんです。どこか安い武器屋さんと、あと総統府、っていう所に行きたいんですが......」

「総統府?何しに行くの?」

少女は小さく首をかしげる。

「あの......もうすぐあるっていう、バトルロイヤルイベントのエントリーに......」

キリトの言葉に少女の眼は丸くなる。

「え......ええと、今日ゲームを始めたんだよね?その、イベントに出ちゃいけないことはぜんぜんないけど、ちょっとステータスが足りないかも.....」

「あ、初期キャラってわけじゃないんです。コンバートで、他のゲームから......」

「へぇ、そうなんだ。そっちの人も.......」

「あ、はい」

急に話しかけられて少し驚く。

(よかった。俺を完全に無視してたから......)

少女は瞳はきらりと輝き、今度は確実に笑みを浮かべる。

「聞いていい?何でこんな埃っぽくてオイル臭いゲームに来ようと思ったの?」

「それは........ええと、今までずっとファンタジーなゲームばっかりやってたんですけど、たまにはサイバーっぽいので遊んでみたいなあ、って思って......。銃の戦闘とかも、ちょっと興味あったし」

「そっかー。それでいきなりBoBに出ようなんて、根性あるね」

少女はくすりと笑い、大きく頷いた。

「いいよ、案内してあげる。私もどうせ総統府に行くところだったんだ。その前にガンショップだったね。好みの銃とか、ある?」

「え、えっと......」

キリトが答えに詰まると、少女は微笑した。

「じゃあ、色々揃ってる大きいマーケットに行こう。こっち」

くるりと振り向き、歩き始める彼女のマフラーを、慌てて追いかけた。

入り組んだ道を抜け、数分歩くと不意に大通りに出た。

「あそこだよ」

広大な店内は、アミューズメントパークのようだった。四方の壁に飾られているのが全て、黒光りするゴツイ拳銃やら機関銃だということだ。

「な......なんだか、すごい店ですね」

キリトに近づき小声で耳打ちする。

「.......ちょっと俺はそこら辺見てくるから」

キリト頷き、俺は少女に軽く会釈をして少女の横を通り過ぎる。

とりあえず自分のステータスと所持金を確認する。筋力と素早さに特化したステータスで所持金は......1000クレジット、完全に初期金額だ。

店の奥に進んでいくと何やら電飾が瞬く巨大な装置が見える。近寄ってみると、それは壁ぎわの一画を丸ごと占領する、ゲーム装置には大きすぎる代物だ。

幅は三メートル、長さは二十メートルほどあるだろうか。金属タイルを敷いた床を、腰の高さほどの柵の囲い、一番奥には西部劇のガンマンみたいな格好のNPCが立ってる。手前には柵がなく、かわりに開閉式の金属バーと、キャッシュらしき四角い柱が見える。

ガンマンの後ろには、無数の弾痕の刻まれたレンガの壁と、その上部にピンクのネオンで《Untouchable!》の文字。

「なんだこれ?」

「あれ?あんたもここにいたんだ」

振り返るとさっきの少女とキリトが後ろにいた。

「あ......はい。あと、これなんですか?」

少女は、俺の前まで来て指先を動かしながら解説してくれる。

「手前のゲートから入って、奥のNPCガンマンの銃撃をかわしながらどこまで近づけるか、っていうゲームだね。今までの最高記録が、ほらそこ」

人差し指の先、柵の内側の床面に、赤く発光する細いラインがあった。全体の三分の二をわずかに超えたところだろうか。

「へぇ。......いくら貰えるんです?」

「えっと、確かプレイ料金が500クレジットで、十メートル突破で1000、十五メートルで2000クレジットでそれ以上で全額の半分。で、もしガンマンに触れれば、今までプレイヤーがつぎ込んだお金の全バック」

「「ぜ、全額!?」」

二人声をあげる。

「ほら、看板のとこにキャリーオーバーの表示があるよ。いち、じゅう........60万ちょいか」

「す.......凄い金額ですね」

「ああ.......凄いな」

「だって無理だもん」

少女は即答し、肩をすくめる。

「あのガンマン、八メートルラインを超えるとインチキな早撃ちになるんだ。リボルバーのくせに、ムチャクチャな高速リロードで三点バースト射撃するの。予測線が見えた時にはもう手遅れ」

「「予測線.......」」

その時、少女がくいくいと俺たちの袖を引っ張り、小声で囁く。

「ほら、またプール額を増やす人がいるよ」

三人連れの男のうちの一人、白地に薄いグレーの迷彩が入った、寒冷地仕様のようなミリタリージャケットを着込んだ男が気合いを入れながらゲートの前に立つ。
右手の掌をキャッシャー上端のパネル部分に押し付けると、それだけで支払いが行われたのか、ひときわ賑やかなファンファーレが響き渡る。するとギャラリーたちが群がりだす。

NPCのガンマンが英語でわけのわからないことを言うとホルスターに右手を添えた。
すると【3】の数字が現れ、効果音とともに2、1と減少、0になる同時にゲートの金属バーががしゃんと音を立て開く。

「ぬおおおりゃあああ!」

男は雄叫びをあげながら数歩ダッシュし......たかと思うと、両足を広げ急に上体を右に傾けて、左手、左足を上げるという妙な格好を取る。

疑問を感じた瞬間、男の頭の左側十センチメートルのところと、左脇の下と、左膝の下を赤々と輝く弾丸が通過した。NPCガンマンがホルスターから銃を抜き、立て続けに三発ぶっ放した。
見事な回避だ。
まるで、弾道がわかっていたようだった。

「.......いまのが、弾道.......?」

キリトが小声で囁き、少女が頷く。

「そう、《弾道予測線》による攻撃回避」

その後、男は健闘するも賞金獲得、残り三メートルというところで変速的な撃ち方の連射にとらえられあえなくゲームオーバー。

「......ね?」

隣で少女が、微かに笑いもう一度肩をすくめる。

「左右に大きく動けるならともかく、ほとんどが一直線に突っ込まなきゃならないんだから、どうしたってあのへんが限界なのよ」

「ふうん......なるほど。予測線が見えた時にはもう遅い......か」

「つまり......予測線を....」

と呟きながら、俺とキリトはゲートに向かう。

「あ.......ちょっと、あなたたち.....」

呼び止めようとする少女に軽く笑みを返す。

「それじゃあ、俺からいくぜ」

キャッシャーに右手を押し当てる。

新たなる馬鹿登場で、ギャラリーたちがざわめく。マフラーの少女もあきれたー、という表情で小さく首を振っている。

ガンマンの謎の声と同時に目の前にカウントが始まる。
体勢を落とし、数字の減り、金属バーが開いた瞬間、床を蹴っ飛ばし飛び出す。

飛び出すとすぐに、ガンマンの右手に握られる銃の先端から三本の赤いラインが伸びた。三本の赤いラインは俺の頭の少し上と腹部、右足を狙っている。

その瞬間、俺は左斜め前に跳び弾丸を回避。再び中央に戻り、一直線にガンマン目掛けて駆ける。
次の弾丸もさっきと同じようにかわしたところで十メートルラインを越えたようだ。

ガンマンが六発撃って空になった銃を一気にフル装填.......インチキくさい早業だ。

次の攻撃は、変則的なリズムを刻んで襲ってくる二発、一発、そして三発の弾を、自分でもどうやっているかわからないが弾丸の合間をくぐり抜ける。

残り距離五メートルまで来た。

ガンマンは再びインチキくさい早業でリロードし、再びこちらに銃口を向け、まるでマシンガンのように六発の弾が火花を吹く。

「マジかよ!?」

思わず声が漏れた。
普通に考えたら五メートル先から放たれた弾丸を回避するなど不可能だ。

システム的に不可能かもしれない.......でも、回避するにはこれを使うしかない。

(全ての弾丸に集中せず、一番最初に飛んでくる弾丸にのみ集中しろ!!)

俺の意識を最初に飛んでくる弾丸一点に集中。すると、弾丸の動きがスローモーションになる。

(これなら避けられる!!)

重心を右に傾けて、一発目の弾丸を回避。続けて意識を二発目の弾丸へと移す。二発目は、一発目同様に左側に飛んできたため回避。
だが、三、四、五発目は、俺の動きを読んでいたかのようにこちらに向かい飛んできている。
もう一度、三発目に意識を集中させる。このまま上体を起こせば多分、六発目に狙われ、そこからの回避は不可能になる。

(それなら.......)

右手を地面につけ、手と足に力を入れ、床を思いっきり蹴っ飛ばし、体勢を低くしたままガンマン目掛けて一直線に駆ける。

が、リボルバーからノーリロードで六発のレーザーが放たれる。

「ふざけんな!?」

こんなの回避できるわけがない。
それなら........

両手の指をピンと伸ばし両腕を広げ、レーザーの中心をとらえ下に叩き落す。

祝うような音のファンファーレが鳴り、ガンマンがまた何やら言葉を放ち、ガラガラという音が響き、ガンマンの背後のレンガじゃら金貨が流れ出てくる。
そして、看板の数字が減少していき、30万になるとその数字は止まり、金貨の滝も途絶えた。

いつのまにか集まっていたギャラリーたちが、どよめく中、スタート地点にいるキリトの元まで戻る。

「あとは任せたぞ、相棒」

「おう。任せろ」

互いの拳を合わせ、少し小走りで驚きで水色の髪の目を丸くしている少女の元へと駆け寄る。

「.......あなた、どういう反射神経してるの......?」

「俺の反射神経はそんなないですよ。それよりもあいつの方がすごいですよ」

そういいキリトの挑戦しているのに目を向ける。

(あいつの反応速度なら.......)

キリトは俺の期待通りこのゲームで俺を超える結果をやってのけた。最後の俺がかわせなかったレーザーをかわしガンマンに触れ、キリトはこのゲームを完全クリアした。

小走りで俺たちの元へと駆け寄ってくるキリトに俺の時のように少女は目を丸くする。

「.......あなた達、ホントにどんな反射神経してるのよ......?」

「え、えーと.......なぁ.....」

俺たちは顔を見合わせた後に答えを迷った。正直、俺は答えたくないんだけどな........
するとキリトが口を開く。

「だって、この弾避けゲームは、弾道予測線を予測する、ってゲームですよね?」

「よ.......予測線を予測ぅ!?」

女の子の、可愛らしい叫びが店内に響く。




数分後、俺たちは武器ショップの一角で、俺とキリトはショーケース内のライフルをあれこれ眺めるが首を捻る。

少女が銃について説明してくれるが何を言っているのかサッパリわからない。

いつの間にか、店内の陳列棚の一番端まで来てしまっていた。すると長いショーケースの隅に、銃とは明らかに異なる、金属の筒のようなものがいくつか並んでいる。

直径三センチ、長さは二十五センチほどの中央には何かの発射口にも見える黒い穴が開いている。
もう一方は、同様に直径三センチほどで長さが先ほどのより少し長い物。握りも、引き金らしきものも見当たらない。共通して、筒の側面上部に、小さなスイッチが一つついている。

「あの......これは?」

「ああ........それはコーケンとアンケンよ」

「こ、こうけん?」

「あ、あんけん?」

「光の剣、と書いて光剣。暗い剣、と書いて暗剣」

「「け、剣!?」」

俺とキリトは声を合わせ慌ててショーケースに顔を近づける。

「あることはあるけど、実際に使う人なんていないよ」

「な.......なぜ?」

「そりゃあ、だって........超近距離じゃないと当たらないし、そこまで近接する頃には間違いなく蜂の巣に......」

少女は言葉を切り、こちらを見る。

「つまり、接近できればいいわけですね」

「まぁ、大丈夫だろう」

「で、でも、そりゃあなたたちの回避技術は凄いけど、フルオートの銃相手だと.......あ」

少女が言い終わる前に、キリトはブラックの塗装がされた光剣。俺は、濃い黒色の暗剣を購入。

「......あーあ、買っちゃった。ま、戦闘スタイルは好き好きだけど、さ」

俺とキリトは右手で短い筒状の武器のスイッチを入れると、ぶぅんと低い振動音とともに、光剣からは、紫がかった青に光るエネルギーの刃が、暗剣からは、漆黒の刃が一メートル強ほど伸びる。

「「おお」」

キリトが片手直剣ソードスキル《バーチカル・スクエア》を繰り出す。

「なんだか、結構サマになってるね。ファンタジー世界の技かぁ......案外あなどれないかな?」

少女は短く手を叩きながら、少し驚いたように笑みを見せる。

俺は今一度、暗剣を見直すと持ち手に光を出すスイッチともう一つスイッチがついていることに気づく。

「あの、このボタンなんですか?」

「それは、伸縮のボタンよ」

「伸縮?」

「暗剣の特徴で、持つ部分の長さを伸ばすことができるのよ。その代わり光剣に比べて重いからそこが難点だけどね」

「ヘェ〜」

とりあえずボタンを押すと持ち手の部分が一メートル強ほど伸びる。長さとしては、少し短めの槍くらいの大きさになった。

「これなら.......」

その後、俺たちは少女に勧められるがまま、《FN・ファイブセブン》というやや小型の自動拳銃を買い、予備弾倉や厚手の防弾ジャケット、ベルト型の《対光学銃防護フィールド発生器》他の小物装備を買い込むと、先ほどの30万クレジットは消え去った。

右腰に暗剣、左腰にファイブセブンを装備し、店を出る頃には空は赤みを帯びていた。

「すっかりお世話になっちゃいました。どうもありがとう」

「本当にありがとうございました」

頭を下げると、少女はかすかに微笑み、首を振る。

「ううん、私も予選が始まるまで、特に予定なかったから。........あっ」

言葉を切り、慌てたように左手首の無骨なクロノメーターを覗き込む。

「いけない、確か三時でエントリー締め切りだよ。うわ、総統府までダッシュしても間に合わないかも.......」

「えっ、あなたもこれからエントリーだったんですか?」

「うん」

買ったばかりのデジタル時計を覗き込むと時刻は.......十四時五十一分。

ふと気になり少女に訊ねる。

「あ、あの、テレポートみたいな移動手段はないんですか!?」

「走りながら説明する!」

大通りを北に向ってダッシュする少女を俺とキリトは追いかけた。 
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