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堕天使の誘惑

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第三章

「このソフトだけれど」
「ソフトを差し込んでゲームをするのはわかったね」
「わかってるよ、けれどこれは」
「そのソフトだけじゃないよ」
 そうだというのだ。
「他にも一杯あるからね」
「こんな面白いものがまだ一杯あるんだ」
「しかも次から次に出てるからね」
「そうなんだ」
「だから凄いんだ、凄く面白いんだよ」
「日本に行けば幾らでもこんなゲームが手に入るのなら」 
 カトエルはゲームをしながら恍惚として語った。
「幾らでもね」
「楽しめるね」
「これはゲームの革命だよ」
 カトエルはこうまで評した。
「ここまで面白いとね」
「思う存分やるといいよ」
 サトエルは友人として笑顔でカトエルに話した。
「そうしてくれるといいよ」
「わかったよ、それじゃあね」
 カトエルはもうファミコンに病み付きになっていた、そして。
 ファミコンを同僚の天使達にも勧める、すると彼等も驚いてこう言った。
「何だこの面白いゲームは」
「これを人間が作ったのかい」
「しかも面白いソフトが幾つもあって」
「これは凄いね」
「素晴らしいよ」
「いや、このゲームがあったら他のゲームはいらないよ」
「これで充分遊べるよ」
 彼等もまたファミコンの虜になった、そしてだった。
 天界の誰もがファミコンに夢中になった、神もまた然り。
 テレビでゲームをしていつも言っていた。
「うむ、このゲームは許せぬ!」
「神よ、一体どうしたんですか?」
「そのソフトはどうだったのですか?」
「下らん、最悪のゲームだ」
 プレイしながらの言葉だ。
「操作性が悪くゲームバランスイは最悪だ、酷いゲームだ」
「ですが神よ、熱心にしておられますが」
「それは何故でしょうか」
「わからぬか。下らぬソフトにこそ味があるのだ」
 血走った目で画面を見つつ熱い言葉を出す神だった。
「こうしたゲームを人界では何と呼んだか」
「はい、クソゲーです」
「人間達はそう呼んでいます」
 天使達はこう神に答える。
「神が今しておられる様なゲームをそう呼んでいます」
「それ専門のゲーマーまでいるとか」
「許せぬ、これ程酷いゲームを作るとは」
 神は怒りながらも遊び続けている。
「最後までしてやり徹底的に神の裁きである酷評を下してやろう」
「では我等もそのゲームをしましょう」
「クソゲーを」
 天使達はそのゲームもするのだった。クソゲーも人気だった。
 カトエルはシューティングに夢中だった、それでコントローラーのボタンを必死に連射してこんなことを叫んでいた。
「必殺五十連射だ!」
「おい、十六連射じゃないのか」
「五十か」
「僕は天使だよ、人間以上の力があるからね」
 それでだというのだ。
「五十連射も出来るよ」
「それでなんだね」
「五十連射も出来るんだね」
「君達も出来るじゃないか。じゃあ」
「よし、僕達もやってみるか」
「その五十連射を」 
 彼等も言う、五十連射は天使達の間で流行になった。
 最早彼等はファミコンなしではいられなくなっていた、そしてスーパーファミコンにPCエンジン、ネオジオ、セガサターン、プレイステーションとしていった。それで。
 カトエルは人間に化けてこっそりとおもちゃ屋の前に並んでいた。寝袋の中に入って何日もそうしていた。
 その彼に対してサトエルが来て言ってきた、見れば彼も人間に化けている。
「今度は何のゲームを買うんだい?」
「ドラクエだけれどね」
「ああ、新作が出たんだね」
「それを買う為にこうして何日も並んでるんだよ」
 そうしているというのだ。 
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