真の王者
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第一章
真の王者
チャンピオンだった、まさに。
マイケル=ホークは圧倒的なチャンピオンだった、ジュニアハイスクールの頃からはじめたボクシングはまさに天才的でそれでだった。
ハイスクールでもカレッジでもチャンピオンだった、そしてプロになっても。
向かうところ敵なしで瞬く間に世界チャンピオンになりチャンピオンになってからもタイトルを守った、彼は自信に満ちた声で言う。
「俺に勝てる奴はいないからな」
「無敵だってことだな」
「ああ、そうだよ」
胸を張ってマネージャーに答える、セコンドでもあるホワイト=トマソンにだ。
ホークは二メートルはあるいかつい顔立ちのアフリカ系の青年だ、トマソンもまたアフリカ系だ。
そのアフリカ系同士でこう話すのだった。
「俺に勝てる奴はいないな」
「ボクシングじゃそうだな」
ホワイトはホークにこう言った。
「じゃあこのまま引退までか」
「無敗でいくぜ、それこそがな」
ホークは自信に満ちた声で言い切った。
「真のチャンピオンだからな」
「引退までか」
「ああ、引退したらな」
それからのことも考えているホークだった、それはというと。
「カレッジからスカウト受けてるからな」
「コーチになるのか」
「ホワイトもだろ」
「ああ、プロのジムからな」
彼もまたスカウトを受けているというのだ。
「受けてるさ」
「そうだろ。それじゃあな」
「負けなしでいくか」
「そうさ、とことんまで勝ってやる」
チャンピオンとしてだというのだ。
「そうしてやるさ」
「頑張れよ」
「ああ、最後までな」
ホークは笑ってホワイトに言う、そしてだった。
彼は無敗のまま引退した、そのうえで安定した引退後の生活も手に入れた。ホワイトもそうだがそれは彼にとって最高の幸せだった。
結婚して子供も出来た、カレッジのコーチとして学生達を指導していた。だがその中で。
ジムのセコンドになっていたホワイトから連絡を受けた、彼が言うには。
「そっちのジムにか」
「ああ、凄い奴が来たぜ」
引退して十年以上経っていた、ホークもホワイトも既にそれぞれの生活を軌道に乗せていた。その中での話だった。
ホワイトは携帯の向こうからホークに話した。
「もうな。モハメド=アリの再来っていうかな」
「俺よりも凄いか」
「どうだろうな、それはその目で見てな」
確かめてくれというのだ。
「そういうことでな」
「そうか、そっちのジムだな」
「新入りの奴だ」
「ヘビー級だよな」
ホークはヘビー級だった、だからこその問いだった。
「その若い奴も」
「そうさ、身長は二メートルでな」
ホークもそれ位ある、ホワイトは彼等より二十センチ程低い。
「体重は百キロ」
「いい体格だな」
「全身筋肉でな」
「その筋肉がだよな」
「敏捷性の塊みたいでな」
それでだというのだ。
「まさに蝶jの様に舞い」
「蜂の様に刺す、か」
「そんな感じなんだよ」
「そうか。面白そうだな」
「見てみたくなっただろ」
「ああ、カレッジjの部員達も粒揃いだけれどな」
彼等を教え育てることに生きがいを感じている、だがだというのだ。
「そんな奴がいるんならな」
「是非共会いたいな」
「ああ」
ホークは確かな声で携帯の向こうのホワイトに答えた。
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