三角座り
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第三章
「あれもそんなにいい?」
「大したことないでしょ」
「ごく普通の水着じゃない、ワンピースの」
「ビキニになるのならともかく」
「あれならまだ学校の授業でも着られるわよ」
そして男子生徒にも見せられるというのだ。
「本当に男って何なのかしらね」
「ドスケベなのはいいとして」
このことは彼女達にとっても充分な許容範囲だった。実は自分達もそうだし興味を持ってもらわないと困ることだからだ。女に興味を持たない男は女の方にしてみても実に厄介な存在なのだ。交際もできないからだ。
「そのこだわりの対象がねえ」
「正直意味不明よね」
「何でスクール水着とか競泳水着よ」
「ブルマは論外としてね」
「けれどあれよね」
ここで一人が言った。
「古田が言ってたけれど」
「ああ、スクール水着ね」
「古田言ってたわよね」
「あいつあれが好きなのね」
こんなことを言うのだった。
「そうなのね」
「まああいつもホモじゃないのね」
「ちゃんと女の子に興味あるのね」
「まあ趣味は意味不明だけれど」
「競泳水着がいいなんて」
「そうね。けれどね」
その娘はさらに言う。
「一つわかってよかったわ」
「ああ、真綾って狙ってたっけ」
「そうだったわね」
「まあ言わないけれどね」
その少女沖本真綾は周りの声に今はあえて答えなかった。
黒い髪を首の付け根の辺りで奇麗に切り揃えた白い顔をした少女だ。頬は少しある感じで目ははっきりとしていて眉は薄めで鼻はやや大きい。口もしっかりとしている。
その彼女が健一を見ながら言うのだ。
「成程ね」
「仕掛けるの?」
「そうするの?」
「だから言わないわ」
今はとにかく秘密主義だった。
「けれどわかったから」
「そういうことね、今は」
「わかったってことね」
「それだけね」
「それだけだけれどそれ以上のものよ」
今得た情報はそうしたものだというのだ。
「面白いことになりそうね」
「じゃあ頑張りなさい」
「応援はしてるから」
「肉食系ってのは見せるものじゃないのよ」
真綾は笑ってこんなことも言った。
「隠してこそよ」
「じゃああんたの番だから」
「頑張ってね」
「今行くわ」
こう言って真綾はダッシュをした。それはまるでチーターの様な速さだった。
健一は全く気付いていない。だが次の体育の授業はこれだった。
「水泳か」
「ああ、水泳だよ」
「スクール水着だよ」
男達は水泳と聞いてこれに湧き返った。
「水泳っていったら水着だからな」
「女の子の水着姿拝めるぜ」
「全く、水泳は最高だぜ」
一人がこんなことさえ言った。
「だから楽しみにして行こうか」
「水泳楽しもうな」
「見る意味でもな」
「スクール水着なあ」
だが健一はここでもこうだった。スクール水着よりもだというのだ。
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