魔法大戦リリカルクロウcross【Z】‐無印篇‐
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第2話『最悪の出逢い』
ー篠ノ之束研究施設ー
「まずいよ……よりにもよってトライアに借りを作ってしまった…。 」
機械の兎耳を丸め身体をガタガタ震わせる束。同じマッド仲間であるトライアだが彼女に至ってはまさに悪魔。鬼。この貸しを盾にどんな危ない橋を渡らせられるかわかったものではない。かと言ってトンズラしても恐らく地の果てまで逃げなくては彼女の最強の駒であるクロウ…ブラスタに消し灰にされてしまうだろう。まあ、ブラスタのデータも欲しいがそんなことをしようとするものならに自分はトライアに本格的に喧嘩を売るのと同義。束は間違ってもそんなことをしない。
「仕方ない!こうなったら地の果てまで束さんは逃げるよ!」
となれば、逃げるあるのみ。縦横無尽に飛び回り風呂敷やら袋やらに荷物を詰める束。そして、キーボードを叩きコードを入力すると施設の自爆スイッチを押そうとするが…
PPP…
「ん?メール…トライアから?」
パソコンのうち1つにトライアからのメールを通知…しかも、添付ファイルが1つ…。ウィルス…もしくはスパイウェアか?いや、先程のやりとりの後にそのような行動は流石に彼女もとらないだろう。
「…」
汗をタラリと流しながらキーボードを叩きメールを開いてみる束。件名は『あ、これプレゼントな』。内容は『中々面白いよ↓(笑)』。ロクなものではない気がしながら添付ファイルを開くと…
「NOoooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!??!!!?」
自らの愛すべく妹、箒がクロウとキスをしている写真であった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方、
海鳴病院…
「うわああああああ!?」
クロウの世紀末的な叫びにより病院内は震撼。まだ朝早いため寝ていた患者は飛び起き、見回りをしていたナースが病室に何事だと駆け込んでくる。
「ふぁ~……」
そんなことなど気にしない少女、高町なのはは呑気に欠伸をするとまた掛け布団をかけ二度寝の体勢に入る。
「て、お前!人のベッドに勝手に寝るな!」
それを見たクロウは彼女の二度寝を阻止すべく、なのはの服の襟首を掴みプラ~ンとつまみ上げる…。
「う~~ん………あっ?蛍さん!」
「誰が蛍だ?」
クロウはやれやれと訳がわからない少女、なのはを下ろし、待機状態のブラスタを取り立体画面を開く。スコートラボ…クロウの雇い主であるトライアに連絡をつけるためだ。
(頼む…頼む…)
【NO signalー連絡不能ー】
(ああ、くそう!)
しかし、結果は連絡不能と画面に浮かび上がるだけで通信をすることは不可能だった……。
(やべえ……あのワームホールで船に被害が無いとは思えないし、事実上任務失敗の上に失踪とかその他諸々をつけられたら考えたくも無えが借金が下手すれば前より膨れ上がっちまう…。)
読者の皆様はご存知だと思うが既に彼の借金は膨れ上がっている。しかし、彼はそのことはまだ知らない。そして、クロウにとっての現在での大きな問題…。それは衣食住の問題である。非常食の乾パンぐらいなら持っているものの(もうすでに粉砕しているが…)1日持てばまだ良いというところ。大人しく怪我人としてこの病院に居座る手もあるが恐らくスコートラボへの連絡すら不能なこの世界でクロウの身分が確立されているかどうかすら怪しい…。
(となればまず、ここを出るしかないな。)
そうと決まれば色々と騒がれる前に行動あるのみ。
「おい、ちょっと出てろ。」
「ふぇ?なんで?」
「着替えるんだよ!」
早速、なのはをつまみ出しベッドの回りのカーテンを閉めるとものの数秒で着替え、普段のジャケットを着た服装になる。
「すご~い!」
「フッ、コイツも俺の特技の一つさ。」
あまりの速さになのはは手を叩き、クロウは満足げな顔をするとブラスタを手にとり病室をあとにしようとするが…
「!」
「全く、怪我人は安静にしておいたほうが良いんじゃないかな?」
引き戸を開けるとかなり長身の男が立っていた…。クロウはその服の袖からチラリと覗く傷跡に気がつき半歩下がる…。
「あ、お父さん!」
「なのは、看病ご苦労さん。ここからはお父さんとこの子とで話があるから。」
どうやらこの男はなのはの父らしく、彼女を部屋から出て行くよう促すとなのはは「わかった」と返事をしトテトテと病室から出て行く…。
「やあ、身体の調子はどうかね?私の名前は高町士郎。ウチの庭に刺さっていた君を助けこの病院に送った者さ。」
「あ、どうも……クロウ・ブルーストです。その…ありがとうございました。」
男は士郎と名乗りここまでの経緯を簡単に話した。この時、庭の修繕費が借金にならないかクロウは密かに考えていた。
「あの……ここは?」
「海鳴病院さ。もしかして、ここが地元じゃないのかな?」
「え、ええまあ……」
まず、クロウは士郎から現在地の情報を尋ねてみる。しかし、『海鳴』という単語も地名もクロウは知らない。
「君…どこから来たのかな?」
「あぁ…いやあ…遠いところから?」
間違ってはいないがあやふやな答えをするクロウ。なんとかここはごまかして切り抜けたいが…
ここで、彼はどうしようもない作り話を始めた。
「実は俺、旅をしてまして……。そしたら道中、財布を落としちゃったんですよ。確かに非常食はあったんですけどこれじゃ腹なんて膨れない…。そんな時、お宅の家の屋根にカラスがいたんですよ!カラスが!いや、こんな粉砕した乾パンを食べるよりだったらカラスのほうが良いかと思い、塀つたいで屋根に登っていったらズカーンと……」
嘘丸出しと言わんばかりの話だが実はクロウ、カラスを食ったことはある。莫大な借金を持つ彼の生活はというと依頼主であるトライアより支給される資金さえ返済に回しているため現金などは全く所持していない。そのため、人並みの食事にありつくのさえ無理な話。そのため、彼が身に付けたのはどこぞの蛇のように異常にまで高いサバイバル能力。
小動物の捕獲、手元での軽い調理はお茶の子さいさい。サバイバルナイフで熊の頭を一突きしそのまま頂いたこともある。(お味は臭みが強かったが食えないことはないbyクロウ)→(なら、アンタ昼飯代カットな。byトライア)→(そんなーー!?byクロウ)
(あ、一瞬思いだしたくないこと思いだしちまった…。)
まあ、ここで立ち止まる訳にもいかない。ここは若干、失礼だが無理やり話を切り上げこの場を去ろうとするクロウ…だが…
「なあ、クロウくん。君、うちの喫茶店で働いてみないかい?」
「え?」
ここで、士郎は思いもよらないことを口にしキョトンとしてしまうクロウ。
「君、今はお金が無いって言うし寝床も家の空き部屋に来てくれれば良い。どうかな?一石二鳥の話だと思うんだが…。」
「…アンタにメリットは無い気がするんだが……」
「なあに、住み込みで働いてくれる従業員がいれば私としても助かる。どうかね?」
確かにクロウにとって食事と寝床が確保できるのは嬉しいことだ。彼の話では喫茶店程度なら体力も自信があるクロウなら問題ないだろう。となれば…
「時給…いくらだ?」
受けない理由は無い。
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篠ノ之束研究施設…
「KONOURAMIHASUBEKIKAaa~!!」
怒り狂う束は全ての機械を酷使し、アームが蒸気を吹き出し赤い警告灯がついていても容赦なく作業を続ける……。そして、彼女の前に組み上がっていく鉄の巨人。
「KONOURAMIHASUBEKIKAaa~?」
今、彼女の頭には愛しき妹、箒の純潔を奪った男を叩きのめす事。トライアのことなど知ったことではない。
「クロウ・ブルースト…KIIIIIIIIIIILLLLL!!!!!!」
怨みをこめた束の額に浮かぶ『KILL』の文字。その背後にはク○ウザーさんらしきスタンドが浮かび上がっていたという…。
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