真剣恋にチート転生者あらわる!?
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第4話
悠斗side
揚羽様を学校まで送った俺と小十郎は九鬼ビルに戻り、遅めの朝食を食べた。その後昼になり、小十郎は揚羽様にお弁当を届けに行った。最初は俺も一緒に行くと伝えたのだが、小十郎は大丈夫だと言って行ってしまった。追いかけるのもなんなので、お弁当を届けるのは小十郎に任せて代わりに警備部の訓練に参加している。これはヒュームさんから頼まれたのだが、俺が侍従部隊に稽古をつけてやる事で、戦力を強化するのが目的らしい。 なら、ヒュームさんが稽古をつけてやればと聞くと、紋白様の躾が忙しいとの事だ。まあ、格闘訓練限定でしか稽古をつけてない。あと、揚羽様がいない時間限定だ。
入るときは、揚羽様の専属執事の仕事があるからだ。
「やっほー悠斗!なに考えてるの?」
「真面目な顔だから、きっと効率的な訓練の方法ね」
俺は後ろから軽く叩かれ声をかけられる。振り向くとメイド服を着たステイシーと李がいた。
俺の肩を叩いたのはステイシーの様だ。
「うん?いや、大したじゃ無いよ」
「へぇ~。本当に?」
目を細めて顔を覗き込んでくるステイシー。エメラルドグリーンの目で俺の視線を捉える。普通の男なら怯むか、頬を紅く染めるであろう距離だが、俺にはあまり意味がない。
「(ステイシーは美人で良い子たげと、からかう癖があるからね)いやさ、なんで入ったばかりの下っ端の俺が、侍従部隊の訓練を師事してるんだと思ってさ」
「あ~。確かに悠斗は入ってからまだ間もないからね。そう感じるのも無理は無いか」
「そうね。序列で言えば1001位だものね。見習い以下だもの」
李の何気無い一言で俺の心は砕け散る。いや、嘘ですよ。こんな事くらいで心が折れてたら、大将なんてやってられませんよ。まあ、くるものはあるけどな。
「まあ、小十郎ですら999位だもんね。普通なら悠斗があたしらから指導されてるはずなんだけどね」
「普通ならそうね。けど、悠斗の格闘訓練からはまだまだ学べる事があるから、有益よ」
「そうですか?二人ともかなりの腕前ですよ?俺から学べる事があるんですか?」
ステイシーは銃技の達人だし、李は暗器の使い手だ。銃撃戦になればステイシーが俺より上だし、暗殺術なら李の方が圧倒的に上だ。そんな二人が俺から学ぶ事などあるのだろうか?
「まあ、悠斗は揚羽様と同じ拳がメインだからね。少なくとも、体の動かしかたや白兵戦になった時に、私達でも使える技とかあるからね」
「そうね。あとは、悠斗のスカウトの能力は素晴らしいわね」
「ああ。CQCと追跡術ですか?あんなの、特殊部隊の隊員なら誰でも出来る気がするんですが?」
はあ。とため息をつくステイシー。そんなに、不思議な事でも言っただろうか?李を見ると特に何も言わなかった。
「確かに、CQCは軍や警察でも採用している所があるから、誰でも出来ると言えば出来るけど、悠斗がするCQCは普通じゃないわよ」
「それには同意ね。貴方の追跡術は最早神の領域ね。訓練で雨が降って全ての痕跡が無くなっても、貴方は見事にターゲットを発見してみせたわね」
「そうかな?CQCはただ単純に、相手を無力化する為の方法でしかないし。追跡術は傭兵時代に身に付いただけなんだが」
まあ、実際は特別訓練室でビッグボス(若い頃)と雷電(MGS4)に叩き込んでもらったんだがな。 ヴァルハラの師匠との修行に比べたら、まだましだったがな。
「そうかい。まあ、あとは悠斗の規格外レベルには驚いたね」
「そうね。まさか、悠斗とヒュームさんが手合わせしたら、まさかヒュームさんが負けるなんて思わなかったわ」
実は揚羽様が学校に行っている間に、1度だけヒュームさんと手合わせをした。流石にヒュームさんは手加減してたら負けるだろうと思っていたら、2%まで力を解放して戦ったら、苦戦する事もなく勝てました。
多分3%の力を解放したらかなり余裕で勝てるかも知れないが、試す気にはならなかった。しかも、絶対強者のスキルの正で、ヒュームさんがガードしても、余裕で体の中までダメージが行くから、怖いの何の。下手したら、ヒュームさんが長期入院するはめになるとこだった。そのせいで、以来ヒュームさんと手合わせする事は無くなった。
まあ、普通に考えて九鬼家最高戦力であり、序列0位で永久欠番扱いされてるヒュームさんを長期離脱させる様な事があってはいけないからだ。ましてや、紋白様の専属執事であるヒュームさんが居なくなった場合どれ程の損失になるか計り知れない。そう言った理由から、ヒュームさんと死合い又は手合わせすることを、九鬼帝から言い付けられたのだ。
「まあ、正直言えばもっと力をセーブすれば良かったかなと、考えるようになったよ」
「なんだろうね。普通なら嫌味に聞こえるんだけど、悠斗が言うとそう感じないから不思議よね~」
「そうね。悠斗は理性できちんと自分をコントロール出来るから良いけど、力が有ってもコントロール出来なければ、単なる獣と代わりないわ」」
「確かにそうだな。自分を「悠斗!見つけたぞ!」って、小十郎か。どうかしたのか?」
息を切らした小十郎が俺の側までやって来た。
急いで、呼吸を整える。 上半身を起こし、大きく深呼吸を1回したら息が整った小十郎。
「で、どうしたんだ小十郎?いきなり走って来るなんて?」
「ああ。もうすぐ揚羽様が下校なされる時間だから、呼びに来たんだ」
「なに!?もう、そんな時間か!分かったすぐに行く。ステイシー、李、済まないが俺は揚羽様の迎えに行ってくる」
「あはは。大変だね。頑張りな!」
「頑張ってね。小十郎も頑張るのよ」
「はい!精一杯揚羽様のお迎えに行きます!!待っててください揚羽様あああ!!」
小十郎が学校に向かって駆け出す。俺は小十郎の後を追いかけるのだった。
悠斗sideout
侍従コンビside
悠斗と小十郎が元気よく揚羽様の迎えに行くのを見送った二人は、のんびりと休憩を続ける。
「相変わらず小十郎は、一途だね~。熱意は認めるんだけど、能力がね」
「そうね。小十郎は小さい頃から揚羽様の侍従だものね。仲が良いけど、その反面能力が未熟過ぎるわ。あずみも小十郎の件には頭を抱えているからね」
毎回人事異動の度に、異動人員の筆頭に名を連ねているのだ。だが、揚羽様の一存で異動を免れているのだ。
「確かにね。本来なら1度降格させて訓練を行わせるべきなんだけどね。でも、悠斗が入るからもしかしたら小十郎は降格されるかも知れないよ?」
「そうね。寧ろ、悠斗の序列がどうなるかが気になるわね」
侍従部隊には今まで1000人の人員が居たが、この程悠斗が入った事により1001人になったのだ。また、悠斗が現在1001位となってはいるが、序列3位のクラウディオ・エネロにたった2週間で教える事は無いと、言わせた程だ。人事異動で序列が上がるのは誰の目に見ても不思議はないのだ。
「そうだよね。もしかすると、私らも抜かれるかな?」
「ええ。例え抜かれても悠斗なら、不思議は無いわね。寧ろ、あずみが抜かれるかが心配だけど」
「大丈夫でしょ。いくら悠斗でも、あずみは抜けないわよ。行けても4位が良い所ね」
「そうね。それくらいが妥当かもね。けど、入って間もないのに4位まで上がれば、凄いと思うわ。冗談抜きに」
九鬼家の侍従部隊の最高位はヒューム・ヘルシングの0位。これは永久欠番の扱いを受けているため、変わることはない。 次は忍足あずみの1位。 彼女は現在九鬼英雄の専属メイドだ。2位は相談役であり九鬼家の知恵袋のマープル。3位はクラウディオ・ネエロ。九鬼帝の専属執事だ。現在はスイスに居る。そんな中で、もし、4位に入れば化け物に違いない。改めて悠斗の規格外レベルを感じる事になる。
「まあ、人事異動の時期まで待つしか無いけどね。そろそろ仕事に戻ろうかな?」
「そうね。訓練はとっくに終わっているものね。いい加減働かないと、ヒュームさんに怒られるわ」
立ち話を止めて、仕事に戻る二人であった。
侍従コンビsideout
悠斗side
揚羽様の通う七浜学園に向かって小十郎は道路を走っている。俺は、ビルや家の屋根や壁を走って、小十郎を追いかけている。午後になっても天気は良く、太陽からポカポカした日差しが降り注いでいる。昼寝するなら最高な天気だろう。
(う~ん。良い天気だな。さっきから、頭の中にある歌が流れっぱなしなんだよな。別に別れが有るわけでは無いのだが)
そんなことを考えながら壁を蹴り、ジャンプすると七浜学園の校門の前に到着したので、そのまま着地する。
「わわ!?行きなり現れたからビックリしたよ~」
「うん?ああ、南斗星殿か。何時から俺の後ろに?」
声がしたので振り替えると、揚羽様のご友人の侍従の南斗星さんがいた。
「別に呼び捨てで良いのに。ああ、僕は悠斗君よりほんの少し前に着いたからね。あんまり変わらない位だよ」
「そうだったのか。それは失礼した。着地する前に見たときは誰も居なかったから、てっきり俺だけだと思っていたのでな」
「別に良いよ。なにか、害があった訳じゃ無いしね。それより、小十郎君はどうしたの?」
南斗星さんが不思議そうに俺に訪ねる。考えてみたら、小十郎が此処に到着していない事に気が付いた。
「悠斗殿おお!早いですぞおお!」
「あ!小十郎君の声だ。漸く来たみたいだね」
小十郎が息を切らして俺と南斗星さんの前で止まる。
「はあはあ。悠斗。俺より後に出たのに先に到着するなんて、凄い足の速さだな!」
「まあ、落ち着け小十郎。取り敢えず、息を整えろよ」
「そうだよ。走ったばっかりに止まると、体に悪いよ」
「はあはあ。分かった。少し息を整える」
ゆっくり深呼吸して息を整える小十郎。少しして呼吸が落ち着いた。
「さて、呼吸も整ったから後は揚羽様を待つだけだ!」
「あはは。小十郎君は元気だね」
「当たり前です!南斗星殿!揚羽様の前で、元気の無い姿など見せられません!」
ガッツポーズをして、元気であることを南斗星さんに証明する小十郎。
そんな二人を余所に、俺は暇なのでチート能力を使い、ビーフジャーキーをポケットに取り出す。 ポケットからビーフジャーキーを取り出し、適度な大きさにして口に入れる。干し肉の旨味が口に広がる。
「じー」
「南斗星殿?如何されました?」
(久しぶりにビーフジャーキーを食ったな。普段は酒のつまみにしか食わんからな。ん?)
ふと、視線を感じたので小十郎達の方を見ると、南斗星さんが俺を見ていた。
(はて?ゴミでも服に付いていたかな?)
俺は自分の服を確かめて見るが、何処にも変な所は無かった。
だが、南斗星さんはじーと俺を見ている。
視線を確認してみると、俺の右手を見ていた。
(あ?もしかして?)
俺は南斗星さんの目の前にビーフジャーキーを出す。すると、南斗星さんの目の色が変わった。
「南斗星さん。ビーフジャーキー食べますか?」
「え!?くれるの?」
「良いですよ。小十郎も食べる?」
「ああ。じゃあ、俺も貰おうかな」
南斗星さんと小十郎にビーフジャーキーを渡す。すると、南斗星さんにイヌミミと尻尾が生えてる様に見えた。
「ハムハム。美味しいよ!この、ビーフジャーキー!」
「確かに美味しい!悠斗は普段、こんなに美味いビーフジャーキーを食べてるのか?」
「うん?まあ、酒のつまみ程度だがな」
俺が上げたビーフジャーキーを食べて喜んでいる南斗星さん。何故だか尻尾が激しく動いている様に見えた。
(尻尾生えてるはず無いだろうが!俺、疲れてるのかな?)
そんな事を考えながらビーフジャーキーを3人で食べる。太陽の日差しがポカポカしていて気持ちが良い。とても平和で長閑な時間だ。
暫く3人でビーフジャーキーを食べていると、学園のチャイムが鳴った。 俺と小十郎は、ハンカチで口回りと手を吹いて、痕跡を全てかたずける。 南斗星さんはまだ、ビーフジャーキーを食べていた。
「ふー。美味しかったよ!悠斗はいい人なんだね」
「いや、ビーフジャーキーを上げただけですけど?」
「うんうん。そんな事ないよ。ベニはなかなかくれないからね。ああ!ベニは私が働いてる久遠寺家のメイドで、料理を作ってくれるんだよ」
「そうなんですか?まあ、食べ過ぎは良くないですからね」
俺がそう言った瞬間、南斗星さんの表情が暗くなった。
「うう~。ベニもそう言うんだよ。食べ過ぎは良くないって、私としては押さえぎみにしてるのに」
(いや、ビーフジャーキーをどれだけ食べてると思ってるんですか?既に、10袋は開けてますよ!?これで押さえぎみなら、押さえていなければどれだけ食べられるんですか!?)
「そうですね。俺も食べ過ぎには注意してますよ。でも、肉は大好きですから、沢山食べる様にはしています!」
「そうだよね!小十郎君の言う通りだよね!お肉は美味しいよ!」
肉の話で盛り上がる二人。そんな二人を他所に俺は校門を見る。揚羽様が夢様と共に出てこられた。
「お帰りなさいませ揚羽様。お迎えに参りました」
「うむ。悠斗か。本日も我は確と知識を鍛えてきたぞ!」
「お帰りなさいませ揚羽様!!お迎えに参りました!!」
「ふむ。相変わらず元気の塊だな小十郎。だが、我はそのような者は嫌いではない。しかと修行に励むのだぞ」
「はい!揚羽様!この小十郎!揚羽様に追い付くためにも、日々精進します!」
「ふははは!よくぞ言った。それでこそ、九鬼家の執事よ!ならば、褒美を取らせよう。手を出せ小十郎」
小十郎が揚羽様に向かって手を出す。すると揚羽様がポケットに手を入れて、小十郎の手に小さな粒を置いた。
「金平糖だ。しかと堪能するが良い!」
「ははあ!ありがとうございます。この小十郎!感激で涙が止まりません!」
そう言いながら小十郎は金平糖を口に入れる。
その表情は笑顔だった。揚羽様からもらった金平糖が余程嬉しいのだろう。
「南斗星さん。お迎えありがとう」
「うんうん。夢を守るのが私の仕事だからね。それに聞いてよ夢。今日はビーフジャーキーを沢山もらったんだよ!」
「良かったね南斗星さん!てっ、誰から貰ったの?」
「うん?悠斗からだよ。丁度待ってる間に3人で食べてたんだよ!」
「あ、そうなんだ。良かったね」
「うん!」
嬉しそうに話す南斗星さん。夢様はそんな南斗星さんを見て楽しそうだ。
「さて、悠斗。小十郎。帰るぞ。我は家に戻り次第、稽古があるからな」
「はい。揚羽様」
「はい!揚羽様!!」
「我が友夢よ!明日はよろしく頼むぞ!」
「うん。遊びに来るんだね!楽しみにしてるから!」
「分かった。ならば明日は、最高の品を持ってお邪魔させてもらう!さらばだ夢よ!悠斗、小十郎。参るぞ!我に遅れるな!」
「「は!揚羽様!」」
「バイバイ。南斗星さん。帰ろうか」
「そうだね」
俺と小十郎は先頭を走る揚羽様遅れないようにして、九鬼ビルに帰宅するのだった。
悠斗sideout
揚羽side
我は学園から帰宅して直ぐにヒューム師匠の稽古を受けた。相変わらずヒューム師匠は強く、我は勝てなかった。しかし、それ以上に凄かったのは、悠斗対ステイシー&李の手合わせだ。
使用する武器は全て本物だ。銃なら実弾、刀等は刃を潰していないのだ。 即ち、少しでも辺り所が悪ければ即座に死に直結する手合わせだった。
悠斗対ステイシー&李のコンビネーションの高さを知った上で、冷静に対処し見事に勝利したのだ。相変わらずの強さだった。稽古を終えた我は夕食を食べ終わり、現在は入浴している。相変わらず悠斗は脱衣場で待機しておる。小十郎は我の部屋で待機させておる。
シャワーからお湯が体に降り注ぐ。パシャパシャと水が跳ねる音がする。
(明日は夢の家に遊びに行けるのだ。彼方には森羅殿や美有殿の様に、我より恋愛に強い方が居るのだ。彼女達に、悠斗を振り向かせる為の方法を伝授してもらわねば)
少なくとも、我は悠斗を好いておるのは間違いないのだ。だが、肝心の悠斗は我を好いているかは不明なままだ。更に言えば、未だに悠斗と接吻すらした事はない。
(せ、せめて接吻位はしてみたいのだが、チャンスがなかなか無い)
悠斗は我の専属侍従だが、ああ見えて人気はかなり高い。今日学園に初めて顔を出したと言うのに、既に噂になっていた程だからだ。
(学園内では、我に悠斗の事を訪ねて来るものも多かったな。これから、悠斗を毎日学園に行くのを付き合わせるのは危険かも知れん。まあ、我の考え過ぎか。なんにせよ、明日久遠寺家に行ったら、相談する事にしよう)
そう決めて、我はシャワーを止めて湯船に入り体を暖めるのだった。
揚羽sideout
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