『言霊使いと幻想郷』
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第十二話
前書き
今回はゲートはお休みです。
都合により間に合わなかったもので……。
「スペルカードぉ?」
「そうよ」
俺の言葉に霊夢が頷いた。ちなみに季節は三年後の文月(七月)の中旬である。
卓袱台を挟んだ向かいで霊夢(十五歳)は食べている西瓜の種を小皿に吐き出す。そんなぺっぺと吐くな。
「いいじゃない。いるのは誠兄(十九歳)と魅魔(年齢不明)だけなんだから」
「……駄目だこりゃ。魅魔ぁ、お前も何か言ってやれよ」
「んぁ~?」
振り向いた先にいた魅魔はジャクジャクとメロンのシロップが掛かったかき氷を潰していた。
暑さのせいか魅魔の目線はたれ目になっている。駄目だ、この様子からして魅魔からいい言葉は返ってこないな。
「まぁいいや。それでそのスペルカードは何だ?」
「……この間、吸血鬼異変があったでしょ?」
『吸血鬼異変』。つい先月、幻想郷に突然吸血鬼が幻想入りしてきた。強大な力を持った吸血鬼は幻想郷の支配を目論見、幻想郷に住んでいた妖怪は、あるものは力の前に屈服し、あるものは恐れをなして寝返り、妖怪の大半が吸血鬼の傘下となってしまった。最終的にはより強大なごく一部の妖怪(まぁ紫さんなんだけどな)によって辛うじて鎮圧された。
そこで紫さんは霊夢と相談して妖怪は異変を起こしやすく、人間は異変を解決しやすくする等のためスペルカードルールを作ったらしい。
「幻想郷の妖怪や霊は全てスペルカードを持つようにしてるわ。魅魔と誠兄も持ってね」
「面倒くさい。吸血鬼が悪いんだから吸血鬼を倒したら早い話だ」
「右に同じくだね」
「……あんたらねぇ」
イカンな、暑さのせいか頭がボケてるかな。
「冗談は置いといて。作るというてもなぁ、俺は言霊で出せばいい話だけどな」
「全てスペルカードで統一しないと妖怪も弱くなるからね。そこは我慢してよ誠兄」
むぅ……霊夢の頼みなら仕方ないか。
「そういうわけで、はい紙」
「紙?」
霊夢から数枚の紙を渡された。これに何をしろと?
「これに誠兄の得意技を書くのよ」
……俺の場合、十枚以上書きそうになるけど……取りあえず書いておくか。
「こんにちわ~」
その時、境内の方から女の子の声が聞こえてきた。
「ん? アリスじゃないか。どうした?」
「あ、誠さん。魔界に里帰りしに行こうと思って声をかけたのよ」
アリス・マーガトロイド。魔法の森に住んでいる。よく二体の人形を連れて歩いている。
「はいはい、霊夢にはちゃんと言っておくから」
「ありがとうね」
アリスはそう言って神社の裏山に向かう。神社の裏山には洞窟があってその洞窟は魔界という別の世界に繋がっているらしい。
違う意味で幻想郷は恐ろしいな。
アリスはその魔界の出身であるらしいが詳しくは聞いてない。アリス本人も言わない事だし俺から聞く事じゃないしな。
「誰だったの?」
「アリスだ。魔界への里帰りのようだ」
「一ヶ月に一回のペースね。余程アリスの親は過保護なのかしら?」
「……かもしれないな」
俺はそう言って新しくかき氷を作るためにかき氷器に氷を入れる。
「誠ぉ私もねぇ~~」
「……いや魅魔は食い過ぎだろうよ。もうこれで六杯目だぞ?」
「悪霊だから大丈夫ぅ~」
そう言ってはいるけどなぁ……。
「そういや霧雨は最近どうなんだ?」
俺は魅魔に聞いてみた。アリスと同じく魔法の森に住んでキノコを採取しているとか聞いたけどな。
「最後に会ったのは二年くらい前だね。もう私の弟子を卒業したんだ。便りが無いから元気なんだろうね」
「……放任主義というかあれだな……」
それが魅魔の性格なんだろうな……。てか霧雨はよく魅魔の弟子をしていたな。
「よぅ霊夢ッ!! 遊びに来たぜッ!!」
ん? 誰の声だ?
「誰だぁ~って誰だ?」
「ん? お、霊夢の兄ちゃんじゃないか」
……服からして……多分霧雨だよな? けど前は魔女っぽかったよな?
『旧作魔理沙ではなくwin版魔理沙になってます』
「霧雨……か?」
「そうだぜ」
……何があった?
「どうしたのよ誠兄……って魔理沙じゃないの」
霊夢が境内にやってきた。それより霊夢は魔理沙と分かったのか。
「私はちょくちょく会ってるわよ」
「そうか、それより何で口調が変わっているんだ? 前はうふふふとか言ってなかったか?」
「河童といるちゆりとか言うの口調が移ったらしいわよ」
ちゆりとは昨年辺りに急に幻想郷にやってきた北白河ちゆりと岡崎夢美だ。よく内容は知らないが追放されたとかなんとか……。
そう言えば河童から去年の冬に炬燵を作ってもらう時に二人がいたような……。
「所謂イメチェンか……」
俺はそう納得した。この幻想郷は何が起こるか分からんしな。
「魔理沙じゃないか。久しぶりに修行でもしてやるかい」
「み、魅魔様ッ!? 何で此処に……」
「何だい? 私が此処にいちゃいけないのかい?」
「いや、そんな事は……」
魅魔がひょっこりと出てきたせいで霧雨が畏縮してる。
「なら修行するぞ」
「そ、そんな~~~」
霧雨はそう言ってズルズルと引きずられて行った。
「……何だったの?」
「さぁ……」
霊夢の言葉に俺はそう言った。そして二日後、幻想郷は赤い霧に覆われたのである。
これが後の『紅霧異変』の始まりであった。
後書き
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