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戦国異伝

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第百十六話 三杯の茶その六

「それとはまた」
「左様か」
「織田家全体が陽の中にありますが」
 陰陽五行のその中でだというのだ。
「織田家は青、即ち五行では木であり東にあります」
「そうじゃな。わしもそれはわかる」
「獣では青龍、陰性ですが陽獣です」
「微妙に陰も入っておるな」
「そうです。しかし全体的に陽にあります」
 春であるし織田家自体がそれにあるというのだ。
 しかし信長は違う、彼はというと。
「殿は日輪です」
「わしはそれか」
「はい、天にあり全てを照らす日輪です」
 それが信長だというのだ。
「まさにそれです」
「では闇もか」
「闇を照らし消し去る日輪です」
「面白いのう。わしがそれだとはな」
「殿はおそらく天下を統一するだけではありません」
 命は信長のこの世に生まれた意味もここで見出していた。それは。
「これまで本朝jの闇で蠢いていた者達をもです」
「その者達もか」
「はい、若しもですが」
 ここで命はいぶかしげな声を出した。
「鬼と言われていた者達がそうだったと言われていますが」
「まつろわぬ者達じゃな」
 信長も彼等のことは知っていた。
「それじゃな」
「はい、鬼に土蜘蛛です」
「そうした者達はおらぬだろう」
 実際にはというのだ。
「山の民であろうな」
(そうですね。彼等を見間違えただけかと」
「しかし闇か」
「はい、闇をです」
 信長は照らし消し去る日輪だというのだ。命が見るところはそれだった、そうした話をしたうえでだった。命はこんなことも言った。
「近江のその方ですが」
「何でも切れ者だとか」
「先程その方について占ってみました」
「おお、命の占いか」
 今声をあげたのはヨハネスだ。彼も共に来ているのだ。
「貴殿の占いは当たるからな」
「有り難うございます」
「何故忍ではなく占い師にならなかったのだ」
「元々。果心居示様に拾われた時にそう育てられたので」
「忍としてか」
「はい、ですから」
「貴殿は忍の者なのか」
「そうです」 
 こうヨハネスに答えるのだった。
「そうなっています」
「そうか。しかしそれは」
「何か不都合が」
「それはない」
 ヨハネスにしてもそのことは否定しない、命もまた生粋の忍だからだ。確かにかなり風変わりな忍ではあるがだ。
「その占いも忍の力の一つだろうかな」
「そうです。占いは忍の者にとってもです」
「有益だな」
「その通りです。そしてその占いでわかったことですが」
「石田という御仁はどうした方なのか」
 ヨハネスもこのことに興味があり問うた。
「一体」
「非常に切れ者だとのことです」
 資質はあるというのだ。
「一本気で清廉潔白です」
「ではかなりよい御仁か」
「その為非常に素晴らしい友を何人も手に入れますが」
 それでもだと。ここでこう言う命だった。
「一本気でご自身を曲げられないので」
「何かそういう奴もいるね」
 大蛇がここでこう言った。 
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