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ヘタリア大帝国

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TURN59 大統領発狂その九

 東郷のところに連絡が来た。紹介活動に当たっているコーギーからだった。
「司令、SOSを出しているう小型船が来ています」
「小型の?」
「民間船ですが」
「何だ、亡命者か?」
 東郷は司令部を置いているUSJの基地の司令室から言った。
「はじめてだな」
「そうですね。一体誰ででしょうか」
「わからないな。だがだ」
「ではどうされますか?」
「亡命者は拒まない」
 そうするというのだった。
「SOSを出しているのなら余計にな」
「わかりました、それでは」
 こうしてその小型船は保護された。この時は東郷も誰も大きなことになるとは夢にも思っていなかった。だが。
 小型船から出て来たのはアメリカだった。変装を解いて元の姿に戻った彼を見て日本は思わず声をあげた。
「アメリカさん!?どうして」
「日本、僕は君達と講和したい」
 アメリカは眼鏡をかけてから切実な顔で日本に告げた。
「勝敗は決した、だからだ」
「ですが貴方の国の大統領は」
「わかっている。ミスターは徹底抗戦を主張している」
「ではそれは」
「しかし僕は講和だ」
 そうするというのだ。アメリカ自身は。
「そして君達に頼みたいことがある」
「頼むとは」
「ガメリカを救って欲しい」
 彼の国と国民達をだというのだ。
「プレジデントのことはわかっていると思う」
「明らかにおかしいな」
 日本の横にいる東郷が言ってきた。
「別人にしか思えない」
「はい、そうです」
「暴走している、あのままいくと危険だ」
「そうだ、ガメリカはミスターが非常大権を集めて全てを握っている」
 それからだった。
「そのうえで今動いているんだ」
「言うなら狂気の独裁者だな」
 東郷は今のルースをこう評した。
「まさにな」
「そうだ。このままだとガメリカは大変なことになる」
 アメリカの顔には危機がある。
「だからここは何とかして欲しいんだ」
「僕からもお願いです」
 ここで中性的な、いや少女にしか思えない顔立ちの美少年も言ってきた。
「あの、ハンナを」
「?君は確か」
 東郷は少年の顔を見てすぐに気付いた。
「クー=ロスチャ財務長官か」
「まさか一目で」
「実は最初テレビで観た時から気付いていたさ」
 この辺りは東郷の眼力だった。
「君が本当は男だということはな」
「まさか。気付いているのは祖国さん達とハンナ達だけだと思っていたのに」
「ロスチャ家の君の兄弟は男ばかりだ」
 このことは世界的に知られていることだ。
「女性は君だけだとされていた」
「はい、ですが実は」
「君も男だった」
「兄弟の中で僕が最も銀行家の資質があり女性的な顔立ちでした」
 クーはやや俯きこの事実を話す。
「ですから性別を偽っていました」
「そうした事情は知らなかった」
「そうですか」
「しかし君が男性であることは気付いていた」
 東郷はこのことはだと言う。 
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