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東方守勢録

作者:ユーミー
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第九話

ヘリから発射された鉛玉は容赦なく俊司達の周りに打ちつけられていた。


「ななななんですかこれ!!」

「とにかく走れ!!当たったらひとたまりもないぞ!」

「何か分からないけど……早く屋敷に行かないと!」


俊司達は無我夢中で走り続け、なんとか屋敷の中に逃げ伸びることができた。


「はあ……はあ……」

「これで……大丈夫……」


と言ってその場に座り込もうとする妖夢。

そんな彼女を見て何かに気付いた俊司は


「そこは危ない」


と言って彼女の腕をつかみ、ぐっと引きよせた。


「えっ俊司さん!?」


と言って戸惑う妖夢。その直後


バキバキバキ!!


という貫通音とともに、鉛玉が扉を貫いてさっきまで妖夢がいたところに着弾していった。


「うわっ」

「扉は木製だから貫通するんだ。みんなも木製の壁と窓ガラスは耐久力が低いから、なるべく避けた方がいい」

「わかったわ」

「あら、もう戻ってきたの?まだ騒がしいのは直ってないないじゃない」


一同がその場で座り込んでいると、レミリアが不満そうな顔をしながら現れた。背後にはパチュリーとフラン・小悪魔もいる。


「すいません。状況が状況で」

「……あっそ。一体外に何がいるのかしら?」


と言って日の当らない場所から外を覗こうとするレミリア。


「お嬢様!そこはあぶな……」


パシュン


「っ……!?」


咲夜の忠告もむなしく、鉛玉が一つレミリアの頬をかすめていった。頬は軽く切れ少しずつ血が垂れ始める。


「……そう、この私に傷をつけるほどの実力があるのね……」


そう言ってレミリアは一枚のカードを取り出す。


「調子にのってんじゃないわよ!!」


神槍『スピア・ザ・グングニル』


完全に血が頭に上ったレミリアは、グングニルを窓から見えるヘリに向けて思いっきり投げた。

グングニルは一直線でヘリに向かって飛んでいく。そのままヘリは爆発を起こし、ついらくする









はずだった。








「……!?」


レミリアの目に映ったのは、想像をはるかに超える出来事だった。

グングニルは確実にヘリに当たっていた。だが、ヘリは爆発を起こすことはなかったのだ。


「どういうこと……」

「まさか……」


ヘリが爆発しなかったのを俊司も確認していた。だが、気になったのはそこではなかった。


「……ゆれた?」


ヘリはまるで水面に映った月を触った時のようにゆらゆらとゆれたのだ。金属などでできているヘリには考えられない現象だった。


「あのゆれかた……まるで映像……まさか!!」


俊司は危険を承知で窓から兵士たちの方を確認する。


パシュン


「いって」

「だっ大丈夫ですか!?」

「大丈夫かすり傷だから。しかし……そう言うことだったのか……」

「……なにがですか?」


俊司は一度大きく息を吐くと、口を開いた。





「俺たちは……いや、俺は……騙されてたんだ」





「騙されいた……俊司さんがですか?」

「ああ……あいつらはみんなの知識不足よりも、俺が持ってる知識を悪用してきたんだ……とりあえず、みんなそこに集まってくれるか?」


俊司は柱と壁で守られている場所に全員を集めると、話を続けた。


「で?何を騙されんですか?」

「じゃあ、まずあの飛んでるやつから。あれは外の兵器の一つで偵察ヘリの分類になる乗り物なんだ。」

「乗り物?あんなもの使わなくても飛べるじゃない」

「外来人は飛ぶなんてことできないよ。そのかわりに乗り物を使って補ってるみたいなもんさ」

「あっそ……ところで、私のグングニルが当たらなかった原因は?」

「はい。原因はあれが本物じゃないという点にあります」

「本物じゃない?」


不思議そうな顔をするレミリア達。俊司は軽く言葉を整理しなおすと、わかりやすいように心がけながら説明を続けた。


「結論から言うと、あれは映像です」

「映像?」

「実際にないものを映し出すんですよ。簡単に言ったら中身が動く写真ってことです」

「でも……どうやってそれを?」

「あの男……微かに右手が光ってた……。おそらくあいつの能力だと思う」

「じゃあなんで騙されたってことになるんだ?」

「俺はあれを見た瞬間に本物と勘違いをしてたんだ。実際は下の方で数人の兵士がミニガンを準備していただけ。あいつらは最初から俺たちをこの屋敷に逃げさせるために使ったんだ。咲夜さん、ここ裏口はありますか?」

「あるわ。左右合わせて2つだけど……」


と咲夜が言った瞬間


バキッ!!


といった木がわれる音が左右の遠くから聞こえてきた。


「くっ……」


音を聞き取った瞬間、俊司は頭を抱えてしまった。

何が起こったのかはそこにいた全員がわかっていた。そして、一人が確信の一言を呟く。




「袋のねずみね……」




最悪の事態だった。

裏口は抑えられ逃げ道はなくなった。このままでは正面のドアも破られて、包囲されてしまう。


「ごめん……俺のせいだ……」


俊司は頭を抱えながらそう言った。


「……まあしかたないわ。こうなってしまったのだから、戦うしかないでしょう?」

「そうですよ。行動しなければなにも生み出せませんって」

「……そう……だな。うん……なんとかしよう」


皆に励まされなんとか立ち直った俊司。大きく深呼吸をすると、きたる革命軍に備えて戦闘態勢をとり始めた。

そんな中、咲夜がためらいながらも口を開いた。


「皆さまお待ちください」

「……どうしたの咲夜」

「……一つだけ出口がございます」

「咲夜?……何を言って」

「こちらです。ご案内いたします」


咲夜はそう言ってすたすたと歩き始める。俊司達は不思議に思いながらも咲夜の後についていった。



数分後


「ここは……」

「これはどういうこと?……咲夜」

「ここって……私が閉じ込められてた場所……だよね?」


フランは懐かしいひんやりとした地下室を見てそう言った。 
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