ソードアート・オンライン 《黒の剣士と白の死神》
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第一部 全ての始まり
第四話 宿と団長と組織
「くう……」
額からは汗が流れ、歯を食いしばる。
「くそ……どうすればいい…!」
確か俺の住む国では、前門のトラ、後門のオオカミと言っていた。
八方ふさがり、四面楚歌、一難去ってまた一難、背水の陣……は違うか。
目の前では、やつがこちらに笑みを浮かべ、それを言い放つ。
「私たちの所へ入るのなら……宿と食事を準備しよう。キョウヤくん。」
「お前……なんて嫌なやつだ…!ヒースクリフ!」
そうです。このわけの分からない男、ヒースクリフだ。
そもそもこんな状況になったのは、シリカと別れてキリトを追っている時だった。
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「どうするか……」
俺は悩んでいた。
「……シリカ…いや、ダメだな。PoH……性格的に無理な気がする。」
はい、街の外真っ暗です。いくらゲーム内とはいえ、この状況では確実にHP0になる。
「宿を取るしかないんだけどなあ……はあ。あの二人に宿を頼むのもなあ。」
今から、キリトを追いかけてもいいが……
「あ~~もう!こんなのじゃあどうにもならない!誰かパンと寝床をくれ~……」
そう言うと、誰かが近づいてきた。一人だな。
「…あんた、誰だ。」
俺は片手剣に手をかけつつ言う。
「……その質問には、先ほど答えたはずだが?キョウヤくん。」
その瞬間、俺はオリンピック選手も真っ青の速さで街の外に向かって逃げ出した。
「っ~~~!!!」
が、俊敏さではやつのほうが勝っていたらしく、えりを捕まれて急停止した。
「パンと寝床を提供しよう。君が組織に入ってくれるなら、の話だが。」
「わりいヒースクリフ……俺はもう先約がいるぐええええええ!!」
「さあ行こうではないか。」
ヒースクリフは、俺をある宿屋に連れて行った。
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「……で、何故こうなった。」
「宿が必要なのだろう?ならば遠慮せずに入るべきだ。」
「いや、確かに必要とは言ったさ!だけどお前ここは……」
(高級宿じゃねえか!)
「悪いな、このような中級の宿で。団員の約半数がベータテスターだったのが幸いだが。」
「ぜんぜん中級とかじゃないけれど。と言うかベータテスターが50%なのはあんたが集めたんだろ。」
とか思ったが、実際俺も腹がすいてるし、ここは……
(隙を見つけて逃げる!)
こんな高級店でコル払えねえよ!今の所持金100コルだぞ!
それに組織にははいらねえからな!!!
ちなみに、コルは死にそうなやつとかに(ちゃんと使いそうなやつに)分けたから無い。
「あ、団長。お疲れ様です。」
「ああ。悪いが団員が一人増えそうでな…安心しろ、君と同じベーターテスターだ。」
男とヒースクリフが会話してるうちに、今のうちに、そ~っと、そ~っと……
「君が入る子?」
終わった。
《サイド・アスナ》
「えへへ…オオカミがとんでる~」
と、目の前にいる子は宙を向いて言い始めた。
大丈夫かな?
「あ、あの、あなた大丈夫?」
わたしがそう言うと、彼女は
「オオカミが…はっ!俺はどこ?僕はダレ?」
本当に大丈夫かな?
「…あなたの名前は?」
「せめて突っ込んでくれよ。寂しいだろ。おい。」
「それで?」
「俺の名前はキョウヤだ。もうほっといてくれよ。本当に今日はついてない……」
「へえ~。キョウヤって言うんだ。よろしくね。」
わたしが手を出すと、彼女も手を握った。
「まあな。よろしく。……一日だけだろうがな。」
「何か言った?」
「なにも。」
「キョウヤくん、どこにいるのかね?」
そんなことをやってると、団長が彼女を呼んだ。
「あなたのこと、呼んでるよ。」
「ありがとな、えーと……」
「アスナでいいわ。」
「ありがとな、アスナ。」
そう言うと俺は、ため息をついて団長のところに行った。
《サイド・キョウヤ》
「で、何をさせるんだヒースクリフさん。」
俺が皮肉をこめて言うと、
「何、君に自己紹介をしてもらうだけだ。皆、注目してくれ。」
反撃しやがったこいつ!!!
その一言でみんなが静かになる。
「ある程度自己紹介はしていると思うが、私から彼を紹介させてもらう。
ベータで《片手剣の狩人》と称された、キョウヤくんだ。」
(段に立つんだ、キョウヤくん。)
俺は段に立ち、みんなに言った。
「あ~、今ご紹介に預かった、キョウヤだ。まあよろしく。」
「女の子だったんだ~
「頼りになるのか~
「くだらねえ~
などの声が聞こえる。
(他に無いのかね、キョウヤくん。)
この状況でアドリブですか団長さん。
「しかし!」
その声で静かになる。ウム、いい眺めじゃ。
「今、現実であることは確かだ。ならば、始まりの街にとどまるのはただの時間浪費ではないか?」
「今すぐに現実を見なくてもいい。無謀と勇気は違う。そのほうが安全だしな。」
「だが、助けを待とうと、きっといつまでもこないだろう。臆病と慎重は違う。相手は最高のクリエイター茅場晶彦だ。」
「今じゃなくてもいい。現実を見ろ。今、俺たちにとってはこの世界―――アインクラッドこそが生きる世界なのだから。」
「俺だって恐れている。怖くて足が笑っているさ。恐怖は同じだ。みんなもそうだろ?」
そこで俺は一息つく。みんな話に耳を傾けている。
「だったらこの悪夢をみんなで終わらせよう。たとえどんなに苦しくても、な。」
以上だ、と俺は言い、段を降りた。
拍手がパチパチと起こり、俺はそれを聞きながら椅子に座った。
「アドリブでそこまでいけるとは思わなかったよ。キョウヤくん。」
「まああーいうのは慣れてるからな。あ…」
「?どうかしたかねキョウヤくん」
「俺、コル持ってないんだが」
「その件については心配しなくても良い。支払いは済ませてある。」
やっぱりか!と俺は内心思いつつ、聞いてみた。
「……ちなみにどのくらいで?」
「一泊《自主規制》コルだ。」
「まじかよ。」
と言いつつ食事を堪能している俺に
「あ、ちょっといいすか団長。」
「いいが、席をはずそうか?」
どうしてお前はそんなに頭が低いんだ。団長なんだよな?
男女の方々がそういう。
そして、その中の一人が、
「あの、キョウヤちゃんって、大先生ですか?」
その一言で、俺は吹きそうになった。
「げほっごほ!!ゴメンもう一回言ってくれ。」
「キョウヤちゃんって大先生ですか?」
この際ちゃん、には突っ込まないでおこう。
「……なんでだ?と言うかお前誰だ?」
「やっぱりですか!私です、ヒュウガです。」
俺、そうだ、と一言も言ってないけど。まあそうだからいいんだけどさ。
「俺はクロムです。お久しぶりです。まさか先生が女とは……」
「え…俺違うんだけど、男だけど。」
「ほう…キキョウくんが大先生とは。」
「団長、大先生はベータのとき、俺たちに基礎や戦い方を教えてくれたんですよ!」
「それは楽しみだ。頼むぞキョウヤくん。」
「いや、断れないだろ。」
「ひさしぶりっすね。カシューですよカシュー!あのカシューっすよ!」
お前はカシュカシュ詐欺か。
「俺はそこまでたいしたことしてないが」
「僕はシュイルです―――
「私はミルで―――
「俺はジーク―――
「とりあえずおちつけええええええ!!!」
抜け出すのは当分後になりそうだ。ゴメンキリト。
後書き
まさかのKOBに入るようです。
このペースだと一層クリアは遠そうです……
※四月六日 修正
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