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ヘタリア大帝国

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TURN59 大統領発狂その三

「だからね」
「そういえば確かに」
 ハンナもここでルースの異変に気付いた。
「今は普段とは違うわ」
「君達は何だ!」
 そのぶつぶつと言っていたルースが遂に叫びだした。これもこれまでの彼にはなかったことだ。
「何なのだ君達は!」
「国務長官よ」
「財務長官です」
 二人は戸惑いを隠せないままルースの問いに答える。
「それが何か」
「どうかしたのですか?」
「そうだな、私の部下だな」
 ルースが言うのはこのことだった。
「それなら私の言うことを聞くのだ!」
「だからもうこれ以上の戦闘は」
「無駄な損害を増やすだけです」
「将兵の命、そして国力を消耗するだけよ」
「勝利は望めなくなっていますから」
「いや、ガメリカは絶対に勝つ!」
 ルースは顔さえ変わっていた、憤怒のものになり血管が浮き出ている。
「何があってもだ!」
「いや、待ってくれないか?」
 流石にアメリカも困惑して二人の前に立つ様にルースに言う。
「僕はいいって言っているんだ、だからここは」
「君の為を思って言っているのだぞ!」
「もういいんだ!ここは講和だ!」
「そうよ、日本と手を結ぶべきよ」 
 アメリカ妹も二人の側に立つ。
「戦うことは止めないと」
「本当に落ち着いてくれ、プレジデント」
「大統領の特別権限を発動する!」
 祖国達にも言われルースは完全に切れた。そして。
 大統領に国家の全ての権限を一時的に委任するというこの切り札を出した。そして。
「国家総動員令だ!全ての財閥の資産も全て集中させる!」
「馬鹿な、そんなことをしても」
「もう無理です」
 ハンナとクーはまだ二人に言う。
「講和しかないのよ」
「落ち着いて考えて下さい」
「既に発動した!」
 だがルースは切れたままだった。
「君達も私に従ってもらおう!そうでなければ」
「駄目だ、これは」
 流石にアメリカも匙を投げた、そして。
 自身の妹とハンナ達に顔を向けてこう告げた。
「テキサスに逃げよう」
「そうね、今はどうしようもないわ」
「今のプレジデントではお話もできません」
「だからここは」
「一時」
「脱出ルートはあたしに任せて!」
 アメリカ妹が真っ先に席を立ちハンナ、クーのそれぞれの手首を彼女の両手で掴んで立たせた。
「逃げるよ!」
「ええ、それじゃあ」
「今は」
「行くぞ!」
 アメリカは席を立った二人の前に出てルースから庇った、流石に銃は携帯していないだろうが危機を察してそうしたのだ。
「キャロルのところまで逃げるぞ!」
「兄貴も急いで!」
 アメリカ妹は既に二人を連れて部屋から逃げ出そうとしている。
「いいね!」
「わかった!」
「待つのだ!逃がしはしない!」
 ルースも席を立ち叫ぶ。
「衛兵の諸君!祖国氏と長官達を保護するのだ!」
「甘いね!この官邸のことは誰よりも知ってるんだよ!」
 アメリカ妹はルースより遥かに長く、それこそこの国ができてからずっとこの官邸に出入りしている、だからこそ全てを知っているのだ。
 だからこうルースにも言えた、それでだった。
 
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