久遠の神話
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第三十八話 神父その十
「彼等ともまた」
「四人として完全にチームを組まないといけないですね」
「私は戦いを止めたいです」
この考えは変わらなかった。言った大石だけでなく上城も。
「それならです」
「団結もまた」
「はい。ではいいですね」
「わかりました。それに」
「それにとは?」
「私達はお互いに信頼し合わないといけません」
団結、それ故にだった。
「何があろうとも」
「絶対にですね」
「私は今から例え何があろうとも上城君を信じます」
揺るがない信頼、それを持つというのだ。
「上城君はどうされますか」
「僕もです」
こう答えるのが上城だった。彼とて愚かではない。信じられる人間とそうでない人間の違いがわかる。そして大石はどちらかというと。答えはもう出ていたのだ。
「神父さんを信じさせてもらいます」
「では」
「はい、ではですね」
「後で神の御前に参りましょう」
「礼拝堂ですか」
「神の御前で誓う」
神父らしい言葉だった。実に。
「それは即ち絶対の誓いですから」
「破られることはないのですね」
「その通りです。では」
「はい、後で」
「コーヒーを飲んでからですね」
今飲んでいるコーヒーをだ。飲み終えてそれからだというのだ。
「そのうえで」
「では」
二人で話す。そうしてだった。
二人はコーヒーの後で実際に十字架のあるあの礼拝堂に戻った。そこでその十字架にいる主の前で向かい合って握手をした。そうしたのだ。
そのうえで誓い合った。上城はその誓いの後で大石に別れを告げ教会を後にした。
その彼にだ。樹里がこう言ってきた。
「あのね」
「何かな」
「あの神父さんと上城君だけれど」
「信じ合うことにしたってことかな」
「今さっきそうしたけれど」
だがそれでもだとだ。樹里はその感じたことを彼に話す。
「前からよね」
「うん、神父さんは幼稚園の先生だった頃からね」
「信じられる人だったの」
「そうだよ。嘘は絶対に言われなかったし」
それに加えてだというのだ。
「真面目で公平でね。そうした人だから」
「何か本当に神父さんなのね」
「多分神父さんでも」
その職業であってもだというのだ。
「あそこまで真面目な人は滅多にいないよ」
「だからなの」
「うん。信用できる人だよ」
「一緒に戦うにあたって」
「絶対にね。背中を任せられるっていうのかな」
戦いにおいて使われる言葉もだ。上城はあえて言ってみせた。
「そう言うのかな」
「背中を任せられる」
「うん、そういう人だから」
信用できるというのである。
「僕は正直言って嬉しいよ」
「その人と一緒に戦うことになって」
「一人で戦いを止めるつもりだったけれど」
孤独でもだ。それでもだと考えていたのだ。
「神父さんがいてくれるのならできるよ」
「絶対に?」
「うん、絶対にできるよ」
こうだ。上城は樹里に確かな声で答える。
「二人だと。それに」
「工藤さんと高橋さんにもお話して」
「四人だと大丈夫だよ」
「工藤さんと高橋さんもよね」
「あの人達も信頼できるしね」
「悪い人達じゃないし」
それに加えてだとだ。樹里も話す。
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