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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第十二話

 
前書き
タグの【戦争】が全く無い件について。

 

 
 「○○様!危ない! 」

 とか言って護衛対象の前に立ちはだかったり突き飛ばして、自らは矢を受ける。
物語でよくあるこんなシーン。
 こういうのを果たせるのが弾除けって呼ばれる人たちの見せ場ですよね。
 レンナートさんに限ってはこういうのは無理かなぁと思う身のこなしの鈍さです。

 ……死んでしまった人の遺体を盾代わりにする。
 そういうシーンも確かにありますね。
 そういう意味ならば問題なく………ベウレク卿は間違ってませんでした。

 試しに手合わせをしてみたのだが、うん、子供が大人をいじめちゃいけないよね。
 いや、だが、仮にも王子相手だ。
 少しでも怪我させちゃまずいと思って手加減をしてくれている!そうに違いない!

 だが、鍛えることは鍛えているのは間違いなく、トップスピードこそ鈍いが重い荷物を携えて長時間走ることが出来るというのは立派なものだ。
 おそらくこれは馬に乗った主人に従って戦場を走り、主人が武器を落としたらすぐに替えの武器を渡す、主人が落馬したらひきずって戦場を離脱する、などの純然とした従兵としての能力に特化しているのだろう。
 そう思うと尊敬の念が湧いてきました。
 ただ、本人はいつか騎士になる!という夢をお持ちのようなのです……
 上級騎士ならば従騎士に戦ってもらい自分は飾りのようになることが出来るが、彼は現実の俺のように平民出なのでそういうことも出来ないだろう。

 筋力はあるけれど、切り結ぶ反射神経には難がある。
 ならば弓術・射撃術はどうであろうか、銃でも発明出来れば竜騎兵っていうのもある。
 呼び方がまぎらわしかったです、この世界にはワイバーンに乗って戦う竜騎士が居るんでした。
 とりあえず、弓はどうかと将来の弓の達人に頼ってみましょうか。
 もと関係者ですしね。

 


 「殿下ぁ、弓はおれの性には合わないみたいでっす 」
 レンナートさんの弓適正を見てもらおうとドリアス伯爵の居館の裏庭にある練習場で試しに撃たせてもらったのだが惨憺たる有様でした。

「こう、撃つのです! 」

 セルフィナさんがあっという間に矢筒の矢を撃ち尽くした。
 なるほど【突撃】のスキル発動って感じですね。
 短弓から放たれた矢は5本、的には全て当たりその中の1本は真ん中を貫いていた。

「レンナートにも何か得意なことがあれば 」
 セルフィナさんも困ったようなおかしいことを我慢しているかのような口ぶりで言う。

「姫も御存じでしょう。おれは寝坊とメシ食うことだけは得意です! 」
 レンナートさんがそう言うと、俺もセルフィナさんもおかしくなって笑いだした。

「それにしてもセルフィナさまの腕前は見事ですね 」
 最近の俺は、たまに彼女を名前で呼ぶことにしていた。

「もっと強い弓を引けるようにしないと当たっても鎧で止まってしまいますから、まだまだですわ 」
 話している間に的に当たったり自分で外した矢を拾い集めてレンナートさんが戻ってきた。

「そして、強い弓を引くと・・・こうですもの 」
 取り替えた弓を構えて、彼女が顔を真っ赤にして引いた弦は矢を飛ばすには明らかに足りない。

「いずれ引けるようになりますよ 」
 俺がそう言うと。

「それは嬉しくもありますが、そうなると腕が太くなってしまいそうです。そうなってしまったら殿下に呆れられてしまいそう 」
 先程力いっぱい力を入れて真っ赤になった顔よりも頬を赤らめてセルフィナさんは言った。

「草原を駆けている馬も鹿もあれほどの早さで駆けるのに、その脚は細く美しいです。
姫があの弓を引けるようになった時、今よりもしなかやかで美しくなられているとわたしは確信しております 」
 我ながらキモいこと言うなとは思ったのだが、

「ミュアハさまは、おじょうずで困ってしまいます。」
 セルフィナさんは顔をさらに赤くしてもじもじしていた。

「やや、姫を困らすとは大悪党、こらしめねばなりますまい。」
 俺は笑ってそう言うと軽く握り拳を作って自分の額を軽くこずいた。

「まあ、ふふふ。」
 セルフィナさんのかわいらしい笑い声が耳に心地よかった。




 そのあとしばらくしてドリアス伯爵の居館に早馬が訪れた。
 何かあったのかと思い、セルフィナさんにお礼を述べて館を辞去し、レンナートさんを伴って王宮へと戻るとそこは騒ぎの渦であった。


 ミーズ城陥落、思いもよらない悲報に王宮は揺れていた。
時はグラン歴747年

                                        →つづく

 
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