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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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閑話ー始まりと完全魔法の双激
  44.激闘

 
前書き
第44話投稿!!!

激突するシュウとユミ!!
 

 


「本気でやる気なの、シュウくん?」

「当たり前だ!結美を一回ギャフンと言わせないと気が済まない」

シュウくんは、いつもは見せない怒ってるような楽しむような表情でデュエルを行う、アインクラッド第十四層にある小闘技場へと向かって行く。

せっかくデュエルを行うのだからと結美さんがプレーヤーたちに声をかけたようだ。

(ALOで結美さんって名の通ったプレーヤーなのかな?)

小闘技場が見えてきた。

「げっ!」

「うそ!」

小闘技場の前には大勢のプレーヤーたちで溢れかえっていた。

「これ、結美のやつが?」

シュウくんは、肩を落とす。

「シュウくん......?」

シュウくんは背中に背負われている片手剣と槍をしまい着ている黒いコートを赤いコートに変える。

どうやら変装をしているようだ。

「ほら、行くぞ、リーファ」

「待ってよ、シュウくん!」

小走りでシュウくんは小闘技場の中へと入って行く。シュウくんを追って小闘技場に入る前に横目でプレーヤーたちが並ぶ列を見る。
そこにある売店の看板の文字に目がいってしまう。

【スペルマ......】

その続きは、プレーヤーに隠れて見えなかった。




「ふぅ〜、何とかばれずに入れたな」

さすがに武器をしまってコートの色まで変えたんだから気づくやつはいなかったな。

「シュウくん、頑張ってね」

「おう!」

リーファに向かい拳を出し、その拳にリーファも合わせて当てる。




闘技場に出てまず目に入ったのは、会場一面を埋め尽くすほどのプレーヤーの数だ。

「よくもまぁ、こんなに集めたもんだな」

そして闘技場の中心に立たずむ一人の少女を見る。

「ようやく来たね、アッくん。待ちくたびれたよ」

笑顔で俺の前に立つ青色の髪のセミロング、白を主体とした服装を見に纏うウンディーネの少女......結美。

「それじゃあ、さっそく始めようか」

「ちょっと待った!」

「なに、アッくん?」

「お前が本気を出していいっていうなら、俺は本気を出すが.....どうする?」

「私、相手に本気を出さずに勝てると思ってるの?まぁ、本気出しても勝てないだろうけどね」

自信満々に結美がまた無い胸を張る。その態度にイラっした。

「......後悔しねぇな」

自分でもわかる不敵な笑みを浮かべる。メニューウインドウを開き、いつもの俺の格好へと戻していく。黒いコート、背中に背負う金色の槍と漆黒の片手剣。

その姿を見て結美の動きが止まり、観客のプレーヤーたちが声をあげる。

「う......うそ......アッくんが.....シュウ!!」

「どうした?俺の正体を知って怖気ずいたか?」

バカにしたように俺が結美に言うと.......

「バカじゃないの!私だってALOでの通り名くらいあるんだよ」

(結美の通り名?そう言えばこいつのプレーヤーネームって?)

「まぁいいわ。とりあえず始めましょ!」

結美がメニューウインドウを開き、デュエルの申し込みを行っている。すると俺の目の前にシステムウインドウが出現する。

【Archer is challenging you】

(アーチャー?.......まさか!)

「......スペルマスター!」

「そうだよ。わたしの通り名は《スペルマスター》だよ」

《スペルマスター》って言ったら、その全てのスキルを魔法特化にし武器を持たず魔法のみで戦うプレイヤー。その特徴は、支援魔法を使うのではなく魔法を攻撃魔法ばかりを使うところから全プレイヤー中、最強のメイジという声もある。

(まさか結美だったなんて)

俺はシステムウインドウに表示される《全損決着モード》を選択する。今回のルールとし地上戦のみで翅を使うのはなしとなった。というか新生アインクラッド内部では、飛行することができない。SAO時代では、殺し合いとなるがALOではただのデュエルだ。

アーチャーがOKを押し、システムウインドウが消え、代わりに十秒のカウントダウンが始まる。

俺は背負われる片手剣を抜く。だが、アーチャーは武器を抜く気配がない。

カウントが0になった瞬間、【DUEL】の文字が浮かび上がりそれと同時に俺は全力で地面を蹴り上げた。

(まず先制攻撃!!)

片手剣重単発技《ヴォーパル・ストライク》物理三割、炎三割、闇四割
ALOのソードスキルには、物理攻撃の他に属性攻撃が追加された。
赤い光を纏った片手剣を突き出しアーチャー目掛けて数メートルの一直線に突進。地面を蹴り上げた勢いとソードスキルによるシステムアシストで威力を増す。さらに《ヴォーパル・ストライク》の本質の刀身の2倍のリーチを持つ突進を止める術はやつにはない。

と思ったのが間違いだった........いや、あまかった。

この時、俺はまだ結美の.......アーチャーの通り名《スペルマスター》の真の力を知らなかったのだ。

《ヴォーパル・ストライク》の突進がアーチャーにあたる寸前に地面から何かが浮上してくる。それに邪魔され上空へと投げられる。

「な....なんだ?」

上空に放り投げられた俺は上空で体勢を立て直し状況を把握する。

地上を見ると俺がさっきまでいた場所に巨大な土の壁が出現している。この魔法は土魔法の障壁。物理攻撃では、破壊がほぼ不可能な面倒な障壁だ。

(チッ!だが、この上空に上がったのを利用させてもらう!!)

さっきの攻撃でスキルキャンセルされたため、技後硬直が起きることはない。
片手剣を頭の上まで振り上げそのまま真下に振り下ろす。

片手剣垂直降下技《デッドフォール》物理六割、闇四割
アーチャーの頭上目掛けて片手剣を振り下ろす。重力による落下とソードスキルの落下の加速!

(この速度なら詠唱も間に合わない!!)

「おりゃぁぁぁあっ!!」

破壊音が響き、地面に到達する。
《デッドフォール》の一撃をまともに受ければ、HPの三分の一は削り取ることができる。

だが、俺の剣には斬った感触が全くない。

「やるねぇ、アッくん」

その声は俺の後ろ、障壁の向こうから聞こえる。

「な、なんで!」

「《スペルマスター》を舐めたらダメだよ、アッくん。アッくんが斬ったのは、私が闇魔法で作り出したダミーだよ」

(いつすり替えたんだ!俺が上空に放り投げられた間か!?)

俺が上空にいたのは、ほんの四秒程度。その間にスペルを詠唱して自分は隠れるなんてそんなこと出来るのかよ........

俺はだいぶアーチャーの実力を下に見ていたようだ。

それなら..........

「アーチャー.....俺はお前をあまく見ていたようだ。だが......ここから本気だ!」

《デッドフォール》の技後硬直が解けた瞬間に背中に背負われている槍を抜き、槍を後ろに引き、片手剣を肩へと担ぎ上げる。システムの起動を感じた瞬間、槍を勢い良く前へと突き出す。

槍突撃技《ゲイボルグ》物理八割、聖一割、闇一割
壁に槍が衝突した瞬間、肩に担がれた片手剣を前へと突き出し、壁へと刃を激突させる。

片手剣突進技《レイジスパイク》
通常破壊不可能な土属性魔法を破壊する途轍もない威力を生み出した突進に障壁の向こうにいたアーチャーが驚きの表情をする。
その瞬間、技後硬直が起きる前に再び片手剣を肩へと担ぎ上げる。

片手剣突進技《レイジスパイク》
《レイジスパイク》をアーチャーが避けた瞬間に左手で持っている槍でアーチャーをなぎ払う。

「くっ......」

少し吹き飛ばされたアーチャーがすぐに体勢を立て直し詠唱を始める。

「遅ぇよ!」

槍を前に突き出し地面を蹴り上げアーチャーに突進。だが、想像以上に詠唱が速い!

炎の球が三つ俺目掛けて飛んでくる。

「くっ!」

炎の球を後ろに飛び回避。土煙があがりアーチャーの姿が消える。

この間にもあいつは詠唱をする。
アーチャーの詠唱能力は俺の想像をはるかに超えている。

「これならどうだ!」

槍を右手に持ち替え、そのまま土煙舞う中に後ろへと引き絞り槍を投げる。

槍投撃技《レイヴァテイン》
土煙の壁を吹き飛ばし槍が飛んでいく。土煙が消えた先にアーチャーの姿が見えない。

「どこだ!」

「上だよ」

声がする上を見上げると太陽の光の中に人影と無数の球が飛んでくる。

「クッソ!!」

アイテムストレージから槍を新たに出現させ、槍を上にかかげ頭上で回す。

(これで防げるはずだ!!)

槍回転技《ブリューナク》

「そうくると思ってたよ、アッくん」

その声とともに無数の球は、氷柱へと姿を変え凄まじい勢いで俺の体に突き刺さっていく。

「クッ........クッソ.....」

現在の俺のHPは、レッドゾーンに突入寸前のイエローゾーン。このままいけば俺は結美に負ける。

上空にいたアーチャーは俺の前に現れる。

「アッくんの動き.....ううん。シュウの使うソードスキル、動き、戦術はいつか倒すために研究してたからアッくんが私に勝つのは無理だよ」

「そうか」

槍を背中に背負い戻し、片手剣を構える。

「アッくん.....どうして手刀を使わないの?」

「俺は手刀はつかわねぇ」

「へぇ〜.......何それ?でも本気出さなきゃ私に勝つなんて出来ないよ」

「できるさ.......」

口元が少し緩む。片手剣を肩に斜め向きに担ぎ上げ、真っ直ぐアーチャーを見る。

刹那!!
地面を蹴り上げ、片手剣を突き出しアーチャーに突進。

「その技じゃ私はとらえられないよ」

俺の突進を軽く横に避け、詠唱を始める。確かに《レイジスパイク》を放ってる最中に詠唱するのは、いい考えだ。だが、それは俺が使った技が《レイジスパイク》だったらの話だ。

突進を避けるのは想定ずみだ!

「おりゃぁぁぁあぁぁ!!」

突進する体の方向を右足を主軸に急転換させアーチャーの方向に体を向け片手剣を振り下ろす。続けて振り上げ、もう一度振り下ろし、最後に上向きの突きを放つ。

アーチャーはなす術もなく俺の剣技を受け吹き飛ばされる。

「うっ...... なんなの?そのスキル......見たことないよ」

「当たり前だ。これは俺が作り出したソードスキル《ギガレイジ》だからな」

片手剣五連撃技《ギガレイジ》
突進から四回上下に斬り込む俺が作り出したOSSだ。

ALOの新規アップデートで導入された自らでソードスキルを作ることが出来るシステム、OSS(オリジナル・ソードスキル)。だが、OSSを登録するには、『本来システムアシストなしには実現不可能な速度の連続技を、アシストなしに実行しなくてはならない』という矛盾を越えなければスキルを作ることは出来ない。

俺は片手剣を突き出しアーチャーに向ける。

「これで終わりだ」

「アッくんに私が負けるわけないじゃん!」

アーチャーが詠唱しだす。すると目の前に土障壁が二つ出現する。

「終わるのは、アッくんだよ!」

土の壁の周りから炎の球、氷柱が飛んでくる。

「.......ここで負けたらかっこ悪いじゃねぇかよ」

俺は障壁に向かい全力で走る。そして垂直の障壁の壁を走る。

《ウォールラン》

炎の球、氷柱を避けながら壁を走り、アーチャー目掛けて突っ走る。

「アーチャー!!」

壁を走り抜け、アーチャーの上空に飛び出す。
さっきと同じ手が効くかはわからないがこれしか俺にはない。片手剣を頭の上まで振り上げそのまま真下に振り下ろす。

片手剣垂直降下技《デッドフォール》物理六割、闇四割
さっきのように重力とシステムアシストの加速でアーチャーをぶった斬る。

「おりゃぁぁぁぁっ!!」

「あまいよ、アッくん!!」

アーチャーは上空の俺目掛けて炎の球を放つ。

「クッソ!」

ソードスキルの最中に炎の球を回避する術があるわけない。

(また負けるのか.......まだだ!)

片手剣を手放し背負われている槍を手に持ち飛んでくる炎の球、目掛けて突進する。

槍は完璧に炎の球の中心をとらえ炎の球は姿を消す。

「これで終わりだ!!」

上空で体を捻り、槍を後ろへと引き絞りアーチャーの頭上めがけて投げる。

槍投撃技《レイヴァテイン》
その槍はアーチャーの頭を貫通し地面に突き刺さる。そしてアーチャーは光の欠片となり消滅した。




「も〜!ひどいよ、アッくん!!」

デュエルが終わった小闘技場の控え室でアーチャー.....結美の声が響く。

「悪かったって。でも、あれしかなかったんだから仕方ないだろ」

「それでも女の子の頭に槍を突き刺すなんて酷すぎるよ!」

「あれは酷いよ、シュウくん」

リーファも真剣な表情で俺を見て怒っている。

「う....うっ......。そ、そのゴメン、結美!」

深々と頭を下げ謝罪する。勝ったのに謝罪とかなんだよこれ........

「別にいいけどさ」

結美が悔しげな表情をしているのが見なくてもわかる。

「強いね、アッくん......ううん。シュウ!」

アーチャーは、俺を見上げると手を差し出す。その手を俺は笑顔で握りしめた。 
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