スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第百二十四話 憎しみの環の中で
第百二十四話 憎しみの環の中で
旗艦のハルルの部屋にだ。誰かが入って来た。
その彼を見てだ。ハルルはこう言った。
「総司令」
「うむ、邪魔をする」
「何か」
「女らしいな」
その部屋を見ての言葉だった。
「いい部屋だ」
「お戯れを」
「本当だ」
ドバは真剣な顔でこう娘に話す。
「否定するつもりはない」
「左様ですか」
「傷はいいのか」
ドバは娘にさらに問うた。
「それはもう」
「大したことはありません」
ハルルは少し目を閉じて父に答えた。
「御気になされずに」
「そうか。ならいいが」
「父上」
ハルルは思わず彼をこう呼んだ。そのうえでの言葉だった。
「御言葉ですが」
「何だ」
「弱気は禁物です」
こう告げるのである。
「それは」
「馬鹿を言え」
ドバは娘の言葉をこう言って否定した。
「あの者達が何処に逃げようともだ」
「我々はですね」
「そうだ。必ず追い詰める」
ドバも引いてはいない。
「何としてもな」
「それはわかります」
「では何故言う」
「あのロゴ=ダウの艦への恐れを憎しみをです」
その二つをだというのだ。
「それを忘れては勝てはしないかと」
「それは違うな」
「違いますか」
「私はバッフクランを守るという正義」
ドバが言うのはこのことだった。
「我等に大義名分があるから戦っておる」
「それがあるからですか」
「そうだ」
「それではです」
ハルルはドバの話を受けてだ。あらためて話すのだった。
「カララがです」
「あれがどうした」
「異星人の子を宿した」
その言葉にはだ。ドバの眉がぴくりと動いた。
だが感情は抑えてだ。娘の話をさらに聞くのだった。
「その時もでしょうか」
「では聞こう」
感情を抑えながらハルルに問う。
「御前があの者達を追撃する指揮を執るのはだ」
「はい」
「あれがいるからか」
こうハルルに問うのである。
「カララがいるからか」
「あの子はです」
ハルルは妹をこう呼んで話すのだった。
「この事件、戦いの元凶であるにも関わらず」
「それでもだな」
「はい、異星人との間に子を宿しました」
ハルルの目に赤い炎が宿っていた。鈍く燃える炎だ。
「アジバ家の血のつながりを持った女がです」
「異星人の男とつながってだな」
「子を産む。このことがです」
ハルルはその鈍く燃え盛る炎を背に話す。
「許せることでしょうか」
「だからか」
「はい、だからです」
まさにそれが理由だというのだ。
「私はあの娘を討ちます」
「そうするか」
「父上」
父にだ。さらに話すのだった。
「私は妹を殺すのです」
「そうか」
ドバは一旦瞑目してからだ。娘に話した。
「よく決心してくれた」
「有り難き御言葉」
「これでアジバ家の血を汚さずに済む」
「いいえ」
だが、だった。ハルルはここでこう言うのだった。
「私はアジバ家の血統や名誉はです」
「そのことは考えていないのか」
「はい、それでカララを殺すのではありません」
それとは違うというのだ。そしてだ。
その理由をだ。燃え盛る炎と共に話すのだった。
「私は悔しいのです」
「悔しいというのか」
「そして憎いのです」
炎はいよいよ燃え盛っていた。
「カララが」
「あれがか」
「あの娘は好きな男の子を宿せました」
完全にだ。女としての言葉だった。
「しかし私はです」
「ダラムのことか」
「私はダラムの遺言さえ手に入れられませんでした」
自分で話すのだった。
「同じ姉妹でありながら」
「そう言うのか」
「はい、しかしです」
「しかし?今度は何だ」
「誤解なさらないで下さい」
「何を誤解するというのだ?」
「私の復讐」
それをだというのだ。
「ダラムの復讐ではなくです」
「我々のだな」
「はい、ロゴ=ダウの異星人全てへの復讐です」
復讐をだ。それにあげての言葉だった。
「その為に軍の指揮を」
「執ってくれるか」
「そうさせて頂きたいのです」
「無論だ」
ドバも娘のその言葉を受けて言う。
「では執ってもらおう」
「そうして頂けますね」
「何度も言うがだ」
「はい」
「私は御前を女として育てた覚えはない」
このことを今も告げるのだった。
「それではだ」
「はい、総司令閣下」
「吉報を待つ」
傲然とさえして娘に告げる。
「是非共な」
「はっ、それでは」
部屋を去るドバをバッフクランの敬礼で送る。それが終わってからだ。
ハルルは弱い顔になってだ。彼の名を呟くのだった。
「ダラム・・・・・・」
彼の名を。そしてだった。
「助けて・・・・・・」
一人になると呟くのだった。そうしたのである。
ソロシップの艦内ではだ。
プルとプルツーがだ。ルウをあやしながら笑っていた。
「何かこうしているとね」
「そうだな」
二人は笑顔で話していく。
「私達も何か」
「御姉さんみたいだな」
「そうだな」
その二人にだ。ハマーンが微笑んで話してきた。
「思えば私もだ。ついこの前までだ」
「あっ、ミネバちゃんをよね」
「育ててきたのよね」
「そうだ。ミネバ様が赤子の頃からだ」
育ててきたというのだ。
「思えば懐かしい話だ」
「そうなのか。ハマーンさんにもそういった時があったのだな」
今度はナタルが来て話す。
「それは今もなのか」
「そう。今もだ」
それを否定しないハマーンだった。
「私はまだ二十一だがな。それでももう母親なのかもな」
「それは羨ましいことだな」
依衣子も来て話す。
「私も何時かこうした子供が欲しいものだな」
「何だ?クインシィがそう言うのか?」
このことにだ。シラーが少し驚いて言う。
「どうにも意外だな」
「私もまた女なのだ」
これが依衣子の言葉だった。
「それならだ」
「そういうことか」
「そうだ。それでだが」
ここでまた言う依衣子だった。
「ルウはマイにもなついているな」
「そうだな」
彼女のその言葉にだ。シラーも気付いた。
見ればだ。実際にマイに笑顔を見せていた。
「だあだあ」
「私の方に来たのか」
「この子は」
「そうね」
アヤとセシリーがそれを見て笑顔で話す。
「マイのことがね」
「好きみたいね」
「どうすればいいんだ」
マイは戸惑いながら言った。
「こうした時は」
「ほら、おいでルウ」
アヤはまずはルウに笑顔で言ってルウを導きだ。そしてだ。
抱き寄せてだ。笑顔でこう言うのだった。
「よしよしい」
「だあだあ」
「こういう時はね」
ここであらためてマイに話すのであった。
「優しく抱っこしてあげればいいのよ」
「抱っこ?」
「そうよ。クロやシロを抱っこするのと同じよ」
シモーヌがマイにわかりやすく話した。
「あの時と同じよ」
「ああした感じでいいのか」
「それならできるわよね」
「うむ、できる」
マイはこくりと頷いて答えた。
「ああした感じならな」
「それなら。やってみて」
またアヤが妹に話す。
「今からね」
「私でもできるのだろうか」
「大丈夫よ」
不安がる妹にまた話した。そしてだ。
自分が抱いているルウを差し出してだ。こう言うのだった。
「ほら」
「う、うむ」
マイも頷きだ。そうしてだった。
ルウを抱き締めてみるのだった。
「私でもできるのだな」
「だってマイも女の子だから」
「それでなのか」
「そうよ。それでどう、ルウは」
「温かい」
まずはこう言うのだった。
「赤ん坊というのは」
「そうでしょ。温かいでしょ」
「それにだ」
「それに?」
「こんなに小さいんだな」
こうだ。しみじみとなっていた。
「そうなんだな」
「不思議かしら」
「ああ、とても」
まさにその通りだと姉にも返す。
「こんなに小さいのに」
「けれどね」
そのマイにだ。アヤは優しい声で話す。
「人は皆生まれた時はね」
「こうなのか」
「そうよ。赤ちゃんなのよ」
話すのはこのことだった。
「そうなのよ」
「というと」
それを聞いてだ。マイは思わずこんな話をしてしまった。
「リュウやライやアヤも」
「私もなのね」
「皆赤ちゃんだったのか」
「当たり前じゃない」
答えたのはアーシュラだった。
「それはね」
「ならゼンガー少佐や」
いきなり濃くなった。
「バサラやドモン達もか」
「若しかすると」
「違うかもな」
彼等についてはだ。プルもプルツーも断言できなかった。
「アズラエルや不動司令やサンドマンもなのだろうか」
「ひょっとしたら」
「あの人達は」
「人間かどうかすら怪しいし」
「ちょっと以上に」
「マスターアジアやシュバルツ=ブルーダーもか」
より濃くなった。
「あの人達もか」
「そんな筈ないでしょ」
アスカがそれを真っ向から否定した。
「あの人達は妖怪よ。変態なのよ」
「変態だからか」
「だから絶対に赤ちゃんじゃなかったのよ」
「じゃあどうして生まれたんだ?」
「自然発生なんでしょ」
アスカはよりによってこんなことを言った。
「ボウフラみたいに湧いたのよ」
「そうなのか」
「そうよ。絶対に違うから」
「そうか。あの人達は違うのか」
「そうじゃないって言えないのがね」
アヤもだ。彼等の出生については苦笑いだった。
「困ったわね」
「グン=ジェム大佐はまだ信じられない訳じゃないけれど」
リンダが言う。
「けれどあの人達は」
「そうね。ちょっとね」
アヤはまた言った。
「信じられないわね」
「あっ、ルウ今度は」
その間にだった。ふとフレイが言った。
「カガリのところに来てるわね」
「わ、私か」
「そうみたいよ。この娘どうやらね」
「私のことが好きだというのか」
「こいつ将来が心配だな」
シンがいきなり出て来た。
「女の趣味最悪になるな」
「おい待て」
カガリはそのシンに即座に言った。
「私が最悪だっていうのか」
「当たり前だろ。金髪の猿じゃねえかよ」
「また言うか、私が猿だと」
「ああ、猿だよ」
シンはいつも通り引かない。
「どっからどう見てもよ。エテ公じゃねえかよ」
「貴様、ルウの前とはいえだ」
「何だ!?やるってのか?」
「今日という今日はだ!容赦はしない!」
「ああ、やってやらあ!」
まさにだ。売り言葉に買い言葉だった。二人は取っ組み合いの喧嘩に入った。
その二人を箒で端にやってだ。皆そのルウを見ながら話す。
「何はともあれだ」
「あっ、今度はレーツェルさんですか」
「何か意外ですね」
「私とて人間だ」
レーツェルは微笑んで答えた。
「子供は好きだ」
「・・・・・・・・・」
「少佐もいらしたんですね」
アスランはゼンガーに対して言った。
「ここに」
「そうだ」
「まさか少佐も?」
「そうかもね」
ルナマリアとメイリンはそのゼンガーを見ながら話す。
「ルウを」
「抱っこしたいのかしら」
「そうじゃないかな」
アーサーがその二人に応える。
「何かそんな感じに見えるけれどね」
「本当に強い人は女の人や赤ちゃんに優しいっていうけれど」
「それかしら」
「少佐ならあるかも知れないな」
タスクは二人のその言葉に頷いた。
「それも」
「そうだな。少佐は本当に強い人だ」
それはユウキもわかっていた。
「それなら」
「ゼンガーはだ」
レーツェルは話す。
「赤ん坊の笑顔を大切さを考えているのだろう」
「赤ん坊のですか」
「その笑顔をなんですか」
「そうだ。この世で最も弱き者」
それこそが赤ん坊だというのだ。
「それを守る為に我々の戦いはだ」
「あるんですね」
「守る為に」
「そう考えているのだろう」
こう話すレーツェルだった。
「今そのことをな」
「そうなのね」
「それで少佐は今は」
それを聞いてだ。カーラとレオナも言った。
「少佐はそこまで考えて」
「ルウを見ているのね」
「少佐らしいね」
「そうね」
リョウトとリオはそのゼンガーを見て話す。
「それじゃあ僕達も」
「そうした風に考えていかないといけないわね」
「そうね」
クスハは彼等のその言葉に頷いて言う。
「その通りよね」
「クスハ」
レーツェルは今度はクスハに声をかけた。
「君は子供が好きなのかい?」
「はい」
こくりと頷いてからだ。クスハは話した。
「小さい頃はです」
「その頃からか」
「保母さんになりたいと思っていました」
少し照れながら話すクスハだった。
「そう思っていた時もありました」
「そうだったのだな」
「実は」
「わかった。それでブリット」
レーツェルは今度はブリットに話を振った。
「君はどうなのだろうか」
「俺ですか」
「そうだ、君はどうなのだ?」
「まあそれは」
戸惑いながらだ。ブリットは応える。
「まだそういうことは」
「そういうことは?」
「考えていませんから」
「あれっ、ブリット君」
クスハがそのブリットに声をかける。
「顔が真っ赤だけれど」
「えっ、そうなのか?」
「ええ、どうしたの?」
「その、それは」
「いいものだな」
その二人を見てだ。レーツェルは微笑んで言った。
「若さというものは」
「何はともあれだな」
「そうよね」
ジェスとパットが話す。
「ルウが機嫌がいいのはな」
「いいことよね」
「心が少し晴れるよな」
「そうそう」
ヘクトールとミーナも話す。
「洒落にならない状況が続いてるけれどな」
「それでもね」
「とりあえずは心が柔らぐ」
「それがいいですう」
アーウィンとグレースだった。
「今は連続してDSドライブをかけているがな」
「その中でですけれど」
「こうして彼等を混乱させようとしているがだ」
またレーツェルが話す。
「正気休めだな」
「今この銀河の半分近くにバッフクランがいるんだ」
カミーユがこのことを話す。
「それじゃあ奴等の勢力圏から逃れるのは難しい」
「バッフクランをかわしても宇宙怪獣がいるわ」
カーシャが話すのは彼等のことだった。
「だから結局は」
「僕達がこうして陽動になっている間は」
万丈が話す。
「殴り込み艦隊には宇宙怪獣が来ないにしても」
「中々難しい話だ」
マイヨが言った。
「それもな」
「イデの力は」
竜馬が話す。
「カララさんを守った光を見ていると」
「具体性を帯びてきたな」
隼人はこう結論を出した。
「よりな」
「つまりそれは」
「あれだってのかよ」
武蔵と弁慶は隼人の言葉を受けて話した。
「イデの最終的な発動」
「アポカリュプシスが近いってのかよ」
「おそらくはな」
その通りだと話す隼人だった。
「最近ゲッターも妙だしな」
「そうだな」
ゴウも隼人のその言葉に頷いた。
「最近特にそうだしな、真ドラゴンもな」
「ゲッターはまだコントロールできているが」
「それでも」
「ゲッターだけじゃないしな」
真吾だった。
「ビムラーもな」
「そうよね。私達の方もね」
「根本は同じだからな」
レミーとキリーも言う。
「よくわからない力だし」
「妙にイデと似てるしな」
「そういえば」
マリンも言う。
「バルディオスも。世界は違うけれど」
「似ていることは似ているよな」
「言われてみれば」
「全ては」
万丈がここで話す。
「この銀河によりよき生命体を創る為の意志だと考えられるね」
「それじゃあどうしてなんだよ」
デクがその万丈に問うた。
「イデだけがこんな風に俺達を滅ぼそうとするのさ」
「ゲッターもビムラーも」
「ライディーンにしても」
「ガオガイガーにしても」
他のあらゆるマシンはだった。
「そんなことはないのに」
「それでイデだけが?」
「イデだけが人類を滅ぼそうとする」
「考えてみればな」
「おかしいよな」
「そうだよな」
「ひょっとしてだけれどな」
豹馬が考えながら放す。
「人間にもいい奴がいて悪い奴がいて」
「それでかいな」
「無限力の中にでもでごわすな」
「ああ、色々な奴がいるんじゃないのか?」
こう十三と大作にも話す。
「ひょっとしたらだけれどな」
「ちょっと豹馬」
ちずるが眉を顰めさせて豹馬に言う。
「もっと真面目に考えなさいよ」
「いえ、着眼点は悪くないと思います」
小介は豹馬のその言葉について話した。
「無限の力、即ちアカシックレコードはです」
「それだよな」
「はい、第一始祖民族の残留思念の集合体」
小介はこう言う。
「そう考えられていますから」
「じゃあやっぱりか」
「はい、その意志は一つではなく」
これが小介の考えだった。
「それぞれに別の役割や考えを持っていたならば」
「それでか」
「そうだな」
カットナルとケルナグールは小介の話から頷いた。
「イデや宇宙怪獣はだな」
「人類に見切りをつけた」
「しかしゲッターやビムラーは違う」
「そういうことなのか」
「アカシックレコードは決めかねている」
ブンドルも言った。
「この銀河の運命を」
「じゃあやっぱりここは」
今言ったのはカツだった。
「戦うしかないのかな」
「単純に戦うだけではないわね」
エマはカツのその言葉に言い加えた。
「おそらく。アカシックレコードは見ているから」
「僕達の戦いを」
「そう。だから簡単にはいかないわ」
「正直に言えばね」
また万丈が話す。
「どうしたらいいか誰にもわからないだろうね」
「そうですね」
シュウは万丈のその言葉に頷いた。
「正直私も全くわかりません」
「あんたがわからないとな」
ムウはシュウのその言葉を聞いて言った。
「誰にもわからないな」
「僕達はそうした力で戦っているけれど」
それでもだとだ。万丈は話すのだった。
「ゲッター線の意志に従っている訳じゃないからね」
「そうです。つまりはです」
シュウも話す。
「私達が生きようとする意志です」
「それに対して」
「それでか」
「ゲッターにしても他の力も」
「ビムラーも」
「応えてくれているのか」
「そのことはそうだと考えています」
シュウはそうだというのだ。
「断定はできていませんが」
「生きようとする意志か」
「それなら結局は」
カミーユとファがそれを聞いて言う。
「今までと変わらないな」
「そうよね。これまでと」
「そうね。けれどそれしかないわね」
フォウも二人の言葉に応えて話す。
「私達はそれしかできないのだから」
「念動力にしても超能力にしても」
「結局同じか」
「全部同じなんだな」
「そうなのね」
「どうすればいいかわからないまま戦うしかないのね」
カーシャが眉を曇らせて言う。
「正直嫌な話ね」
「そうでもないな」
一矢がカーシャのその言葉を否定した。
「俺達には希望がある」
「何だよ、希望って」
コスモがその一矢に問う。
「気休めの励ましなら勘弁してくれよ」
「それは違う」
一矢は気休めは否定した。
「けれどそれでもだ」
「それでも?」
「やっぱりな。希望を忘れたら駄目だな」
「若しかしたら」
万丈は今度は考える顔で話した。
「いや、気付かないならいいか」
「気付かないなら?」
「気付かないならって?」
「このままの方がいいかも知れないな」
こう言うのだった。
「下手に意識してしまうとバランスを崩してしまうかも知れない」
「何かそれって」
ナナがその万丈に言う。
「思わせぶりでちょっと」
「まあそう言うな」
京四郎がそのナナに話す。
「ナナみたいな単細胞がいるとな」
「単細胞って!?」
「万丈としても種明かしができないからな」
「すぐそうやって意地悪言うんだから」
ナナは頬を膨らまさせてその京四郎に抗議する。
「そんなことばかり言ってるとね」
「おいおい、どう言うつもりだ」
「イデの前にあたしが怒っちゃうからね」
「それは勘弁してくれ」
京四郎は困った顔になってそれはと返した。
「俺にとっちゃナナの癇癪の方がイデよりもたまらないぜ」
「ははは、そうだな」
一矢も京四郎のその言葉に応えて言う。
「それは言えているな」
「もう、お兄ちゃんまで」
「これでいいんだ」
万丈は騒ぎの中で一人呟いた。
「僕達は今までと同じ様に愛する者達を守る為に戦えばいいんだ」
こう呟くのだった。
「それでも銀河が終焉を迎えるならその時はその時だ」
こう話している間にだった。
「そろそろだな」
「そうね。DSドライブも終わりだし」
「それなら奴等もな」
「来るな」
「状況次第だけれどね」
シェリルがふと言った。
「若しかしたら」
「若しかしたら?」
「若しかしたらって?」
「いえ、こっちの話よ」
皆には今は答えないシェリルだった。
「気にしないで」
「そうですか。それじゃあ」
「今は」
「ちょっとルウをあやさせて」
ここでこうも言うシェリルだった。
「少しね」
「?何かシェリルさんおかしい?」
「どうかしたんですか?」
「あやすにしても妙に考えてません?」
「何かあるんですか?」
皆いぶかしむばかりだった。しかしだ。
シェリルはだ。こう言うだけだった。
「ひょっとしたらね」
「ひょっとしたら?」
「っていうと?」
「ルウは皆を助けてくれるわ」
こんなことを言うのだった。
「本当に若しかしたらだけれど」
「シェリルさん、まさか」
万丈はそのシェリルを怪訝な顔で見て言った。
「けれどそれは」
「わかってるわ。けれどね」
それでもだという口調だった。
「やってみたいのよ」
「貴女は・・・・・・」
万丈はシェリルが何をしようとしているのか察した。しかし彼女を止めることはできなかった。それがどういったことかはわかっているつもりだったからだ。
それでルウを抱いて何処かに行く彼女を見送るだけだった。そしてだった。
予想通りだ。警報が鳴った。
「やっぱり来たか」
「バッフクラン軍、また」
「来るんだな」
「それなら!」
「迎撃用意だ!」
こうしてだった。彼等は出撃した。その前にはだ。
バッフクラン軍の大軍がいた。その彼等が言っていた。
「攻撃開始だ」
「作戦通りに行くぞ」
こう話していた。
「あの者達を追い込め」
「ロゴ=ダウの者達をだ」
「やっぱり出て来やがったな」
モンシアが彼等を見て忌々しげに言った。
「予想通りでも全然嬉しかねえぜ」
「全くだな。けれどな」
「あの程度の数ならです」
ヘイトとアデルも話す。
「どうとでもなるな」
「戦えますね」
「しかしだ」
ここでバニングが言った。
「時間をかけてしまうとだ」
「敵の援軍ですよね」
キースがその話をした。
「それこそいつも通り」
「そうだよな」
コウもそのことについて言う。
「絶対に出て来るな」
「それならだ」
アムロがここで言った。
「この戦いは速く終わらせる」
「そうですね、そうするべきですね」
「今は」
「そうしましょう」
周りも彼のその言葉に頷く。こうしてだった。
彼等も戦いに向かう。あくまで速く終わらせるつもりだった。
その中でだ。コスモが呟いた。
「これしかないんだな」
「そうだ、今はだ」
ギジェもここで言う。
「イデの思惑通りであろうとも」
「戦うしかないんだな」
「全ては生き残る為だ」
ギジェはまた言った。
「私も。ここまで来ればだ」
「ギジェも変わったわね」
カーシャがここで話した。
「私達と一緒にこうして」
「それで思うのだ」
「思うって?」
「カララもそうだが」
彼女を話に出してだった。
「きっと私達はわかり合えるのだ」
「地球とバッフクラン」
「二つの文明が」
「そうだ。わかり合える」
ギジェはまた言った。
「私はそう思えてきた」
「何を今更って感じだな」
ギジェにだ。トッドが言ってきた。
「俺達なんかこっちの世界とバイストンウェルを行き来してたからな」
「そうだな」
バーンもトッドのその言葉に頷いた。
「私も。色々あったがな」
「こっちの世界をわかってきたな」
「こちらの世界の者達もだ」
彼等もだというのだ。
「わかってきた」
「つまりはだ」
ミリアも話す。メルトランディの彼女も。
「我々は同じなのだ」
「そうね。確かにね」
同じメルトランディのミスティである。
「同じ人間なのね」
「おそらくはだ」
ここでギジェが話した。
「我々の祖先は他の銀河に出た」
「俺達の祖先」
「それなのね」
「そう思う」
これがギジェの説だった。
「だからこそこうして」
「そうだよな。きっとな」
「わかり合える筈なんだ」
「バッフクランとも」
「つまりはだ」
ロジャーも話す。
「そのわかり合える平和はだ」
「掴み取るなのね」
「そうなる」
こうドロシーにも話す。
「平和も友好も勝ち取るものなのだからな」
「よし、そういうことだよ!」
「それならな!」
「行くぜ!」
こうしてだった。ロンド=ベルから攻撃を仕掛けるのだった。
そうしてだ。敵を次々と撃破していく。戦い方は。
正面から切り込み総攻撃を浴びせる。その中でだ。
ふとだ。ラクスが言った。
「妙ですね」
「確かに」
バルトフェルドが応える。
「ここまで派手に攻撃を浴びせていても」
「ではやはり」
「まあそうでしょうね」
わかっているという口調のバルトフェルドだった。
「それがいつもですから」
「えっ、じゃあどうするべきかな」
ユウナは急に弱気を見せた。
「やっぱりレーダーに注意をしてかな」
「あの、ユウナ様」
「それは当然ですが」
「う、うん。そうだね」
一応トダカとキサカの言葉に頷きはした。
「ただね。あの巨大な戦艦が出てきそうでね」
「それは想定の範囲内では?」
「心配されることではないと思いますが」
「ううん、何故か急に弱気になったな」
元々胆力のない彼だが急にそうなってしまったのだ。
「まあ来たら来たらで仕方ないんだけれどね」
「落ち着かれることですね」
少なくともアズラエルは平然としていた。
「最早何が来ても驚かれないということで」
「腹を括るしかないですね」
「はい、その通りです」
「ならクサナギは正面に」
ユウナは気を取り直して指示を出した。
「主砲一斉発射」
「了解です」
「それでは」
トダカとキサカが応えてだった。そのうえで。
クサナギの主砲がバッフクランの大軍を撃ち炎に変えていく。彼等も戦っていた。
そうして戦っているとだった。レーダーに。
「来ました!」
「レーダーに反応です!」
すぐにだ。報告があがった。
「敵、左右から!」
「それぞれ来ました!」
「おいおい、幾ら何でも左右からかよ!」
ジュドーがそれを聞いて思わず声をあげた。するとだ。
早速だ。そのバッフクランの大軍が出て来たのだった。
その大軍を見てだ。今度はシーブックが言った。
「このまま数が来れば」
「まずいぜ」
ビルギットがシーブックに話す。
「数で押されちまうからな」
「ハタリ」
ベスはハタリに対して問うた。
「この宙域を脱出するルートを計算してくれるか」
「今度もだな」
「そうだ。やはりここは」
「無駄な戦いを避けるべきだな」
「それが一番いい」
だからだというのだった。それでだった。
ルートを判明させてだ。ハタリは皆に話した。
「今各機にデータを転送する」
「了解です」
「わかりました」
そしてだ。ポイントを見てだった。彼等はそこに向かうのだった。
その中でだ。ルリが言う。
「これが宇宙怪獣ならばです」
「戦うべきですね」
「彼等は別です」
こうユリカにも話すのだ。
「出来る限り戦うべきですが」
「けれどバッフクランは」
「はい、彼等とは無駄な戦いを避けるべきです」
彼女もこう考えているのだった。
「ですから」
「その通りですね。では今のうちに」
「それにしてもバッフクランも」
ルリは撤退する中でぽつりと言った。
「強情ですね」
「っていうかね」
ここで話したのはハルカだった。
「上の人達が石頭過ぎるわよ」
「そうですね。何かあれは」
メグミも話す。
「極端な例えですけれど三輪長官みたいな」
「あんな感じよね」
「あそこまで滅茶苦茶なんですか?」
ハリーが二人に尋ねた。
「バッフクランの上の人達って」
「カララのお父さんやお姉さんもね」
「かなりのものではないですか?」
「そうだよな。あれは酷いぜ」
サブロウタもそのことを話す。
「ちっとは話を聞いてもらいたいもんだね」
「全くだ。無益な戦いばかり続ける」
ダイゴウジから見てもだった。
「それで何になるのだ」
「ったくよ、分からず屋ってのは何処にでもいるな」
「そうしたところも同じですよね」
「皆同じ」
リョーコにヒカル、イズミも言う。
「人間なんだな、結局は」
「はい、いい意味でも悪い意味でも」
「皆皆生きているんだ」
イズミは今回は駄洒落ではなかった。
「友達なんだ」
「・・・・・・あの、イズミさん」
ジュンがそのイズミに突っ込みを入れる。
「そこは歌ってもらった方が」
「とにかく。ここは撤退した方がいい」
アキトは殿軍を務めていた。そうしながらの言葉だった。
「さもないと結局はイデに飲み込まれてしまう」
「イデ」
ルリは今度はそのイデについて話した。
「本当に不思議ですね。私にも全くわかりません」
「その考えがだな」
「はい」
アポロに対しても答える。
「真意が何一つとしてです」
「私達を滅ぼそうとしている」
シリウスが話す。
「その割には試している感じもする」
「そこがわからないのです」
ルリはこうシリウスにも話した。
「滅ぼそうとしているようでそうしていますから」
「矛盾しているな」
今言ったのはショウだった。
「何もかもが」
「やはり。意志を統一しかねているのかも知れません」
ルリはまた言った。
「イデもまた」
「それではですね」
ユリカはここでこう言った。
「イデにいい考えになってもらうしかないですね」
「そうなるのですが」
そんな話をしながらだった。彼等は撤退していく。そしてだ。
そのポイントに到達した。すぐにディアッカが言った。
「じゃあこれで終わりだな」
「だといいのだがな」
イザークがそのディアッカに言う。
「何時また出て来るかな」
「じゃあ今のうちにか」
「迅速に離脱するべきだ」
こんな話をするのだった。こうしてだった。
彼等は離脱に入る。しかし。
その離脱を見てだ。バッフクランの将兵は話すのだった。
「これでいいな」
「うむ、予定通りだ」
「奴等は我等の罠にかかった」
「後はだ」
どうするかというのだ。
「DSアウトした先だな」
「そこが奴等の墓になる」
「それで終わりだ」
こんな話をしているのだった。
「そのまま全滅だ」
「今度こそな」
こうしてだ。彼等は追わなかった。そのドライブを見るだけだった。
そしてだ。ドライブから出たロンド=ベルは。
その下にだ。恐るべきものを見ていた。
「なっ、何!?」6
「隕石だと!?」
「大きいぞ!」
「しかもかなりの速さだ!」
隕石がだ。彼等に迫ってきていたのだ。
「これは」
「これは?」
「カララさん、どうしたんですか?」
「ラビットスター現象です」
それだとだ。カララは仲間達に話した。
「彗星の進路に出てしまったようです」
「では我々は」
ダコスタがそれを聞いて言う。
「彼等にしてやられましたか」
「まさかこれは」
「ええ、そうよ」
タリアがアーサーに話す。
「彼等はわざと私達をここに誘い込んだのよ」
「包囲網に隙を作ってですね」
「考えたものね」
タリアは嘆息しながら言った。
「そしてここにね」
「まさか、彗星に加えて」
「その通りよ。来るわ」
「レーダーに反応です!」
すぐにメイリンが叫んだ。
「四方からです!」
「そうか、来たか」
「ええ、本当にお約束ね」
ヒューゴとアクアもそれぞれ言う。
「バッフクラン軍」
「本当にお約束ね」
「だがだ」
アルベロが目を鋭くさせる。
「まさに絶対絶命だぞ」
「あんなのにぶつかったらな」
「全滅は確実ね」
ラウルとフィオナが歯噛みしている。
「しかもここでバッフクラン軍かよ」
「連中まさか自分達も」
「あの旗艦は」
ここでギジェが言う。
「間違いない、あれは」
「姉さん!」
カララもその旗艦を見て言った。
「ではここで」
「巨神、そしてカララ!」
そのハルルが言うのだった。
「ここで全てを終わらせる!」
「ハルル姉さん・・・・・・」
「私の声が聞こえるか!」
姉が妹に対して問う。
「全ての元凶は御前なのだ!」
「姉さん、貴女は気付いておられる筈です!」
カララも姉に言い返す。
「人々が憎しみ合わなければです」
「巨神がか」
「そうです。イデは目覚めなかったのです!」
このことをだ。姉に訴えるのだった。
「決して!」
「その元はだ!」
だがだ。ハルルは妹の話をあくまで聞こうとしない。
そのうえでだ。今度はこう言うのだった。
「その元は御前が生んだのだ!」
「おわかりになりませんか!」
「まだ言うのか!」
「憎しみは滅びの道です!」
「それはだ!」
どうするか。ハルルの考えはこうしたものだった。
「ロゴ=ダウの異星人を倒せば済むことだ!」
「あくまでそう仰るのですね」
姉の頑なな心を見てだ。妹もだ。
遂に覚悟を決めてだ。こう告げるのだった。
「それならばです」
「どうするつもりだ」
「私は姉さんを殺し」
その覚悟をだ。ハルル自身に告げるのだった。
「そして赤ちゃんを産みます!」
「カララさん・・・・・・」
「貴女そこまで」
「覚悟したのかよ」
「何て強い覚悟なんだ」
それはだ。強いだけではなかった。
「そして悲しい覚悟なんだ」
「しかしそれでもなんですね」
「あえてその覚悟を選ばれるんですね」
「そうだと」
「はい」
仲間達にもだ。カララは毅然として答えた。そしてだった。
再びだハルルに対して言うのだった。
「ロゴ=ダウの異星人ベス=ジョーダンの」
「その男の課」
「はい、その子を産みます!」
「やってみるがいい!」
ハルルはまだ退かない。
「裏切り者の女とそれと通じる異星人なぞにやられるか!」
「はい、司令!」
「ならば我等もです!」
「ここで倒しましょう!」
「異星人達を!」
バッフクラン軍の提督達も続く。戦いは避けられなかった。
その中でだ。サンドマンはだ。
レイヴンとメイド達にだ。こう問うのだった。
「彗星の衝突までどれ位だ」
「七分です」
「それまでです」
メイド達がすぐに答える。
「七分以内に何とかしないと」
「私達は全員」
「わかった。それではだ」
そこまで聞いてだ。サンドマンは言った。
「諸君、総員出撃だ!」
「了解!」
「七分だな!」
「そう、七分だ」
サンドマンの言葉もだ。鋭く強いものになっている。
「七分以内に敵の包囲網を壊滅させだ」
「この宙域を離脱する」
「そうするんですね」
「そしてここで」
「カララさんのお姉さんも」
「業だ」
レイヴンが言った。
「彼女は業に捉われてしまっている」
「ああなっては終わりだ」
ハマーンも鋭い目で話す。
「あの女はその中に飲み込まれてします」
「そうなるしかないのか」
「これが憎しみの環ならば」
カララはソロシップの艦橋に出てハルルの旗艦を見据えて呟く。
「ここでそれを断ち切ります!」
「来い、ロゴ=ダウの異星人達!」
ハルルの目が憎しみで燃えている。
「そしてカララ!」
「姉さんのその憎しみを!」
「私の誇りに懸けて!」
「新しい命の為に!」
「貴様等をここで仕留める!」
「憎しみの環を断ち切ります!」
二人はそれぞれ言い合いだった。戦いに入るのだった。
ロンド=ベルは全軍が彗星が迫る中で出撃しバッフクラン軍が四方から迫る。ここでもまた、だった。運命の戦いがはじまるのだった。
第百二十四話 完
2011・5・29
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