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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第七十八話 白い烏

                 第七十八話 白い烏
 ロンド=ベルはグラドス本星に向かい続ける。その中でだった。
「白い烏なあ」
「ロジャーさんの言う」
「そんなの本当にいるのかね」
「あのグラドスに」
 彼等はそのこと自体を疑っていた。
「あんな奴等にね」
「一人でもいればいいっていうけれど」
「その一人がいるかどうか」
「疑問だよな」
「確かに」
 こう話す彼等だった。しかしなのだった。
 ここでドロシーが来てだ。彼等に言った。
「一人はいるわ」
「いるか?」
「あんな奴等に」
「そう、どんな見事なものでも僅かな歪みがあるから」
 こんなことを言うドロシーだった。
「それは歪みしかないものでも同じ」
「正反対にか」
「正しいものがある」
「その歪みの中にも」
「そういうことなんですね」
「そう」
 その通りだと頷くドロシーだった。
「その通り」
「じゃあグラドスにもいい奴がいるんだ」
「何か会ったことないけれどな」
「一人もな」
「本当にいないからな」
「見事なまでに」
 彼等が会ったそのグラドスの面々の中ではなのだった。
「これまで相当倒してきてるのにな」
「ゴステロとか死鬼隊は最悪だったけれど」
「その中でも」
 ゴステロは死しても尚彼等にそこまでの印象を与えていたのだった。
「あそこまでえげつない酷さの奴はな」
「あれがグラドスってイメージあるけれど」
「ああ、それ俺もだ」
「私も」
「あれがグラドスの標準だと思ってたし」
「完璧に」
 実際にそう感じている面々だった。
「あの連中ってなあ」
「やっぱりな」
「けれどそんな連中でも」
「白い烏はいる」
「そうなんだな」
「ドロシーやロジャーさんの話だと」
 二人の言葉もなのだった。彼等の中に強く残っているのだ。
「じゃあやっぱり」
「ここはそれを信じて」
「それで行くか」
「グラドスまで」
「それとだけれど」
 ここでだ。今度はアーサーが皆に話してきた。
「多分本星に行けばね」
「宇宙怪獣とかプロトデビルンもか」
「出て来るんだな」
「あの連中も」
「うん、実際これまで出て来たしね」
 ガビルや彼等のことだ。
「だからグラドスとの戦闘も考えないといけないけれど」
「あの連中もか」
「じゃあ四つ巴になるのも」
「考えないといけないか」
「そうなるよな」
「いや、それだけじゃないかも」
 ここで言ったのはメイリンだった。
「そこにバッフ=クランとかハザル=ゴッツォなんてことも」
「うわ、どうなるそれって」
「物凄い混戦になりそうよね」
「そうだったな」
「バッフ=クランはない」
 だがだった。ギジェがそれを否定した。
「彼等は前の戦いでかなりの損害を被ったからな」
「そういえば随分倒したしな」
「それでか」
「じゃあ今は連中については安心か」
「そうだよな」
「そうだ、それにバッフ=クランもだ」
 ギジェの彼等についての話も続く。
「宇宙怪獣やプロトデビルンと戦っている」
「ああ、連中も敵多いんだ」
「そうだったんだ」
「当然バルマー軍とも戦闘中だ」
 ギジェはこのことも話した。
「だからだ。彼等は今戦力の再編成と補充に忙しいのだ」
「じゃあ後はハザル=ゴッツォ?」
「あいつは何時来るかわからないよな」
「あんな奴だし」
「企んでいると考えてな」
「ああ、妥当だな」
 皆それを聞いてだ。こうも考えていくのだった。
「用心していくか、あいつにも」
「あの孫光龍もいるしな」
 ブリットはここで目を鋭くさせた。
「あいつも怪しい奴だ」
「今一つよくわからない人だけれど」
 クスハはその目を不安げなものにさせていた。
「私達の敵なのは間違いないけれど」
「敵といっても色々いるからな」
 ブリットもまた話す。
「あの男は。特に」
「ええ、何かの考えがあるけれど」
「そこも見極めないとな」
「それを考えたら私の相手は」
「俺もか」
 セレーナとクォヴレーはこう考えた。
「わかりやすいわよね」
「そうだな」
「あのスペクトラっていうのはね」
「キャリコだったか。俺を憎んでいるのがわかる」
 それがよくわかるというのだ。
「それならね」
「俺のところに突き進んで来る」
「そこを相手してやれば」
「済むことだな」
「俺は」
 そしてだった。トウマも言うのだった。
「バラン=ドバンだな」
「あの人はもっとわかり易いわよね」
 ミナキがそのトウマに話してきた。
「トウマのことをね」
「相手だと思っているからな」
「そしてトウマも?」
「ああ」
 ミナキのその言葉に頷くのだった。
「俺も。そう思っている」
「そうなのね、やっぱり」
「本当にあいつを倒したくなった」
 トウマの目が燃えてきていた。赤くだ。
「この俺が」
「ならトウマ」
 ミナキが彼に言ってきた。
「何があってもね」
「ああ、俺は勝つ」
「その姿見させてもらうわ」
「頼む」
 そんな話をする彼等だった。グラドスに向かいながら様々なことを考えていた。そうしてそのうえでさらに進むのだった。
 そしてだった。グラドスの星まであと五日の距離まで来た。そこでだった。
「レーダーに反応です」
「どの相手だ」
「はい、これは」
 トーレスがブライトの問いに答える。
「プロトデビルンです」
「というと指揮官は」
「また会ったなロンド=ベル」
 ガビルが自分からモニターに出て来て話す。
「こうして会う。それこそはな」
「何だ?」
「何だよ、今度は」
「遭遇美!」
 それもまた美なのだった。
「実にいいものだ」
「何でもかんでも美なんだな」
「ああ、こいつだけは」
「そうなんだな」
 皆それを聞いてだ。こう言った。
「とにかく何でもかんでも美だけれど」
「今回は違うよな」
「なあ、どう考えても」
「それに」
 見ればだ。丁度グラドス軍もいた。彼等と交戦中だったらしいのだ。
 それでだ。グラドス軍を見るとだ。既に壊滅状態だった。
「司令、ロンド=ベルまで来ました」
「ここはどうされますか」
「一体」
「逃げることはできない」
 ゲイルだった。彼がこのグラドス軍の指揮官だったのだ。
 その彼がだ。強い言葉で部下達に告げるのだった。
「決してだ」
「決してですか」
「それは」
「確かにそうですね」
「そうだ、我等がここで退けばだ」
 見れば彼等の後方には民間人の船が多くあった。彼等は。
「本星への避難民達はどうなる」
「彼等がですね」
「プロトデビルン達に」
「襲われますね」
「だからだ。ここは退くな」
 また言うゲイルだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「ここは例え何があろうとも」
「退きません」
 部下達もここで言った。
「ロンド=ベルが来ても」
「それでもですね」
「そうだ。しかし」
「しかし?」
「司令、今度は一体」
「何でしょうか」
「我々は今まで地球人を野蛮だと思っていた」
 そのロンド=ベルを見ながらの言葉だった。
「ずっとな」
「事実そうではありませんか」
「地球人は好戦的で野蛮です」
「ゾヴォークの物達が怠惰である様にです」
「そしてバルマーの臣民達の多くが愚かであるように」
 これがグラドスの考えなのは事実だった。
「ですからそれはです」
「わかっていることでは」
「いや、どうやらだ」
「どうやら」
「といいますと」
「ロンド=ベルはだ」
 その彼等についての言葉だった。
「違うのかもな」
「普通の地球人とですか」
「違うと仰るのですか」
「司令は」
「そうだ、違うようだ」
 また話すゲイルだった。
「若しかするとな」
「そうでしょうか」
「所詮地球人です」
「他にもペンタゴナの者もいますが」
「所詮はグラドスではありません」
「バルマー十二支族直系ではありません」
「我等と違います」
 選民思想に基づいてだった。彼等は言っていく。
「確か我等と地球人のハーフもいますが」
「それでも半分だけです」
「後の半分が野蛮な地球人のものです」
「その程度ですが」
「グラドスが高貴なのか」
 ゲイルはこのことにも疑念を抱きだしていた。
「ゴステロはどうなのだ」
「あの男はです」
「例外です」
「グラドスの恥です」
 彼についてはこう述べるのだった。
「我等の中でも劣等な物達です」
「ですからそれはです」
「違いますから」
「いや、おそらく違う」
 また言うゲイルだった。
「所詮。我等も同じだ」
「グラドス人も地球人もですか」
「同じだと」
「まさか」
「他の星の物達もだ」
 ゲイルの言葉は続く。
「やはり同じなのかもな」
「ううむ、幾ら司令のお言葉でもです」
「果たしてそれはどうなのか」
「言えません」
「いえ、かなり疑問です」
「そうだろうな」
 ゲイルもそれを否定しないのだった。
「私も実はだ」
「司令もですか」
「確かには仰れないですか」
「このことは」
「確証は持てない。しかし」
 しかしというのであった。ここでだった。
「ここではだ」
「はい、ここでは」
「どうされますか」
「戦う」
 これは絶対だというのだった。
「市民達は必ずだ」
「護りますね」
「そうされますね」
「そうだ、そうする」
 こうしてだった。彼は戦いを選んだのだった。 
 ガビルはだ。その彼等を見てグラビルに話してきた。
「グラビルよ」
「ガオオオオオン!」
「そう思うか」
 彼はグラビルの叫び声を聞いて頷くのだった。
「御前もまた。我が分身よ」
「ひょっとして話通じてる?」
「まさかと思うけれど」
「あれで」
 ロンド=ベルの面々はその二人の会話を見て言う。
「それじゃあだけれど」
「ここは」
「どうしようかしら」
「安心するのだ。我等は一心同体」
 ガビルはその彼等に応えてきた。
「会話はこれで充分だ」
「通じてるみたいだな」
「そうですね」
「どうやら」
「そしてだ」
 ガビルはグラビルにさらに話してきた。
「あの者達のその志」
「ガオオオオン」
「あれこそまさに精神美!」
 ここでも美だった。
「その心意気に応えよう!」
「ガオオオオオオオオオオオン!」
「ではだ!」
 ガビルは早速彼等に向かうのだった。そしてだった。何と援軍を出してその戦力を三倍にしてからだった。
「全軍グラドスに向かう!ロンド=ベルには目をくれるな!」
「くっ、来たか!」
「まずいぞ、今の状態であの数は」
「防ぎきれない!」
「司令!」
 慌てたグラドスの物達はだった。すぐにゲイルに指示を仰いだ。
「このままでは我等を全滅させてです」
「そのまま市民達に襲い掛かります」
「ですからここは」
「どうされますか」
「ここは」
 ゲイルもそれはわかっていた。しかしだった。
 どうしていいかわからなかった。だがここでロンド=ベルを見てだった。
 彼等に通信を入れた。それでなのだった。
「いいだろうか」
「あっ、御前は!」
「地球圏での戦いで会ったよな!」
「グラドスの司令官!」
「そうだよな!」
「そうだ」
 ゲイルも彼等の声に対して頷いてみせた。
「私はグラドスの司令官の一人だ」
「ゲイルさん、貴方だったんですね」
「そうだ、エイジ久し振りだな」
「はい」
 まずはこの二人のやり取りからだった。
「そうですね。本当に」
「今の状況は見ているな」
 ゲイルは単刀直入に言ってきた。
「我が軍は今危機的な状況に陥っている」
「ああ、そうだな」
 ミシェルが素っ気無く返した。
「物凄い数の敵に攻められようとしているな」
「このままでは軍だけでなくだ」
 ゲイルはさらに話すのだった。
「民間人達にも被害が出る」
「で、それで?」
 今返したのは黄金だった。
「何が言いたいんだ」
「済まないがここはだ」
 ゲイルは一呼吸置いた。そのうえでだった。
「我々と共闘してくれるか」
「共闘?」
「バルマーと?」
「市民の為だ」
 その彼等の為だというのである。
「彼等の為にだ。ここは私達を助けてくれないか」
「何でなんだよ」
「何でグラドスを?」
「過去のことはわかっている」
 ゲイルは冷たい彼等にまた話した。
「だがそれでもだ。ここは市民達の為に我々を助けて欲しい」
 こう言うのだった。しかしであった。
 まずはディアッカだった。彼が怒った声で言ってきた。
「おいおい、黙って聞いてりゃな!」
 その声で言うのだった。
「随分虫のいいこと言ってくれてんじゃねえか!」
「そうだ!」
 次はイザークだった。
「どの口で言っている!」
「俺はな、見たんだよ!」
 ディアッカの怒りの言葉が続く。
「御前等に絵本を取られて目の前で燃やされて泣いている子供をな!」
「虐殺している姿も見た」
 京四郎も言う。
「罪の無い一般市民をな」
「一体何人殺したんだ!」
「そうよ、地球だけでもね!」
 ラウルとフィオナも責める。
「そして文化を奪ってくれたな!」
「どれだけのことをしてきたのよ!」
「銀河中で色々してくれたね!」
「それは知っているぞ」
 ネイもマクトミンも彼等を嫌悪していた。
「それであんた達が危機になれば言うなんてね」
「幾ら何でも図々しいだろう」
「そのまま死ね!」
 今叫んだのはジャーダだった。
「手前等グラドスはな!」
「構うか!グラドス人なんか滅んでしまえ!」
「御前等が皆殺しになった後でプロトデビルンの相手をしてやる!」
「御前等が生き残ったら御前等をだ!」
「市民には何もしないけれどな!」
「全軍進撃停止します」
 エキセドルも今言った。
「プロトデビルンに備えましょう」
「ふむ。確かにあの司令官は見事だ」
 そのプロトデビルンのガビルも言うのだった。
「だが、だ」
「ガオオオン」
「グラビル、御前もそう思うな」
 こうグラビルにも言う。
「グラドスは醜い。美はない」
「ガオオオオオン!」
 同意しているようだった。
「皆始末する。清掃美!」
「ああ、グラドス人なんて銀河から消えろ!」
「いなくなれ!」
「御前等何をやってきた!」
「御前等のことなんか知るか!」
 ロンド=ベルのほぼ全員がだった。こう言うのだった。
 獣戦機隊やガンダムチーム、それにシン達はだった。自分達からグラドスに向かおうとさえしていた。
「この連中から先に倒せばいいだろ!」
「プロトデビルンよりもな!」
「とっとな!」
「いや、ここは待ってくれ」
 しかしだった。ロジャーがその仲間達に話すのだった。
「いいか」
「?ロジャーさん」
「一体何を」
「どうされるというのですか」
「まさか」
「そうだ、先日話したな」
 こう仲間達にまた話すのだった。
「白い烏だ」
「そのことですか」
「グラドスにも白い烏はいる」
「それですか」
「けれどそれは」
 皆ロジャーの言葉を否定しようとする。しかしだった。
「あの連中あんな図々しいこと言ってますし」
「ですからそれは」
「もういいじゃないですか」
「そうですよ」
「見捨てましょう」
「いや、違う」
 まだ言うロジャーだった。
「あの司令官こそはだ」
「ゲイルさんですか」
「そうだ、烏だ」
 こうエイジに述べたのだった。
「グラドスの白い烏だ」
「あの人が」
「彼は恥を忍んで我々に救いを求めてきた」
 ロジャーはだ。ゲイルのことを見抜いていたのだった。
「それはまさにだ」
「白い烏」
「あの人がグラドスのですか」
「それなんですね」
「そうだ、白い烏はいた」 
 また言うロジャーだった。
「あの場所にだ」
「じゃあやっぱり」
「グラドスも俺達と同じなんですか」
「人間なんですね」
「いいものも悪いものもある」
「その通りだ。誰もが同じなのだ」
 ロジャーはこうも言った。
「人間なのだ」
「それじゃあ今は」
「グラドスをですね」
「助けるんですね」
「やっぱり」
「そうしなければならない」
 今度の言葉は義務のものだった。
「人間だからな」
「何か腑に落ちないけれどな」
「それはあるがな」
 ディアッカとイザークは不満を言いはした。
「けれど人間だったらな」
「助けるしかない」
「どんな姿形でも」
 ニコルも呟く。
「心が人間ならですね」
「それなら人間でしたね」
 シホがそのニコルの言葉に続く。
「そうでしたね」
「よし、それじゃあ」
「今はな!」
「行くか!」
「ここは!」
「わかりました」
 停止命令を出したエキセドルの言葉だった。
「それでは全軍」
「はい、そうですね!」
「それじゃあ!」
「進撃です。これより我々は」
 エキセドルは言葉を続けていく。
「グラドス軍を助けです」
「一般市民を助ける」
「プロトデビルンと戦って」
「はい、彼等に攻撃を仕掛けてです」
 そのことによってというのだった。
「そうします。それでいいですね」
「了解」
「それじゃあ」
「いいのか、本当に」
 ゲイルは彼等の決定に戸惑いながら問うた。
「君達は本当に」
「決めたことだ」
 ロジャーがその彼に答える。
「我々は決めたのだ」
「いいのか、本当に」
 まだ戸惑いを見せるゲイルだった。
「確かに願い出たが。それでも」
「僕も信じられません」
 エイジの言葉だ。
「けれど。グラドス人も人間ですから」
「だからこそか」
「はい、そしてそれを見せてくれたのは」
 エイジはモニターのゲイルを見て彼に話す。
「ゲイルさん、貴方です」
「私なのか」
「貴方がです。見せてくれましたから」
「それでか」
「そうだ、それでです」
 こうゲイルに話すのだった。
「それでロジャーさんが」
「見せてもらった」
 今度はロジャーがゲイルに話す。
「君のことをな」
「貴方が我々を」
「私も今までグラドス人は忌むべき存在だと思っていた」
 そうだったともいうのだ。
「だが。君を見てだ」
「考えが変わったというのか」
「如何にも。幾万幾億の黒い烏の中にだ」
 彼にもこう話すのだった。
「一羽の白い烏を見ればだ」
「どうなるのだ」
「それだけで烏は黒いという定義が壊れる」
「だからです」
 またエイジがゲイルに話す。
「僕達は今は」
「私はその様な人間ではないが」
「今の言葉だ」
 またゲイルに言うロジャーだった。
「人間だからだ」
「だからか」
「我々もまた。戦わせてもらう」
「じゃあロジャー」
 ドロシーがそのロジャーに声をかけてきた。
「ここは」
「そうだ。ビッグオー」
 そのビッグオーを操りながらだ。ロジャーは言った。
「ショータイム!」
 この言葉を合図にしてだった。ロンド=ベルはプロトデビルンの大軍に攻撃を仕掛けるのだった。
 全軍を挙げて突撃する。そしてだった。
「俺はな!」
「むっ、熱気バサラか」
「そうさ、俺の音楽を聴けばな!」
 こうガビルに言うのだった。
「それでわかるんだよ!」
「何がわかるのだ」
「人かどうかな!善悪なんてチャチなものだからな」
「それが貴様の考えか」
「そうさ、さあ聴け!」
 ここでも派手にギターをかき鳴らして叫ぶ。
「俺の歌をな!」
「ではだ」
 ガビルはバサラのその言葉を聞いて楽しそうに笑って言ってきた。
「我はどうなのだ」
「さてな。俺の歌を聴くか!」
「うむ、聴かせてもらおう」
 ガビルも彼の言葉に乗った。
「これからな。どうするグラビル」
「ガオオオオオオン!」
 これが彼の返答だった。
「そうか、我と同じか」
「聴くって言ってんだな」
「そうだ、ではだ」
「ああ、俺の歌を聴けーーーーーーーーーっ!」
 バサラの音楽も戦場で鳴る。それを聴いてであった。
 グラドスの物達もだ。それぞれ言うのだった。
「あれが地球の音楽か」
「何と・・・・・・」
「聴いているだけで力が出て来るぞ」
「あれがか」
「地球の音楽なのか」
「あれっ!?」
 そんな彼等を見てだ。ふとサイシーが言うのだった。
「何か変わった?」
「ああ、グラドスの奴等な」
 ヂボデーも気付いたのだった。
「雰囲気がな」
「バサラの音楽を聴いてだな」
「そうですね」
 アルゴとジョルジュも言う。
「士気があがっている」
「彼の音楽が届いていますね」
「バサラの音楽ってそこまで凄いんだ」
 アレンビーははっきりと驚いている。
「グラドス軍にまで届いて動かすって」
「いや、バサラだけじゃない」
 輝はだ。プロトデビルンに攻撃を仕掛けながら言う。
「他の音楽もなんだ」
「音楽にそこまでの力がある」
「文化に」
「だからここは」
 さらに言う輝だった。
「二人共、いけるかな」
「はい、何時でも」
「歌えるわよ!」
 ランカとシェリルがだ。既にスタンバイしていた。
「それならシェリルさん」
「ええ、ランカ」
 そして二人で言い合う。
「ここはですよね」
「私達もね」
「歌ってくれるんだな」
 アルトも二人に言う。
「ここは」
「ええ、そうするわ」
「私達だって。歌を聴いてもらいたいからね」
「よし、それならな!」
「ええ、今から聴いて!」
「私達の歌をね!」
 マクロスクウォーターからその音楽が聴こえてきてだった。
 それがプロトデビルン、そしてグラドス軍を撃ちだ。戦局さえ変えてきていた。
「不思議だ。こうした歌を聴いていると」
「何か。これまでの自分達が」
「ああ、間違っていた」
「そのことに気付く」
 こう言ってだった。彼等は今地球を認めはじめていた。
 そしてだ。プロトデビルン達の動きが鈍くなりだった。
「よし、今だ!」
「これならね!」
「やれる!」
「決める!」
 そしてだった。ゼンガーが斬艦刀を構えてだった。 
 一気に振り下ろしてだ。敵艦を両断したのだった。
 両断された敵艦は爆発して宇宙の中に消える。そしてそのうえでだった。
 ロンド=ベルは攻撃を強めプロトデビルンの大軍からグラドス軍に合流した。それを見てだった。
 ガビルが言った。
「見事だ。これはだ」
「ああ、今度は何の美だ!」
「音楽美!見せてもらった!」
 それだとバサラに言うだった。
「では我々は今は去ろう」
「帰るってんだな」
「音楽か。どうやらこれは」
「んっ、俺の歌に惚れたか」
「まだそこまではいっていない」
 こうバサラに返しもするガビルだった。
「だが、だ」
「だが?」
「若しかするとな」
 思わせぶりな言葉であった。
「これが我等を変えるもやもな」
「こいつ、何か感じ取っているか」
「そうみたいですね」
 フィジカが金竜の言葉に頷く。
「何かはわからないですけれど」
「そうだな」
「ではここはだ」
 また言うガビルだった。
「退こう。撤退美!」
「ガオオオオオン!」
 こうしてプロトデビルン達は撤退した。そして残ったのはだ。
「・・・・・・・・・」
「ゲイルさん」 
 エイジが沈黙している彼に声をかけた。
「いいでしょうか」
「うむ」
「僕達も。これまでグラドス人はです」
「野蛮と思っていたか」
「残虐と思っていました」
 彼にしろそうだったというのだ。
「この身体に半分流れている血もまた」
「疎ましかったのだな」
「その通りです。けれど今は変わってきています」
「そう思わなくなってきているか」
「その通りです」
 こうゲイルに話すのだった。
「変わってきています」
「そうなのか」
「それでですが」
 ここでエイジはゲイルに問うのだった。
「今グラドスはどうなっているのでしょうか」
「状況は芳しくない」
 ゲイルは暗い顔で答えた。
「正直なところな」
「そうですか」
「プロトデビルンだけではなくだ」
「宇宙怪獣もですね」
「そうだ。知っていたのだな」
「はい」
 エイジはゲイルの言葉に険しい顔で応えた。
「戦いましたから」
「それでか」
「その二つの勢力に一度に攻められていますか」
「それで本星にまで退かざるを得なくなっている」
 それが今の彼等の状況だというのだ。
「それで我々も今だ」
「そのグラドスの市民達をですね」
「そういうことだ。既に多くの者が犠牲になっている」
 ゲイルはこのことも話した。
「そのうえで」
「えっ、まだあるのかよ」
「それだけでも大変なのに」
「それにまだって」
「内部分裂も起こってしまった」
 そうなってもいるというのである。
「こうした状況に危機感を持った急進派が分裂したのだ」
「それ一体何を?」
「どうしようと」
「バルマーの兵器も全て押収しそれで戦おうとしているのだ」
「おいおい、それはないだろ」
 それを聞いてすぐに言ったのは豹馬だった。
「そんなことしたら今はいいとしてもだ」
「そうよ。バルマー帝国が黙っていないし」
「そうよね、それは」
「ちょっと」
「それだけではない」
 ゲイルの言葉はまだ続く。
「彼等はグラドス人以外の者、バルマー人の本来同胞の者まで戦場に駆り立てて戦わせるつもりだ」
「少しでも戦力が欲しいから」
「だからか」
「そしてだ」
 ゲイルはまだ言うのだった。
「それは若い男だけでなくだ」
「老若男女構わず」
「戦場に立たせるってか」
「グラドス人が生きる為に」
「他の連中は犠牲にしてか」
「それを主張している一派の中心人物は」
 誰かというとだった。
「ル=カインだ」
「ああ、あいつかよ」
「あいつだったらな」
「そうだよな。言うよな」
「ああいう奴だからな」
 皆ル=カインの名前を聞いて納得した。彼のことはよく知っていた。だからそういうことをしても全くおかしくはないと確信できたのだ。
 そしてだ。そのうえでロンド=ベルの面々は話をした。
「そんなことをしてもな」
「ああ、今若し生き残れたとしても」
「後で他の星の連中がどれだけ怒るか」
「バルマーだってな」
「しかも何だ?それって」
「自分達さえよければいい?」
 そこにだ。エゴイズムを感じていたのだった。
「それだよな」
「何か滅茶苦茶酷いよな」
「あいつらしいけれど」
「よくそんな非道なこと考えられるよな」
「全く」
「それでだ」
 また話すゲイルだった。
「私はそれに反対してだ」
「当然ですね」
「やっぱりグラドスにもしっかりとした人いるんだ」
「ゲイルさんみたいに」
「私だけではない」
 ゲイルはまた言った。
「私以外にもだ」
「いるんですか。そういう人がまだ」
「グラドス人に」
「アルバトロ=ミル=ジュリア=アスカ」
 この名前を聞いてだ。エイジは思わず言ってしまった。
「姉さん!?」
「そうだ、エイジ」
 ゲイルもまた彼に告げる。
「君の姉でありそして私の婚約者でもある彼女がだ」
「ゲイルさんと同じくですか」
「私達は他の星の、グラドス人の物達はだ」
 どうしようと考えているのかを話すのだった。
「巻き込みたくはない。当然バルマーの兵器もだ」
「手をつけないで」
「自分達だけで戦われるんですね」
「そのつもりだ。これはあくまで私達の戦いだ」
 毅然として話すのだった。
「それでどうして。そんなことをするのだ」
「じゃあ他の星の人達は」
「どうされるんですか?」
「安全な場所に避難してもらう」
 これがゲイルの考えだった。
「宇宙怪獣やプロトデビルンのいない場所までな。そう考えている」
「いや、それは無理だな」
 ところがバルトフェルドがその考えに異議を示してきた。
「こう言っては悪いけれどね」
「無理だというのか」
「この状況でかい?」
 バルトフェルドはそこから話した。
「避難させられるというのかい」
「それは」
「それよりもここは」
 そしてだった。バルトフェルドはこう言うのだった。
「その彼等を守った方がいいね」
「彼等も」
「そう。その方がずっと安全だよ」
「我々が守るのだな」
「具体的に言えば宇宙海獣達を倒すんだね」
「そうして攻めてそのうえで」
「そうした方がいいね」
 彼はこうゲイルに話した。
「それでどうかな」
「策を授けてくれるというのか」
 ゲイルはバルトフェルドのその言葉にいささか驚いていた。
「グラドスに対して」
「そこまで驚くことかい?」
「我々は敵同士だ」
「確かにね」
「その敵に策を授けるというのか」
「確かに敵同士だよ」
 それは否定しなかった。バルトフェルドもだ。
「けれどね」
「しかしだというのか」
「そうだよ。僕達は市民を助ける為にね」
「そうするというのか」
「さもないと市民達に無駄な犠牲が出るからね」
 そしてだった。バルトフェルドはこうも言うのだった。
「グラドス人以外にもね」
「私はです」
 ラクスも出て来て言う。
「グラドス人は嫌いですが」
「それでも。一般市民は関係ないから」
 キラもだった。
「だから。ここは」
「是非。他の人達も御願いします」
「わかった。それではだ」
 そこまで言われてだった。ゲイルも決断した。
「私はそれで行こう。だが」
「だが?」
「だがっていいますと?」
「ジュリアにも話をしておかなくてはならない」
 またこの名前が出て来た。
「彼女にもだ」
「姉さんにも」
「そう、軍事は私が担当しているがだ」
「政治はそのジュリアさんって人が?」
「そうなってるんだ」
 ロンド=ベルの面々もここでグラドスの状況を察してきた。そしてだった。
 あらためてだ。彼等は話すのだった。
「じゃああいつのところは?」
「ル=カインのところは?」
「あいつが独裁体制敷いてるとか?」
「そんなところ?」
「その通りだ」
 ゲイルの言葉ははっきりとしていた。
「ル=カイン派は全てあの男が統括している」
「文字通りの独裁者かあ」
「何かわかりやすいっていうかね」
「そうだよな」
「つまりは」
「そういうことか」
 ロンド=ベルの面々も納得する。ル=カインについてはだ。
 そしてだった。そのうえでだった。
「じゃあ今はとりあえず」
「ゲイルさん達とはどうしよう」
「それで」
「エイジ」
 マーグが彼に声をかけてきた。
「君はどう思う」
「僕はですか」
「そうだ、君はどう考えている」
 こう話すのだった。
「このことについてだ」
「だよな、エイジはグラドスの血も引いてるし」
「ここはやっぱり」
「エイジがどう考えているか」
「それよね」
「そういうことだ」
 また声をかけるマーグだった。
「どう考えている」
「・・・・・・僕は」
 熟考してからだった。エイジは言った。
「皆の気持ちもわかる」
「どれだけグラドスを嫌ってるか
「それだよなあ、やっぱり」
「まあそれは」
「グラドスは間違っている」
 それは否定しない。できなかった。
「けれど。市民達、そして罪のないグラドス人もいるんだ」
「そしてゲイルさんやエイジのお姉さんみたいな人もいる」
「それなら」
「ここは」
「ゲイルさんと姉さんさえよかったら」
 この前提があるがそれでも言うのだった。
「僕達はグラドスの危機も救うべきだと思う」
「このグラドスにいる他の星の人達も」
「全てよね」
「それは」
「うん、グラドス人も他の人達も全て救わないといけないと思う」
 これが彼の考えだった。それを聞いてだった。
 これまでグラドスに激しい敵意を見せていた面々もだ。言うのだった。
「エイジが言うんならな」
「そうだよな」
「それなら」
「ル=カイン達は別にして」
「ゲイルさん達は」
「そうよね」
 彼等も今はだった。怒りを収めていた。グラドスの中の白い烏を見たからだ。 
 そのうえでだった。こう話し合うのだった。
「もう。グラドス人だからって無闇に激しい攻撃を浴びせるのは」
「止めた方がいいよな」
「確かにとんでもない奴も多いけれど」
「それでも」
「ゲイルさんみたいな人達は」
「じゃあ皆、それでいいね」
 またエイジが皆に問うた。
「今から僕達は」
「宇宙怪獣とプロトデビルンを退ける」
「グラドスの市民達の為に」
「過去を忘れて」
「いいのか、本当に」
 ゲイルの顔は信じられないといったものだった。
「我々に対して」
「正直言ってな」
 ディアッカだった。その最初に言った彼だ。
「俺はまだグラドスは嫌いさ」
「俺もだ」
 イザークも言う。
「けれどな。戦えない人達を守るのはな」
「義務だからな、俺達の」
「だからなのか」
「そうだ、我々が戦う意義」
 サンドマンだった。
「それは戦うことができない物達の為に戦うこと」
「だからだ。貴殿等が気にすることはない」
 レイヴンも話してきた。
「そういうことだ」
「それではだ」
 サンドマンのステッキが回転した。そのうえで。
「諸君!」
「ええ、グラドスの本星に行って」
「そこに来る奴等をまとめてですね」
「倒す」
「途中で会っても同じだ」
 また言うサンドマンだった。
「倒す、いいな」
「我々に協力してなのか」
「結果としてそうだな」
 アルトもまたゲイルに話す。
「あんた達の為になる」
「済まない・・・・・・」
「礼はいい。それよりもだ」
「皆を助けましょう」
 オズマとキャサリンも話してだ。そのうえでだった。
 彼等はゲイル達に協力して戦うことになった。これまでの因縁を忘れて。そのうえで義の為に戦う決意を固めてそうするのだった。


第七十八話   完


                                          2010・11・30
  
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