IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~
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第二十話『人々の違い』
放課後のアリーナ。一機のISが10個のターゲットに囲まれている。
「……」
白のIS、ストライクを身に纏っているスウェンはターゲットの位置を確認し、ガンバレルストライカーを装備する。そして動き出す。
ガンバレルを本体から飛ばし搭載されたレールガンを展開、ターゲットを狙う。スウェンの後、6時の方向にあるターゲットを一基のガンバレルが撃ち抜き、次に8時の方向。残り三基のガンバレルも操作し、ターゲットを次々に破壊していく。
「……まだ上手くいかないか」
全てのターゲットを破壊しガンバレルをスタンバイ状態に戻すと、辺りを見渡す。スウェン自身が破壊したのは4個、残りはAIの補助によって破壊出来た物だ。
「出来る事ならAIの補助無しでも操作出来るようになりたいが……」
スウェンにとってこの手の遠隔操作武装は慣れず、AIの補助があってもそれは変わらない。いや、逆にAIの補助が無ければ二基動かすのにも一苦労だろう。この数日間でようやく四基同時に動かすようになれたのだから、あることに感謝すべきだろう。スウェンはそう思う。
格納庫に行き、先程の訓練で不具合が出来ていないかどうか、スウェンはメンテナンスをしている。
「問題は無しか……どうした? 簪」
何時の間にか背後に居た簪に、振り返る事無く呼びかけるスウェン。
「さっきの……凄かった」
「見てたのか?」
振り向きそう言うと、簪は静かに頷く。
「どうやって動かしてるの……?」
「あまり俺も詳しい事は知らないが、俺の脳波で動いているらしい」
「脳……波?」
「ガンバレルが俺の“目標を撃て”等の指令を脳波で受信、それを行動に移す。だが一度に四基操作するのは難しいが、ガンバレルにはAIが搭載されていて俺の補助をする。俺が撃ち漏らした対象をAIが撃ってくれたりと助かりはするのだが……最終的には補助無しで操作したいものだが、どうにも上手くいかなくてな」
「……スウェンは何でも出来るんだね……ISの事とかも色々出来てるようだし、知識だって操作だって出来てるし……」
「人には出来る事、出来ない事がある。俺には出来る事があって、簪には出来ない事。簪には出来て、俺には出来ない事。様々ある」
「私に……出来る事?」
「ああ、それを見つければ自分の価値を見出せる。努力を欠かさない事だ」
スウェンは端末を閉じ、スタンドポジションのストライクを待機状態にする。
「それではな簪、何かあったら俺に言ってくれ。力になれることはあると思う」
そう言い、スウェンは格納庫を立ち去る。簪は「別にいい」と言いたかったのだが、スウェンのまっすぐな表情を見て、それが言い出せなかった。
「努力を欠かさない……私にしか出来ない事……」
簪はスウェンに言われた事を思い出す。
「……頑張ってみようかな」
/※/
「スウェンのISってさ、何世代なんだ?」
「……何だ、唐突に」
食堂に来たスウェンは一夏、箒、セシリアとバッタリ会い、一緒に食事をとっている。
「いや、専用機でも第二世代とかあるみたいだしさ、スウェンのは何世代なのかなって」
「わたくしも気になってましたわ。スウェンさんのISに搭載されたストライカーシステム、その戦闘によって特化する武装に次々変えていく画期的なシステムを搭載されているのですから、第三世代かとわたくしは思うのですが」
「いや……ストライクが完成したのは約6年前、世代からいけば実質第一世代だな」
「「えぇ!?」」
驚くのは箒とセシリア。一夏は何故か全くわからない様子。
「何でそんなに驚くんだ?」
「一夏、授業でやっただろう! 第一世代は試作機段階。今は殆ど使用されていなくて、見る事もあまり無いんだぞ」
「そ、そうだっけ……」
「第一世代の時期にそのようなシステムが作られていたなんて……ドイツも侮れませんわね」
「そういえば、デュノア社がドイツのとあるシステムを作った技術者と共同しているとここ最近聞いた事があるな」
「前そんな話をしていたような……よく覚えていないな」
「へぇ~……つまり、世代が離れても技能しだいでどうにかなるってことか。すげぇんだな、スウェンって」
「煽ててもなにも出んぞ」
「わ、わかってるって……」
スウェンの言葉に思わず苦笑する一夏。
食事の手を止め、俺は織斑達を見る。
笑っている
俺には何故このようにして笑っているか未だに解らない。他愛の無い話をして、ここまで笑えるものなのだろうか? リズが助かったとき、俺は自然的に笑む事が出来た。だがそれきりだ。
「スウェン、大丈夫か? さっきから飯進んでないみたいだけど……」
「具合でも悪いのですか?」
「……いや、考え事をしていただけだ」
心配そうに声を掛けてきた織斑とオルコットは、俺の言葉に安心した表情を見せる。篠ノ之はこちらを見ずに
「お前が考え事とは珍しいな」
「何か考え事か? 俺でよければ相談に乗るぞ?」
「大丈夫だ、一人でどうにかなる」
「そ、そっか……」
その織斑の提案はありがたいものだが、こればかりは俺の問題、他人に言う事必要などはない。
「けどさ、何かあったら言ってくれよな? 俺達は友達なんだからさ」
「……ああ」
満面という言葉が似合うだろう、織斑は俺にそう笑いながら言う。
簪に言った出来る事、出来ない事がある。人は自分が出来ない事を他人が出来れば、それを羨ましく思う。
こんなにも感情を顔で表す織斑を、俺は羨ましいと思った。この友人と言う輪の中に居れば俺は笑う事が出来るのだろうか。いつか、皆のように……。
後書き
スウェンは過酷な訓練や洗脳に近い教育によって本来の感情が押し殺されていますから、本当に笑う事は難しいでしょうね。
次回、クラス対抗戦。お楽しみに
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