剣の世界の銃使い
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フラワーガーデン
はぁ・・疲れた・・・。やっぱり朝っぱらからあんな奴の相手をするんじゃなかった。
35層に戻ってきた俺は深いため息をついていた。
とある人物にあってきたのだが、予想以上に疲れた。なんでこんな時間なのにあいつはあんなに元気なんだよ!
愚痴をこぼしながら、部屋の扉を開けると、ベットの上でシリカが両手で顔を覆って身悶えていた。この世界では扉を開けても音がしないため、まだシリカは俺が帰ってきたのに気づいていないようだった。とりあえず、一声かける。
「おはようさん。よく眠れたか?」
「――――――――――!!」
シリカが驚いた様に顔を上げて、こっちの方を見てくる。それから、周りをキョロキョロと見渡して
「あ、え、えと・・・おはようございます・・・」
シリカの顔がカァッと赤くなる。さすがに昨日会ったばかりの奴の部屋で(それも異性の)寝るというのは恥ずかしいだろう。すぐにシリカが目を逸らす。
「あの・・・その、すいませんでした・・勝手にベット占領して・・」
「大丈夫だから気にすんな、それより、朝食作ってきたから食べようか」
シリカが落ち着くのを待って、朝食の準備を始める。といっても、さっき作り終わってはいるので、出すだけなのだが。
すぐに出てきた料理に疑問を持ったのか、シリカが聞いてくる。
「この部屋には調理道具がないですよね、これってどうやって作ったんですか?」
「シリカが起きる前に、ちょっとした用事で知り合いに会ってきてな。そいつのキッチンを借りた」
対価にそいつの分まで作らなきゃいけなかったが。さすがに俺でもアイテム欄にそんな嵩張る物入れておけないしな。
朝食が終わった後、簡単に今日の話し合いをする。
「役割とかはこんなもんでいいだろ」
「はい、それじゃあ・・・」
「あ、ちょっと待ってくれ」
俺はアイテム欄を出すと、そこにトレードウインドウに何個かアイテムを放り込む。
「あの、これは?」
「今日の探索でシリカが使う防具。今のでも問題ないと思うけど、少しでも危険は減らしたほうがいいだろ?」
半場無理やりアイテムを送る。数分後にシリカが戻って来る。そのあいだに俺も戦闘用の装備に変更を終えている。
「おー、なかなか似合ってるじゃん」
いまシリカが装備しているのは、見た目はもう服のような物。各所各所に細かい装飾があって、さらに肩には羽のマークが刺繍されている。
「これ、オーダーメイドですよね・・・?」
「朝、知り合いにあってきたのは、これが目的な」
「あ、それでですか」
さすがに、昨日、見繕っておけーとだけ言ったのに、一日で全身オーダーメイドを作り上げてくるとは思わなかったが。職人ってすごい。
「性能は疑ってないけど、見た目とか大丈夫?」
「はい。気に入りました!」
「なら、おっけ。じゃ、行くか」
いくら服みたいだからといって、あいつは性能面での手抜きはしないしな。
部屋から出ようとすると、シリカに袖を掴まれる。
「まだ、この装備の料金、払ってないんですけど・・・」
「ん?ああ、別にいいよ。必要経費って事で」
「でも・・」
なかなか真面目だな。というよりは、まだこの世界での純粋な好意にあまり触れていないのか?マスコット代わりにされてるって自分でも言ってたし、感謝よりも先に警戒心が立っちゃうのかな。
「だったら、今度その知り合い教えるから、そいつにその感想でも言ってやってくれ。それだけでいいから」
準備が終わった後、2人でゲート広場に向い、転移門で移動しようとしたのだがそこでシリカが立ち止まった。
「あ・・・。あたし、47層の街の名前、知らないや・・・」
そういえば教えてなかったか?シリカがマップで層の名前を確認しようとしたので、右手を差し出す。
「俺が指定するよ、そっちのほうが早いだろ」
シリカが差し出した腕をおずおずとつかんだのを確認して、
「転移!フローリア!」
一瞬視界が真っ白になった後、エフェクト光が薄れていき視界が戻る。すると、目の前に無数の色彩が走る。
「うわあ・・・!」
隣でシリカが歓声を上げる。目の前には無数の花々で溢れかえり、今が盛りとばかりに咲き誇っている。初めて来た時は、俺もかなり感動した。
「すごい・・・」
「この層は通称《フラワーガーデン》って呼ばれてて、この層全体が花で溢れている。ここのほかにも北の端にある《巨大花の森》とか南西にある《虹の野原》とかも結構綺麗だぞー」
「それはまたのお楽しみにします」
シリカは笑ってから、近くの花壇の前に座り込んだ。SAOでは、《ディチール・フォーカシング・システム》なるものが投入されており、その人が視線を凝らしたものにリアルなグラフィックが見えるようになっている。さっきからじっと花を見ているだけあって、シリカは花自体は好きなのだろう。だが、フラワーガーデンの名は伊達じゃない。この層はすべてが花なのだ。これから先の光景を思い浮かべて心の中で合掌しておく。
すると、シリカがこちらを見てきた。
「ん、どうかした?」
「あ、いえ・・・それよりフィールド行きましょう!」
「いきなりどうした?別にいいけど・・・」
なぜか、最後の方が早口になって言ったシリカが先に歩き出した。それについては、特に深く考えもせずに俺は先に少し早足で歩いていくシリカの後を追った。
後書き
絶対、攻略組が中層プレイヤーの装備をその場で一式持ってるなんてありえない。
てなわけで、こんな感じに。
この話に出てきている《あいつ》は後々出てきますので。
お楽しみにー
感想とか待ってます!!
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