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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第五十九話 囚われの心、叫ぶ時

              第五十九話 囚われの心、叫ぶ時
 シャピロはイルイを捕らえてだ。そのうえで、であった。
「それではだ」
「これからどうされますか」
「今はまだ手元に置いておくだけだ」
 こうロッサに話す。
「それだけだ」
「では時が来れば」
「そうだ、使う」
「わかりました。しかし」
「しかし。何だ」
「いえ、まだ子供です」
 ロッサはイルイのことを言い顔を曇らせるのだった。
「まだ。子供ですね」
「外見はな」
 だがシャピロはこうロッサに返した。
「しかし実はだ」
「違うと仰るのですね」
「そうだ。我等より遥かに長く。いや」
「いや?」
「文明ができる遥か前から生きているようだ」
 そうだというのである。
「どうやらな」
「そうなのですか」
「そうだ。これでわかったな」
 あらためてロッサに告げる。
「あの少女を子供と思わないことだ」
「左様ですか」
「それにだ」
 シャピロはここでさらに話した。
「例え子供であってもだ」
「子供であっても」
「それが何の理由になる」
 こう言うのであった。
「私が神になる為にだ。それがなにになるのだ」
「子供であろうともですか」
「人は神の為にあるものだ」
 シャピロの考えがそのまま出ている言葉だった。
「人はだ。だからだ」
「誰であろうともですか」
「使える者は使う」
 そうだというのである。
「それだけだ」
「そう仰るのですか」
「それだけだ。そしてだ」
「はい、そして」
「ロンド=ベルに兵を向けるぞ」
 今度は戦争のことだった。
「いいな」
「神になられる為の最大の障壁をですね」
「取り除いておく。いいな」
「わかりました」
 ロッサは頷きはした。だがその心の中にだ。シャピロに対する疑念が芽生えていた。そしてそれは消えることがないものだった。
 ロンド=ベルは三連惑星に向かい続けていた。その中でだ。
 ふとだ。レイが言った。
「シャピロ=キーツか」
「うん、彼だよ」
 マサトが彼に答える。
「神になろうとしている彼だよ」
「その彼か」
「うん、そうなんだ」
 その通りだというマサトだった。
「神になろうとしてね」
「時としてそういう者はいるな」
「そうだね。ただ」
「ただ?」
「自分で自分のことはわかりにくいものだよ」
 マサトはここでこう話した。
「実際にはね」
「そうだな。それはその通りだ」
 レイもこのことは頷けた。
「ラウもそうだった」
「ラウ=ル=クルーゼだね」
「ラウは自分が見えず他の誰かを憎むしかできなかった」
 それがクルーゼだった。
「けれどそれは」
「何にもならなかったね」
「ただ。ラウはこうも思っていたと思う」
「こうとは?」
「俺には自分のようになるなと」
 そうだというのである。
「思っていた筈だ」
「破滅するなということだね」
「己が見えないと時に破滅する」
 レイは言った。
「それが世界や他の者の災厄となる場合は」
「そしてシャピロ=キーツも」
「間違いない」
 レイの言葉は確信だった。
「間も無く破滅する」
「そうなるね、いよいよ」
「ラウにとって死は救いでもあった」
 レイはまたクルーゼのことを話した。
「その証拠にラウの最期の顔は」
「覚えているんだね」
「わかる。もう一人の俺だったから」
 それでだというのだ。
「よくわかる」
「そうだったんだ」
「ラウが今までした中で最も安らかな顔だった」
「そして旅立てた」
「しかしあの男は」
「そうはならないね」
「なる筈がない」
 レイはシャピロについては突き放していた。冷たくすらある。
「待っているのは裏切りだけだ」
「裏切り?」
「裏切りって?」
 ここで他の面々がレイに問う。
「何に裏切られるの?」
「一体どういうことだよ、それって」
「まずは人だ」
 レイは最初はそれだというのだ。
「そして夢にだ」
「夢にもって」
「やっぱり神にはなれないか」
「そうだと思ったけれど」
「自分自身にもだ」
 レイはまた述べた。
「全てに裏切られ死んでいく」
「惨めだな、そりゃまた」
 バサラがここまで聞いて話した。
「全てに裏切られるなんてな」
しかし自業自得だ」
 レイの言葉はやはり冷たい。
「あの男はそれからそうしたことを味わうことになる」
「へっ、そんなのどうでもいいぜ」
 忍がここで言った。
「シャピロは俺が潰す」
「忍さんがか」
「それじゃあ」
「ここは任せますね」
「忍さんに」
「ああ、任せろ」
 忍は強い声で皆に応えた。
「あいつは今度こそ俺が倒す」
「じゃああいつが出て来たらその時は」
「一気に倒すか」
「今度こそな」
「本当に」
 こう話してだった。敵を待つのだった。そしてだ。その次の日だった。
「レーダーに反応です」
「ああ、来たか」
「やっぱりな」
「それで相手は」
「どの軍ですか?」
 皆で報告したミドリに問うた。
「やっぱりあれですか?ムゲ帝国軍ですか?」
「連中か?」
「はい、そうです」
 その通りだった。彼等だった。
「ムゲ帝国軍です。数は五十万です」
「五十万か」
「少ない?」
「そうだよな」
 既に彼等にとっては数はそれだけのものだった。
「どうせそれだけでいいと思ってだろうな」
「傲慢な奴だからな。そうだろうな」
「そうよね。あいつの考えそうなことだし」
「それなら」
 皆で話してだった。そのうえでそのムゲ帝国軍への迎撃に入る。そして彼等の出た方向に向かって布陣するとだ。その彼等が来たのだった。
「さて、ロンド=ベルの諸君」
「ああ、やっぱりな」
「シャピロね」
「本当によそう通りだね」
 シーブックにセシリー、アンナマリーが話す。
「さて、それじゃあ」
「ええ。狙うはね」
「シャピロだけね」
「無駄なことを言う。
 シャピロはそんな彼等の言葉を受け流していた。
「私を倒せる者なぞいはしないのだ」
「だからな、そうした台詞はな」
「もう聞き飽きたっての」
「あんただけで何回言ってるのよ」
「私を他の愚か者達と同じにするか」 
 シャピロの顔に怒りが見えた。
「愚かな」
「キーツ、愚かなのは貴様だ」
 アランが彼に冷たく言い放った。
「何もわかっていないのだからな」
「イゴール、前にも言ったがだ」
「そのことか」
「そうだ、それにだ」
 シャピロはさらに言うのだった。
「私は神になる為の力を手に入れたのだからな」
「やい!そのことだけれどな!」
「そうよ!」
 アラドとゼオラが彼に抗議した。
「イルイちゃんを利用しようなんてな!」
「何を考えてるのよ!子供なのよ!」
「子供であろうともだ」
 シャピロは彼等に対してもその傲慢を見せた。
「私に尽くすのは当然だ」
「何でだよ」
「何でそう言えるのよ」
「私が神だからだ」
 だからだというのである。
「人は神に尽くし全てを捧げるものだからだ」
「くっ、こいつ・・・・・・」
「本当に最低ね」
 この言葉に怒りを覚えたのは二人だけではなかった。
「何処までも自分しかないか」
「そして他人はどうでもいい」
「それが本当によくわかるな」
「全くだな」
 忌々しげな口調でだ。それぞれ話す。
 そしてであった。
「全軍攻撃目標は一つだ!」
「シャピロ=キーツ!覚悟しろ!」
「首を洗ってそこにいろ!」
「いいわね!」
 こう言ってであった。ムゲ帝国軍に突き進む。そうしてであった。
 彼等を次々に薙ぎ倒してだ。一直線に進む。
 その中でだ。ブライトが言った。
「一斉射撃だ!」
「はい!」
「目標は」
「定めるな!」
 こうトーレスとサエグサに言う。
「敵は前にいる。前の敵を倒せ!」
「はい、それでは」
「撃て!」
 そうして前の敵を薙ぎ倒してだ。彼等も進むのだった。
 あの冷静なリーもだ。今は違っていた。
「敵は容赦するな!体当たりも構わん!」
「えっ、艦長」
「今何て」
 ホリスとアカネもこれには唖然となった。
「あの、今のハガネでの体当たりは」
「無理があるわよ」
「無理を承知で言っているのだ」
 やはり普段のリーとは違っていた。
「とにかくだ。シャピロ=キーツをだ」
「倒すんですね」
「このハガネで」
「連邦軍の頃から嫌な男だった」
 リーはシャピロに関する嫌悪感も見せた。
「利己主義的でだ。己しかなかった」
「じゃあ今と全然変わらなねえじゃねえか」
 ハガネのモニターにカズマが出て来て言う。
「それだったらよ」
「それはそうだがだ」
「さらにってんだな」
「昔以上に酷くなっている」
 リーは忌々しげに言い捨てた。
「最早容赦することはない」
「そうか、じゃあ俺があいつを倒してもいいんだな」
「駄目だ」
 リーの返答は一言だった。
「それは駄目だ」
「おい、何でだよ」
「あの男を倒すのは私だからだ」
 だからだというのである。
「あの男、必ず沈める」
「おい、艦長」
 カズマも今のリーにはいささか引いている。
「あんた本当にリー大佐か?」
「そうだがどうした」
「全然言うことが違ってるじゃねえかよ」
 このことを突っ込まずにはいられなかった。
「あの冷静さは何処に行ったんだよ」
「それとこれとは別だ」
 こう言ってであった。ハガネをさらに前にやる。
「行け、後ろを振り向くな!」
「そうでないとな」
 ブレスフィールドは笑っていた。
「面白くはない」
「副長、いいか」
 ブレスフィールドは何時の間にかハガネの副長になっていた。
「シャピロ=キーツには一撃でだ」
「倒すのか」
「ハガネの体当たりでだ」
 またそれだというのだ。
「一気に行くぞ」
「おい、だから体当たりはだな」
「構わん!」
 またカズマに言い返す。
「多少ダメージを受けてもだ。あの男を完全に葬るのだ!」
「よし!そうでないとな!」
 そんなリーを見て熱くなるのはカチーナだった。
「面白くないぜ!」
「そうですね、隊長」
 ラッセルも普段のラッセルではなかった。強気だ。
「ここは派手に攻めないと!」
「前に出て来るなら出て来い!」
 派手に暴れ回り周りの敵を倒しながら叫ぶ。
「そのそばから潰してやるぜ!」
「敵はあそこだ!」
 今度はカイが言う。
「あの戦艦だ!」
「よし、シャピロ!」
「死にやがれ!」
 全軍で突き進む。それを見てだ。
 シャピロはいつもの決断を下したのだった。
「撤退する」
「それでは」
「私以外の軍はここに残れ」
 平然と言い放った。
「そして私の盾となれ」
「で、では我々の撤退は」
「どうなるのでしょうか」
「決まっている。死ぬまで戦うのだ」
 部下達に平気な顔で告げた。
「よいな」
「で、ですがそれでは」
「我々は」
「死ぬのだな」
 何でもないといった口調である。
「そうするのだ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・左様ですか」
「ではだ。私は撤退する」
 こう言って己の乗艦だけを戦場から下がらせるのだった。
 それを見てだ。ロンド=ベルは尚も追いすがろうとする。しかしだった。
「逃がすかよ!」
「くっ、しかし」
「間に合わないか」
「また逃げられるなんて・・・・・・」
「ならそれでいいぜ!」
 マサキが激昂した声をあげた。
「この連中をかわりに倒すだけだ!」
「マサキ、熱くなり過ぎだよ」
 テリウスが呆れながらその彼に言った。
「気持ちはわかるけれど」
「おいテリウス御前もだよ」
「僕も?」
「どんどん撃って敵を倒せよ」
 そうしろというのである。
「御前も戦いには随分慣れてるだろ」
「まあそれはね」
 テリウスも数多くの戦場で戦ってきた。それならだった。
「それでなんだ」
「ああ、じゃあやれ!」
「わかったよ。それじゃあ」
 照準を前にいる一隻の戦艦に合わせてだった。
 そのうえでリニアレールガンを放つ。一撃で戦艦の側面を貫いてだった。真っ二つにしたのだった。
 その他にもだ。足止めをする敵軍を倒してだ。全滅させた。
 しかしであった。残ったのはだ。
「ちっ、シャピロの野郎」
「相変わらず動きが速いな」
「逃げ足だけはね」
「本当にね」
 実に忌々しげに話す。それでもシャピロは戻って来ないのはわかっていた。
 やがて落ち着いてだ。そうしてだった。
「次か」
「そうね」
「次の戦いだな」
「その時に」
「私感じるわ」
 ここでクスハが言った。
「イルイちゃんが」
「ああ、そうだな」
 ブリットが彼女の言葉に頷いた。
「俺達に助けを求めている」
「私達を信じているわ」
 そうだというのだ。
「仲間だから」
「そうだよな。仲間だからな」
「ええ、絶対に助けましょう」
 クスハの言葉が強い。
「次こそは」
「そうだな。それでだけれどな」
「どうしたの?」
 クスハはブリットのその言葉に問い返した。
「何か考えがあるの?」
「ああ。シャピロはああいう性格だよな」
「ええ」
「自分以外の存在を徹底的に馬鹿にしている」
 それこそがシャピロだった。
「それで自分以外の人間のやることは」
「見えないのね」
「そこを衝かないか?」
 これがブリットの提案だった。
「そうすれば若しかして」
「あの男は元々切れ者なんだがな」
 今話したのはテツヤだった。
「それでもな。ああいう性格だからな」
「他人のすることは見ない」
「見ようともしない」
「ああ、そうだ」
 その通りだというのだ。
「そこがあいつの欠点だ。自分では気付いてないがな」
「よし、じゃあそこを衝いて」
「今度こそは」
「イルイちゃんを」
「待ってて」
 クスハの言葉はここでも強かった。
「絶対に助けてあげるから」
「ああ、本当にな」
 ブリットがクスハのその言葉を受けて頷く。彼等は策を考えだしてきていた。
 そうしてである。ハザルはその時。
「ふむ。ムゲ帝国がか」
「・・・・・・・・・」
 エイスが彼の前にいる。
「わかった。ではエイス」
「・・・・・・・・・」
「その時になれば動くぞ」
「動く」
「そうだ、動く」
 こう彼に言うのである。
「あの男に渡していい存在ではない」
「そういうことだよね」
 ここで孫光龍が出て来た。
「やっぱりね。あの娘は欲しいよね」
「孫、何時からいた」
「いやいや、さっきからだよ」
 孫は明るい顔で彼に返す。
「本当だよ、これは」
「ふん、まあいい」
「それでだけれど」
 孫はその明るい調子でハザルに対して言うのだった。
「いいかな」
「何をだ」
「だからだよ。そろそろまた動くんだよね」
「そのつもりだ」
 こう返すハザルだった。
「何か問題があるか」
「ないよ」
「なら何故言う」
「いや、気になってね」
「気になるだと」
「そう、あの少女」
 そのイルイのことだった。
「かなり凄い力を持っているけれどね」
「それはもう知っている」
 ハザルはつまらなさそうに孫に言葉を返した。
「それがどうしたのだ」
「いやいや、あまりにも凄い力はね」
「どうだというのだ?」
「使いこなせない場合だってあるかもね」
 何気なくを装って言ったのであった。
「そう、例えば」
「例えば、か」
「子供に武器は扱えないよね」
 孫の顔が一瞬だが変わった。ドス黒くなった。
「過ぎた武器はね」
「・・・・・・孫、貴様」
 ハザルの顔にも怒気が浮かんだ。
「何が言いたい」
「いやいや、怒る必要はないよ」
「俺を愚弄する気か」
 こう言って怒りを見せるハザルだった。
「そうなら容赦はしないぞ」
「安心してくれ。それはないから」
「ならいいがな」
「まあとにかくね」
 孫はあらためてハザルに言う。
「その少女を手に入れてからは」
「ああ。父上にお渡しする」
「宰相であるシヴァー=ゴッツォにね」
「そうだ。俺はその為に今動いているからだ」
 そうだというのである。
「だからこそだ」
「忠誠心ってやつかい?」
「違うな親子だからだ」
「親子だからかい」
「父上は俺の唯一の肉親だ」
 こう孫に話す。
「そしてだ」
「うん、そして」
「俺がこの世で唯一敬愛する方でもあるのだ」
「その父上の為にってことか」
「その通りだ。俺はあの少女を手に入れる」
 そうしてであった。
「そして父上こそがだ。この銀河を統一されるのだ」
「成程ね」
「その為にだ」
 ハザルの言葉は続く。
「あの少女は必要なのだ」
「その力がね」
「サイコドライバー」
 ハザルはまた言った。
「その鍵がな」
「よくわかったよ、じゃあ僕も」
「御前も働くのだ」
 命令であった。
「いいな」
「仰せのままに」
 こうハザルに返す。しかしであった。
 最後にだ。一礼する時に邪な笑みを浮かべてみせた。それを隠して今は消えるのであった。


第五十九話   完


                     2010・9・19  
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