転生者達による神世界開拓記
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閑話
第十五話
翌日、からっと晴れた空の下で深呼吸も兼ねて背中を逸らす。この時代の空気は汚染されてないから美味しく感じるな。次は三つある内の一つ、サクラとアイシアが寝ているテントの入り口を開ける。
「うにゃ……もう朝?」
「朝日が眩しいよ……」
「……さっさと起きろー!」
「うにゃ!?」
「きゃう!?」
布団の中でくるまっている二人を叩き起こす。何故か二人とも朝に弱い。
「も~……お兄ちゃんのH」
「で、でもお兄さんが望むなら……いいよ?」
「はいはい、さっさと起きましょうね~」
「む~……」
「朝ご飯用意しないぞ」
「わ~!起きる起きる~!」
「うにゃ~!」
君達……ご飯優先かよ。因みにロリなくせして結構食べる。縦にも横にも凹凸にも行ってない為、どこに栄養が言ってるのか不思議である。
「うぅ……ここは?」
ネロがテントの中から出て来た。煩くしちまったか……。
「あ、起こしてしまったか……」
「あ、貴様……あの時の……」
「取り敢えず朝ごはん作るから待ってろ」
「う、うむ……」
暴れ出す心配がなくなったので料理を作り出す。まあ野郎の料理なんてたかが知れてるか。
「はい、トーストのスクランブルエッグとベーコン乗せ」
「む……初めて見るぞ。この黄色いのは何だ?」
「鶏卵だ」
「鶏……?」
「空を飛んでる動物がいるだろ?そいつは鳥というんだが、そいつの一種だ」
「鳥とな……?まあよい、珍味を食べてみるのも一興……むっ!?」
珍味って……一応約二千年後のポピュラー食材なんだがな。
「旨い!旨いではないか!フワフワとした触感、サクッとモッチリのトースト、カリカリとしたベーコン!皇帝故に宮廷料理を食してきたが、これほどのものはなかったぞ!」
「そこまでいうか……」
この時代の料理ってどんな味がしたんだろうか。
「あー!」
「朝ご飯食べてるー!」
「む?何だこのちびっ子達は?」
「お兄ちゃんの嫁!」
「お兄さんのお嫁さん!」
「何……?お主、このような童を嫁に迎えたというのか!?しかも二人も!?」
「んな訳ないだろ!」
「「あべしっ!?」」
慈悲無きチョップを垂直に振り下ろす。その速さ、雷鳴の如し。その威力、鉄骨の如し。
「まだ嫁ではない。ほら朝ご飯ならあそこだ。自分で取ってこい」
「「は~い!」」
ご飯に群がる二人は子供のようだった。実際は百単位で生きてる筈なんだがな。
「……余はどうなったのだ?よく覚えておらぬのだが?見てみれば召し物も変わっておるしな」
「君が森の中に倒れてたのを俺達が拾った。服はテントの中に掛けてある」
「そうなのか……世話になった、感謝する」
「へいへい」
「む……余が珍しくも感謝しておるのだ。それ相応の態度があろう?」
「君の事何にも知らないのだが?」
「何っ!?余は至高の芸術にしてオリンピアの華!この面貌を前にして余を知らぬと申すか!?」
「海を越えた所から来たからこの辺の状況を知らんのだ」
初対面だから一応知らないふりをする。
「……まあよい。無知は哀れだが罪ではない。一度だけ余から名乗っておこう。余はネロ・クラウディウス・カエサル・ドルスス・ゲルマニクス、五代ローマ皇帝だ」
「ネロ・クラウディウス・カエサ……長いからネロと呼ぶわ」
「特別に許そう。それで主の名は何と言う?」
「八意永巡……いや、永巡・八意か?気軽に永巡と呼んでくれ」
「了解したぞ、永巡」
「お兄ちゃ~ん」
「お兄さ~ん」
サクラとアイシアが帰ってきた。意外と静かだったな。
「二人共自己紹介しろ」
「は~い!ボクはサクラ、よろしくね」
「あたしはアイシア、よろしくね」
「余はネロ・クラウディウス・カエサル・ドルスス・ゲルマニクスである」
「ネロ・クラウディウス・カエサ……うぅ?長いからお姉ちゃんって呼ぶね」
「じゃああたしはお姉さんで」
「お姉ちゃっ!?……まあよいだろう、特別に許すぞ」
お姉ちゃんと呼ばれたネロは満更でもなさそうだった。
「……ネロは何であんな場所で倒れてたんだ?」
「…………」
「……いや、すまない。聞いてはいけない事だったようだな」
「永巡が聞きたがってるのは分かる。余みたいな可憐な華が薄汚い路傍で倒れていては気になるというもの……少し長くなるが……」
ネロが語り出したのは策略、暗躍、毒殺何でもござれの物語だった。本人から聞くと更に重く感じてしまう。
「―――そして元老院から追われて今に至る。あそこで永巡達に会わなければ自害していたであろう」
「……そうか」
「自分の今までの人生に未練はあるが後悔はない。しかし、それ故にこの拾った命の使い道が思い浮かばぬ」
「……それじゃお姉ちゃんも」
「あたし達について来ない?」
予想外の出来事だ。サクラとアイシアが誘ってるだなんて……余程気に入られたのだろうな。
「いいのか?」
「お姉ちゃんなら歓迎だよ!」
「お兄さんはどう?」
「俺は別にいいぞ?人数が多ければ多い程、旅は楽しいからな」
「……では、世話になろう。国に戻っても絞首刑が関の山であろうしな」
トゥトゥトゥトゥン!なんて効果音が流れた気がした。ふとサクラを見ると悪役顔になっていた。
「それじゃここに立っててね」
「う、うむ?」
「じっとしててよー(チラッ)」
……サクラとアイシアの意図が分かってしまう自分を殴りたい!いや、自分が最初にサクラ達にやった事だけれども。
「お兄さんいいよー」
「へいへい……大魔導転籍、50ページの魔法参照、詠唱開始」
「え、永巡よ何をする気なのだ?そこはかとなく不安しか感じぬのだが!?」
「大丈夫だよお姉ちゃん。その内その不安が快感に……」
「それは絶対にありえぬ!余の芸術への熱が冷めるぐらいにありえぬわ!」
「守護転生!」
「ぬああああああーーーー!!」
結果、Mにはなりませんでした(笑)
「当たり前だ!」
「「え~……」」
「何故サクラとアイシアはがっかりするのだ!?」
「期待して損したね」
「うんうん、期待外れだよ」
「~~~!童女に酷い扱いされるのは初めてだ!余は泣くぞ!泣いちゃうぞ!?」
「子供の方が残酷なんだよ、ネロ」
「あ、うぅ……」
引っ込みがつかなくなりそうなので頭を撫でて鎮静化を図る。ネロは気持ちよさそうに眼を細めていた。
「……♪」
「む~……」
「うにゃ~……」
……火に爆発物を投げ入れた気がする。仕方ないので余った手で二人を撫でる。
「にゃはは~!」
「えへへ……」
これがナデポという奴か……!?能力で作った覚えはないが……何故だ?
「はい終了!そろそろ行くぞ!」
「じゃあボクはテントを片付けるね」
「あたしはフライパンを洗ってくるよ」
「余は……座っておこう」
「お姉ちゃんのや・く・た・た・ず♪」
「ピー!」
こうして元皇帝が仲間に加わった。一行の旅はまだまだ続く……って、何良い話だった風に締めてんだよ!?
後書き
次で真・恋姫に入ります。
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