| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十一話 守護神の巫女

           第二十一話 守護神の巫女
   「さて、シャピロの奴はまさか」
「わかっているのか?」
「それとも知っている?」
 ロンド=ベルの面々は怪訝な顔で話をしていた。
「それでここに来た?」
「有り得るよね」
「フロンティアを狙った」
「それが」
「イルイちゃんがここにいる」
 彼等も確信のない話であった。
「若しそれが本当なら」
「どうしようかしら」
「イルイちゃんを探すか?」
 今言ったのはブリットだった。
「そして俺達で保護するか?」
「それはどうかな」
 だがリョウトがそれに疑問の言葉で返した。
「僕はあまり」
「駄目か?」
「うん、イルイちゃんがそのことに気付いたらね」
「そうね。かえって逆効果よ」
 リオもここで言った。
「イルイちゃん気付いて。去ってしまうわ」
「残念だがその可能性は高いだろうな」
「そうね」
 ユウキとカーラもそう見るのだった。
「そしてだ。そのうえでだ」
「何処かに去ってしまうわ」
「ならどうすればいいんだ?」
「保護できないのなら」
 タスクとエレナがそれにあえて言った。
「イルイちゃんが危ないだろうがよ」
「若し何かあったら」
「いや、話は簡単だ」
 だがここでクォヴレーが言い切った。
「要はこのフロンティアを守ればいい」
「そうね」
 彼のその言葉に頷いたのはマリューだった。
「結局はそうなのよ。イルイちゃんがフロンティアにいるのならね」
「そのフロンティアを守ることが」
「イルイちゃんの保護になる」
「そういうこと、守ればいいのよ」
 笑っての言葉だった。
「要するにね」
「フロンティアを守るそのことが」
「イルイちゃん自体を守る」
「そうよ。それじゃあ」
「わかりました、それじゃあ」
「このフロンティアの防衛に専念します」
 出された答えはこれだった。
「そしてイルイちゃんが本当にここにいるのなら」
「イルイちゃんも」
「そういうことよ。いいわね」
「はい」
 これで彼等の方針は決まった。イルイはあえて探さないのだった。
 そしてだ。尚も話が為された。今度言ったのはロゼだった。
「あの」
「あっ、ロゼさん」
「どうしたんですか?」
「気になっていることですが」
 ロゼは少し困ったような顔になって皆に言ってきた。
「ゼントラーディの地区にあるあの屋敷ですが」
「あの二人だけで住んでいるっていう?」
「女の子達だけで」
「まさかとは思うのですが」
「そうだな、私もこの前そこに行ってみたが」
 ロゼだけでなくマーグも来てだ。そのうえで言うのである。
「あそこにいるのは」
「バルマーの者ではないだろうか」
「えっ、まさか」
「そんな筈が」
「しかしです」
「見た記憶があるのだ」
 二人は怪訝な顔で一同に話す。
「その二人の服も」
「私達の知っているものだった」
「では顔は」
「どうなのでしょうか」
「はい、それもです」
「知っているものだ」
 顔についても答えた二人であった。
「まさかとは思いますが」
「十二支族の者達ではないのか」
「十二支族っていうと」
「バルマーの中枢よね」
「それ?」
「そうだ、アマルナ=ティクヴァーとルリア=カイツ」
 マーグが出した名前はこの二つだった。
「その二人だ」
「馬鹿な、そんな筈がない」
 ヴィレッタはその名前を聞いてすぐに反論した。
「あの二人がこの様な場所にいる筈がない」
「確かにだ」
 マーグも彼女に対してこう返した。
「普通に考えるとだ」
「確かにあの服は二人のものだ」
 ヴィレッタはまた述べた。
「だが。あの二人が何故フロンティアにいる」
「普通に考えて有り得ることではない」
 マーグはまた言った。
「それは何があろうともだ」
「そうだよな、っていうか」
「バルマー十二支族がこんな場所にいるなんて」
「普通はあれだよな。バルマー本星にいる筈だよな」
「ああ、確かにな」
「いる筈がないわ」
 一同はこう言って首を傾げさせるばかりだった。
「絶対にな」
「それは」
「私の見間違いか」
 マーグはこうも考えた。
「やはり」
「いえ、それは」
 ロゼが顔を俯けさせたマーグに対してすぐに言ってきた。
「マーグ様、それはです」
「ロゼ、気遣いは嬉しいが」
「たまたま服がそうであるかも知れません」
 こう言うのである。
「それでそう思ったのかも知れません」
「そうなのだろうか」
「私も。あの方々がここにいるとはです」
「思えないか」
「はい、申し訳ありませんが」
 それを言うのである。
「あの方々は本星におられる筈です」
「しかし。確かによく似ている」
 マーグはあらためて言った。
「そっくりと言ってもいい程にな」
「あまりにもな」
「あっ、そういえばマーグさんもあれですよね」
「十二支族でしたよね」
「ギシン家の」
「そうだ、その当主ということになっている」
 このことにも答えた。
「だが。今はだ」
「それも過去のことですか」
「今は私達と共にいますから」
「そうだ。もうギシン家は事実上途絶えている」
 こうも答えるマーグだった。
「私はロンド=ベルに加わりマーズもここにいることでだ」
「俺は最初からバルマー帝国の人間だったつもりはない」
 タケルはそれは確かに言った。
「けれど兄さんは」
「私も今まで操られていたのだ」
「操られていた、そういえばレビ=トーラーという女に」
「そうだ、その女に操られていた」
 こう話すのである。
「長い間。悪い夢を見ていた」
「申し訳ありません」
 それを言われるとであった。ロゼが申し訳なさそうに言ってきた。
「私は。マーグ様を」
「いや、いい」
「宜しいのですか」
「御前もまた辛かった筈だ」
 もうロゼの心はわかっていたのだ。それもよくだ。
「ならば致し方がない」
「マーグ様・・・・・・」
「だが御前はいつも私を守ってくれた」
「えっ、私がですか」
「そうだ、守ってくれた」
 こう言うのである。
「そして今もまた」
「それは、その・・・・・・」
「あっ、照れてる」
「顔真っ赤だし」
 皆今のロゼの顔を見てすぐに言った。
「前から思っていたけれど凄い純情!?」
「みたいね」
 皆それがわかってきたのである。
「しかも可憐っていうか」
「仕草とかがね」
「もう乙女って感じで」
「意外にも」
「私は別に」
 しかし当人はその真っ赤になった顔で言うのだった。
「そんなことは」
「いや、あるから」
「そうよね」
「どう見てもね」
 皆その彼女に対して言う。
「純情可憐そのもの」
「ロンド=ベルでも一番なんじゃないかな」
「そうよね」
 さらに話す彼等だった。
「性格が特にね」
「それに一途だし」
「そうだな、ロゼは一途だ」
 タケルもそれは認めた。
「それに純粋だ」
「兄さんもわかってるんだね」
「わからない筈がない」
 微笑んで弟にも返す。
「ロゼの心は。誰よりも」
「マーグ様、そこまで・・・・・・」
 そのマーグの言葉に目をうるわせるロゼだった。
「言葉もありません」
「それでロゼ」
「はい」
「今から少し街に行かないか?」
 彼女を誘っての言葉であった。
「今から。どうかな」
「わかりました」
 ロゼに断る理由はなかった。こくりと頷く。
「それでは」
「やっぱりマーグさんもロゼさん大事にしてるわよね」
「それもかなりね」
「どう見ても」
 皆このことにも気付いた。そんな話をしながら楽しい時間を過ごしていた。
 しかし彼等は戦士だ。それはほんの一時のことでしかない。そうしてだった。
「来ました!」
「敵です!」 
 レイヴンに対してテセラとチュクルが述べる。
「ムゲ帝国軍です!」
「彼等が来ました!」
「数は五十万です!」
 コリニアも言ってきた。
「それだけ来ました」
「そうか。今度は一度に来たのだな」
 レイヴンがグラヴィゴラスの艦橋で全てを聞いていた。
「わかった。では今回も迎撃だ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「来る」
 サンドマンがこの中で言った。
「必ずだ、来る」
「来ますか」
「そうだ。敵はフロンティアを狙う」
 レイヴンに対しても告げた。
「間違いなくだ」
「そうですか、それでは」
「またフロンティアを中心に守りを固める」
 サンドマンは戦術も述べた。
「そのうえで戦うぞ、いいな」
「はい、それではその様に」
「諸君!」
 サンドマンは今度は全軍に対して告げた。その右手に持っている杖を前に突き出す。
「総員出撃だ、戦いの場に赴こう!」
「はい、それでは!」
「今から!」
 こうして全軍出撃した。そしてフロンティアを取り囲んで布陣した。するとだった。
「何っ、敵の陣形が変わった!?」
「このまま来ずには」
「囲んで来たわね」
 少しずつ動いてだった。包囲陣を敷いてきたのだ。そのうえで攻撃に入ろうとしていた。
「囲むつもりですね」
「ええ」
 スメラギが留美の言葉に頷く。
「そう来たのね」
「どうしますか?ここは」
「こちらの戦術は一つしかないわ」
 スメラギは落ち着いた声で述べた。
「ここはね」
「一つしか、ですか」
「守り切るしかね」
 それしかないのだというのだ。
「フロンティアを受け渡す訳にはいかないしね」
「そうですね。ところでスメラギさん」
「何かしら」
「フロンティアのことですが」
 留美もまた聞いていたのである。
「まさか。本当に」
「私はその娘のことはよく知らないのよ」
「そうですね、それは私も同じです」
「けれど。それでも」
 スメラギは話を前置きしてから言うのであった。
「有り得るわね」
「そうですね。この世界にも神がいます」
「イルイ=ガンエデン。それが」
「どう動いているかですね」
「ああ、イルイちゃんだがな」
 彼等に言ってきたのはカイ=シデンだった。
「地球を護ろうとはしていたけれどな。それでもな」
「別に悪意はないよ」
 ハヤトがそれは否定した。
「何もね」
「そうですね。それは聞いています」
 留美が二人に対して答えた。
「ただ。何故ここにいるのか」
「本当にいるのならね」
「それにです」
 スメラギに続いて紅龍が言ってきた。
「その力は何でしょうか」
「謎だらけの存在なのだな」
 グラハムもそれを聞いて述べた。
「神というものはわかりにくいものだがな」
「とにかくあのシャピロってのがイルイちゃんを狙ってるのは間違いないな」
 パトリックはあえてかなり単純に考えて述べた。
「そういうことだな」
「それはそうだが。パトリックよ」
「何ですか、大佐」
「もう少し考えられないのか?」
 カティはこう突っ込みを入れたのである。
「単純過ぎるのではないのか」
「いいじゃないですか。それしか考えられませんし」
「それでももう少しだ」
「とりあえず戦って撃退しているうちにわかりますよ」 
 また言うパトリックだった。言葉は明るい。
「どうせしつこく何度も来るんだし」
「それはその通りだ」
 カティもそれは読んでいた。
「ならばだ。やはり今は」
「戦いましょう」
「そうだな」
 こうして戦いがはじまった。ムゲ帝国軍は包囲しそのうえで攻撃を仕掛けた。しかしそれでもロンド=ベルの強さは健在であった。
「主砲発射用意」
「わかりました」
 レイヴンがサンドマンの言葉に応える。グラヴィゴラスの主砲が動く。
 そうして敵軍にその主砲が放たれる。幾条の光が敵軍を貫き多くの光が起こった。
 ムゲ帝国軍は劣勢だった。それを見てシャピロの横にいるロッサが言ってきた。
「シャピロ様」
「わかっている」
 シャピロは不機嫌を露わにさせている。
「戦局だな」
「はい、このままではです」
「敗れるか」
「フロンティアを陥落させられません」
 こう言うのだった。二人は今旗艦の艦橋にいる。
「とてもですが」
「いや、このまま攻める」
 しかし彼は諦めようとはしなかった。
「このままだ」
「攻めるのですね」
「一兵だけでも残ればいい」
 こうまで言った。
「そしてフロンティアを陥落させるのだ」
「フロンティアに何があるのでしょうか」
 ロッサは怪訝な顔になっていた。
「どうしてそこまで」
「やがてわかる」
 シャピロは腕を組んで答えた。
「その時に話そう」
「その時にですか」
「そうだ、私が神になるにはフロンティアにあるものは必要だ」
「神に。シャピロ様が」
「ロッサよ、見ているのだ」
 彼は戦局を見続けていた。その一向に進まない戦いをだ。
「私が神になるその時をだ」
「わかりました」
 ロッサの言葉が恭しいものになっていた。
「では私はシャピロ様のお傍で」
「そうしてもらおう。ではロッサよ」
「はい」
「全軍さらに攻撃を命じろ」
 さらに言う。
「いいな、それではだ」
「では。一兵でもフロンティアに」
「犠牲は厭うな」
 シャピロの今の言葉は冷酷なものだった。
「幾ら死のうが構わん」
「五十万の兵、全滅してもですか」
「そうだ、構うことはない」
 シャピロはここでも自身の率いる軍を捨て駒にしようとする。
「兵なぞ幾らでもいるのだ」
「だからこそですか」
「そうだ。私は神となる」
 やはり自分のことしか考えていなかった。そうしてだった。
 自軍に攻撃をさせる。撤退は許さなかった。
 ムゲ帝国軍は損害だけが増えていく。シャピロだけが後方で平然としている。
 ロンド=ベルの面々はその彼を見て言った。
「あいつ、今度は自分だけ動かないのかよ」
「自分の軍は無茶な攻撃をさせておいて」
「自分はそれかよ」
 言葉には嫌悪が露わになっていた。
「神にでもなったつもりか?」
「そんなのなれる筈がないってのによ」
「何様のつもりよ」
「あんな奴が神の筈がねえ」
 忍は忌々しげに言い捨てた。
「自分でそう思い込んでるだけなんだよ」
「じゃあどうするんだ?」
 ジュドーがその彼に問う。
「ここはよ」
「叩き潰してやる!」
 これが忍の返答だった。
「一機残らずな。そうしてやるぜ!」
「けれどよ、それだとよ」
 ジュドーは忍に対してまた問うてきた。
「あいつだけまた逃げるぜ」
「そうね。前と同じね」
 マウアーもそう見ていた。
「ああした人間はそうするわ」
「へっ、逃がすかよ!」
 ジェリドは何としても追いつくつもりだった。
「その時はな、そうしてやるぜ!」
「どうかな、それは」
 その彼にカクリコンが言ってきた。
「あの時も上手く逃げられた。またそうなると思っていてもいい」
「そうだね。ここは一つ考えがあるよ」
「えっ、ライラさん」
「じゃあどうするんですか?」
「今囲まれてますけれど」
「あの戦艦を一撃で跡形もなく吹き飛ばすんだよ」 
 こう言うのだった。
「ローエングリンなりバスターキャノンなりでね」
「一気にですか」
「そうするっていうんですね」
「そうさ。もっとも届くには距離があるみたいだね」
 シャピロの旗艦は後方にいる。それを見ての言葉だった。
「それをどうするかだね」
「まあそれはどうとでもなるさ」
 ヤザンは楽しげに笑って述べた。1
「ちょっと近寄って攻撃をすればな」
「では少佐」
「我々の海蛇で」
 ラムサスとダンケルが名乗り出て来た。
「そうしましょう」
「それならどうでしょうか」
「いや、待て」
 だがここでヤザンは言うのだった。
「海蛇じゃ駄目だな」
「無理ですか、それは」
「海蛇では」
「ああ、あれは攻撃範囲がまだ狭いな」
 好戦的だが冷静に見ている彼らしい言葉だった。
「一撃で沈めるにはな」
「じゃあ我々は今は」
「あの戦艦にはですか」
「他の奴に任せるしかないな」
 ヤザンはいささか残念そうに述べた。
「俺も仕方ないんだけれどな」
「そうですか。わかりました」
「それでは」
「おい、誰でもいいから行け」
 ヤザンはこうも言った。
「手柄くれてやるぜ」
「よし、それならだ」
 ヤンロンが出て来て言う。
「僕のグランヴェールのメギドフレイムなら」
「そうね。雑魚はあたしに任せて」
「俺も行くぜ」
 リューネだけでなくマサキも出て来た。
「それで一気にあの野郎のところまで行くか」
「そうね。あのシャピロ」
「許せん」
 こう言ってであった。三人が向かう。 
 そして三人だけではなかった。残る二人もいた。
 テュッティとミオもだ。五機が一斉に前に出たのだ。
「マサキ、私達もいるから」
「周りは気にしないでいいからね!」
「悪いな、あのシャピロの野郎」
「ここで終わりにしてやるわよ!」
「あの戦艦を沈めてだ」
 マサキにリューネ、ヤンロンは一直線に向かっていた。
「そのうえで倒す」
「雑魚はヴァルシオーネがいるからね」
「俺のサイバスターもな!」
「ここであのシャピロを倒さないとニャ」
「いい加減面倒なことになってくるニャ」
 こう言うクロとシロだった。
「あいつもう本気で鬱陶しくなってきてないニャ?」
「企んでるから余計に腹立つニャ」
「しつこいのも腹立つがな」
 マサキはそれについてもだと前置きしてからさらに話した。
「俺が一番気に食わないのはな」
「自分だけが生き残ろうとすることだニャ」
「自分以外と手駒として」
「ああ、それだよ」
 まさにそれだというのである。
「それが一番気に入らねえ」
「確かにそうだニャ」
「あれは見ていて頭にきたニャ」
「俺もできればあいつはこの手で倒したいんだがな」
「けれどコスモノヴァでもニャ」
「あの戦艦を吹き飛ばすことはできないニャぞ」
「それはわかってるさ」
 忌々しい口調のままだった。
「くそっ、あいつだけはよ」
「まあそのうちああいう奴は破滅するニャ」
「墓穴掘ってその中にだニャ」
 クロとシロはそうなると見ていた。
「あたし達がそうしなくてもニャ」
「絶対にそうなっていくニャ」
「そうだろうな」
 マサキも真顔でファミリア達の言葉に頷く。
「それが常だからな」
「じゃあ今は敵を蹴散らしていくニャ」
「それじゃあニャ」
「ああ、行くぜ!」
 そして繰り出した技は。
「サイフラーーーーーーーーーーーッシュ!」
 これで敵をまとめて消し去る。そしてリューネもまた。
「いくよ!」
 こう叫んでからだった。
「サイコブラスターーーーーーーーッ!」 
 これを放って敵を蹴散らしたのだった。そしてヤンロンがだ。
「焼き尽くせ!」
 既にシャピロの戦艦は射程に入れてある。そうしてだった。
「メギドフレイム!」
 それでシャピロの旗艦を焼き尽くさんとする。炎が一気に駆け抜けた。
「な、何っ!?」
「シャピロ様、艦が!」
「これ以上は!」
「くっ、もたないというのか」
 部下達の言葉を聞いて歯噛みするシャピロだった。
「おのれ、こんな所で神である私が」
「いえ、まだです」
 しかしだった。ここでロッサが彼に言ってきた。
「まだ脱出できます」
「できるというのか」
「はい、まだです」
 こうシャピロに対して言うのである。
「ですからまだ」
「ではここはどうするのだ?」
「既に脱出用の戦闘機は用意してあります」
「だが今はだ」
 まだ言うシャピロだった。
「炎に包まれ今にもだ」
「確かに危ういです」
 それは彼も認めた。
「ですが」
「ですが、か」
「まだ間に合います。今こそ」
「わかった、信じよう」
 決断は早かった。
「今すぐにこの艦艇を脱出する」
「はい、それでは」
「神である私がここで倒れる訳にはいかない」
 ここでも己を神と言うシャピロだった。
「だからこそな」
「では貴方は神であられる為に」
「そうだ。今はここを去る」
 こう話してだった。彼等は戦線を離脱するのだった。メギドフレイムは確かに戦艦を焼き尽くした。しかし沈むその一瞬の間をついたのだ。
 シャピロはロッサと共に脱出した。二人だけでだ。
「くっ、一瞬でだと」
「悪運の強い奴だね、全く」
 ヤンロンとリューネが撤退する彼等を見て忌々しげに言い捨てた。
「しかもまた部下を見捨ててか」
「相変わらずの奴だね」
「俺が追う!」
 マサキがここでまた叫んだ。
「サイバードならまだ追いつける!」
「いえ、止めておきなさい」
「追ったらかえってまずいと思うわよ」
 だがその彼をテュッティとミオが制止した。
「シャピロに追いついてもすぐに敵が来るわ」
「一機で行ったら死んじゃうわよ」
「ちっ、無茶だってのかよ」
「そうよ、また機会があるわ」
「だから今は止まっておくことね」
「わかったぜ」
 マサキは無念そうだったがそれでも納得した。
「それにしてもフロンティアは無事だったんだな」
「うむ、無事であった」
 ティアンが答える。
「拙僧達が止めた」
「しかし。今回もでした」
 デメクサは珍しく真剣な顔であった。
「彼等は全てこちらに来ました」
「やっぱりね。これはいるわよ」
 シモーヌも言ってきた。
「フロンティアにね」
「そうか、やっぱりな」
 マサキはそれを聞いて納得した顔になった。
「いるんだな」
「イルイちゃん、やっぱりここにいるのね」
 プレシアも言う。
「フロンティアに」
「探すのは無粋だな」
「そうね」
 ロザリーはジノの言葉に頷いた。
「そんなことをしてもあの娘の為にはならないわ」
「それにだ」
 ジノはさらに言った。
「彼女の性格を考えればだ」
「もう出て行くかも知れないね」
 ベッキーはその危険性を視野に入れていた。
「これでね」
「そやな。自分のせいで敵が来た思うてな」
「将軍、では一体」
 エリスがロドニーに対して述べた。
「ここはどうすれば」
「どうしようもないやろな」
 ロドニーはもう止めることは諦めていた。
「あの娘もう出て行くと思うで」
「じゃあここはどうすればいい」
 ここまで聞いたファングが目を顰めさせていた。
「このままではだ」
「なるようにしかならないというのか」
 アハマドも表情は暗い.だが彼はこうも言った。
「これもアッラーの思し召しか」
「そうだ」
 ゲンナジーがここで言った。
「今はどうすることもできない」
「ここは行かせるしかない」
 ゼンガーは既に覚悟を決めていた。
「ガンエデンの思う通りにだ」
「そうだな。友の言う通りだ」
 レーツェルがそれに賛成して述べた。
「我々は行かせるしかない」
「残念だがな」
 ゼンガーもそれは納得したわけではなかった。しかしであった。
「行かせる」
「後は運命が導いてくれる」
 レーツェルは言った。
「我々がこれから切り開く運命がだ」
「では今はここは」
「行かせるしか」
「それしかないのね」
 イルイがいることは察していた。だが彼等は今は行かせることを選ぶしかなかった。彼女がいることをわかっていてもだ。それでもだった。
 こうして戦いが終わってだ。彼等はフロンティアに静かに戻った。そしてそのまま下がろうとする。だがそこには彼女はいなかった。
「では行くか」
「そうね」
「これで」
 次の戦いに考えを及ばせるのだった。次の戦いにだ。
「さて、これからだが」
「はい」
「次ですね」
「次は問題だ」
 マーグが語る。
「ギシン家の勢力圏だ」
「マーグさんの家ですよね」
「つまりは」
「そうだ」
 まさにそこだというのである。
「今そこは完全にバルマー帝国の勢力圏にある」
「じゃあ完全にそこに」
「バルマーの勢力圏ってことは」
「そうだ。バルマー軍の一個方面軍がいる」
 その彼等がだというのだ。
「バルマー帝国中銀河方面軍だ」
「それが展開しているんですか」
「これから行く先に」
「バルマー帝国の一個方面軍だ」
 マーグはこのことを強調して言った。
「わかるな」
「はい、確かに」
「あの軍がですか」
「それはかなり」
「手強い」
 マーグはまた言った。
「注意してくれ」
「わかりました」
「それなら」
「しかし」
 ここで言ったのはケンジだった。
「ギシン家なら」
「むっ!?」
「マーグの軍だ」
 このことを言うのであった。
「それならマーグ、君が影響を及ぼすことは」
「それは無理だ」
「無理だというのか」
「そうだ、それはできない」
 こう話すのであった。
「私としても残念だがな」
「戦うしかないのか」
 これが出て来た答えだった。
「結果として」
「そうだな。やるしかないか」
「バルマーの一個方面軍が相手ね」
「また七個艦隊が」 
 そしてその中核もわかっていたのだった。
「ヘルモーズか」
「そしてズフィルード」
「何か連中もあれじゃねえか?」
 ここで甲児が言った。
「何かよ、ギルギルカンみたいになってきてねえか?」
「認めたくないがそうだな」
 竜馬は何故かここでこう言った。
「どうもな、それはな」
「だよな。毎回恒例で出て来るしな」
「それにだ」
 さらに言うのだった。
「ギルギルカンだってな」
「リョウ、それは言うな」
 隼人がそれを止めた。
「本当に出て来るぞ」
「そうだよな。何か言ったら出て来るしな」
 弁慶も本能的にそう察していた。
「どういう理屈かわからないけれどな」
「出て来るものは出て来るからな」
 武蔵も言う。
「何故かわからないけれどな」
「そうだ。言えば何故か出て来る」
 鉄也もこれまでのことはよく覚えていた。
「気をつけないとな」
「そうだな。ではこの話は終わりにしよう」
 大介が上手くまとめた。
「いつも見る顔だしね」
「だよな。それで大介さん」
「うん、甲児君」
「もうヘルモーズのことはわかってるしな」
「そうだな。それはな」
 大介も甲児の言葉に頷く。
「確かにね。巨大で耐久力もあるけれど」
「攻撃は当てやすいからな」
「相手にはし易いよな」
「それに敵将のこともわかってきた」
 鉄也も話す。
「ジュデッカ=ゴッツォ達のこともな」
「それにズフィルードもだしな」
 宙はズフィルードについて述べた。
「あのマシンのこともいい加減把握してきたぜ」
「いや、待て」
 だがここで大文字が出て来た。
「確かに彼等はそうだが問題はだ」
「問題は?」
「っていいいますと」
「敵の指揮官だ」
 それだというのである。
「指揮官が問題だ」
「ギシン家の人よね」
「それなら」
「その敵将次第だ。その質によって戦いが大きくなる」
「辛い戦いになるかも知れませんか」
「それなら」
 こう話してであった。皆それぞれ話すのであった。
「マーグさん何か知ってるんじゃ?」
「ギシン家のことなら」
「いや、申し訳ないがだ」
 そのマーグが無念そうに話すのだった。
「私は長い間幽閉されたり洗脳されていた。ギシン星には幼い頃より連れられてから入ったことはない」
「じゃあ何も知らないんですか」
「自分のお家のことでも」
「申し訳ない。だがズールという男が治めていたと聞いている」
 この男の名前が出て来た。
「おそらくはその男がこれからの私達の相手だ」
「ズール?」
「どういう奴ですか?それは」
「どうも圧政者らしい」
 マーグはそうだと話した。
「バルマー帝国の中でというわけだ。それに」
「それになんですか」
「まだ何か」
「グラドス軍も協力しているらしい」
 グラドスの名前も出るのだった。
「あの者達もだ」
「グラドスってことは」
「ハザルもですか」
「はい、おそらくは」
 今度はロゼが出て来て言った。
「ハザル=ゴッツォとズールは親しい関係にありますから」
「そうなんですか」
「それはまたどうしてですか?」
「ズールはバルマーにおいて所謂地方政権としてかなり悪辣な所業を行っています」
「そのズールとハザルの利害が一致した?」
「それでなのかしら」
 皆ロゼの話を聞いて述べた。
「それで協力している?」
「そうなのかしら」
「おそらくは」
 こう話すロゼだった。
「ハザルもまた中央政権において地方の指示が欲しいようですし」
「そしてズールはより一層の権限の強化を望んで」
「その為にハザルと組んだ」
「そういうことなのね」
「おそらくは」
 こう述べるロゼだった。
「ですから今度の戦いはです」
「半分バルマーとの総力戦か」
「二個方面軍が相手か」
「まずいわね」
 皆その顔が険しくなる。
「一個方面軍でも苦労したのに」
「それが二個となると」
「大丈夫かしら」
「向こうの敵が我々だけだったらわからないだろうな」
 今言ったのはイルムである。
「若しそうだったらな」
「ああ、そうか」
「そうですよね」
 皆その言葉に頷いた。
「バルマーも敵は私達だけじゃない」
「宇宙怪獣もいればプロトデビルンもいる」
「それにゼントラーディやメルトランディも」
 彼等の敵も多いのである。
「そうか、じゃあ向こうのあいてもしないといけないから」
「それならこっちに全戦力を向けてくることはない」
「それなら」
「そういうことさ。敵もそこが泣きどころだからな」
「よし、それならだ」
 リンも言ってきた。
「我々はまずは進んでだな」
「バルマーがあちこちの敵の相手をしている間に倒すって訳さ」
 イルムの今度の言葉は軽いものだった。
「そういうことで行こうぜ」
「よし、それなら」
「行くか」
 こうして彼等の方針が決まった。ロンド=ベルはギシン家の勢力圏に入った。そこはタケルにとってもマーグにとっても運命の戦いであった。


第二十一話   完


                      2010・4・21 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧