八条学園怪異譚
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第十九話 口裂け女その九
「あの娘なら今連絡するから」
「って携帯持ってるのね」
聖花は口裂け女が自分のコートのポケットから携帯を出してきたのを見て言った。
「契約出来たの」
「博士の同居人ってことになってるからね」
それで契約出来たというのだ。
「あたし達は全員契約して持ってるよ」
「妖怪さん達は?」
「幽霊は実体がないから無理だけれどね」
彼等の場合は無理だというのだ。
「それはね」
「花子さんも持ってるわよね」
「持ってる相手だからこうして連絡できるからね」
「そうよね。おトイレに電話っていうのも」
聖花は首を捻って考えてから述べた、
「ないから」
「そういうことよ。だからね」
「携帯で連絡して、なのね」
「まあお話は博物館の中でしようね」
「お茶を飲んでよね」
「キリマンジャロあるわよ」
コーヒーの豆の一つだ、それがあるというのだ。
「インスタントもあるけれどね」
「あるのね」
「紅茶もあるからね」
愛実に対して言う。
「どっちでもいけるからね」
「じゃあ紅茶ね」
「私もそれを」94
聖花も今回は紅茶を選んだ。
「コーヒーもいいけれど」
「わかったよ。じゃああたしも紅茶にするよ」
二人に合わせてそれにするというのだ。
「そっちも持ってるからね」
「じゃあ花子さんとも合流して」
「それで、よね」
「まずは電話ボックスに行こうね」
話がそこに戻った、その電話ボックスにだ。
「さて、あたしは大鎌を持って電話ボックスを真っ二つにしてたって話があったけれど」
「化け物ね、まさに」
「というか何よそれ」
二人もこの話には苦笑いになる。
「中の人もすぱっと切られて」
「そうなるわよね」
「幾ら何でもないから」
口裂け女は右手を横に振って笑ってそれを否定する。
「それはね」
「殆ど死神だしね」
「大鎌って」
「あたしが使うのは包丁位だよ」
刃物といえばそれ位だというのだ。
「あと果物ナイフだね」
「どっちもお料理ね」
「そっちに使うものよね」
「包丁とかは人を刺すものじゃないからね」
「何処かのアニメじゃあるまいし」
「そういうことよね」
「包丁はお料理をするものよ」
妖怪もまたこの考えだった。
「人を何度も何度もめった刺しにするものじゃないよ」
「で、死んだら屋上でまた殺人事件よね」
「生首のない死体があったりして」
「怖いねえ、人間も」
「普通はないから」
「ちょっと洒落にならないわよ、そういうのは」
二人にとってはそうした話は別世界の話だ、確かに嫌なこともあるが二人は別に人を殺したいと思ったことはないのだ。
愛実もこう言う。
「包丁は絶対に人を刺してはいけないわよ」
「お肉やお野菜を切るものだよね」
「そうよ、私は包丁を使うお仕事だけれどね」
食堂の娘だ、それならだというのだ。
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