魔法少女コミカルあやめ
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第五話 幼女と養女の出会いなの?
【幼女と養女の出会いなの?】
某年、某月、某日、某曜日。
放課後の学校付近の公園。
今日も珍しく過保護な姉から干渉を受けていないのでるんるん気分だった私は、道端に倒れている金髪幼女を発見しました。
「ばたんきゅ~」
ぷよぷよで負けた時みたいな声を出して倒れている人間を見たのは人生初体験だと思います。小学校に入学する前の記憶は喪失しているので不確かで曖昧ですが、目を×の形にして気絶している人間が他にもいるとは思えませんので。
「行き倒れならぬ生き倒れ……いえ、むしろ生き絶えですか。あーめん」
「……ま、まだ死んでないよ……」
どうやら生きている模様。
「お、お腹空いた……」
そして空腹な様子。
もし金髪幼女ではなく銀髪幼女で修道女だったら、賞味期限切れのヤキソバパンでもあげるところです。
しかし、どうやら魔術師の騒動に巻き込まれるフラグではないみたいなので、嫌がらせはせず、つい先程購入したメロンパンをあげる事にしました。
「あ、ありがとう。おかげで……その、助かったよ」
「いえいえ、気にしないでください」
メロンパンを小さな口でもそもそと食べ終えた金髪幼女は見事に復活。
何度も頭を下げられました。
彼女、いえ幼女、名前はフェイト・テスタロッサさん。お母様の大事な物を探している最中に、食事を摂るのを忘れていたせいで空腹感からばたんきゅーしていたのだとか。正直どうでもいいです。
「ええっと……その、あの……高町あやめ、だっけ……?」
「あやめでいいですよ」
「……あ、あやめはこの辺りの人なの? そ、その……特徴的な髪と眼だから」
ぼそぼそとハッキリしない暗い話し方をする幼女さん。自分も同じ赤眼なのに何故そんな事を気にするのでしょうか。
「このストロベリーレッドの髪と眼は悪魔に呪われた証です。ちなみに悪魔に呪われると寿命が縮むので注意です」
取り敢えず嘘をついてみました。
「の、呪い!? 管理外世界にはそ、そんなに危険な生物が!? で、でもリニスも母さんもアルフも……」
簡単に信じた金髪幼女さん。
幼女さんは青ざめた顔でガクガクと震え出してしまいました。
なんだか申し訳ない気がします。
てゆーか管理外世界って何でしょうか。外国での日本の呼ばれ方? それとも海鳴市は一部ではそう呼ばれている?
まあ、どうでもいいですけど。
「ちなみに嘘です」
「……あ、アルフがたいへ――えっ?」
「たぶん両親からの遺伝です。元の名前は英名だったらしいので、この辺りの生まれではないのだと思います。でも住んでいるのはこの海鳴市ですよ」
「あ、え? あ、あれ? う、嘘?」
「外国の方には少々難しい言葉でしたか? A curse is a lieですよ」
「は、はへ……?」
金髪幼女さんは暫く困惑混乱。
でも更に暫くすると漸く理解出来たみたいで息を吐いて安心しました。
「こほんっ……えっと、それならじゃあ違う世界……じゃなくて、違う国で生まれた可能性もあるって事だよね?」
「まあ、そうですね。割とどうでもいいんですけど」
「だから管理外世界なのに魔力が……あ、もしかしてあの白い子の仲間? 髪型もそっくりだし……――」
私が肯定すると、ぶつぶつと独り言を始めた金髪幼女さん。小さな声なので不確かですが、なんだか魔力とか聞こえたようなそうでないような。もしかしたらウチの姉と同じ人種でしょうか。ウチの姉、高町なのはも最近『魔法少女になったの!』とか戯言をほざいて、しかもコスプレまでしていましたし。
なんだか面倒臭そうなので関わるんじゃなかったと少し後悔です。
「あの、あやめはジュエルシードって知ってる?」
そんな風に、後悔は文字通りに後で悔やむ事しか出来ない事を再確認していると、独り言を終えて一人の世界から戻ってきたらしい金髪幼女さんが、突然質問をしてきました。
「青い菱形の宝石なんだけど……」
「グリーフシードやらソウルジェムなら知ってますよ」
「ぐりーふしーど? そうるじぇむ?」
「絶望の結晶と希望の結晶です」
「そ、それはどんなモノなのかな?」
「虚構の世界の架空の物質です」
「そ、そっか……なら関係ない、かな」
試しにウチの姉がハマっている魔法少女作品のアイテムを出してみても知らない様子。どうやら同じごっこ遊びをしている仲間ではないみたいです。
「じーー……」
「な、なに、かな?」
「いえ、何でもないです」
「そ、そう」
金髪幼女さんをじっくり観察。
少し傷んだ金髪ツインテール。宝石みたいに赤い眼。少し不健康に痩せて顔色も悪いけれど元は整っているのでまるで人形のような顔立ち。小さく白く細い身体に黒のシンプルなワンピース。某数字の歌姫に似た声。大人しい性格。
高町家の母、桃子さんに見せたら娘にしたがりそうな感じですね。
「将来、ペットを飼うならこんな感じの犬を飼いたいですね」
「どうかしたの……?」
「なのはもユーノくんとかいう白いフェレットを拾ってくるぐらいならこの娘みたいな娘を拾ってくればいいのに。意志が弱そうだから召使にピッタリですし」
「えっ? えっ、な、何か、な?」
「いえ、何もないのでそんなに怯えないでください。助けた恩を利用して奴隷にしようとか考えてませんから」
フェイトは逃げ出した。
――しかし回り込まれてしまった。
「はなっ、離してっ! たすっ、助けてっ! 母さん! アルフ!」
「もう君を離さない……愛していますよ、フェイト」
「こ、こんな場面で後ろから抱きしめられながらロマンチックな言葉を言われても全然ときめかないよっ! 恐怖しか感じないよ!」
ですよねー。
頭をポカポカと叩かれたので、冗談だと説明して大人しく解放しました。
それからベンチに座って何と無く雑談を再開します。
「あやめは何て言うか……自由だね」
苦笑しながらいきなりそんな事を言い出した金髪幼女さん。もしかしてのもしかして、貶されているのでしょうか。
「あ、ち、ちち違うよ? 一応ちゃんと褒めてるんだよ?」
訝し気な視線を向けると、金髪幼女さんは慌てて私の疑問を否定しました。
「あのね、あやめが羨ましいんだ……」
「まあ、全世界が羨む抜群のプロポーションですから気持ちはわかります」
「よ、よくわかんないけど、うん、私は君の自由さが羨ましい」
まさかのボケ殺し。
すずかだったら『ふうん、身長百二十程度のあやめちゃんが?』とか意外に黒い部分を見せ――ではなく、アリサだったら『バカな事言ってんじゃないわよ!』とか言いつつ鋭いツッコミをくれるとこなのに、まさかの超絶スルーですか。
なかなかやりますね、金髪幼女さん。
「自由に振る舞って自由に生きられる君が私はすっごく羨ましい」
そんな馬鹿な事を考えてる間も、金髪幼女さんは暗い表情でシリアスな空気を醸し出しながら話を続けます。
「悩みなく自由に生きて、歪みなく真っ直ぐ生きて……私とは全然違う」
「本能に従順忠実ですからね」
自分の言った言葉で前途洋々だしが前頭葉用無しに聴こえて『ロボトミー手術でもするのですかね? ボーカルが意欲、創造、実行を司る前頭葉を不要だと歌うとは……』と呟いてしまって恥をかいたのを思い出しました。
でも今の話には関係ないので黙っておきます。空気の読める私。
「でも、私は――アルフ?」
と、そんな風に私が空気を読んだのにも関わらずに突然停止した幼女さん。それから、そのままの態勢で何度か頷いたり笑ったりして何処からか電波を受信しちゃってるのか不思議な行動をしています。
そして、それが終了すると、
「ごめん、もう行かなきゃ」
と、言って、幼女さんはゆっくりとベンチから立ち上がりました。
「ちょっと用事が出来ちゃった」
「そうですか、それは残念です」
「うん、私も残念」
「でも、まあ、またいずれ会えるでしょう」
「うん、そうだね……うん」
一度繋がった縁はそう簡単には切れないと思いますしね。
「またね、あやめ」
「またです、フェイト」
こうして、不思議な電波っ娘な金髪幼女、フェイト・テスタロッサさんとの一度目の会合は幕を閉じた。
後書き
にじふぁんで公開していた分をすべて投稿完了。多分。
遅くなってごめんなさい。
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