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八条学園怪異譚

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第十九話 口裂け女その三

「噂を聞いて校内でベッコウ飴は絶対にポマードと一緒に売る様になったしね」
「口裂け女ってポマード嫌いですからね」
「ベッコウ飴とポマードを間違えて食べたらしいから」
 どうして間違えるのか不思議だがこういうことになっている。
「そのポマードも一緒じゃないとね」
「だからですか」
「そう、口裂け女はポマードを持っていると出て来ないのよ」
 理由は簡単で嫌いだからだ。
「例えベッコウ飴を一緒に売っててもね」
「それ近所のお店でもですからね」
 学園の噂を聞いて周りの店もそうしているのだ。
「だから皆は」
「そう、口裂け女に会ってないのよ」
 実際にやろうとしてもポマードと一緒に持って行かないとならないからだ。
「そういうことなのよ」
「成程、そうなんですか」
「お店の方もわかってるのね」
「そういうこと。まあ実際にいるかどうかもわからないしね」
 愛子は妖怪を信じていない訳ではないがその目では見ていないので曖昧な言葉になっていた。この辺りは二人と違う。
「だからね」
「そうよね。それじゃあ」
「会うのは少し難しいんですね」
「というか会いたくないわね」
 愛子は笑って二人に言った。
「怖いから」
「そういうことね」
 愛実はとりあえずは愛子の話をこう受けた。そしてだった。
 愛子との話を終えて自分の部屋に入ったところで一緒にいる聖花にこう提案した。
「それじゃあベッコウ飴はね」
「何処で買うの?」
「この商店街のお店では普通に売ってるから」
 ポマードとセットにはなっていないというのだ。
「だからそれを買ってね」
「それでよね」
「高等部全体の正門に夕方ね」
「行けばいいわね」
「それも多分ね」
 愛実は自分の考えも述べる、話をしながらこの部屋でもちゃぶ台を囲んでお茶を飲みながら話をしている。
「人がいない時ね」
「その時に行くのね」
「妖怪さん達って人が多いと表には出ないから」
 妖怪の性質の一つである。
「だからね」
「人がいない時に行くのね」
「そうしよう」
「何ていうかね、あれよね」
 聖花は愛実の話を聞いてからこんなことも言った。
「妖怪さん達ってあれで結構シャイよね」
「そういえばそうよね」
「あれでね」
「何ていうか普通に恥ずかしがりよね」
「傷つきやすいところもあるし」
 二人もこのことに気付いてきたのだ。
「気を遣ってもくれるし」
「繊細よね、結構」
「そうよね」
 こう二人で話すのだった。そしてだった。
 愛実も少し考える顔になって聖花に述べた。、
「口裂け女さんもかしら」
「あの人もなのね」
「そう、多分結構繊細だと思うわ」
「人を驚かせるのは好きみたいだけれどね」
「妖怪だからね」
 妖怪は習性として人を驚かせて楽しむ、それは口裂け女も同じであることは二人にしてもわかるlことだった。
 それで愛実はこう聖花に言ったのだ。
「それは当然としてね」
「そのうえで行くのね」
「まあ鎌とか鉈とかはないから」
 そうした物騒なものはないなら安心だった。 
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