IS クロス Zero ~赤き英雄の英雄伝~
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Mission 0 英雄と乙女機装
前書き
これはプロローグのようなものです。
基本Side○○とない限りモノローグは三人称視点です。
あと題名の乙女機装は勝手に付けた俗称です。
気に食わなかったらすみません。
------荒野
「ちっ! キリがないな」
こいつらはどこまで追ってくる気だ、うっとおしい。
呟きながら緑色の光剣をふるい目の前の『レプリロイド』を斬り伏せる。
いつかの兵から頂戴した銃で敵を撃ち抜く。
もう何十体目だろうか?何百体目?いや何千体目?数え切れる数ではないが考えてみる。
1、2、3、…4、5、…………
が、数えた数が十を越えたあたりでまた新しい『レプリロイド』の部隊が襲いかかる。
「くっ!被弾したか、いい加減補給をしておきたいが……」
「ギギギ……ギギギ……」
彼の赤い鎧にひびが入る。長らく整備をしていないのか最早ひびの無い個所の方が少ない。
補給をしなければ今にも倒れてしまいそうだがそんな事をしていたら敵にやられる。
まさしく絶体絶命だった。中距離攻撃の出来る『トリプルロッド』も『シールドブーメラン』も度重なる戦闘で故障してしまった。
『リコイルチェーン』や『バスターショット』などエネルギーの消費が激しすぎるし『リコイルロッド』『ゼロナックル』は近接過ぎてリスクが高い。
「あそこの岩場に一時隠れるか……」
遠目に見える洞窟のような岩場を目標とする。追手をあらかた切り伏せると姿勢をグッと屈める。
そのまま地を蹴ると残像が出来るほどの速さで走りだす。
足パーツへの負担が大きいので短い距離しか進めないがそれでも連続すればただ走るよりはるかに速い。
途中邪魔な岩があったが切り捨てた。
岩場につくとすぐさま天井を撃ち抜き崩す。
自身の『ゼットセイバー』をもってすればこの程度の岩を小石程度のするのも朝飯前だが、末端の『レプリロイド』には十分なバリケードになりうる。
「ふぅ…………ライフエネルギー残量は……6メモリ、か。厳しいなどうにかして補給しなければ」
エネルギーのやり繰りについて考えているとある少女が頭をよぎった。
自分とおなじ金の髪を持つ少女、『シエル』。彼女と彼女の仲間がいなければ自分は今でも眠っていただろう。
彼女は『レジスタンス』の司令官にして技術者、そして唯一の人間だった。いつもエネルギー不足に悩む『レジスタンス』の皆のために新しいエネルギーの開発に頭を悩ませていた。
「(あのときは分からなかったがこんなにも苦労していたんだな……)」
壁に背を預け暗い洞窟の天井を見上げる。
そして長らく顔を見ていない『レジスタンス』のメンバーの顔を思い出す。
皆に世話になり、皆良いヤツらだった。
「(あいつらは今、どうしているのだろうか?)」
今となっては確認のしようもない。
そう考え少し自嘲気味に嗤う。
「(今は他人の心配より自身の心配だな。いつも無茶だけはするなと言われていたが言いつけは守るべきだったな…………ん?)」
洞窟の奥からなにか音が響いてくる。微かに光も見える。
エネルギーのような気配を感じ赤い鎧の彼……『ゼロ』は立ちあがる。
関節部に異常が生じたのか少し動きの悪い右足を引きずりながら光の方へ向かう。
「これは……? ワープホール…のような何かか?……っ!?」
光りが強くなったかと思うと光源のある方へものすごい力で引きずられる。
反対方向へのダッシュを試みるが右足の踏ん張りが足らず逆に引きずられるのを加速させてしまった。
左足からじょじょに光へ溶けていく。
そして、少し経ったのち彼の全身を飲みこみ終わった光の渦はその場から消え去った。
------???
「あっれ~? いま一瞬だけ磁場が乱れた~? ん~おかし~な~まだその規模の物は実験してないはずなんだけどな~? 場所は~っと…………IS学園試験会場…かぁ。一応ちーちゃんに連絡しとこうかな?」
どことも知れない薄暗い部屋でフリルのついた服を着た女がウサギの耳を模したアクセサリーをピコピコ動かしながら巨大なモニターに何かを打ち込んでいた。
いくつものキーボードを駆使して数十ものモニターに何かを打ち込んでいる彼女はまさしく『天才』と呼ばれる人種なのだろう。
この服装からは到底想像しえないが。
------IS学園試験会場
「ここは……?」
光の渦から解放された彼、ゼロは見た事も無いような地面に倒れ伏していた。
「随分整った床だな」
ツルツルとした不思議な床に顔をしかめる。
いわゆるフローリングされている床なのだが、廃墟で眠り、荒野で過ごした彼にそんな知識があるはずも無い。
「(ここまで整った壁や床などの設備……ここはネオアルカディアか?)」
いや、ないな。いくらネオアルカディアでもここまできれいな設備は無かったはずだ。
と、ひとり自己完結する。
先ほどより幾分か軽くなった体を起こす。そして視界に入った自分自身の外見に違和感を覚える。
「(限りなく人に近い身体になっている? 鎧が無い……武装は?見当たらない)」
辺りを探すが何も見つからなかったのでとりあえずという事で薄暗い通路を歩く事にした。
しばらく歩いていると扉が目の前に現れた。
細心の注意を払い、扉の向こうの人気まで読むぐらいの気迫で扉を開け放つ。
「(これは……? 新たな兵器か?)」
扉を開けたゼロの前には見た事も無いような兵器、形容するならパワードスーツのような物が佇んでいた。
ソレは腰にはかつて戦った『ファントム』の使っていたような剣をぶら下げ、どういう原理かは分からないがどこにくっついているわけでもないのに少し地面から浮いている羽を模したスラスターと思わしきもの、そして肝心の中心部は空洞になっている。
「(誰かが装着、搭乗するタイプのものか?いったい何なんだ?)」
警戒を解かないようにしながら『ソレ』に近づきピタと片手で触れようとする。
その瞬間後ろから声がした。
「キミ! 関係者以外がそれに触っちゃだめよ! キミ見た所男の子じゃない!」
急な来訪者に意表を突かれ柄にもなく取り乱し、バランスを崩し、『ソレ』に触れてしまう。
するとその鉄の塊は急に発光し出し、後ろのスラスター、もしくは排熱フィンから空気を放射する。
ブワッとゼロの金の髪が風に乗り後ろに広がる。
急な出来事にどう対処してよいのか分からずいくつかの対策を練っていると後ろから驚いたような声がかけられた。
「嘘……でしょ? 『IS』が起動した…………!?」
何かいけない事をしてしまったのかと思いミスを犯した自分に少しあきれるゼロ。
「(先ほどの発言などを総合するともしかしてこれは……女以外起動不可能なのか?)」
まったくもってその通りなのだが彼は訳もわからないまま興奮気味の女性に引きずられていった。
敵につかまったら下手に抵抗してはいけないという無意識による行動である。
こうして彼は『英雄』から『学生』になった。
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