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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百六十話 キョウスケとエクセレン

              第百六十話 キョウスケとエクセレン
ロンド=ベルはスコットランドに入った。そこでアインストを待っていた。
「そろそろか?」
「出て来るのか?」
誰もが待っていた。そうして二日目であった。
「出ました」
こう言ったのはアゼレアだった。
「ネス湖にです」
「あの湖か」
ナタルはその場所を聞いてまずは呟いた。
「面白い場所に出て来たな」
「ネッシーだな」
ここでヘンケンが言った。
「それだな」
「はい、そうです」
ナタルもそれだと答える。
「そのネッシーのいる湖ですが」
「さて、ネッシーは見られるかどうかだが」
「おそらくそれは」
ナタルは言葉を濁らせてしまっていた。
「戦闘が行われますと」
「隠れてしまうだろうな」
「例えいたとしてもです」
仮定の言葉も出すのだった。
「やはり。隠れてしまうでしょう」
「是非一度は見てみたいものだがな」
これがヘンケンの望みであった。
「そうもいかないか」
「はい、私もそれは残念に思います」
「というとだ」
ヘンケンは今のナタルの言葉を聞いて述べた。
「バジルール少佐、君もネッシーは」
「いると思います」
はっきりとこう答えたのだった。
「やはり。目撃例が多いですし」
「そうか。やはり君もそう思うか」
「では艦長だ」
「そうだ。これまでの話でわかると思うが」
「左様ですか」
実は彼もそうだとは今まで思っていなかったナタルであった。
「艦長も」
「あれだけ目撃例があるのだ」
「そうですね」
彼等がネッシーの存在を信じる根拠はそれだった。
「やはり。あれだけ見ている話が多いと」
「やはりいると思う」
ヘンケンはまた言った。
「ただし何なのかはわからないがな」
「恐竜ではないと?」
「恐竜ではない可能性は否定できないのではないのか」
これがヘンケンの考えだった。
「やはりな。形が違っていることが多い」
「私は恐竜だと思いますが」
ナタルはそう考えているのだった。
「具体的に見たわけではないですが」
「それでもか」
「はい。とはいってもです」
また言うナタルだった。
「本当に何なのでしょうか、ネッシーは」
「世の中わからなくてそのままでいいものもあるのだろうな」
こんなことも言うヘンケンだった。
「そういうものもな」
「わからないままで、ですか」
「謎は謎のままであるとその方が面白い話がある」
そうだというのだ。
「ネッシーはそういう話なのだろうな」
「そういうことですか」
「そうではないかな」
また言うヘンケンだった。
「ネッシーという存在は」
「そうなのですか」
「しかしだ。少佐」
ここでヘンケンは話を変えてきた。
「貴官も生真面目だけではないのだな」
「はい?」
「いや、ネッシーの存在は頭から否定すると思っていたが」
ロンド=ベルに入るまでのナタルのイメージだった。
「違うのだな」
「私も全てがそうだとは限りませんので」
「そうなのか」
「異星人もいます」
ナタルはまた言った。
「そうした世界です。UMAがいてもです」
「そうだな。おかしくはないな」
「そうではないでしょうか。何はともあれですね」
「そうだな。ネス湖だ」
そこに行くというのだった。
「行くぞ、今から」
「わかりました。それでは」
こうしてロンド=ベルはネス湖に向かった。するとだった。
「来たな」
「ええ」
「やはりですね」
ロンド=ベルの周りには既にアインストの大軍が展開していた。そしてだった。
「ようそこですの」
「アルフィミィ!」
「やはりいたのね!」
「そうですの。私もですの」
こう話すアルフィミィだった。
「そして」
「エクセレンさん!」
「ならここで!」
「無理ですの」
今回も彼等の決意を否定してみせた。
「エクセレンは私ですの」
「私の?」
「といいますと?」
「そうですの」
また言う彼女だった。そうしてだった。
「行くですの」
「来たか!」
「アインスト!」
彼等を取り囲んでいたアインスト達が一斉に攻めてきたのだ。
四方八方から攻めて来る。ロンド=ベルはそれに対してだった。
「円陣だ!」
「はい!」
全員カイの言葉に頷いた。
「円陣でそれをやり過ごすぞ」
「わかりました!」
「それじゃあ!」
「そうしてだ」
彼はさらに言うのだった。
「まずは敵の攻撃を防ぎきる」
「そうしてですね」
「それからですね」
「そうだ。数を減らしてからだ」
それからだというのだ。
「いいな。守るぞ」
「まずはですね」
「数を減らして」
「今の数は三十万」
ネス湖のほとりにいる彼等に対して殺到してきていた。
「それをですね」
「戦い抜く。まずはだ」
言う側から自ら接近してきた相手にライフルを放つのだった。それで早速打ち抜く。
「戦うぞ!」
「はい!」
こうしてロンド=ベルとアインスト達の戦いがはじまった。殺到するアインスト達に対してそれぞれ渾身の攻撃を浴びせていくのだった。
「これで!」
タケルがファイナルゴッドマーズを敵の部隊に放つ。
それで彼等を一掃する。その後ろからすぐにまた来た。
「タケルさん!」
「私達も!」
「いますから!」
その彼の後ろからアサギ、マユラ、ジュリが出て来た。
「ですから安心して攻撃して下さい」
「負けませんよ」
「この戦いは」
「済まない」
タケルはその三人に対して礼を述べた。
「恩に着る」
「恩はどうでもいい!」
その彼にカガリが告げる。
「戦ってエクセレンさんを助け出すんだ!」
「そうですね。まずは」
「アインストを減らして」
「それでですね」
「そうだ。減らすぞ!」
言いながら敵を次々と撃墜していくカガリだった。
ビームライフルをこれでもかと連射していく。そうしてだった。
「こうやってな!」
「それはいいんだけれどね」
だがここでユウナの声がした。
「ねえカガリ」
「何だ?」
「あまり前には出ないでね」
彼が言いたいのはそれだった。
「敵に囲まれたら助け出すのが面倒だから」
「面倒なのか」
「うん、すごくね」
クサナギからのユウナの返答は実にあっさりしたものだった。
「本当にね。だから頼むよ」
「そんなに嫌なのか」
「あのね、そもそもだよ」
ここでまたユウナの愚痴がはじまった。
「国家元首自ら前線に出て戦うなんてね」
「いいじゃないか。勇敢な女王じゃないか」
「それで死んだらどうするの」
身も蓋もない返答だった。
「そうなったらどうしようもないじゃない」
「どうしようもないのか」
「それを我儘を聞いて許してるんだから」
「全くです」
「せめてクサナギの艦橋にいてもらいたいものです」
キサカとユウナも同じ考えなのだった。
「若し何かがあれば」
「それでオーブはどうなるのか」
「全くですね」
今度はアズラエルが言った。
「国家元首が自ら前線になんて。時代が違いますよ」
「それはその通りですが」
「あのですね」
ここでユウナとキサカがアズラエルに言ってきたのだった。
「アズラエルさん」
「貴方も艦橋に出てはですね」
こう言うのだった。
「民間人ですよ」
「ですから」
「民間人でも戦ってるじゃないですか」
しかし彼はにこりと笑って言うのだった。
「そうじゃないんですか?」
「それはそうですが」
「まあ貴方もロンド=ベルに入られてから戦闘中はいつも艦橋にいますが」
実はそうなのだった。
「しかし。それでもですね」
「危険ですよ」
「何、覚悟のうえですよ」
平然と答える彼だった。
「それはですね」
「覚悟されているのですか」
「万が一の事態には」
「はい、だからです」
また言うアズラエルだった。
「安心して下さい。いいですね」
「まあ覚悟されているのならです」
「いいですが」
「そういうことで御願いします」
ここまで話してであった。彼もまたクサナギの艦橋にいるのだった。
そしてユウナは。さらにカガリに対して言った。
「まあね」
「まだ言うのか」
「くれぐれも前進し過ぎないようにね」
このことを言い続けるのだった。
「頼むよ、そこは」
「ああ、わかったわかった」
いい加減カガリも鬱陶しくなってきていた。
「フリーダムにでも乗っていれば考えるがな」
「じゃあカガリはずっとそのストライクルージュのままだね」
それを聞いたユウナの言葉である。
「このままね」
「おい、新型機はないのか」
「実際問題としてないよ」
実はそうなのだった。
「アカツキはフレイにいったしね」
「じゃあ私はこのままか」
「うん、ずっとね」
このままだというのだ。
「無闇やたらに突撃してもらっても困るし」
「ロンド=ベルも苦しいのか」
「というかストライクルージュも凄い機体じゃないかい?」
「それはそうだが」
「ストライクフリーダムとかが凄過ぎるんだよ」
そうだというユウナだった。
「ああいうのと比べたら駄目だよ」
「フリーダムやジャスティスともか」
「そうだよ。だからストライクルージュで我慢しておいて欲しいね」
「わかりたくないがわかった」
不満が露わになっている言葉だった。
「それではな」
「そうしてもらえると助かるよ。だったら」
「攻撃は続けるんだな」
「是非ね。どんどんやっていいよ」
それはいいというのだった。
「クサナギもさっきから主砲が止まる暇ないしね」
「撃て、撃て!」
「右舷弾幕を張れ!」
彼の横でキサカとユウナが必死に指示を出している。
「正面に火力を集中させろ!」
「敵の動きを見逃すな!」
「じゃあ僕も指示を出さないといけないかな」
「というよりか指示して下さい!」
「今大変なのですから!」
二人の矛先はユウナに向かった。
「全く。遊んでいる暇はないのですよ」
「それを御承知下さい」
「わかってるよ・・・・・・んっ!?」
しかしだった。ここでユウナは気付いたのだった。
「あれ、ヴァイスリッターが」
「消えましたな」
「これは」
「あの青い髪の少女の機体もですね」
アズラエルはそのことに気付いたのだった。
「どういうことでしょうか」
「何かあるのかな」
ユウナはすぐにそれを疑った。
「けれどまずは」
「はい、敵です」
「アインストを全て倒しましょう」
キサカとトダカはそれを言うのだった。
「あともう一息です」
「ですから」
「よし、総攻撃だ」
ユウナもそれに頷いた。
「それで数を減らしていこう」
「はい、それでは」
「このまま」
こうしてアインスト達の数を減らしていく。彼等がそのアインスト達を全て倒した時だった。
またヴァイスリッターが出て来た。そうしてだった。
「!?」
「どうした!?」
「ヴァイスリッターから通信デス」
スワンはいぶかりながらも大河に告げた。
「どうしマスか?」
「すぐにつないでくれ」
こうスワンに答える大河だった。
「何だ。急に消えてから」
「急に出て来てですからね」
スタリオンも言う。
「そしてこれまで沈黙していたというのに」
「みょうなんてものじゃねえぜ、これはよ」
火麻もあからさまに警戒していた。
「この状況は」
「そうだ。だが虎穴に入らずんば」
「虎子を得ずだな」
「うむ」
まさにそうだというのだった。
「さあ、どうなる?」
「鬼が出るか蛇が出るかだな」
彼等はそれにあえて乗ったのだった。そしてヴァイスリッターからの声は。
「お待たせ!」
エクセレンの明るい声だった。
「エクセレン=ブロウニング只今帰還致しました~~!」
「エクセレンさん」
「確かに」
「帰還ってことは」
ここで誰もが言った。
「元に戻ったんですか!?」
「アインストの呪縛が」
「んふふふふふふ~~」
目を閉じて楽しそうに笑うエクセレンだった。
「みんな心配かけて御免ね」
「いえ、いいですよ」
「元に戻ったんなら」
しかしだった。誰もがまだ警戒は解いてはいなかった。
クスハもまた。怪訝な声でブリットに言ってきたのだった。
「ねえブリット君」
「ああ」
クスハのその言葉に頷くブリットだった。
「これはな」
「何かが違うな」
「違う」
レビも言うのだった。
「これは」
「それでだけれど」
アヤはあえて彼女に問うた。
「今まで何をしていたの?」
「何をって?」
「そうよ。心配したのよ」
こう問うのだった。
「本当にね」
「色々あるのよ」
これがエクセレンの返答だった。
「色々とね」
「色々となのね」
「そう。大人の事情よ」
一応普段のエクセレンにも見える返答だった。
「ねえキョウスケ」
「違うな」
「そうだな」
「間違いない」
しかし皆は言うのだった。
「この違和感は」
「何かの念か?ありゃ」
今言ったのはリュウセイだった。
「妙なのがまとわりついてるぜ」
「ヴァイスリッターに」
「大きな念」
何人かはそこまでわかった。
「人でないものの」
「だとするとまさか」
「それでだけれど」
エクセレンがまた皆に言ってきた。
「早いとこ着艦させてくれません?」
「あのさ」
カチーナが彼女に問うてきた。カチーナも警戒している。
「ヴァイスリッター随分変わったな」
「そうね。確かにね」
何でもないといった感じの返答だった。
「ちょっと変わっちゃったけれどね、ヴァイスちゃん。けれど」
「けれど?」
「私は何ともないわよん」
こう言うのである。
「別にね。憑いてはいないわよ」
「いや、違う」
「この違和感は」
しかし誰もが感じていた。
「何かが憑いている」
「間違いない」
「艦長」
「そうだな」
ダイテツはテツヤの今の言葉に頷いた。
「ここはだな」
「その方がいいから」
「疑いたくはありませんが」
「そうですね。今回はです」
「中尉」
ユンが彼女に言ってきた。
「申し訳ありませんが」
「どうしたのん?」
「先に機体を調べさせてもらいます」
「いやん、別に怪しいところはありませんってば」
それを聞いても誰も信じようとしなかった。そしてそれは」
「ねえキョウスケ」
今度はキョウスケに声をかけてきたのだった。
「貴方からも言ってよ」
「やはり違う」
だが彼はここで言った。
「御前は違うな」
「えっ!?」
「御前はエクセレンではない」
はっきりと言った。
「誰だ、御前は」
「ちょ、ちょっとぉ」
そのキョウスケの言葉に笑って返すエクセレンだった。
「冗談きっつくない?それって」
「普段はあんな調子でもだ」
しかし彼は言うのだった。
「あいつはこんな時に軽口を叩きはしない」
「確かに」
「決める時は決める人だったわね」
「そしてだ」
キョウスケの言葉はさらに続く。
「御前は何かが違う」
「そうだ、エクセレンさんとは決定的に」
「何かが」
「それだけは確実だ」
「もう・・・・・・」
ここでエクセレンの言葉が鈍った。
「キョウスケったら。そんな・・・・・・」
「!?変わった」
「また」
「その時だった。ロンド=ベルの周りに異変が起こったのだ。
「磁力が!?」
「そして重力も」
「おい、何だよこれ!」
皆すぐに驚きの声をあげる。
「何が来るんだよ!」
「まさかここで」
そうだった。そのまさかだった。
再び彼等の前に出て来たのだ。
「アインスト!」
「こんな時に!」
「エクセレン、御前は」
再びアインスト達に囲まれる。その中でキョウスケはエクセレンに対して言った。
「まさか」
「キョウスケ・・・・・・」
「全軍動けません!」
「移動不可能でです!」
「うろたえることはない」
だがその中でリーは冷静だった。
「このまま迎撃を開始する。
「えっ、迎撃!?」
「このままで、ですか」
「そうだ。各自砲台になりそのうえで対処するのだ」
そうしろというのだった。
「わかったな」
「はい、それじゃあ」
「今は」
「そしてだ」
今度はギリアムがキョウスケに声をかけてきた。
「キョウスケ、御前はだ」
「あいつを落とせば・・・・・・」
「何っ!?」
今のキョウスケの言葉にはギリアムも驚きの声をあげた。
「今何と言った!?」
「方法はそれしかない」
彼の言葉は強いものだった。
「最早な」
「た、大尉!」
「それは駄目です!」
「そうですよ、それだけは!」
しかし誰もがそれを止める。
「それだけは」
「何があっても」
「助けられます!」
シャインが言う。
「絶対に!」
「そうです」
ラトゥーニもだった。
「でないと」
「後悔します」
「あんたが諦めたらだ!」
「誰が中尉を守るんですか!」
京四郎とナナも言う。
「絶対に救い出せ!」
「そうで、何があっても!」
「だがあいつは既に」
「いや、できる!」
ここで叫んだのはタケルだった。
「できます、俺にはわかります!」
「タケルか」
「はい、俺の言葉を信じて下さい」
こう彼に告げるのだった。
「できるのは大尉しかいません」
「俺だけか」
「そうです。大尉がですね」
キョウスケに対して言葉を続けていく。
「中尉の心に強く訴えかけるんです」
「それでか」
「そうです、それです」
まさにそれだというのだった。
「そうすれば必ず・・・・・・!」
「できるのは大尉しかいないんだ!」
一矢も言ってきた。
「あの人を救えるのは!」
「ナンブ大尉」
そしてルリもだった。
「ここは正念場です」
「エクセレンをどうするかか」
「それに」
今度はイルムが言ってきた。
「あんただけなんだよ」
「俺だけとは?」
「今動けるのはな」
こう彼に言うのだった。
「俺達の中で」
「確かに」
「今は」
皆もこれはすぐにわかった。
「キョウスケさんしかいません!」
「そうですよ!」
「ですから!」
そして考えも同じだった。
「ここは何があっても!」
「エクセレンさんを!」
「それにだよ」
ここで万丈も言ってきた。
「ナンブ大尉。惚れた女の子を助けるのはね」
「何だというのだ?」
「男の役目だよ」
こう言うのだった。
「それこそがね」
「その通り!」
イルムも言った。
「これでもエクセレンを落とすっていうのかよ!」
「しかしだ」
だがまだ躊躇いを見せるキョウスケだった。
「そちらがその状況では」
「ノープロブレム!」
「その通り!」
ハッターとフェイが応えてきた。
「この程度はどうということはない!」
「動けなくて何だっていうの?」
「幸い敵の攻撃はかわせる」
「その程度は動ける」
ギルとレドンの言葉だ。
「それなら何の問題もない」
「どのみち敵は向こうから来る」
「それならよ」
「こっちはやっつけるだけ」
「簡単ね」
シルビー、デボラ、ジェニファーも言ってきた。
「だから安心して」
「私達はどうとでもなるわ」
「それよりもよ」
「行け」
テムジンは一言だった。
「それだけだ」
「何も心配することはない」
そしてクリアリアも。
「中尉を助けるんだ」
「そういうことです!言って下さい!」
シローが叫ぶ。
「俺達はどうとでもなります!」
「いい?大尉」
クェスもだった。
「チャンスは今だけよ」
「今だけか」
「これを逃したら二度と」
「それに」
今度はギュネイだった。
「大尉なら絶対にやれるんだよ」
「信じることだね」
キャラは微笑んでいた。
「自分をね」
「俺自身を」
「わかったのなら進むべき道は一つ」
マシュマーはその手にあの薔薇を持っていた。
「愛を適えるのみ!それしかない!」
「愛の為に今立ち向かうその心こそが」
ブンドルもまた薔薇を持っていた。そうして。
「美しい・・・・・・」
「そういうことだ!さっさと行け!」
「わし等は不死身ぞ!」
カットナルとケルナグールもまた。
「感動のシーンを見せるのだ!」
「わしとかみさんのラブストーリーよりもな!」
「これ絶対に嘘だ!」
「ああ、そう決まってるぜ」
闘志也とロックオンが今のケルナグールの話に突込みを入れた。
「何であんな美人がこんなごついおっさんと!」
「しかも大金持ちで性格まで最高にいいなんてよ!」
「絶対にこれおかしいわよね」
「異常事態です」
アニューと留美も信じていなかった。
「何であんな奇麗な人がケルナグールさんと」
「カットナルさんも成功してるんでしょう」
「ええい、黙れ!」
「真実を疑うのか!」
カットナルとケルナグールはすぐにそうした言葉に抗議で応えた。
「わしの努力の賜物じゃ!」
「わしこそがかみさんに相応しいのじゃ!」
「まあ世の中色々あるからね」
「確かに」
今言ったのはアレルヤとティエリアだった。
「特にカップルって」
「人の好みは色々なものだ」
「俺合成写真かって思ったぜ」
「コラっていうんだよね、それって」
エイジに斗牙が言う。
「確か」
「そうだよ。絶対に嘘だって確信したぜ」
「ぬかせ若造!」
ケルナグールはすぐにエイジに言い返した。
「貴様今からそっちに行って勝負するぞ!」
「っておっさんの船も動けないんじゃねえのか?」
「わし自ら行く!」
ケルナグールも無茶を言う。
「一撃みまってくれる。覚悟するのだ!」
「それはいいとしてですけれど」
シャインが呆れながら騒ぎ続ける彼等に言ってきた。
「敵が来ましたわ」
「そうね」
エツコがそれに頷く。
「遂に」
「よし、ならば迎撃用意!」
ケルナグールの切り替えは速かった。
「すぐに前の敵を攻撃せよ!」
「了解!」
「それじゃあな!」
すぐに全員迎撃に向かう。そうしてだった。
「キョウスケ」
「はい」
今度はゼンガーの言葉を受ける彼だった。
「こういうことだ」
「そうですか」
「エクセレンに取り憑いたものを倒せ」
彼はこう告げた。
「そして」
「そして」
「御前の手で彼女を取り戻せ」
そうしろというのだった。
「いいな」
「・・・・・・了解」
キョウスケもそれに応えたのだった。
「それじゃあ俺は」
「吉報を待つ」
「はい」
ゼンガーのその言葉にも頷いた。そうしてだった。
「行くぞエクセレン」
こう言ってヴァイスリッターに突き進む。途中にいる敵は最早ものの数ではなかった。
そうしてだった。エクセレンの側に辿り着き。
「エクセレン!」
彼女に声をかけたのだった。
「目を覚ませエクセレン!」
「・・・・・・我の目的は監査」
しかしエクセレンは謎の言葉を出すだけだった。
「はじまりの地を」
「はじまりだと!?」
「乱す者達を」
エクセレンは誰に答えるまでもなく言い続ける。
「もう一つの・・・・・・眠る」
「何のことだ?」
キョウスケにはわからなかった。彼はさらにエクセレンに言うのだった。
「俺だ、わかっている筈だ」
「キョウ・・・・・・スケ」
反応が見られた。しかしだった。
ここで彼女が現われたのだった。今ここで。
「キョウスケ。ここでも貴方と」
「また御前か」
キョウスケはそのアルフィミィを見て言った。
「今日こそはここで」
「我の目的は監査」
その横で虚ろな目で言い続けるエクセレンだった。
「乱す者達を」
「監査・・・・・・」
ラミアがそれを聞いて呟いた。
「その為にアインストが現われたというのなら」
「それは一体」
「何でございますの?」
「はじまりの地は地球のことか?」
ラトゥーニとシャインの言葉に応える形となっていた。
「それはつまり」
「そうですの」
まさにそうだと答えるアルフィミィだった。
「ですから私は」
「それではだ」
それを聞いたキョウスケがそのアルフィミィに問うた。
「監査の対象は何だ。地球か」
「私の役目は宇宙の監査」
エクセレンがここでまた言った。
「そして私の望みは」
今度はアルフィミィが言葉を出して来た。
「静寂の宇宙」
「何が何をエクセレンに言わせている」
キョウスケはこの中で考えた。
「若しかそれは人ならざるものの」
「はじまりの地、それはまた宇宙を変える」
「私は宇宙を変えたはじまりの地にあらたな力を生むもの」
また二人が言ってきた。
「そして今度こそは正しき血脈を」
アルフィミィの言葉は続く。
「もう一つの血脈を消し去り純粋なク静寂の宇宙を」
「そこまでにしろ」
だがここでキョウスケは言った。
「訳のわからないごたくはだ」
「キョウスケ、貴方はまだ」
「御前が何者か」
そのアルフィミィに告げる。
「何を言いたいのか知らん」
こう言うのだった。
「だが」
「だが?」
「御前の都合とエクセレンは関係ない」
「私とエクセレンが?」
「そうだ」
言い切ってみせたのだった。
「返してもらうぞ」
これが彼の言いたいことだった。
「いいな」
「関係ない?」
アルフィミィはこの言葉に反応してきた。
「いえ」
「何だ?」
「貴方にはわかっている筈ですの」
こう言うのであった。
「キョウスケ、私は」
「何だというのだ」
「私とエクセレンは」
その言葉を続ける。
「まさしく」
「関係ないと言った筈だ」
それ以上は言わせなかった。
「違うか、言った筈だ」
「まだそんなことを」
「キョウスケ・・・・・・」
「!?」
「今確かに」
皆今のエクセレンの言葉を聞いた。
「自分から」
「ええ、間違いないわ」
「今確かに」
「何とかするから」
「エクセレン!」
「後は宜しくね」
こう言ったその時だった。
ロンド=ベルに異変が起こった。それは。
「!?」
「動ける」
「間違いない」
そうなのだった。彼等は動けるようになったのである。
「これは一体」
「どういうことなの!?」
「何が起こったの?」
「まさか」
ここでエリスが気付いたのだった。
「エクセ姉様が」
「エクセレン、御前か」
「・・・・・・・・・」
返答はなかった。だが微笑んでいるように見えた。
「エクセレン・・・・・・」
そんなエクセレンを見てアルフィミィは残念そうに言った。
「何処までも私の邪魔を」
「よし、反撃だ!」
「ええ!」
「これで!」
動けるようになったロンド=ベルはここで動きはじめたのだった。
そうして一気に攻勢に転じた。戦局が一変した。
「これでな!」
「いけるわ!」
ジャーダとガーネットが同時にスラッシュリッパーを放ち敵を切り裂く。
「よし!」
「後は!」
「わかっている」
キョウスケが彼等の言葉に頷いた。
「エクセレン、必ず御前を」
「大尉!」
「私達も!」
ブリットとクスハもそれに続こうとする。
「行きます!」
「やらせて下さい!」
彼等が出たその時だった。
「!!」
「これは!!」
二人は同時に異変を感じたのだった。
「真龍虎王が」
「反応してる」
「グウウウウ・・・・・・」
実際に唸る四霊であった。
「しかも四つの霊が全て」
「これは」
「守護者の僕」
アルフィミィはその真龍虎王を見ても言う。
「貴方達も私の邪魔をしますのね」
「ウウウウ・・・・・・!」
「ですけれど」
その真龍虎王に対する言葉である。
「最早貴方達にも私達を倒すことなぞできません」
「それでもだ!」
「そうよ!」
ブリットとクスハはアルフィミィに対して言い返した。
「彼等が御前達と戦うなら」
「私達は彼等と共に戦うわ!」
「何の為にですの?」
「決まっている!」
ブリットがアルフィミィに言い返した。
「御前達からこの世界を守る為だ!」
「はじまりの地を?」
アルフィミィはそれを聞いて述べるのだった。
「それは無駄」
「無駄!?」
「そう。無駄ですの」
「どういうことなの!?」
クスハは思わず反射的に彼女に問い返した。
「それは一体」
「話は後にするべきだ」
だが二人にククルが言ってきた。
「エクセレンを助けたくばだ」
「はい」
「それは」
「あの者を倒してからにするのだ」
アルフィミィを見つつの言葉だった。
「それからには」
「それじゃあ」
「まずは」
「操られておるのならば」
まだアルフィミィを見ているククルだった。
「それが最もよい」
「それならここは」
「あの娘を」
「面白くないですのね」
「そんなことは関係ないことだ」
キョウスケがアルフィミィに返した。
「この世界を守る為にはだ」
「はじまりの地の者達に未来なぞないというのに」
「未来は自分達の手で切り開く」
キョウスケはまたアルフィミィに言い返した。
「そういった青臭いことは言うつもりはない」
「では何ですの?」
「今戦う意志だけは曲げん」
アルフィミィを見据えての言葉だった。
「それだけはだ」
「それでも無駄ですの」
彼の今の言葉も否定するアルフィミィだった。
「貴方達に未来はありませんの」
「生憎だが」
そう言われても下がるキョウスケではなかった。
「分の悪い賭けは嫌いではない」
「そう言うと思っていましたの」
「わかっていたのか」
「はいですの」
そうだというのだった。
「貴方だから」
「それならばだ」
そう言われたのをよしとしての言葉である。
「後はジョーカーを切るだけだ」
「そうはいきませんの」
アルフィミィはそれをさせまいとする。
「後は貴方を」
「心配するな」
またアルフィミィに言い返した。
「エクセレンよりも先に」
「エクセレンよりも?」
「御前のところへ行ってやる」
こう言うのだった。
「ただしだ」
「ただし?」
「鋼鉄の塊付だ」
言いながら身構える。そしてだった。
「ただで済むと思うな!」
「!!」
「落ちてもらう!」
今全速力で突き進むキョウスケだった。
「エクセレンを使って好き勝手やってくれたこと。高くつくぞ!」
「何故ですの?」
そう言われて戸惑いの声をあげるアルフィミィだった。
「私とエクセレン、何が違うというのですの?」
「何っ!?」
「私はここから出られない」
こう言うのだった。
「はじまりの地の終焉、そして新たなはじまり。その世界でなければ」
「こいつ」
ここでキョウスケはあることに気付いたのだった。
「エクセレンの」
言いながらまずありったけの銃弾を打ち込むのだった。そうして。
「終わりだ!」
突進を続けその角で突き刺す。それで終わりだった。
「どうだ!」
「うう・・・・・・」
致命傷だった。少なくとも最早戦闘不能だった。
「ですが」
「何っ、まだ立っているのか」
「これで揃いましたの」
「何っ!?」
「はじまりの地」
また言うのだった。
「新たなる種」
それが揃ったというのである。
「揃ったのですね」
「答えろ!」
キョウスケは彼女に問うた。
「それはどういうことだ!」
「そうすれば私は」
だがアルフィミィはその問いに答えなかった。
「それで・・・・・・」
こう言い残して姿を消したのだった。気付けば他のアインスト達も何処かへと消えていた。
「消えた」
「中尉は!?」
皆ここでエクセレンを見た。
「う、うう・・・・・・」
「よし」
その禍々しい形になったヴァイスリッターを見て言うキョウスケだった。
「後はあのマシンだけだ」
「大尉」
ライが彼に問うた。
「何か策が」
「あるのかよ」
リュウセイも彼に問う。
「どうやってこれから中尉を」
「機体を行動不能にする」
まずはそれだというのだった。
「その後であいつを引き摺り出す」
「過激ね」
「けれどそれしかないんだな」
皆それを聞いて言う。
「それなら大尉」
「それで」
「いや」
しかしここでレビがキョウスケに言ってきた。
「それでは駄目だ」
「駄目だというのか」
「あの邪念はある場所に集まっている」
彼女はこう言うのだった。
「額の赤い玉にだ」
「赤い玉?」
「そうだ、そこにだ」
見ればだった。ヴァイスリッターの額に確かに赤い玉があった。それを見る。
「あれか」
「そうだ、あれだ」
まさにそれだというのだ。
「あの赤い玉を潰せばだ」
「そういうことか」
ヴィレッタがそれを聞いて言った。
「あの部分が受信機なのだな」
「それじゃあですのね」
エイナが問う。
「あの赤い玉を潰せばエクセレンさんは」
「そうだ」
レビは彼女の問いにも答えた。
「操り糸は消える筈だ」
「おい、大尉!」
剣人がそれを聞いてキョウスケに問う。
「できるな!」
「やるしかない」
これがキョウスケの返答だった。
「いや」
「いや?」
「やってみせる!」
こう言い換えたのだった。
「何としてもだ」
「よし、その言葉だ」
刹那が今の彼の言葉に頷いた。
「ヴァイスリッターの動きは任せろ」
「手伝ってくれるのか」
「無論」
刹那の返答に濁ったものはなかった。
「仲間だからだ」
「・・・・・・そうか」
それを聞いてキョウスケの目が座った・
「後は撃ち貫く!」
「まずはヴァイスリッターの動きを!」
「よし!」
全員でその両手と両足を即座に撃ち抜いた。
これで動きを止め。そのうえで、であった。
「大尉、後は!」
「やれ!」
「これで終わらせる」
エリアル=クレイモアの構えだった。そうして。
「エクセレン!」
彼女の名前を叫んだ。そのうえで今その赤い玉を貫いたのだった。すると。
「ううう・・・・・・」
「ヴァイスリッターが怯んだ!」
「今だ!」
皆でキョウスケに告げる。
「中尉を!」
「ここで!」
「わかっている」
キョウスケもそれはわかっていた。そうして。
今エクセレンを助け出したのだった。コクピットに手を入れて。
ヴァイスリッターは動きを止めていた。だからこそできたことだった。
その時だった。不意に何者かの声が聞こえてきたのだった。
「御前ノ役目ハ終ワッタ」
「誰だ」
キョウスケはその声に問うた。
「誰が喋っている?貴様は何者だ?」
「ヤハリ混沌カラ純粋ナル者ハ生マレヌカ」
「何だこいつは」
「ヤハリルーツハ一ツデアラネバナラヌ。理解シタ」
「何を理解したのか知らんが」
その声に対して問うキョウスケだった。
「何故エクセレンをさらった」
「・・・・・・・・・」
「俺にも貴様の声が聞こえる」
沈黙した声にさらに問う。
「無関係とは言わせんぞ」
「・・・・・・・・・」
「何故俺をさらわなかった」
「御前ハ不完全」
声はこう答えてきた。
「ダカラ不必要」
「不完全だと!?」
「不完全、不必要」
声はまた言ってきた。
こう言ってだった。突如ヴァイスリッターから爆発が起こった。
「!?」
「エクセレンさん!」
皆それを見て驚きの声をあげる。しかしだった。
「大丈夫だ」
「大尉!」
「中尉は!」
「俺のところにいる」
見ればだった。己のコクピットの中に入れていた。そのうえで彼女を抱き締めていた。
「ここにな」
「そうですか、よかった」
「生きているんですね」
「そうだ」
「ん・・・・・・」
その時だった。エクセレンから声がした。
「キョウスケ?」
「エクセレン、気付いたんだな」
「気付いたって?」
キョウスケの言葉に応えてきた。
「一体何が」
「けれど中尉かな」
「中尉かなって?」
だがここでこうしたことを言う人間も出て来た。
「だって偽者とかあるんじゃ」
「そういえば」
「安心しろ」
しかしここでキョウスケが言った。
「間違いなく本物だ。俺にはわかる」
「感覚で、ですか?」
「それで」
「そうだ」
まさにそれによって、というのだ。
「だからだ。安心しろ」
「頭がガンガンする・・・・・・」
その中で頭を押さえているエクセレンだった。
「一体何だっていうのよ」
「とにかく大丈夫みたいだな」
「そうね」
皆キョウスケの言葉に頷いた。
「じゃあやっぱり」
「これで中尉は」
「戦闘終了です」
レフィーナはこのことを一同に告げた。
「そして」
「そして?」
「作戦終了です」
このことも告げるのだった。
「皆さんお疲れ様でした」
「はい、そうですね」
「これで」
皆エクセレンのその帰還を心から喜ぶことになった。こうしてネス湖での戦いは終わった。
「それで具合はどうなの?」
「本人に聞く?」
リツコはにこりと笑ってメネシスに問うた。
「どうなのか」
「ええ、それじゃあ」
「中尉」
サラも来て彼女に問う。
「大丈夫ですか?」
「どうなのかしら」
「まだ頭がぼうってするけれど」
こうラーディッシュの医務室で二人に答えるエクセレンだった。
「けれど大丈夫よん」
「そう、よかった」
「それなら」
「お肌の張りももサラちゃんと同じ位だし」
「私ですか?」
「貴女とは前から他人の様な気がしなかったのよ」
楽しそうに笑ってそのサラに言うのだった。
「どういうわけかね」
「それは私もですけれど」
実はサラのそうなのだった。
「何故かはわからないですけれど」
「診察の結果異常はなしよ」
リツコが皆に話した。
「後はラーダの方で何もなければ」
「そっちはあまり自信がないけれど」
「けれど私は何となくわかります」
サラが言ってきた。
「これはニュータイプとかそういうのじゃなくてですね」
「感覚としてなのね」
「はい、やっぱり自分みたいに思えますから」
だからだというのだった。
「いつもの中尉です」
「そうね。それは間違いないわ」
ネメシスもそれは認めた。
「エクセレンよ、間違いなくね」
「そうね、確かにね」
「しかし。それにしても」
ここで横からファングが話す二人を見て呟いた。
「博士とメネシスもどちらがどちらなのかわかりにくいな」
「確かに」
「御二人も」
彼のその言葉に頷く一同だった。
そしてだった。ここでギリアムが言った。
「しかし。疑問は残るな」
「そうですね」
「確かに」
誰もがここで首を傾げさせた。
「何故さらったのか」
「それですね」
「ん~~、若しかして」
エクセレンはいつもの乗りで言った。
「私の美貌のせいとか?」
「有り得んな」
「うむ」
キョウスケとゼンガーがそれは否定した。
「それはな」
「違う」
「あらら、二人で否定するの」
「そんな単純な理由ではない」
「間違ってもだ」
だからだというのだった。
「そうした理由ではない」
「他の理由だ」
「それなら」
ラミアはここで言った。
「エクセ姉様がそうなったのはヴァイスリッターのせいか」
「ああ、丁度よかったわ」
今度はラーダが来た。
「皆集まっているわね」
「診察の結果がわかったのね」
「ええ、そうよ」
ニナの言葉に応える彼女だった。
「それでだけれど」
「この二人もどっちがどっちかわからないよな」
「確かに」
今話す二人を見ても皆思うのだった。
「もうどっちがどっちなのか」
「そっくり」
そんな話をしてながら見ているのだった。
ここでエクセレンが言った。
「ラーダさん、答えはこっち?」
「んニャ!?」
指差されたシロが首を傾げる。
「それともこっちの方」
「何かあまり嬉しくない例えだニャ」
今度はクロだった。
「ええ」
そしてそれに頷くラーダだった。
「そうよ」
「何なの?これって」
「何の検査?」
「どちらがカトル君に似てる声でどちらが私に似てる声なのかのね」
それだというのである。
「正解よ。その通りよ」
「ああ、声で」
「それなの」
皆これでわかったのだった。
「それなら確かに」
「ずっとここにいないとわからないことね」
「だから検査に使ったの」
だからだというラーダだった。
「その結果正解よ。異常ないわ」
「心配かけて本当に御免ね」
エクセレンが皆に謝ってきた。
「本当にね」
「いえ、いいですよ」
「そうそう」
しかし皆微笑んでそれはいいとしたのだった。
「中尉が無事なら」
「もうそれだけで」
「そう言ってくれるの」
皆のその言葉が心に沁みた。
「有り難う」
「そしてだが」
ここでキョウスケが言ってきた。
「後は御前がさらわれた理由とアインストについてだが」
「何かわかるか、中尉」
「それが」
だがここでエクセレンは首を捻るだけだった。
「向こうに行ってた時のことあまり覚えてなくて」
「そうなんですか」
「それは」
「そうなのよ」
珍しく困った顔になるエクセレンだった。
「ちょっとね」
「それではだ」
ギリアムが問うた。
「あの自己とアインストの関連性はだ」
「あのこと話したの?キョウスケ」
「ああ」
エクセレンの言葉に答えるキョウスケだった。
「それはな」
「これはあくまで俺の予想だが」
ギリアムが話してきた。
「御前達が乗っていたシャトルに衝突したのは」
「ええ」
「それは?」
「エアロゲイターの偵察機ではなくあインストだったのではないのか?」
こう言うのであった。
「それはな」
「しかもだ」
今度はキョウスケが言った。
「何故御前なのだ?」
「私がって?」
「何故御前を操った。俺ではなく」
「ううんと」
少し考えてからこう言ったエクセレンだった。
「無愛想な能面男より若い美女の方がとか?」
「真面目に考えろ」
「御免、わからないわ」
こう答えるしかないエクセレンだった。
「ちょっとね」
「その事故とアインストに関係があるのなら」
ラーダが言う。
「大尉が操られていてもおかしくなかったわね」
「だが俺には手出しをしなかった」
キョウスケはこのことを告げた。
「裂けていた」
「それに私達も」
「だよな」
「つまり」
ラーダは皆の話も聞いて一つの答えを出した。
「アインストには人を思いのままに操れる力はないのね」
「そうですね」
「それは」
皆もそれは察した。
「おそらく」
「ないですよね」
「けれど」
ここで言ったのはシルヴィアだった。
「私感じたけれど」
「あの女の念か?」
「ええ、それよ」
それだとアポロに答えるのだった。
「思念が徐々に強まってきているわ」
「そうだな」
シリウスも妹の言葉に頷く。
「あれは確かにな」
「エクセレンさん」
つぐみがエクセレンに問う。
「アインストのストーンサークルは一体」
「多分だけれど」
こう前置きしてから答えるエクセレンだった。
「あれは多分扉の一つよ」
「扉の?」
「そうよ。アインストがいる世界と私達の世界をつなげるね」
「そうした扉なんですか」
「あれは」
「けれどそれは不完全で」
エクセレンは言うのだった。
「何時でも開けるわけじゃない」
「つまり」
「あの宇宙にあるゲートと同じ?」
皆エクセレンの言葉からそう考えた。しかしここでミシェルが言った。
「しかしな」
「どうしたんですか?」
「アインストは個々で転移機能を持っているぞ」
ルカに応える形での言葉だった。
「けれどどうして扉が必要なんだ?」
「それは私もわからないの」
エクセレンにもだった。
「けれど多分」
「別の目的の為に?」
「だとすると」
「何かよね」
エクセレンも首を傾げてしまっていた。
「やっぱり」
「それでその目的は?」
「一体」
「奴等が言うはじまりの地」
キョウスケがここで言った。
「地球とそこで生きる俺達人類を滅ぼすことか?」
「それだけですか?」
ジュンがそれに意義を述べてきた。
「何かそれだけじゃないんじゃ」
「おそらくな」
キョウスケもそれは察していた。
「地球と人類を攻め滅ぼすことが最終目的なら」
「もっと簡単に来るわね」
麗花が述べた。
「まずね」
「そうだな。攻めるだけでいい」
グレンは彼女の今の言葉に頷いた。
「それだけでな」
「しかしだ」
キョウスケはさらに言った。
「奴等は俺達や地球圏の情勢を探ってもいる」
「普通ただ攻め滅ぼすだけなら」
今言ったのはミヅキだった。
「そこまではしないわね」
「ただ潰すだけだからね」
ルナも言う。
「ある程度調べて後は全力でね」
「何かの準備をしている」
また言うキョウスケだった。
「どうやらな。そして」
「そして?」
「今度は」
「自分達にとって必要なものが揃うのを待っているように思える」
こうも言うのだった。
「何かな」
「必要なものというと」
「それは」
「何かね」
誰もが首を傾げてしまった。
「アインスト、何を考えているのか」
「何もかもが全く」
「わからない・・・・・・」
全ては謎だった。誰もが彼等の真意をわかりかねていた。

第百六十話完

2009・10・24  
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