スーパーロボット大戦パーフェクト　第三次篇

　　　　　　　　　　　　　第百五十五話　ダークブレイン
　
ロンド＝ベルは異空間の中でダークブレインと対峙している。
彼等のほかは誰もいない。しかしであった。
「それではだ」
「むっ！？」
「何なの！？」
「我が尖兵を呼ぼう」
こう言うと共に、であった。
モビルスーツやガルラ帝国のマシン、それにあちらの世界の兵器や修羅のものまで次々に出て来たのであった。夥しい種類と数であった。
「そうかよ、雑魚ってわけかよ」
「それも潰さないといけないってことね」
「ここで御前達を滅ぼす」
ダークブレインは重厚そのものの声で告げてきた。
「その為に呼び出したのだ」
「そうか、けれどな！」
「その努力は無駄になるわ！」
コウタとショウコが叫んだ。
「ダークブレイン！向こうの世界での戦いの為に！」
「貴方を倒すわ！」
「そうだ、その通りだ！」
「わしもかみさんに会いたくなったからのう！」
「美しき戦いの為に」
ドクーガ艦からいつもの三人の声がしてきた。
「帰らせてもらうぞ！」
「異論は聞かん！」
「ダークブレインとやらであってもだ」
「異論か」
ダークブレインは彼等の言葉にゆっくりと返してきた。
「異論を述べようが構わぬ」
「あれっ、意外だね」
万丈は彼のことばを聞いて悪戯っぽく返してみせたのだった。
「君みたいな存在異論なんて認めないものだけれどね」
「幾ら言おうが無駄だからだ」
これが彼の返答だった。
「我の前に屈するのだからな」
「そう言うと思ったよ」
万丈の言葉はここでも軽いものだった。
「実のところはね」
「そうなのか」
「そうさ。それに」
さらに言葉を続けるのであった。
「そうしたことを言った奴がどうなるかはよく知ってるよ」
「ではどうだというのだ？」
「君は負けるね」
ダークブレインに対してはっきりと告げたのだった。
「間違いなくね」
｢我が敗れるというのか」
「そうさ。何度でも言うよ」
万丈の言葉には余裕さえあった。
「君は敗れる。僕達にね」
「その通りよ！」
「貴様に勝利はない！」
「勝利の美酒は我等の手にある」
ここでまたカットナル、ケルナグール、ブンドルが言ってきた。
「だからだ。貴様は大人しく敗れるがいい」
「骨は拾ってやる」
「私達の記憶に永遠に残る」
「戯言を言う」
三人に言われても平気な様子のダークブレインだった。
「その程度の言葉で惑わされると思っているのか」
「戯言じゃねえんだな、これが」
「その通りよ」
今度はアポロとシルヴィアが言ったのだった。
「手前が何を言おうとな！」
「私達は負けないわよ！」
「その通りだ」
シリウスも言うのだった。
「貴様を倒せずしてこれからの戦いを生き延びることはできないのだからな」
「じゃあよ！」
勝平も言う。
「ぶっ潰してやるぜ！」
「わかったぜ、勝平」
「私達もそれでいいわ」
「ワン！」
宇宙太と恵子だけでなく千代錦も彼の言葉に応えた。
「思う存分やれ」
「あと腐れなくね」
「当然そのつもりだぜ。久し振りにあっちの世界を見ないからな」
「そういえば向こうの世界って」
斗牙がここで皆に問うた。
「どんな感じなのかな」
「ああ、それですけれど」
洸が彼の問いに答えてきた。
「大体同じですよ」
「同じなんだ」
「はい、地形もそうですし街の場所も」
「何もかもが同じなんだ」
「そうなんです」
こう斗牙に話すのだった。
「俺達もこっちの世界で驚きましたから」
「そうよね」
マリが洸の今の言葉に応えて頷いた。
「あの時は本当に驚いたわ」
「しかしだ。それでやりやすくなったからな」
「そうですね。同じでしたから」
神宮寺と麗も言う。
「戦術も戦略もな」
「考えやすかったです」
「それが不幸中の幸いでしたね」
猿丸はこう結論付けた。
「戦いやすかったですよ」
「そうですか」
テッサは彼等の今の話を冷静に聞いていた。
「何もかもですか」
「ええ、そうよ」
ミサトが彼女に告げた。
「だから安心して作戦立ててね」
「わかりました」
「違うのは相手だけみたいね」
スメラギもここで言った。
「どうやらね」
「そうですね。なら私達も」
「ええ。今まで通りでいいわね」
二人で言い合うのだった。
「わかりました」
「そういうことでね」
「何か二人が一緒にいると」
ここで言ったのはルイスだった。
「不思議な気がするけれど」
「そうだね」
沙慈もルイスの言葉に頷く。
「ブリット君とシリウスさんを見ていても不思議な気持ちになるけれど」
「あとクスハさんとメイリンさんも」
「えっ、私もですか！？」
「そりゃ心当たりはあるけれど」
実は否定できないのだった。
「最初会った時から何か」
「似てる！？って気になってたけど」
「そうなのよね。私もリューネとね」
「だよね」
今度はアレンビーとリューネだった。
「性格まで何処か似ているし」
「奇遇よね」
「僕はそうした相手が多いが」
「わかるぜ、それは」
ジェリドがヤンロンの言葉に頷く。
「そうだよな黄金よ」
「ああ、その通りだ」
黄金もジェリドの今の言葉に頷いた。
「何なんだ、一体」
「世の中考えたらあかんこともめっちゃ多いんやな」
「そうね」
遥がタータの言葉に頷いていた。
「それに」
「それに？」
「綾人君元に戻ってるし」
「えっ！？」
「嘘！？」
皆これには驚く他なかった。
「だって神人になったじゃない」
「それで！？」
「ほら、けれど実際に」
皆あまりにも懐かしいラーゼフォンの姿をそこに見たのであった。
「いるでしょ」
「ってことは」
「そこにいるのは」
「はい、俺です」
綾人のその声がしてきた。
「戻って来ました」
「何かよくわからないけれど」
「戻って来たんだ」
皆納得できないが納得するしかなかった。
「とりあえずはよしとする？」
「そうね」
「奇跡が起こったってことだね」
ライラはあえてそのまま受けていた。
「これはね」
「奇跡か」
「そうさ、それで説明がつかないかい？」
こうカクリコンにも言うライラだった。
「これはさ」
「そうだな。奇跡か」
「だからあの坊やは私達のところに戻れたんじゃないかい？」
「そうなのか」
「それでか」
アポリーとロベルトはそれを聞いて考える顔になった。
「こうして戻って来たのか」
「奇跡によって」
「あるいは人だったからか」
クワトロはこう言うのだった。
「人だったから私達のところに戻って来ることができた」
「成程、そうかもな」
アムロはクワトロが何を言いたいのかすぐに察したのだった。
「人だからどんな姿でも元に戻ることができた。そういうことか」
「私はそう思う」
あえて断定は避けるクワトロだった。
「そうな」
「そうかもな。何はともあれだ」
「仲間が戻って来たってことはいいことですね」
コウもライラと同じく素直に喜んでいた。
「それは」
「そうだな、その通りだ」
バニングがコウの今の言葉に応えて頷いた。
「それならばだ」
「仲間も皆揃ったし」
キースが言う。
「一斉攻撃ですよね、今回も」
「全軍前に進む」
シナプスも実際にこの指示を出した。
「いいな、それで」
「了解」
「じゃあそれでいきましょう」
全員彼のその指示に頷いた。
「それじゃあ」
「今から」
「総攻撃だ」
また言うシナプスだった。
「そして元の世界に帰るぞ」
「ええ」
「あの訳のわからない目つきの悪い脳味噌野郎を倒して」
「俺達もだ」
今言ったのはマリンだった。
「向こうの世界で戦う為に」
「行く」
応えたのは宗介だった。
「それだけだ」
「行きます！」
トビアが早速前に出た。
「そして勝ちます！」
彼の前進を合図にして全軍動きだした。こうしてダークブレインとの戦いがはじまった。
「いけーーーーーーーーーーーっ！」
トビアはその両手のビームサーベルで目の前のハイザックを斜めから切り裂いた。それによりこのモビルスーツは瞬時に爆発して消えたのだった。
そして次のマラサイも。まず彼が奮闘を見せた。
「素晴らしい、素晴らしいですよトビア君」
カラスが彼の戦いぶりを見て言う。
「どうやらまた成長したようですね」
「カラス先生」
「それでこそ人です」
彼は笑みを浮かべてこう言うのだった。
「人は成長してこそ人なのですから」
「先生がよく言っていることですよね」
「はい、その通りです」
からす自身も乗艦を前線に出し攻撃を加えている。
「ですから」
「これでいいんですね」
「そうです。戦い、そして掴むのです」
こうも言うカラスだった。
「勝利を」
「わかりました。それじゃあ」
「元の世界に戻っても戦いは続きますが」
それはもう誰もがわかっていることであった。
「ですがその中にこそです」
「あるんですね」
「そう、人がです」
これが彼の考えであった。
「成長し、何かを掴む人という存在がです」
「人は成長するんですか」
「成長を止めてしまったのが神です」
アル＝イー＝クイスを踏まえての言葉であるのは言うまでもない。
「それを止めないのが人なのですよ」
「では僕は」
「人であり続けるのです」
こう告げるのであった。
「いいですね」
「ええ、それじゃあ」
「このまま前に進みます」
己の乗艦をさらに前に出させるカラスだった。
「そしてより多くの敵を」
「わかった」
「それではだ」
彼と共に艦橋にいるザビーネとドレルが応えた。そうして実際に艦が前にやられる。
他の戦艦も前に出る。それはそのまま前線が前になったということだった。戦いはその分だけロンド＝ベルにとって有利なものになっていた。
「よし、このままだ！」
「ダークブレインが見えてきたわよ！」
「よし！」
ここでコウタが叫んだ。
「行くぞショウコ！」
「ええ、お兄ちゃん！」
ショウコもまた兄に応える。
「ここでダークブレインを倒して」
「俺達の世界に戻る！」
『そうだ』
ロアもここで彼等に告げるのだった。
『俺達の使命は』
『ダークブレインを倒すことでもあるから』
エミィも言うのであった。
『行くぞコウタ』
『ショウコ、いいわね』
「ああ、任せろ！」
「わかってるわ！」
二人もその言葉に応える。
「あのダークブレインを倒して」
「それで私達の世界へ！」
『御前達と一緒に戦ってきて良かった』
『そしてこれからも』
ロアとエミィはここでさらに言うのだった。
『戦っていきたい』
『この戦いが続く限り』
「ロア」
「エミィ」
二人は彼等の心をここで知ったのだった。
「そこまで言ってくれるのか」
「私達に」
『ああ、俺達は一緒だ』
『何時までもね』
「よし、それならな！」
「まずは！」
「カイザーバーーースト！」
コウタはコンパチブルカイザーから激しい光を放った。それがダークブレインを撃った。
それはかなりの威力だった。しかしそれでもまだダークブレインは立っていた。
「ちっ、まだか！」
「カイザーバーストでも駄目なのね」
「確かに力はある」
それはダークブレインも認めることだった。
「だが」
「だが？」
「この程度で我は倒せぬ」
こう言いながらおのれの攻撃を放ってきたのだった。
恐ろしい闇の降臨だった。それを受け忽ちのうちにコンパチブルカイザーの全身が傷付く。
「くっ、この攻撃・・・・・・」
「これはかなりの」
『ダークブレイン、この世界でもやはり』
『力は健在なのね』
ロアとエミィはその攻撃を受けても二人より落ち着いたものであった。
『俺達が倒すべき宿敵』
『その力は』
「我は御前達と永遠に戦う宿命にある」
ダークブレインはその彼等に対して告げてきた。
「ならば。今度こそ倒してくれよう」
『それはこちらの台詞だ』
『そうよ、絶対に』
そう言われても諦める二人ではなかった。そしてコウタとショウコに対して言うのだった。
『いけるか？』
『大丈夫？』
「甘く見るなよ」
「この程度なら今までだって何度も受けてきたわ」
こう言って彼等に返すのだった。
「この程度じゃな！」
「死なないわよ！」
『そうか、やれるのか』
『戦えるのね』
「倒す！」
「必ず！」
今二人の言葉が重なっていた。
そうして今その闘志が頂点に達した。まずは。
「ファイアーーードラゴン！」
コンパチブルカイザーの右手から炎の龍を放ったのだった。
「いっけえええええええええーーーーーーーーーっ！」
「スパイナルナックルよ！」
続いてショウコが兄に告げた。
「左手で！」
「よし！」
妹のアドバイスを受け炎に続いて左手を放った。両者がダークブレインを撃った。
「むっ！？」
「そしてだ！」
「これよ！」
二人の攻撃はまだ終わりではなかった。今度は。
『これで決めるぞ』
『いいわね』
まずロアとエミィが二人に声をかけてきた。
『まずはカイザードリルを仕掛けてだ』
『その次は』
「あれか」
「あれを仕掛けるのね」
二人も彼等の言っていることがわかった。
「一気にだな」
「それなら」
『そうだ、行こう』
『勝利の為に』
「それならだ！」
「まずはこれよ！」
「ダブルスパイラルナッコル！」
今度は両手を放ったのだった。それが派手にダークブレインを撃った。
「ぬっ！」
「そしてだ！」
「これよ！」
動きを止めたダークブレインに突進する。原罪の十字架を受けてもまだ。
「カイザードリル！」
「どうかしら！」
ドリルが貫く。そうして。
「カイザースキャナー！」
それでまずはダークブレインを捉え。
「ロックオン！」
『オーバーゲートエンジン』
ロアが言った。
『その力を解放する時が来た』
『コウタ、ショウコ！』
エミィは二人に声をかけた。
『いいわね！』
「ああ！行くぜ！」
「オーバーブースト！」
「うおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーっ！」
コウタが絶叫する。そしてその両手に青い紙の剣を持ち。
それでダークブレインを両断したのだった。青い神の光が」
「オーバーカイザーソーーーーーーーーーーーードッ！」
コウタが叫ぶ。そうして今両断されたダークブレインは。
「我が敗れるだと」
「そうだ！」
「私達の力で！」
コウタとショウコはその背に出てから言うのだった。
「御前の負けだ！」
「これでね！」
「ぬう・・・・・・」
まずはそれを受けるダークブレインだった。
そうして。そのうえでゆっくりと開いてきたのだった。
「そうか。見事だ」
「じゃあこれでな」
「私達の世界に帰るわ」
「しかしだ」
だがここで言うのだった。
「御前達はどちらにしろ」
『どちらにしろ？』
『何だというの？』
「消える」
こう言うのであった。
「やがてはな」
「何だ？手前もそう言うのかよ」
「世界が消えるって」
コウタとショウコはその言葉を聞いて言った。
「全くよ、そんなこと言ってもよ」
「聞き飽きたわよ」
「全ての世界は消える」
二人にこう言われてもまだ言うのであった。
「やがてはな」
こう言い終えると大爆発が起こった。ダークブレインはその中に消えたのであった。
これで異空間での戦いは終わった。するとすぐに彼等は再び光に包まれるのだった。
「元の世界かよ」
「これで戻れるのね」
コウタとショウコは今それを実感していた。
「さて、じゃあな」
「シャドウミラーやインスペクターとの戦いね」
「ああ、そっちの方か」
アレックスは二人の言葉を聞いて言った。
「他にも結構いるんだってな。ゲストとかバルマー帝国とか」
「本当に何ていうか」
「混沌としているっていうか」
「向こうの世界も壮絶なんだな」
ジュゼ、イワン、ハンスもここでアレックスに続いた。
「それでもここまで来たら」
「乗りかかった船」
「戦わせてもらうな」
「有り難いね」
ミシェルは彼等のその言葉を聞いて満足そうに笑った。
「本当にここでお別れなんて寂しいしね」
「全くだ」
ヘンリーもそうなのだった。
「あちらの世界でも戦えるのはいいことだな」
「じゃあ皆さん」
「行くとしよう」
ルカとオズマが光の中で言ってきた。
「次の戦いへ」
「俺達の世界でのな」
「よし、それではだ」
「わし等も行こう」
シュバルツとマスターアジアはここで姿を消したのだった。
「兄さん、師匠」
「ドモン、また会おう」
「貴様の戦い、久し振りに見せてもらったが」
ここでマスターアジアは言うのだった。
「見事だったぞ。また成長したな」
「師匠・・・・・・」
「次に会う時を楽しみにしている」
弟子に対して微笑んでの言葉だった。
「ではな」
「はい！」
「あのね、あんたはねえ！」
そのマスターアジアに対して叫ぶアスカであった。
「ちょっと、聞いてるの！」
「何じゃ、赤髪の女子か」
「アスカよ」
マスターアジアに対してこう名乗った。
「覚えておきなさい。今度フルネームを教えてあげるから」
「ふむ。よく見るが中々整った顔だのう」
実はこれまでアスカのことはそれ程覚えていないのであった。
「見事なものじゃ」
「えっ！？」
「少女よ、戦いと生き様は顔に出る」
続いてこんなことを言うマスターアジアであった。
「そのまま。進めよ」
「あっ、あのね！」
彼にこう言われて何故かその顔を真っ赤にさせるアスカだった。
「あんたにそんなこと言われても嬉しくないわよ！」
「別に喜ばせようと思い言ってはおらぬが」
「大体あたしは美人で通ってるんだからね」
「何処がだよ。どの山の猿だよ」
「引っ掻くし噛み付くしよ」
シンとケーンが横で言う。
「シャワー浴びたらいつも下着姿でうろうろするしよ」
「腰に手を当てて牛乳なんか飲むなよ」
「あと寝る時ブラウスだけで寝るってのもな」
「似合わないから止めろ」
「あんた達何でそんなこと知ってんのよ」
アスカにとってはそれ自体が不思議なことだった。
「あたしがそうやって寝てることとか。何でよ」
「ってよ。いつも飲んだ時な」
「そうしてるからな」
タップとライトが言う。
「嫌でもわかるよな」
「目のやり場に困ってな」
「まあ下着が白なのはいいけれどな」
「似合ってはいるな」
今度はジャックと雷太が言うのだった。
「うちの部隊って結構下着派手な人多いからな」
「何気にな」
「酔った時にだったの」
アスカも今知る衝撃の事実であった。
「見たの」
「っていうかいつも丸見えだよ」
「なあ」
こうも言われるアスカだった。
「酔ってシャワー浴びてな」
「そのままの格好で来るからな」
「そこまで酔った覚えないけれど」
あくまで自分は、であった。
「何かえらいことやってたのね、あたしも」
「えらいどころじゃねえしよ」
「ああ、そういえばシンジ」
ここでエイジがシンジに言ってきたのだった。
「御前この前アスカと一緒に寝てたよな」
「何ていうかあれは」
そうエイジに言われて照れ臭そうに返すシンジだった。
「僕も気付いたら。その」
「トランクス一枚でな」
「同じ毛布の中でな」
「僕も驚いたよ」
実はそれは彼自身もなのだった。
「起きたら隣にアスカがいたし」
「ひょっとしてあたしその時も？」
「ああ、そうだぜ」
「下着だったぜ」
皆またアスカに対して話すのだった。
「白だったけれどな」
「覚えないか？」
「何か気付いたら服着てるし」
実はそうなのだった。
「そんなことがあったの」
「私が着せてるのよ」
うんざりとしたような口調で言ってきたのはリツコだった。
「脱ぐ度にね」
「えっ、リツコがだったの」
「そうよ。全く手間がかかるんだから」
「全然自覚がないけれど」
「酔うと誰も自覚がなくなるの」
うんざりとした言葉はそのままだった。
「私もそうかも知れないけれど」
「そういえばリツコさん」
彼女にはアレンビーが言ってきた。
「リツコさんって酔ったらすぐに下着見えるわよ」
「えっ、そうなの」
「そうよ。スカートからいつもちらちらって」
「うっ、それはまずいわね」
言われて困った顔になるリツコだった。
「そんなの見せる趣味はないし」
「ああ、それ昔からだから」
ミサトがここで彼女に話す。
「あんたのその癖」
「私にそんな癖があったなんて」
「なくて七癖よ。私だって酔ったら凄いみたいだし」
「そもそも飲む量が凄いけれど」
ツグミがここで突っ込みを入れた。
「ミサトさんの場合」
「ううん、飲めるだけ飲む主義だから」
一応自覚はしているのだった。
「まあそれはね」
「とか何とか言っている間に着いたわよ」
ここで言ったのはアイビスだった。
「何とかね」
「おおっ、遂にかよ」
「戻って来たのね」
元の世界の面々の言葉が明るいものになった。
「やっとって感じで」
「デュミナスから色々あって」
「デュミナス。そうね」
「もうあれから随分経ったけれど」
「私達はデュミナスに助けられて」
ティスとラリアー、デスピニスはここで過去を思い出したのだった。
「それであたし達は今ここにいるのね」
「僕達に命を分け与えてくれたから」
「そうして今」
「懐かしいか」
フォルカがその彼等に問うてきた。
「この世界は」
「ええ。今までは何とも思ってなかったけれど」
「今は。デュミナスが求めていたものがあるから」
「だから」
「生きるんだな」
「そうしなさいよ」
ラージとフィオナも彼等に告げたのだった。
「デュミナスの分もな」
「いいわね」
「ええ」
テイスが三人を代表して二人の言葉に応えた。
「じゃあ。これから」
「僕達はこの世界で」
「生きていくわ」
ラリアーとデスピニスも言った。その彼等が戻って来たその場所は。
「アレクサンドリアか」
「ここなの」
皆すぐにその街が何処なのかわかったのだった。
「何処だって思ってたら」
「元いた場所なのね」
「あれっ、アレクサンドリアも」
「僕達の世界と同じなんだ」
つぐみとジュンが言った。
「何か全部」
「本当に一緒だね」
「ああ、本当に何もかもだな」
今度言ったのはジェリドだった。
「そっちの世界とな」
「何かこっちの世界に戻った気はしないわね」
シルヴィアは感じたことをそのまま言った。
「これだと」
「それに何か時間も」
「あれっ！？」
ここで皆あらたなことに気付いたのだった。
「俺達が出たその時間じゃないか」
「そのままじゃない」
「そうか。向こうの世界での時間はこちらの世界には関係ないんだな」
アムロはここでわかったのだった。
「それでか」
「そうだな」
ブライトがアムロのその言葉に頷いて応えた。
「デュミナスとの戦いも修羅界での戦いも」
「全てはこの世界では時間としてはないことになるんだな」
「不思議な話だな、思えば」
それをわかった微笑んだブライトだった。
「あれだけの戦いを経てもな」
「しかし戦ったのは事実だ」
アムロはそれは確かだと言い切った。
「俺達が三つの世界で戦ってきたことはな」
「そうだな。さて、こちらの世界ではだ」
ブライトはラー＝カイラムの艦橋に座ったままだった。
「敵は相変わらずの様だな」
「艦長」
「連邦軍司令部から連絡です」
早速トーレスとサエグサから声がかかってきた。
「ミスマル司令からです」
「出られますか？」
「懐かしい人だな」
その名前を聞いてついつい笑ってしまったブライトだった。
「思えばな」
「ははは、そうですね」
「何か久し振りに御会いしますね」
二人もそれは同じなのだった。
「それでも御元気でしょうね」
「こっちの世界じゃ時間は経っていませんから」
「そうだな。では通信を開いてくれ」
「はい」
「それじゃあ」
こうしてモニターが開かれる。すると早速その厳しい顔で出て来たのであった。
「ブライト艦長よ」
「はい」
「君達に頼みたいことがある」
まずはこう言ってきたのであった。
「いいか」
「何でしょうか」
「またアインストが動き出してきたのだ」
こう言うのである。
「イギリスに出て来た」
「イギリスにですか」
「すぐに行ってもらえるか」
「わかりました」
返答はもう決まっていた。言われればそこに向かう、それだけであった。
「それでは今から」
「頼んだぞ。ところでだ」
「はい」
「何か。戦艦が増えているようだが」
彼はすぐにそれに気付いたのであった。
「それは気のせいか」
「話が長くなりますが」
ブライトはミスマルの今の言葉にまずはこう前置きをした。
「それでも宜しいでしょうか」
「ふむ。長くなるのか」
「かなり」
こうも告げた。
「それで宜しければ」
「そうだな。話は後でいい」
ミスマルは少し考えてから答えた。
「イギリスに向かう途中で聞くことにしよう」
「そうですか」
「すぐに行ってもらいたい」
そしてまた言うのであった。
「アインスト達はストーンサークルに展開している」
「ストーンサークルにですか」
「そこから君達に向かって来ることも考えられるがな」
「そうですね」
アムロが彼の言葉を受けて述べた。
「迎撃してくることも充分予想されます」
「それも考慮してイギリスに向かってくれ」
「はい、わかりました」
「オペレーション＝プランタジネットの後で申し訳ないが」
その作戦のことについても言及したのだった。
「向かってくれ」
「あの人がなのね」
やり取りの中でスメラギはふと言うのだった。
「ミスマル艦長のお父さんなのね」
「はい、そうなんですよ」
当のユリカからにこやかに笑って返事が返って来た。
「パパです」
「写真通り厳しい顔の人ね」
既にユリカから写真等は見せてもらっていたのである。
「厳しそうっていうか」
「それがですね」
「全然違うから」
メグミとハルカがここでスメラギに告げる。
「私達の自由にさせてくれますし」
「特に艦長には」
「そうなの。それも噂通りなのね」
「そろそろですね」
「はじまるわよ」
メグミとハルカがここでまた言った。
「艦長もおられるし」
「だから」
「おお、ユリカ」
そしてここで実際に娘に声をかけてきたのであった。
「元気だったか？無事だったか？」
「ええ、パパ」
その父に明るく返す娘だった。
「私は大丈夫よ」
「何か少し大人っぽくなったが」
「それはその通りです」
ルリが今のミスマルの言葉を聞いて述べた。
「今まで長い間他の世界にいましたから」
「他の世界？」
「そのお話は後で」
すぐにこう言ってきたブライトだった。
「新たな戦力と共にです」
「その戦艦達だけではなくか」
「はい。まずはイギリスにですね」
「そうだ。向かってくれるか」
「わかっています。それでは」
「イギリスも今かなりまずい状況だ」
ミスマルはこのことも話したのだった。
「何しろアインストに全土を占領されようとしているのだからな」
「全土をですか」
｢連邦軍も今はかなり危ない」
事情をさらに話していく。
「ロンドンにまで追い詰められている」
「ロンドンにまで」
「今は何とか耐えているが」
しかし語るミスマルの言葉は暗いものだった。
「一刻も早く君達に来てもらわなければだ」
「では今すぐに」
「頼んだぞ」
「わかりました。それでは」
「詳しいことは道中で聞こう」
そのうえでこうも言ってきたのだった。
「何があったのかはな」
「ええ。では出港してから」
「うむ」
こう言葉を交えさせてそのうえで出撃するロンド＝ベルだった。こちらの世界でも行われることは同じだった。戦いが彼等を待っていた。

第百五十五話完

２００９・１０・２