万華鏡
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第十七話 甲子園にてその二十三
「それがなかったら」
「ホームランね」
「ええ、それが一番怖いから」
「阪神のピッチャーって打たれてるかしら」
そのホームランをだというのだ。
「それはどうかしら」
「あっ、実はね」
ここでまた里香は四人に話した。
「阪神のピッチャーって被本塁打率低いのよ」
「そうだったの」
「低かったの、それは」
琴乃も景子もこのことは意外といった感じだった。
「被本塁打数もね」
「結構打たれてると思ってたけれど」
「それは低かったの」
「甲子園は広いじゃない」
その広さでも知られている球場である。
「こっちのホームランも出にくいけれど」
「それは相手チームも同じ」
「そういうことなのね」
「まして今は統一球だから」
あまり評判がいいとは言えないこのボールの存在もあった、とにかくこのボールは打っても飛ばないことで有名だ。
「余計にね」
「ホームランは打たれてなかったのね」
「それは」
「失点自体も少ないから」
ホームラン以外でのそれもだというのだ。
「実はそんなにね」
「ううん、そうだったの」
「阪神はホームランは打たれてないのね」
琴乃も景子も今も意外といった顔で言うのだった。
「何か打たれてる気がするのよね」
「そうそう、けれど違ったのね」
「けれど何で打たれてる気がするのかしら」
「それがわからないけれど」
「ああ、それね」
ここで言ったのは彩夏だった。考える顔である。
「多分ここぞって時に打たれてるからじゃないかしら」
「それで負けてるからなのね」
「決勝点を打たれて」
「負けてる試合で打たれると印象に残るから」
例えあまり打たれていなくともだ、このことは。
「それでそう思うんじゃないかしら」
「ううん、そうなのね」
「打たれてる場面が悪いのね」
「阪神の場合はそうなのね」
「打たれる数じゃなくて場面なのね」
「阪神って負けても印象に残るってこともあるから」
阪神は勝利を収めても敗北を喫しても他のスポーツチームより遥かに印象に残るチームなのだ、その勝ち方や負け方もだ。
だからだというのだ。
「阪神の負け方ってそれこそね
「忘れられないのよね、いちいち」
「記憶jに残って」
「阪神はそういうチームだから」
人々の印象jに残るチームだからだった。
「余計にそう思えるのよ」
「ううん、阪神だからかよ」
美優もここで唸る。
「凄い話だよな」
「思うだけだけれどね、私が」
彩夏はその美優にも話す。
「それだけだけれど」
「いや、実際にそう思うからあたしも」
美優も言われて思うことだった。
「色々な場面がさ、忘れられないからな」
「絵になるチームだからね」
「どんな勝ち方でも負け方でもな」
それもまた阪神である。
「だからか。さて、追加点は取れるかな」
「それが問題だけれどね」
里香は広島のリリーフのピッチングを見ていた、だがそのリリーフは好調で阪神は三点だけで止まった。
だがルーキーはさらに好調で赤ヘル打線に三塁を踏ませないまま九回まで進んだ、その九回も無事に抑えた。
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