対決!!天本博士対クラウン
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第五百五十六話
第五百五十六話 諦めない博士
博士に対して小田切君がこんなことを尋ねた。
「博士は物事を諦めたりすることにどう思いますか?」
「ケースバイケースじゃな」
博士の返答はこうだった。
「時と場合によるわ」
「諦めていい場合と悪い場合があるんですね」
「好きな場合は諦めぬ」
博士は言う。
「それを諦めれば後悔するからのう」
「だからですか」
「好きなら続けることじゃ、誰に言われて好きならやらねばならん」
何気にこうしたことには筋のある博士だった。
「例えば自衛官になりたくて自衛官になったとする」
「はい」
「しかし自衛官に向いていない、周りにそのことを常に言われても好きなら辞めてはならんのじゃ」
「辞めれば後悔するからですね」
「好きなものに対して努力せぬ者はおらん」
このことも言う博士だった。
「好きだから続けてやっていく、そうするからじゃ」
「それが自然と努力になっているんですね」
「努力の形は様々でそれが実るかどうかわからぬ」
かといって博士は努力も否定しない、倫理観はないがそれでもこうした考えはしっかりと存在しているのおだ。
「しかし自分が好きならそれでよいのじゃ」
「月給泥棒って言われても税金泥棒って言われてもですか」
自衛官も公務員なので税金から給料が出る、それでこう言われるのだ。
「それでもですか」
「本物の税金泥棒は他におるわ」
好きで自衛官であり自然と努力している人間はそうではないというのだ。
「そうした人間は違う」
「だからいいんですね」
「好きなものを諦めてはならぬ」
博士はまた言った。
「少し休んでもよいが辞めては後悔するからのう」
「その言葉覚えておきますね」
小田切君は非常に珍しい博士の真面目な言葉に真面目な顔で返した。
「絶対に」」
「そうするとよい、わしの言葉は宇宙最大の天才の言葉じゃからな」
「博士の言葉を覚えることになるなんて思いませんでしたよ」
「では今度から覚えるのじゃな」
「多分これで最後になると思いますけれど」
「いや、ならんな」
博士は平然として小田切君に返す。
「わしの言葉はこれからも覚えておくのじゃ」
「そのことは諦めますから」
こう返す小田切君だった。
「それも喜んで」
「やれやれ、君は後々後悔することになるのう」
「それもないですから」
小田切君は確信していた。
「じゃあ博士の今のマイブームは何ですか?」
「その辺りの不良を捕まえて生きたまま解体することじゃ」
そうしたことを平気で言うマッドサイエンティストの言葉はそうそう覚えてはいけないということだった、普段は。
第五百五十六話 完
2012・12・29
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