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ソードアート・オンライン~神話と勇者と聖剣と~

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SAO:アインクラッド~神話の勇者と獣の王者~
  魔王の正体。そして……

 
前書き
 よく考えるとクラインさん初登場?まぁ、出番はないしどーでもいっか……。

 ……そして、書き直しでクラインさんの出番は完全に潰えた。さらばだクラインさん。アンタの事は……三十分後くらいで忘れるよ。うん。 

 
 アインクラッド第75層攻略は、熾烈を極めた。

 <ザ・スカルリーパー>……骸骨の狩手という名の骨百足は、圧倒的な攻撃力で攻略組を追い詰めた。

 あまりにも圧倒的。かつて50層の金属製多腕型仏像型ボスモンスターを単身10分間裁き続けた聖騎士ヒースクリフでさえも、その攻撃を一人ではさばききれない。
 
 《二刀流》を持つ、《黒の剣士》キリトと、その妻となった《閃光》アスナがもう一本の鎌をさばき、着々とダメージをヒットさせる。
 
 さらにボスの側面からほかのプレイヤーも攻撃を続ける。

 同時に、《神話剣》セモン、《妖魔槍》コハク、《獣聖》ハザードも特大ダメージを与え続けた。

 フィールドサイズの関係で、ハザードの相棒、レノンを召喚することはできない(同時にこの層のボスにはレノンは相性が悪いらしい)。しかし、《獣聖》はただあらゆるモンスターをテイムの対象にできるだけのスキルではない。通常の何倍の威力は在ろうかという強力な専用ソードスキルで、確実にボスのHPを減らしていった。

「行くぞコハク!!最後の攻撃だ!」
「うん!」

 セモンとコハクが上位剣技の構えをとると同時に、キリトとアスナも上位剣技の構えをとった。

「「「「い……あああああああああああああああああああ!!!!」」」」


 キリトの《スターバースト・ストリーム》、アスナの《スター・スプラッシュ》、セモンの《アラブル・ランブ》、コハクの《ネメシス・フラワー》。凄まじい数の連撃を食らったボスモンスターは、一気にそのHPを減らし、0になった瞬間に四散した。


                     *

「はぁ、はぁ、はぁ――――終わった……」
「勝った……勝ったよ……」

 セモンはその場にへたり込み、思わずため息をついてしまった。戦闘にかかった時間は、一時間近く
だろうか。とにかく長かった。コハクもさすがに気が滅入ったのか、セモンの背にもたれかかり、肩で息をしている。

「……何人、死んだ……?」
 
 今回の攻略に参加してくれたエギルの問いに、キリトが答える。

「……14人、死んだ」
「なん……だと……?」
「おいおい、マジかよ……」
「あと二十五層もあるんだぞ……!?」

 プレイヤー達が口ぐちにわめく。セモンも半ば信じられない思いだった。攻略戦で犠牲者が出るのは仕方がないことだが、今後もこのペースでプレイヤーが死んでいったら、最終層に辿り着く前に攻略組が全滅してしまうかもしれない。

 その時は――――自分も、今隣にいる、愛おしい少女も、死んでしまうのだ。

 急激に、背筋が寒くなる思いがした。不安で足元が崩れはじめたような錯覚を抱く。

「……コハク」
「なに?」
「……生きててくれて、ありがとう」
 
 セモンが言って、コハクを抱き寄せる。

「や、やだ、こんなところで……でも、どういたしまして」

 コハクも真っ赤になりながらも微笑んで、セモンを抱き返す。
 
 少しだけ場の空気が和んだ直後。

「キリト君!?なにを……!?」

 アスナの、叫び声が響いた。

 驚いて振り向くと……ちょうど、キリトがヒースクリフに向かってソードスキルを繰り出したところだった。

 とっさのことに、さすがのヒースクリフも反応できない。その体に、キリトの剣が突き刺さ――――ることは、なかった。代わりに、《イモータル・オブジェクト》と記されたウィンドウが出現し、キリトの剣を跳ね返したからだ。

 それは――――そのウィンドウは、SAOのプレイヤーに、絶対にあり得べからざるべきものだった。

「!!?」

「《不死存在》……?」

「……団長、どういうことですか……?」


 コハク、セモン、アスナの順に、震え声で驚愕をもらす。

 その問いに答えたのは、ヒースクリフではなくキリトだった。

「こいつのHPはシステム的にロックされてるのさ。どうやっても、イエローゾーンには陥らない……俺はずっと、疑問に思っていた。この世界を創り上げたあいつは、いったいどこで、この世界を鑑賞しているのだろう、と。だが、考えてみれば凄まじく単純で、簡単だったんだ。ちょっとその方面の知識があれば、だれだって知ってることだった」

 そこでキリトは一度区切りを入れると、厳しい顔でヒースクリフを睨み付け、言い放った。

「『他人のやっているRPGをはたから眺めることほどつまらないことはない』……そうだろう。茅場晶彦」

 茅場晶彦。この世界の創造主にして、唯一のGM(ゲームマスター)。ナーヴギアの開発者。そして、フルダイブを引き起こす、《ニードルスシステム》そのものの製作者……。

「……なぜ気づいたのか、参考までに教えてくれるかい?」

 ヒースクリフの『肯定』ととれる質問を聞き、幾人かのプレイヤーがよろめく。キリトは表情を変えないまま答えた。

「最初におかしいと感じたのはデュエルの時だ。あの一瞬、あんた、あまりにも速すぎたよ」

 ヒースクリフは苦笑して言った。

「……やはり、あのときか。あれは私にとっても手痛い事件だった。キリト君の反射速度に対応するため、ついシステムのオーバーアシストを使ってしまった」

 そしてヒースクリフは大仰に両手を広げて、言った。

「確かに私は茅場晶彦だ。付け加えれば、アインクラッド第百層で君たちを待つ最終ボスでもある」

「――――悪趣味だぜ。最強のプレイヤーが一転して最悪の魔王かよ」

「なかなか面白いシナリオだろう?《二刀流》はSAOで最も反射神経の高いものに与えられ、その使い手が魔王と戦う勇者となる予定だった……。勇者はユニークスキルという選ばれた力を持つ者たちを集め、私と戦うはずだった……先駆者は君だよ、セモン君。君は最初の勇者として私と戦う先駆けだ。キリト君が《速さ》の勇者なら、さしずめ君は《力》の勇者かね」

 ヒースクリフはキリトと、そしてセモンの方を向いて言った。

「……で、どうするんだ?ここで俺たち全員を殺して隠蔽するか?」

「まさか。そんなナンセンスなまねはしないよ。本来ならこれは、第九十五層で行われるイベントのはずだったのだが……私は一足早く、最上階の迷宮区《紅玉宮》にて待つことにするよ。なぁに。勇者と、私の育てた《血盟騎士団》を加えた攻略組なら、たどり着けるさ……」

 ――――育てた?

 ――――その言い方は、まるで《血盟騎士団》が、ただのモルモットであったかのような―――――

 そう感じたのは、セモンやキリトだけではなかった。ヒースクリフの後ろに座り込んでいた血盟騎士団の幹部が、そばに落ちていた自分の剣を拾うと、ヒースクリフ改め茅場に切りかかったのだ。

「よくも……俺達の忠誠を……よくも……よくもおおおぉぉぉぉ―――――!!!」

 しかしその刃は、ヒースクリフに、否。その近辺にすら届かなかった。

 
 ドスッ、という、鈍い音が響いた。男の腹に、背中から漆黒の大剣が貫通していた。それは即座に上へと切り上げられ、男の体を真っ二つにした。当然のようにそのHPバーが消失する。何が起こったのか理解できない、とばかりに虚ろな表情のまま四散した男。彼の後ろに立っていた下手人を、セモンは知っていた。

 直前まで、仲間として、長い時を共に戦ってきた存在だったからだ。

「――――ハザード……?」

 《ボスモンスター・テイマー》のハザードだった。

 ハザードが、口を開く。そこから流れ出た言葉は、想像を絶するものだった。

「……兄さんを、邪魔させはしない」

「え……兄、さん……?」

 コハクの口から、驚愕の色に染まった声が出る。ほかのプレイヤーたちも驚きを隠せないようだ。

 ただ一人、茅場のみが無表情。

「……馬鹿な……だって……ハザードの……秋也の本名は……!」
 
 セモンが口走る。リアルネームを出していることなど、気にすることができない。

 それにハザードが答える。

「……京崎(きょうさき)は母方の名字さ。俺の本名は、茅場(かやば)秋也(あきや)――――知らなかったっけ?セモン……いや。清文」 
 

 
後書き
 ついに明かされるハザード君の正体!!……と言っても今まで何度かばらしてるシーンがあるんですけどね。 
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