スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百二十六話 黄金色の目
第百二十六話 黄金色の目
月の最後の基地に今周辺の帝国軍の全てが集まっていた。守備用の戦力も予備戦力も全て集め基地は彼等で溢れようとしていた。
ガットラーはその中で一人部屋にこもり瞑想していた。それが終わり部屋を出るとすぐに部下達が彼のところに来てあることを報告するのだった。
「イノベイター達がか」
「はい、来ております」
「共に戦いたいと」
「あの地球人達がか」
彼はその言葉を聞いてまずはいぶかしんだ。
「一体何のつもりだ?」
「それでどうされますか?司令」
「会われますか?」
「今は少しでも戦力が必要な時だ」
彼は軍人として、司令官としての立場から述べた。
「そう、少しでもな」
「では会われるのですね」
「やはり」
「そうしよう。ではこちらに案内しろ」
「はい。それでは」
「そのように」
こうして彼等はガットラーの前に案内されてきた。その中央にいるリボンズは穏やかな笑みを浮かべて彼に対してこう言ってきた。
「閣下、僕達がここに来た理由はです」
「私を助けに来たというのか?」
「その通りです」
その穏やかな笑みで述べるのだった。
「ですから今ここに馳せ参じてきました」
「その言葉信じられると思うか?」
だがガットラーは彼のその言葉に懐疑的な声で返した。
「どう思うか、それは」
「信じて頂けると思っています」
しかしリボンズは平然と言うのだった。
「閣下なら」
「私ならばか」
「僕達にあるのは誠意だけです」
心にもない言葉であるのは言うまでもない。
「ですからその誠意を」
「それではだ」
ガットラーも彼等が腹に一物あるのはわかているがあえて彼等に合わせることにした。
「それを今見せてもらおうか」
「喜んで」
にこやかな顔を作ってまた述べる。
「では僕達はこれより先陣を務めさせて頂きましょう」
「かつての同胞に対してか」
「同胞!?」
今のガットラーの言葉にはリボンズだけでなくそこにいるイノベイター達全員が冷笑にも似た笑みを見せたのだった。何かを嘲笑するような。
「僕達と彼等が同胞ですか」
「違うというのか」
「はい」
そしてこう答えるのだった。
「違います。僕達は人間ではありませんので」
「神だともいうのか」
「その通りです」
平然として答えるのだった。
「僕達は神です。人間を治めるべき神なのです」
「では神罰を与える為にここに来ているというのか」
「その通りです。ですから先陣を」
「わかった」
ガットラーは彼の言葉を受けて述べた。
「ではそうするがいい。好きなようにな」
「有り難き御言葉」
「しかしだ」
だがガットラーはここで言葉を引き締めさせるのも忘れてはいなかった。
「我が軍の軍律には従ってもらうぞ」
「撤退は死ですか」
「そして失敗もだ」
このことも言うのだった。
「特にだ。今度の戦いは月での決戦になる」
「ここで敗れれば我々は月を失いますね」
「それだけはならん。だからこそ軍律も徹底させるのだ」
「ええ。それではです」
「それを承知のうえで先陣になってもらう」
平然とした顔のままのリボンズにまた告げた。
「それでいいな」
「はい、喜んで」
こうして彼等の参戦が決まった。月とその周辺の帝国軍はさらに集まりその数はまさに雲霞の如くであった。圧倒的な兵力でロンド=ベルを待ち受けていた。
その中でローザは。怪訝な顔でガットラーに対して言うのだった。
「司令、あの者達は」
「わかっておる」
彼はもうローザが何を言いたいのかわかっていた。
「信用できぬというのだな」
「御言葉ですが」
「私もそうだ」
そして自分もだと言うのだった。
「あの者達は全く信用ができん」
「では何故」
「使うこともまた必要だからだ」
だからだというのである。
「信用できぬ駒もな」
「駒としてか」
「だからこそ先陣に行ってもらった」
こうしたことも考慮しての決断だったのだ。
「是非な。それでだ」
「だからだったのですか」
「地球人同士潰し合ってくれればよい」
彼は彼等を地球人とみなしていた。
「自分達を何様と考えているのかはわからんがな」
「それにしても。私は」
「あの者達が好きになれぬか」
「はい」
はっきりと答えるのだった。
「どうしても。あの不遜な態度が」
「それもまた同じだ」
これについてもガットラーは答えた。
「あの者達はな。信用ならん」
「絶対にですね」
「そうだ。何かおかしなところが一つでもあれば」
「その時は」
「撃て」
一言であった。
「後ろから撃て。よいな」
「わかりました」
彼等はリボンズ達を全く信用していなかった。そしてそれはそのリボンズ達も同じであった。
「やれやれ、司令は信用してくれないな」
「困ったことだね」
「それならそれでいいさ」84
リボンズはこで言った。
「それでね」
「そうだね、どのみち彼等はここで終わりだし」
「絶対にね」
「勝てはしないさ」
リボンズは今度は涼しい声になっていた。
「ガルラ帝国でロンド=ベルにはね」
「それで彼等は最終的に敗れ」
「ここで全てを失うと」
「そうなればしめたものだと」
リボンズは何かを含む笑みになっていた。
「それで帝国に勝った地球がかわりに宇宙の支配者になり」
「そう、そして」
「そのうえで」
彼等の言葉は続いていく。
「その地球を治める僕達が宇宙も治める」
「神として」
「その通りさ。じゃあ彼等にも声をかけておくか」
「それはもう済ませたから」
「早いね」
一人の言葉を聞いてリボンズはまた微笑んだ。
「それじゃあ。先陣として僕達は」
「行くぞ」
「うん」
こうして戦場に向かう彼等だった。そしてロンド=ベルもまた戦場に姿を現した。全軍基地の前に到着するとすぐに総員出撃し戦闘配置に着いた。
「数は・・・・・・ええと」
「どれだけだ?」
「二百万以上いますね」
サエグサがブライトに答える。
「これは」
「そうか。二百万以上か」
「三百万はいると思います」
続いてこう述べるサエグサだった。
「おそらく月だけでなく周辺の戦力を全て集めたものかと」
「そうか。全てか」
「つまり言い換えればだ」
ここでスレッガーがあえて軽い調子で言ってみせてきた。
「ここでこの基地とそこにいる戦力を叩き潰せば月だけでなくその周辺も全てこっちのものになるってわけだ」
「そうですね」
セイラが彼の言葉に頷いた。
「彼等を全て倒せばそれで」
「しかしだ。数が多いな」
リュウはそれを問題にしていた。
「三百万か。容易じゃないぞ」
「ええ、確かに」
「尋常じゃねえな。戦闘機ばかりでもよ」
ハヤトとカイが彼の言葉に応えて言った。
「戦力的には収容所の時よりも上みたいだし」
「援軍もまた来るだろうな」
「しかしここで勝てば確かに大きいぞ」
「その通りだ」
アポリーとロベルトは強気だった。
「月とその周辺を奪還できるのだからな」
「それにこれだけの戦力を潰せば敵にとってのダメージも大きい」
「退く理由は見当たらない」
クワトロは一言で決断を示してみせた。
「予定通り戦うだけだ」
「その通りだな。では行くとするか」
バニングがまず前に出た。
「行くぞ、いいな」
「はい、いつも通りですね」
「じゃあ今回も軽く」
「行かせてもらいますか」
彼にアデル、モンシア、ヘイトの三人が続くのはいつも通りだった。
そしてシローとサンダース、カレン、ミケルも出て来た。
「数は多いけれどそれはそのまま」
「ですね。周りを撃てば必ず敵に当たる」」
「何だ、楽な戦いじゃないですか」
「いちいち狙い定めなくていいなんて」
彼等はこう明るく考えていた。戦意は全く衰えていなかった。
その中でノリスが。ブライトに対して問うた。
「では艦長、今」
「よし、全軍攻撃開始!」
そしてブライトもわかっていた。
「すぐに敵基地を攻略し敵軍を殲滅する。いいな!」
「了解!」
「やるぜ!」
こうして彼等はすぐに攻撃に入った。月でのロンド=ベルと帝国の戦いの最後の幕が開いたのだった。
ロンド=ベルはまず迫り来る帝国軍を待った。そして。
「喰らえっ!」
「くたばれ!」
まずは照準を定めることなく一斉射撃を加えた。これでまず数十万機が消えた。
「よし、成功だ!」
「後の先ってね!」
彼等はそれを狙っていたのだ。敵が来てそこをあえて待って照準に入ったところで一斉攻撃を浴びせる。かつてマンシュタインが東部戦線においてソ連軍にした攻撃である。
「上手くいったわね」
「ですね」
樹里がプロフェッサーに述べていた。
「いいタイミングで」
「さて、これでまず緒戦の勢いは掴んだわ」
プロフェッサーは冷静に言った。
「さて、これからは」
「こちらの攻撃ですね」
「それですね」
その彼女にリーアムとジョージが問う。
「リ=ホームも前に出る準備はできていますよ」
「何時でもね」
「そう。じゃあいいわね」
「はい」
三人が同時に彼女に対して答えた。
「リ=ホーム前へ!」
「了解!」
戦闘向きではないリ=ホームをあえて前に出す。それはただの蛮勇ではなかった。
それを見てすぐに彼等が動いたのだった。
「おい、ここままじゃよ!」
「わかってるわ!」
エドにジェーンが応える。
「私達もね」
「すぐに行くぜ!」
まずは彼等が先に出るのだった。そして。
「俺も行く」
「俺もだ」
ミハイルとモーガンが続く。
「リ=ホームまで前に出るのならな」
「やらせてもらう」
「行くぜ!」
ジャンもだった。
「ここで死んでもな!」
「縁起でもないことを言うな」
彼の横にはミナがいた。
「御前は生き残る。何があってもな」
「そうそう」
そしてバリーもいる。
「ここが正面場なのは事実だけれどね」
「プレア、カナード」
「いいか?」
グリアノスとユーレクは二人に声をかけていた。
「ここは一気に攻める」
「敵の勢いは死んだ」
だからだというのだ。
「だからこそここでな」
「やるぞ」
「はい、わかってます」
「行かせてもらいます」
プレアとカナードは二人の言葉に頷き。そのうえでビームライフルにドラグーン等を放ちつつ前に出て行くのだった。
「このまま戦って!」
「この基地も陥落させる!」
彼等だけでなくロンド=ベルは果敢に戦いそのうえで基地に一歩、さらに一歩と進んでいく。帝国軍は予想通り援軍を次々に出してくる。
「波状攻撃を仕掛けよ!」
「はい!」
皆ガットラーの言葉に従い次々に援軍を繰り出しロンド=ベルにぶつける。しかしだった。
「この程度!」
マリンはバルディオスを巧みに操り彼等のUFOを寄せ付けない。
「今の俺達には!」
「ああ、そうだ」
「その通りだ」
ジャックと雷太もそれに応える。
「帝国軍が幾らいようとも!」
「敵じゃない!」
「それに何か」
ここでマリンはあるものを感じ取っていた。
「バルディオスが」
「どうかしたの?」
「力を増してきている」
こう言うのだった。
「何故だ?今ここで何かが目覚めてきているような」
「?それは何だ?」
「バルディオスのパワーが?」
ジャックと雷太はマリンの言葉に顔を向けさせた。
「感じているっていうのか?」
「増してきている?何が?」
「そこまではわからない」
彼にもそこまではわからなかった。
「だが」
「感じているんだな」
「ああ、何かが出来る」
マリンは答えた。
「このままいくと。絶対に何かがな」
「わかった」
それに頷いたのは大河だった。
「ではマリン君」
「はい」
「全力を尽くせ!」
彼が告げるのはこれだった。
「己の全力をだ。今ここで尽くすのだ!」
「戦力をですか」
「人は己の全ての力を出した時に何かを手に入れる」
だからだというのである。
「いいな。だからだ!」
「わかりました」
マリンは大河のその言葉に頷いた。
「ならここで。一気に!」
「そして掴み取るのだ!」
大河の言葉は続く。
「人類の明日の為に!」
「はい!」
こうして彼はさらに戦うのだった。ロンド=ベルはそのバルディオスを中心として帝国軍の大軍を倒しさらに前に進む。そして遂に援軍を出しきらせ基地まであと一歩にまで迫った。
「ロンド=ベルがあと一歩のところまで」
「うむ」
ガットラーはローザの言葉に対して頷く。
「遂にな」
「軍の数も二百万を切りました」
「半数以上がやられたな」
「はい、そして援軍も最早」
ないというのだった。つまり帝国軍にとっては手詰まりであった。
「いません。どうされますか?」
「ならば切り札を出すだけだ」
ガットラーは言った。
「我等の切り札をだ」
「ではあれを出されるのですね?」
「それ以外にはない」
ガットラーは沈痛な声で述べた。彼にしては珍しく。
「今ここでロンド=ベルに勝つ為には。だからこそだ」
「それでは今から」
「宇宙要塞を発進させよ!」
彼は叫んだ。
「よいな。それでロンド=ベルを倒す、よいな!」
「はい、それでは!」
「今から!」
帝国軍の者達が一斉に応える。そうして今基地が崩れそこから途方もなく巨大な要塞が姿を現したのであった。
「な、何だあれは!」
「要塞か!?」
ロンド=ベルの者達は突如として姿を現わしたその要塞を見て驚きの声をあげる。
「まさかとは思うが」
「帝国軍の」
「そうだ!」
ガットラーが彼等を見下ろしながら告げた。
「これこそ我が軍の切り札である宇宙要塞だ」
「宇宙要塞・・・・・・」
「何て大きさなんだ、あれは」
「ただ大きいだけではない」
彼はまた言った。
「アルデバランの宇宙要塞、この力を受けるのだ」
「おい、やばいぜ」
闘志也はゴッドシグマからその宇宙要塞を見て周りに告げた。
「あれだけの化け物を倒すとなったらよ」
「どうするってんだ?それで」
「怖気付いたか?」
「そんなわけあるかよ」
笑ってジュリイと謙作に返す。
「わくわくしてんだよ、クライマックスって感じでよ」
「よし、それでこそ闘志也だ」
「この言葉聞いて安心したぞ」
「さて、どうする?」
不敵な顔でまた言うのだった。
「あのデカブツ。どうやって叩き潰すんだ?」
「俺に任せてくれ」
マリンが皆に言ってきた。
「このバルディオスに」
「できるんだな」
「ああ、確実に」
こう皆に述べる。
「今のバルディオスなら」
「よし、わかったぜ」
闘志也がにこりと笑って彼の言葉に述べた。
「じゃあやってみろ。好きなようにな」
「済まない、じゃあ今すぐに」
「残っている敵は僕達に任せてくれ」
エイジが彼に告げる。
「あと二百万もいない。僕達でやれる」
「あんたは宇宙要塞だけを考えてればいいからよ」
剣人は言いながら目の前の敵をガスコンと共に薙ぎ倒していた。
「あんたはあんたでな!」
「闘え!」
「いいな!」
「ガオオオオン!!」
剣人だけでなく弾児、ガストン、そしてベラリオスも告げる。彼等はあえて自分達が前に出てそのうえでバルディオスを要塞に向かわせるのだった。
バルディオスはそれを受けて動いた。すると。
「何っ!?」
「これは」
何とバルディオスの姿が消えた。そして一瞬のうちに宇宙要塞の上に出たのだった。
「テレポーテーション!?」
「いえ、違いマス」
スワンが驚く一同に告げた。
「これは。バルディオスのエネルギーの力デス」
「エネルギーの!?」
「そうデス、それで亜空間移動をしていマス」
「そんな能力がバルディオスにあったなんて」
「そんな・・・・・・」
「よし、この力なら!」
マリンはその力を感じながらまた叫んでいた。
「勝てる。この要塞にも!」
「バルディオスか!」
ガットラーは司令室からバルディオスを見据えながら言ってきた。
「今ここで雌雄を決さん!」
「こちらこそだ!」
マリンも彼に対して言葉を返す。
「ここで。貴様等との月での戦いを終わらせる!」
「我が帝国の力」
ガットラーも負けてはいなかった。
「今見せよう!撃て!」
「バルディオスをですか?」
「それだけではない!」
バルディオスだけではないと言うのだった。
「他もだ。全ての砲台及びミサイルを使え!」
「それでロンド=ベル全軍をですね」
「そうだ!ここで要塞を出したのは何故か!」
彼は言う。
「奴等を倒す為だ!一人残らずな!」
「はっ、それでは!」
「そのように!」
「全機撃墜せよ!」
彼はまた叫ぶ。
「そしてそのうえで勝利を手にする。いいな!」
「はっ!」
こうして要塞の総攻撃がはじまった。そのとてつもない巨体を利用して凄まじいまでの攻撃を浴びせる。それはロンド=ベルにしても想像を絶するものだった。
「くっ、まさに化け物だな!」
「よけろ、かわせ!」
攻撃の中で怒号が響き渡る。
「そして敵を倒せ、一機でも多く!」
「わかっている!」
そしてそのうえでさらに攻撃を繰り出し帝国軍を倒す。
だがその間にも要塞は攻撃を出し、そうしてロンド=ベルを撃つ。
「あの要塞にも攻撃を仕掛けるか?」
その攻撃を受けたリーが言う。
「やはり。ここは」
「いや、こっちは目の前の敵に専念するべきだ」
しかし彼にブレスフィールドが言うのだった。
「そちらはバルディオスに任せてな」
「つまりどちらかに敵を絞れということか」
「簡単に言えばそういうことだ」
彼が言いたいのは結局のところそういうことだった。
「それはわかると思うが?」
「ふん、確かにな」
相変わらず素直ではないが頷くリーだった。
「ではそうするとしよう。帝国軍の残存戦力に攻撃を続けよ」
「わかりました」
アカネがそれに応える。
「このままですね」
「そうだ、このままだ」
リーはこうも告げた。
「要塞の攻撃はかわせ」
「了解」
イワンも彼の指示に頷く。
「じゃあそれで」
「要塞はバルディオスが相手をしている!」
実際に上ではそれが続いていた。
「任せておく。いいな!」
「はい!」
こうしてロンド=ベルの殆どは帝国軍に向かっていた。そうしてそのうえで彼等を倒していく。そしてバルディオスは。要塞の集中攻撃を亜空間移動でかわしていた。
「よし、いける!」
「ああ!」
「確かにな」
マリンに対してジャックと雷太が応える。
「もう敵の攻撃は怖くない」
「そしてこちらの攻撃はだ」
全て当たっていた。ここではその巨体が仇になっていた。要塞は次第にそのダメージを深いものにさせていた。
「けれどマリン」
「どうしたんだジェミー」
「ここままじゃ」
彼女は怪訝な顔で彼に言うのだった。
「要塞に致命傷は」
「そうだな」
彼もまたそれはわかっているのだった。
「このままじゃ。幾らダメージを与えても」
「いや、大丈夫だ」
しかしここで大文字が言う。
「マリン君達なら。大丈夫だ」
「大丈夫ですか?」
「今のバルディオスなら問題ない」
そこには絶対の信頼があった。6
「そう、必ずな」
「そうなのですか」
ミドリは彼の言葉を聞いて納得した。
「じゃあここは」
「あの要塞はバルディオスに任せる」
彼はまた言う。
「我々は他の敵の殲滅にあたり続ける。いいな」
「はい」
こうして彼等は戦いを続ける。そうしてそのうえで帝国軍の数を減らしていく。そしてバルディオスもまた。激しい攻防の中で遂に動いてきた。
「ジェミー、ジャック、雷太」
「ええ」
ジェミーが代表してマリンに応えてきた。
「用意はいいな」
「ああ、いいぜ」
「何時でもいけるぞ」
ジャックと雷太もまた彼に対して頷く。
「遂に決めるんだな」
「これで」
「そのつもりだ。しかし」
「しかし?」
「命を賭ける」
彼は言った。
「ここでな。バルディオスがなくなろうとも」
「バルディオスが」
「なくなろうとも」
「やってやる」
彼は言った。
「絶対に。あの要塞を破壊してやる」
「それでいいんだな?」
「覚悟はできてるんだな」
ジャックと雷太はまずは答えるより先に問い返してきた。
「御前はそれで」
「命を捨てるつもりか」
「皆はもう降りてくれ」
マリンはジャック達に告げた。
「俺一人でだ。やる」
「そうか。ならだ」
「御前に預けた」
「私もよ」
二人だけでなくジェミーもだった。
「マリン、私達の命貴方に預けたわ」
「皆、いいのか?」
マリンは三人の言葉を聞いてもまだ躊躇していた。
「俺がこれからやろうとしていることは」
「だからわかってるんだよ」
「失敗してもしなくてもまず命はない」
ジャックと雷太はまた言う。
「そうだろ?今から御前がやろうとしていることは」
「そうだな」
「わかっていたのか」
マリンはここで彼等の考えを完全に知った。
「それでもか」
「当たり前だろ」
「わからないで今まで御前と一緒に戦うものか」
「私もよ」
そしてジェミーもだった。
「私の命貴方に預けるわ」
「そうか。いいんだな」
あらためて三人に対して問う。
「命を賭けるんだな」
「それが戦いよ」
「そうだ。命を賭けるのがな」
「仲間と共にな」
「仲間か」
マリンはここで仲間という言葉も感じ取った。
「俺達は仲間か」
「だから今まで戦ってこれたのよ」
「色々あったけれどな」
「そうだ。それを全て超えてな」
「よし、じゃあ行こう」
マリンの言葉が奮い立った。
「これで決める。俺の・・・・・・いや俺達の命を賭けて!」
「ええ、決めるわこれで!」
「俺達の命は御前に預けた!」
「行くぞ!」
こうしてバルディオスはその全身にエネルギーを溢れ出さんばかりにさせてそのうえで要塞に対して突っ込む。そうしてであった。
「うおおおおおおーーーーーーーーーーっ!!」
「何っ!」
ガットラーは要塞の司令室から今のバルディオスを見て驚きの声をあげた。
「バルディオスが」
「炎に!?」
ローザも言う。
「そして突っ込んで来るか」
「いけません司令!」
ローザが彼の横で叫ぶ。
「バルディオスを止めましょう。是非」
「わかっている!」
ガットラーもその言葉に頷く。
「防ぐ。何としてもだ!」
「はい!」
「火力を集中させよ!」
そしてこう命じるのだった。
「要塞の全ての火力をだ!バルディオスに集中させよ!」
「ですが司令!」
「それをすれば」
ローザ以外の部下がそれを止めんとする。
「ロンド=ベルを止めることが完全に不可能になります!」
「そうです、唯でさえ圧されているというのに」
「黙れ!」
しかいガットラーはその彼等を一喝するのだった。
「御前達は黙っておれ。よいな!」
「うっ・・・・・・」
「この要塞が破壊されてはどうにもならん」
彼はまた言う。
「だからだ。それを防げ、よいな!」
「は、はい!」
「それでは!」
彼等も遂に敬礼して応えた。ガットラーの剣幕に圧されて。こうして攻撃をバルディオスに集中させる。しかし今のバルディオスにはそれは通用しなかった。
「いいか、皆」
「ええ」
「いいぜ」
三人はマリンの言葉に応える。
「このまま要塞に体当たりを仕掛ける」
「特攻ってわけだな」
「つまりは」
「いや、違う」
だがマリンは特攻は否定するのだった。
「特攻じゃない。これは」
「これは?」
「一体何だ?」
「中に入る」
こう言うのだった。
「中に突入しそのうえでさらに仕掛ける」
「中に入ってなのね」
「そうだ。そのうえでまた仕掛けるんだ」
これがマリンの考えであった。
「一気にな」
「そうか。どっちにしろ任せる」
「御前にな」
「済まない。じゃあ行く!」
その火の玉になったバルディオスで体当たりを仕掛けた。
「バルディロイザー!!」
「バルディロイザー!?」
「この技の名前だ!そして!」
その火の玉になって要塞の内部深くに入り込んだ。そうしてそのうえでその奥深くにおいて何とバルディオスを強制分離させたのだった。
「何っ!?」
「ここで!?」
「そして!」
驚くジャック達をよそにさらに仕掛けるのだった。
「行けええええええええええええええーーーーーーーーーーっ!!」
その分離したそれぞれのパーツが内部を暴れ回り要塞内を完全に破壊していく。そうしてバルディオスが一つになった時にこれで終わった。
「司令、最早」
「この要塞は」
「くっ・・・・・・」
ガットラーはあちこちから火を噴きだしてきている要塞内を見て歯噛みしていた。
「これで終わりというのか」
「もうもちません」
「ですから」
「わかった。総員撤退せよ」
この指示しかなかった。
「総員な。下がれ」
「はい、無念ですが」
「これで」
「ローザ」
そしてローザにも顔を向けて告げた。
「御前もミランと共に退け」
「はい。では司令もまた」
「私はいい」
だが彼は退こうとしなかった。
「私はここに残ろう」
「えっ、ですが」
「この要塞はもう」
「わかっておる」
周りに対してこう言うだけであった。
「これでな。我々はだ」
「わかっておられるのですか」
「それでは」
「アルデバロン軍はこれで終わりだ」
彼はまた言った。
「ならば。私はここで死のう」
「軍と共にですか」
「そういうことだ。では諸君」
最後にローザ達に対して告げた。
「さらばだ!」
「はい。これで!」
「おさらばです!」
皆最早敬礼で返すしかなかった。こうして彼等は撤退しガットラーだけが残った。マリンもバルディオスを何とかワープにより脱出させたがそこで火を噴く要塞の中に見たのだった。
「何っ、まだ動いているのか!」
「要塞が!」
「確かにアルデバロン軍は終わった」
ガットラーはそのバルディオスを見ながら言ってきた。
「しかし。それでも貴様等は倒す」
「俺達をか」
「バルディオス!」
毅然として出した言葉だった。
「ここで貴様等を倒す。覚悟しろ!」
「おいマリン!」
ジャックが突き進んでくるよう際を見てマリンに言ってきた。
「このままじゃこっちも!」
「やられるぞ!」
「わかってる!」
だがマリンは冷静に雷太に対しても言うのだった。
「それはもう」
「じゃあどうするの?」
「もうあの要塞は終わりだ」
彼は言うのだった。
「止めを刺す。これで!」
言いながら剣を抜いていた。その剣で。
「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーっ!!」
剣を両手に持ちそのうえで突き進んでくる要塞に対して向かう。そうしてその司令室がある塔を両断したのだった。
「これで終わりだ!」
「馬鹿な・・・・・・」
バットラーは両断された己の司令室を見て呆然となっていた。
「この私が。敵を道連れにできずに死ぬというのか」
「ゼオ=ガットラー、御前は確かに強かった!」
マリンもそれは認めた。
「しかしだ。俺は。俺達は」
「俺達は?」
「それ以上に強かった!その思いが!」
こう言うのだった。
「だから俺は勝った。俺達は勝った!」
「だからだというのか」
「そうだ、俺達は負けない」
マリンはさらに言う。
「例え相手が誰であろうとも!」
「ふふふ、見事だ」
ガットラーは断末魔の中で微笑んだ。既に周囲では爆発が起こり今にもその中に消えようとしている中で。それでも微笑むのだった。
「どうやら貴様はこのゼオ=ガットラーの最後の相手に相応しい男だったようだ」
「ガットラー・・・・・・」
「さらばだ、マリン=レイガン」
そして彼の名も呼んだ。
「誇り高き戦士よ。健闘を祈るぞ!」
その言葉を最後にして爆発の中に消えた。ゼオ=ガットラーはこれで死んだのだった。
「マリン・・・・・・」
「敵ながら見事だった」
マリンはジェミーの声に対して答えた。
「そして。俺達は」
「ああ、そうだ」
「これで月は」
「月は俺達の手に戻ったんだ」
彼は言った。
「この戦いで」
「敵は木星方面に離脱していきます」
ミドリが報告する。
「ワープによって」
「そうか。数は?」
「五十万程度です」
大文字の問いにも答える。
「そこまで減りました」
「大勝利と言うべきだな」
彼はその言葉を聞いて頷いくのだった。
「月での戦いは」
「そうですね。それは」
「間違いありません」
彼の今の言葉にピートとサコンが頷く。
「月は手に入りましたし」
「敵もかなり倒しました」
「よし、これで火星も月も俺達の手に戻ったんだな」
サンシローは素直にそのことを喜ぶ。
「苦労のかいがあったってもんだぜ」
「その通りだ。俺達は勝ったんだ」
「そうですね。アルデバロン軍も壊滅させましたし」
リーとブンタが言う。
「これで帝国軍をさらに追い詰めることができる」
「そうです。さらなる攻勢に出ることができます」
「それでよ。次は何処なんだ?」
ヤマガタケはもうそこを尋ねるのだった。
「月に火星を解放したけれどよ」
「はい、次は木星です」
テッサが答えてきた。
「敵は木星方面に撤退しています。そしてそこには」
「敵の大規模な基地がある」
ティエリアが言ってきた。
「既にだ。木星は彼等の本拠地の一つになっている」
「じゃあ次はそこだな」
「そうだな」
皆それを聞いて頷き合うのだった。
「木星か。この世界でもか」
「戦うってわけか、あそこで」
「そっちの世界でも木星での戦いがあったの」
「ああ、これがよ」
ビルギットがかなめに対して答える。少しうんざりとしたような顔で。
「大変だったんだよ。ジュピトリアンっていうのがいてな」
「木星人ってことかよ」
「ああ、その連中がバルマー帝国やらティターンズについてな」
今度はクルツに話すビルギットだった。
「洒落にならなかったんだよ」
「そうだったのかよ」
「それにしても」
ふとここで気付いたメリッサだった。
「何で地球人でスペースノイドなのにバルマー帝国やティターンズと手を組んだんだい?」
「それね」
アンナマリーが応える。
「やっぱりそれが気になるのね」
「ちょっとおかしいんじゃない?」
そしてこうも言うのだった。
「バルマー帝国っていったら敵じゃない」
「ええ」
「それにティターンズはアースノイド至上主義なんだろ?だったら何で手を組むんだい?」
「それなら俺が話そうかい?」
ヤザンが笑いながら出て来た。
「その元ティターンズの人間がよ」
「ああ、あんたがか」
「そういえばあんた元ティターンズだったな」
「そうさ。バリバリのな」
笑いながらメリッサとクルツに答える。
「ジェリドやライラだってそうだけれどな」
「確かにな。それはその通りだ」
「今じゃ懐かしい話だけれどね」
ジェリドとライラも少し笑って述べてきた。
「あの時は色々とあったけれどな」
「まさか今ここでロンド=ベルのメンバーと別の世界にまで来るなんて思わなかったけれどね」
「あの時は申し訳ありませんでした」
カクリコンはブライトに対して頭を下げていた。
「失礼を」
「あの時はお互い立場が違ったからな」
しかしブライトはこう言ってそのことはいいとするのだった。
「仕方のないことだ」
「左様ですか」
「そうだ。過去は過去だ」
そしてこうも言うのだった。
「お互い忘れよう」
「有り難うございます」
「とにかく色々あったんだよ」
ヤザンはこうこちらの世界の面々に話していく。
「まあジュピトリアンは自分の権益や地位の向上の為に帝国についたんだよ」
「そうだったのかよ」
ロックオンはそれを聞いて述べた。
「まあ簡単に言ったらあれか?裏切り者ってやつか?」
「いや、それは少し違う」
だがジェリドはそれは否定した。
「もう木星の人間になっていたってわけだ」
「地球とは別にかよ」
「そういうことだ。だから簡単に向こうに加わったんだよ」
こう説明するジェリドだった。
「だからな」
「つまり地球にいる人間とは別になっていた」
アレルヤはこういうふうに考えた。
「そういうことか」
「まあ簡単に言えばそうさ」
「そういうことになる」
またヤザンとジェリドが話す。
「それで帝国にもつけたのさ」
「勿論全部のジュピトリアンじゃないがな」
「そうか。それでかよ」
パトリックはここまで話を聞いて頷くのだった。
「とりあえず帝国とのことはわかったぜ」
「わかってくれて何よりだ」
「我々の世界も複雑だからな」
ラムサスとダンケルも話す。
「そして我々と手を組めた理由」
「それだが」
「そうだ、それだ」
アンドレイがそこを指摘する。
「それもよくわからない。ティターンズはアースノイド至上主義だ」
「それで確か虐殺もやってたよね」
エルフィの目はここで剣呑なものになる。
「あんた達は関わっていないのはわかってるけれど」
「あれをやってたのはジャマイカンでね」
ライラが忌々しげに言う。
「あたし達実戦部隊とはまた違う奴等さ」
「つまりあれね。秘密警察みたいなものね」
キャシーはわかり易く考えていた。
「独裁国家にあるあれね」
「ああ、それなら」
「話がわかるな」
ドニーとジャンがキャシーの言葉に頷く。
「正規軍とは別に汚れ仕事を行う」
「そういう連中か」
「簡単に言えばそうよ。ジャマイカンの部隊の主な任務はそれだったのよ」
マウアーが実際に語る。
「私達とは別にね」
「で、そいつ等が虐殺をしていたのね」
キムの顔も忌々しげに歪む。
「とんでもない奴等ね」
「それで俺達とジュピトリアンのことだけれどな」
ここでまたヤザンが話すのだった。
「何で手を結べたかっていうとだ」
「そうです、それです」
八雲がそれを問う。
「どうして手を結べたんですか?アースノイドとスペースノイドのそれぞれ過激派が」
「結局俺達にとってアースノイドとかスペースノイドはどうでもよかったんだよ」
ジェリドは達観したように言い捨てた。
「そんなものはな。どうでもよかったんだよ」
「ではお題目だったってことですか」
「はっきり言えばそうさ」
ジェリドはまた八雲に対して告げた。
「強化人間とかニュータイプの研究もしていたしな」
「そういった存在を否定しながらもなのね」
「俺達は確かに連邦軍だった」
ヤザンは遥に対して話した。
「けれどその科学者とかはジオンの人間も多くてな。その思想に賛同する人間が多かったんだよ」
「連邦軍なのに!?」
剣人はそのことに随分と眉を顰めさせた。
「また妙ちくりんな話だな」
「まあ思想はどの立場にあっても感染するってわけだ」
ヤザンはあえて否定的に語ってみせた。
「連邦軍でもな。つまりティターンズの正体もジオンだったんだよ」
「ジオンっていえば」
「それじゃあ」
「そういうことよ。だからアースノイドよりも覇権を重要視していたのよ」
今度はライラが語る。
「人類のね。そしてジオンの思想に共鳴しているからジオン共和国とも友好関係にあったし」
「ジオニストの多いジュピトリアンとも手を結べた」
「そういうことか」
ここで皆遂にわかったのだった。
「だから手を結べたのか、スペースノイドとアースノイドが」
「本来は別なのに」
「そういうことだ。これでわかってくれたな」
話をまとめるようにしてヤザンが述べてきた。
「こっちの世界の事情ってやつがな」
「すげえ難しいけれどな」
アレックスはそこに抗議はした。
「何ていうかあんた達の世界も本当にグチャグチャだな」
「しかし木星のことはおわかりなのですね」
フェイはこのことを尋ねるのだった。
「戦ってこられたということは」
「そうね。正直向こうの世界とこっちの世界は地理とかは全く同じだから」
セイラが答える。196
「問題ないと思うわ。それでね」
「よし、それなら頼むな」
「案内をな」
「それは任せてくれ」
答えたのはクワトロだった。
「木星までの道案内、確かに引き受けた」
「では諸君」
グローバルが全員に告げる。
「まずは木星へ向かう用意にかかる」
「はい」
「長旅への準備ってやつですね」
「そうだ。そしてそのうえで木星に向かう」
そしてまた言うのだった。
「全員でだ。いいな」
「了解」
「それじゃあすぐに」
こうして彼等は次には木星に向かう。しかしここで撤退した勢力にあの者達がいたことには気付いていなかったのだった。
「どうやら俺達には気付いていなかったようね」
「そうだね」
リボンズは周りの者の言葉に応えていた。
「先陣でいたんだけれどね」
「先陣でもあれは気付かなくなったわ」
一人がこう言ってきた。
「あの状態ではね」
「そうだね。考えてみれば乱戦だったし」
リボンズはこのことについても述べた。
「それも仕方ないかな」
「しかしいいものが取れたよ」
「ロンド=ベルの資料が」
「うん、それに」
リボンズはさらに言うのだった。
「帝国のこともわかったしね」
「帝国も?」
「彼等も?」
「うん。彼等もそうだね」
リボンズはここで思わせぶりに笑った。
「確かに。もう見えてきたね」
「見えてきたっていうかあれじゃあ駄目じゃないの?」
「もう火星も月も失ったし」
「あとは土星まで行かれるのも」
「そうだね。クロッペン司令は幽閉されてガットラー司令は戦死したし」
まずはその二人だった。
「もう今までで一千万以上の機体を失っている。そろそろ底が見えてくるし」
「では見捨てるか?」
「もうここで」
「いや、それはまだ先だよ」
それはまだだというのだ。
「それはね。まだね」
「まだか」
「じゃあまだ帝国軍に」
「いるよ。まだね」
リボンズは笑いながらまた述べた。
「暫くはまだ帝国軍にいよう」
「まだ連中から手に入れるべきものはあるのか」
「まずは機体の技術を幾つか」
最初はそれだった。
「あとは。適当に機体を貰っておきたいね」
「それを我々の戦力にするのか」
「それで」
「その通り。彼等から手に入れるものはまだまだ多いよ」
リボンズは楽しそうに笑っていた。
「まだまだね。まあ負けることはわかっているけれどね」
「皇太子シンクライン」
また一人が言った。
「所詮はあの程度か」
「まあ彼は彼なりに優秀だけれども」
こうは言いながらも嘲笑する顔であった。
「それでも。所詮はね」
「その程度の器ということか」
「その通り。所詮はね」
やはり嘲笑する顔である。
「最後まで見させてもらうけれど。僕達が動くのはそれからだよ」
「それからか」
「そうなってから」
「うん。ロンド=ベルは帝国の後は天使達とも戦わないといけない」
リボンズは先のことも見据えていた。
「それと。サンドマンだったかな」
「あの男か」
「彼ね」
「あの人も動くだろうし全てが終わってからだね」
「それからか」
「そう。それからだよ」
彼は言う。
「僕達が動くのは」
「神が姿を現す時はその時か」
「その通り。神が姿を現すのには相応しい時がある」
リボンズはそう見ているのだった。
「その時まで準備をしていこう」
「了解。それじゃあ」
「その時の為に」
「僕達は今やるべきことをやっていこう」
撤退だというのに言葉は悠然としていた。
「その時に備えてね」
「神としてだな」
「我等がこの宇宙を治める存在として」
「宇宙は支配者が必要なんだよ」
リボンズはまた言った。
「そしてそれは僕達こそが相応しい」
「その通りだ。それでは」
「私達は」
「神は過ちを犯さない」
リボンズの言葉は既にそれだけは神になっていた。
「そう、決してね」
「だからこそ我々は今は」
「然るべき時に備えていく」
「そういうことだよ。さて皆」
モニターに映る木星を見ていた。
「木星では。さらに面白いものが見られるよ」
「次の帝国の司令官は」
「テラルだったか」
「そう、彼が出るんだったね」
リボンズはここでも楽しそうに笑うのだった。
「彼・・・・・・いや」
「いや?」
「彼女と言うべきかな。やけに女性的だしね」
「あれは男ではないのか?」
「そうよ、あれは」
「僕もそう思うけれど少しね」
だがここでリボンズはふと首を捻るのだった。
「何か妙なものも感じるんだよね」
「妙なものをか」
「何かな。おかしなものを感じるんだよ」
彼はまた言った。
「それを言ったら帝国自体がだけれど」
「帝国自体が」
「どういうことなの、それって」
「まあ気のせいだろうけれどね」
リボンズはそういうことにするのだった。
「神にわからないことなんてないんだからね」
「そうだな。その通りだ」
「神は全てをわかる存在」
彼等はそれで自己完結してしまった。
「それならばやはり」
「気のせいね」
「そうだね。それじゃあ」
また言うリボンズだった。
「僕達も木星へね」
「うむ、行くとしよう」
こうしてイノベイター達も撤退していく。しかし彼等は結局のところ何一つとしてわかっておらずそしてそれに気付いてもいなかった。
第百二十六話完
2009・5・6
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