スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第百二十四話 ローザの懸念
第百二十四話 ローザの懸念
ロンド=ベルは月での最初の帝国軍の基地を陥落させた。そうしてすぐに第二の基地に向かうのだった。
「まずは大勝利だったな」
「そうだね」
沙羅が忍の言葉に頷いていた。
「とりあえずはってところだけれどね」
「このまま一気に叩き潰してやるぜ」
この辺りの強気がやはり忍であった。
「一気によ」
「そうだな。ここは勢いを殺さずに行くべきだ」
亮もそれに同意するのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「迂闊に動くのもな」
「駄目だってことだよね」
「そういうことだ」
雅人に対して答えた亮だった。
「それはかえって破滅の元だからな」
「へっ、またいつものお話のパターンかよ」
話を聞いてもそれに頷く忍ではなかった。
「ここは一気にいかねえと駄目だろうがよ」
「あまりそれもどうかとは思うがな」
「そうだな」
ノインとヒルデはどちらかというと亮の側にいた。
「帝国軍も手強い」
「それを考えると無闇な突撃もだ」
「いや、それもまた手だ」
ミリアルドは忍の側につくのだった。
「敵が姿勢を整えるよりも前に攻められればな」
「つまり臨機応変ってことね」
レインは彼の言葉をこう受け取った。
「敵に隙があればすぐに攻めるのね」
「そうでなければ迂闊には動かない」
ミリアルドはまた言った。
「そうしていく。いいな」
「何か今一つ好きじゃないやり方だけれどね」
「だがガルラ帝国だ」
アランが不満の声をあげる沙羅を嗜めた。
「卑劣な策も使う。やはり軽率な行動は取ってはならない」
「とにかく今はこのまま進めばいいかしら」
アレンビーは今のままでと述べた。
「とりあえずはね」
「左様ですな」
キメルはアレンビーのその言葉に頷いた。
「慎重かつ大胆に。要はバランスです」
「バランスね」
レインはバランスという言葉を聞くと微妙な顔を見せた。
「ロンド=ベルにはそれが悪い人が多くて」
「そうそう、ドモンとか」
アレンビーは真っ先に彼の名を挙げた。
「あと。あんた達も」
「御前に言われたかねえ!」
忍はすぐにアレンビーのその言葉に言い返した。
「御前だって相当なものじゃねえかよ」
「戦いになるとついね」
実際彼女もそれを認める。
「頭に血が昇っちゃってね」
「へっ、どうせなら獣戦機隊に入れよ」
「そうだね。歓迎するよ」
沙羅も笑ってアレンビーに告げた。
「あんたならあたし達の中でも上手くやっていけるよ」
「そうかしら」
「そうだな。大丈夫だ」
「アレンビーならね」
亮も雅人も沙羅の言葉に納得して頷く。
「俺達の中にいてもだ」
「全然いけるよ」
「そう?だったらノーベルガンダムもダンクーガに合体して」
「幾ら何でもそれは無理よ」
レインはそれは無理だと言い切った。
「ガンダムがダンクーガと合体だなんて」
「無理?アストナージさん達に御願いしたら?」
「何処をどうやったらそんな滅茶苦茶なことが言えるんだ?」
話を聞くアストナージも呆れるばかりであった。
「俺そんな馬鹿げた話聞いたのはじめてだぞ、おい」
「まあやってみなきゃわからないってことで」
「いや、流石にそれは無理だ」
葉月博士もそれは無理だと断言した。
「それだけはな。無理だ」
「ちぇっ、折角面白いなって思ったのに」
「確かにアイディアはいい」
博士もそれは認めた。
「しかしだ。実行できるかどうかはな」
「別の問題なんだ」
「例えばガンダムにマジンガーの頭をつけられるかどうか」
「ザクの頭を付けたことはあったっけ」
「さあ」
横で話を聞いていたバーニィとクリスが話す。
「そんなこともあったかしら」
「やっぱりそれはセンスないよな」
「当たり前でしょ。ザクはやっぱりザクよ」
クリスはそこを強調するのだった。
「幾ら何でもガンダムには合わないわよ」
「だよなあ。確かに俺が今乗ってるザクスリーだって」
自分の愛機のことも頭の中に浮かべて考えだした。
「ガンダムとは全く違うからなあ」
「何でも相性とバランスがある」
博士はこうも話す。
「だからだ。無理だ」
「まあそれならそれでいいわ」
実に素直に諦めたアレンビーだった。
「じゃあ私このままね」
「ええ。ノーベルガンダムで御願いね」
レインは彼女に告げた。
「これまで通りね」
「了解。それで次の基地だけれど」
「うむ」
博士がアレンビーの言葉に応えた。
「次の基地は多くのミサイルを配備している」
「へっ、小細工かよ」
忍はそれを聞いて言葉を顰めさせた。
「せこい真似しやがるぜ」
「せこくても有効な作戦ではある」
「その通りだ」
だがノインとヒルデはそれを肯定するように述べた。
「我々はマシン以外にも警戒しなくてはならなくからな」
「敵も考えているということだ」
「それで博士」
ミリアルドが博士に問うてきた。
「ミサイルだけなのか?今回は」
「他にも砲台もある」
「それもなのか」
「全体的に護りの堅い基地だ」
そしてこうも一同に話すのだった。
「わかったな。護りは堅いぞ」
「それをどうするかよな」
「そうね」
またバーニィとクリスが話す。
「どうしようかって言っても何にもならないしな」
「ミサイルに砲台なら」
「それが少ない方角から攻めるべきか」
ミリアルドは言うのだった。
「そしてそこから」
「その通りだ」
レディアンがミリアルドの今の言葉に頷く。
「既にそれは割り出している」
「流石だな。早いな」
「基地の状態がわかればそれを察することは容易い」
レディアンはミリアルドの賞賛の言葉に喜ぶわけでもなくこう返すだけであった。
「だからだ。そしてその方角は」
「何処だ?」
「南西と南東だ」
その二つの方角だというのだ。
「形としては時計に例えると」
「八時二十分かな?」
アイビスはそれを聞いてふと述べた。
「南東と南西だと」
「そうだな。そうなるな」
「その方角からそれぞれ中央に向かう」
スレイとツグミも言う。
「そういった作戦になるな」
「そうですよね」
「話が早いな。その通りだ」
レディアンは微笑んで三人の言葉に応えてみせた。
「ではすぐに部隊を二つに分ける」
「了解」
「じゃあそういうことで」
彼等は二手に分かれそのうえで攻撃にかかる。敵軍はまだ布陣を完全に終えていなくロンド=ベルは先手を打った形になったのだった。
「よし、これで!」
「いけるぞ!」
皆このまま攻める。それに対して帝国軍は完全に後手に回ってしまっていた。
「ミサイルを!」
「はい!」
ローザの指示が飛びそれでミサイルが放たれる。しかしだった。
ミサイルは放たれた側からまとめて潰されていく。やはり後手であった。
「サイフラーーーーーーーーッシュ!」
「レゾナンスクエイク!」
魔装機神達の攻撃によりミサイルも砲台も次々に潰されていく。そしてその跡地にロンド=ベルが次々と入り彼等をさらに倒すのだった。
「よし、このままだ!」
「このまま行くぞ!」
基地に入るとあとは容易かった。ロンド=ベルは勢いに乗り敵を倒していく。
やはり帝国は押されていた。そしてそれはどうにもならなかった。
「くっ、これは」
「危険です、姉上」
ローザに対して彼の弟であるミランが言ってきた。
「このままでは」
「わっかっています。予備兵力を」
「はい」
「全て出します」
彼女は決断したのだった。
「そのうえで彼等を何とか押し返しましょう」
「ですね。このまま」
「まだ戦えます。ですが」
「ですが?」
「何故」
ここでローザはいぶかしむのだった。
「何故動きがここまで。我が軍の動きが」
「鈍いというのですね」
「そうです」
ローザがいぶかしむのはこのことだった。
「布陣が遅れたのは。どうして」
「閣下、それですが」
彼女の疑念に参謀の一人が答えてきた。
「全ては奴隷が足らないせいです」
「奴隷がですか」
「はい、そうです」
その参謀はこう述べるのだった。
「それにより我等は。陣地の構築が遅れまして」
「そのせいですね」
「はい、奴隷がいない為です」
そしてこう告げられるのだった。
「その為に我々は遅れました」
「全ては奴隷あってのこと」
ローザはこのことに今気付いたのだった。
「ガルラ帝国は。それあってのことと」
「その通りです」
「そうですか」
ここまで話を聞いて呻くように言ったローザだった。
「では。こうなったのもまた」
「火星の収容所を奪われたからです」
「そうですね」
そのことは嫌になる程わかるようになっていた。
「その為。今我が軍は」
「忌々しい者達です」
参謀の顔が歪んだ。
「奴隷を奪うとは。この借りは今ここで返しましょう」
「いえ、奴隷は」
しかしローザはここでふと言ったのだった。
「奴隷で。頼るのは」
「姉上」
今のローザの言葉は弟によりすぐに止められた。
「それ以上の御言葉は」
「そうでしたね。すいません」
「それよりも今は」
そしてそのうえで言うのだった。
「戦いを」
「ですね。その通りです」
今は戦いに専念することにした。しかしそれでも戦局は好転せず。ロンド=ベルは援軍も倒していきそのうえで基地の中枢に迫ろうとしていた。
「ドリルニーーーーーーーーッ!」
凱が叫び敵の戦艦に急降下攻撃を浴びせる。その敵艦は彼の攻撃を受け大穴を開けられそしてそれにより爆発して果てたのであった。
「よし、次だ!」
「はい、隊長!」
「行くぜ!」
ボルフォッグとゴルディマーグが彼に続く。そこにルネもいた。
「行くよ!」
「わかってるわ、ルネ姉ちゃん!」
「行きましょう!」
光竜と闇竜も続く。当然マイクや四体の竜神達も続く。彼等の攻撃もまた激しく敵の中枢の護りは遂になくなったのであった。
「いい調子だぜ、おい!」
「イサム、それでもだ」
上機嫌で敵に反応弾を放つイサムにガルドが注意してきた。
「迂闊には前に出るな」
「そんなこたあ百も承知だぜ!」
言いながらもイサムの動きは変わらない。
「この程度でよ!俺がやられるかよ!」
「それもその通りだな」
ガルドは彼の言葉に頷きながら今己のバルキリーをガウォークに変えた。イサムはそんな彼を見て少し意外といった声をあげるのだった。
「何でそこでそれなんだよ」
「そろそろ接近戦もやるようになる」
彼は言うのだった。
「だからだ」
「だからかよ」
「そうだ。もう敵の中枢にいるのはいつもの戦闘機じゃない」
確かにその通りだった。敵の中枢にいるのは流石にそうしたものではなくかなりまともな敵ばかりであった。しかも数もそれなりであった。
「それならな。ピンポイントバリアでいく」
「そういうことか。それなら俺もよ」
イサムも彼の言葉をここまで聞いて不敵な笑みと共にガウォークに変形させた。
「やらせてもらうぜ。思う存分な」
「御前にやってもらわないと困る」
そしてガルドは言うのだった。
「是非な。行くぞ」
「おうよ。どけどけえっ!」
早速その拳で敵のマシンを一体ぶん殴り吹き飛ばすのだった。
「何処のどいつでもよ。俺の前にいると死ぬぜ!」
「この戦い、もらった」
ガルドは敵艦に拳を入れていた。すると装甲が異様な形にひしゃげていく。
「こうしてな。潰させてもらう」
「おうよ。やってやるさ!」
二機のマクロスだけでなく他の面々も次々と基地中枢に飛び込んでいく。そうして中枢はすぐに陥落寸前に陥った。ローザはそれを見て最後の判断を下そうとしていた。
「よし、このまま最後の突撃です」
彼女もまたガロと同じであった。
「私達もまた」
「いや、待て」
しかしここで通信が入った。
「それはならん」
「その声は」
「殿下ですか!?」
「そうだ、その通りだ」
やはり彼であった。シンクラインが不敵な笑みと共にローザの乗艦のモニターに姿を現わしたのだった。相変わらず傲然とした顔である。
「私だ」
「殿下、何故ここに」
「どうして」
「言うまでもない。指示を伝える為だ」
モニターから言うのだった。
「御前達にな」
「我等にですか」
「そうだ。今は撤退せよ」
彼は言った。
「このままだ。後方に撤退せよ」
「撤退、ですか」
「ガロは愚かだった」
彼はガロについても述べた。
「無駄死にだった。しかし御前達はまだ役に立ってもらう」
「役にですか」
「我々が」
「そうだ。駒は少しでも多い方がいい」
彼は言うのであった。
「だからだ。今は撤退せよ」
「ですが殿下」
しかしここで参謀の一人が言うのだった。
「我が軍の軍律は」
「そうです。撤退は」
「私が法律だ」
しかしシンクラインは傲然とこう言い切ったのだった。
「これ以上の反論は許さん。撤退せよ」
「は、はあ」
「そこまで仰るのなら」
彼等もこうまで言われては頷くしかなかった。
「殿下のおおせの通りに」
「撤退させて頂きます」
「そうせよ。よいな」
「はっ、それでは」
「そのように」
これで彼等の撤退が決まった。しかしそれでもローザの顔は曇ったままであった。
「ガルラ帝国」
彼女はシンクラインがモニターから消えてから一人呟くのだった。
「やはり。私達を手駒としか見ていない」
シンクラインの言葉からそれを察するのだった。
「それはつまり私達もまた」
「姉上」
しかしここでまたミランが声をかけてきた。
「早く御命令を」
「はっ・・・・・・」
「御命令を御願いします」
「そうでしたね」
ここで我に返ったローザだった。
「それでは。今より」
「御願いします」
「わかりました。では全軍撤退です」
ローザはここで指示を出したのだった。
「第三の基地まで。宜しいですね」
「はい」
こうして彼等は撤退した。第二の基地もロンド=ベルのものになった。彼等はこの戦いもまた幸先よく勝利を収めることができたのであった。
「よし、次はだ」
「第三の基地ですね」
「そうだ、次だ」
アムロが皆に告げていた。
「このまま行くぞ。いいな」
「了解。しかしあれですよね」
トウマが明るく言ってきた。
「この戦い、かなり順調ですね」
「順調なのはいいことだ」
アムロはそれはよしとしたのだった。
「しかしだ」
「しかし?」
「だからといってそれに安心したり油断してはいけない」
釘を刺すのも忘れないのだった。
「それはいいな」
「はい、勿論ですよ」
トウマも今はそれはなかった。
「油断せずにこのまま」
「行こう。じゃあ皆」
「はい」
「補給が終わり次第進撃再開だ」
まさに電光石火の動きであった。
「基地の確保は連邦軍に任せる」
「わかりました」
「そのうえで第三の基地に向かおう」
こうして彼等は補給を終えるとすぐに進撃に向かうのだった。戦いは迅速であり彼等は迅速であるが整然と兵を進める。しかし行く先に何が待っているのかはわからなかった。
「そうか、そちらに無事辿り着いたのだな」
「その通りです」
ネグロスがモニターの向こうのガットラーに対して述べていた。
「今ようやく」
「そうか。辿り着いたか」
「ではすぐに処刑の用意を」
「いや、待て」
しかしそれは止めるガットラーだった。
「殿下からの御命令だ。処刑は止めておけ」
「殿下からですか」
「そうだ。だからそれは止めておけ」
あらためてこのことをネグロスに告げるのだった。
「よいな。それよりだ」
「それより?」
「間も無くロンド=ベルがここに来るな」
次に言うのはこのことだった。
「あの者達の相手を優先させよ」
「ではローザは」
「すぐに向かわせろ」
やはり言うのはこのことだった。
「よいな。すぐにだ」
「はい、それではです」
ネグロスも彼の言葉に頷いた。
「すぐにその準備を」
「かかるようにな。我が軍は既に二つの基地を奪われた」
「その通りです」
ここではネグロスの言葉が歪んだ。
「ですから次は」
「わかっているな。何があろうともだ」
「はい、防いでみせます」
今のネグロスの言葉は本気であった。
「何があろうとも」
「万難を拝しだ」
「そしていざという時は」
「その責任は私が取る」
ガットラーは毅然として答えた。
「だからだ。安心してな」
「お任せ下さい」
彼は一礼してガットラーの言葉を受け入れた。戦いはさらに進んでいく。そしてここで帝国は使ってはならない禁断の手段に訴えようとしていた。
第百二十四話完
2009・4・29
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