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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百二十二話 奴隷解放

             第百二十二話 奴隷解放

ガスコンの先導で収容所に向かうロンド=ベル。そこは火星の方であった。
「こっちの世界にも火星があったのかよ」
「当たり前だろ、旦那」
サブロウタがダイゴウジに対してすぐに突っ込みを入れてきた。
「宇宙自体は同じ構造なんだからな」
「そういえばそうか」
「そうだよ。だから火星があるのも当然さ」
こうダイゴウジに対して教えるのだった。
「それもな」
「そうだな。しかしここまではな」
「ああ。敵はいないな」
「何かあれですね」
ジュンがここで考える顔になり述べてきた。
「順調過ぎるような」
「っていうとまさかあれかよ」
リョーコはそれを聞いて顔をすぐに顰めさせてきた。
「やっぱりよ。罠ってことかよ」
「あっ、そうですよね」
リョーコの今の言葉にヒカルが声をあげた。
「その可能性はやっぱり」
「あるある」
イズミは今度は中国人の真似のようだった。
「否定できない」
「何かイズミさんスランプ脱出でしょうか」
「そうかしら」
ハルカは今のハーリーの言葉に眉を顰めさせて苦笑いを浮かべていた。
「あまりそうは思えないけれど」
「けれどあれですよ」
メグミはリョーコの言葉を聞いて心配する顔になっていた。
「若し本当に罠だったら。このコースって確かにその通りですし」
「いえ」
ところがここでルリが皆に言ってきた。
「それはないです」
「ないんですか?」
「それならあの時のお話はありません」
ガスコンが収容所に案内しようと申し出てきた時の話であった。
「決して」
「はい、私もそう思います」
ユリカもまた同じことを考え見ていたのだった。
「若し罠ならあそこでああしたふうには言いませんよね」
「隠します」
ルリの今度の言葉は一言であった。
「まず間違いなく」
「だから万丈さんもあの時わかったのかな」
アキトは万丈の言葉を思い出していた。
「だからなんだ」
「はい、その通りです」
ルリは今度はアキトの今の言葉に答えた。
「ですから御安心下さい。あの人は信用できます」
「けれどよ」
しかしナナがここでそのルリに怪訝な顔で尋ねるのだった。
「今まで敵に遭わないのはどうしてなの?」
「そうだな。それは俺も気になる」
一矢も腕を組んで怪訝な顔になっていた。
「今までだとこれまでにも出会っていて不思議じゃないからな」
「それが何故かもわかっています」
ルリはここでまた一同に述べるのだった。
「確かに今現在我々は敵軍とは遭遇していません」
「ああ」
「その通りよ」
「しかし。敵がいないというわけでもないのです」
そして今度はこんなことを言うのだった。
「敵は既に来ています」
「既に?」
「もうなのか」
「はい、我が軍の後方に来ています」
こう一矢達に説明するルリだった。
「私達を追撃してきています」
「あっ、本当だ」
ハーリーはナデシコのレーダーを見て気付いたように言った。
「本当に来ています。百万です」
「えっ、何時の間に?」
「もう?」
「予想はしていました」
ルリは冷静に一同に告げてきた。
「先の戦いで十万の退けた時に」
「すぐに追撃を仕掛けてくるってことだね」
「その通りです。そろそろレーダーにもかかると思っていました」
またアキトに対して告げていた。
「予想通りですね。本当に」
「そうか。そこまで読んでいたか」
京四郎は今のルリの言葉に感心していた。
「流石だな。いつもながら鋭い読みだ」
「いえ、これは」
「だがおかげでよくわかった」
そして京四郎はこうも言うのだった。
「あいつは敵じゃない」
「はい」
ガスコンのことである。
「敵なら。こうして露骨に追いかけられたりはしないからな」
「その通りです。では行くぞ」
「はい、それじゃあ」
「このまま反転して反撃だな」
「はんてん食べながらはんてーーーーん」
「何かイズミさんまた」
「もう無理矢理過ぎるんだよ、最近よ」
ヒカルとリョーコも呆れた顔で言葉を返すのだった。やはりイズミのスランプは相変わらずのようであった。
だが話はここで終わりではなかった。ルリは思わないことを言うのだった。
「いえ、このままです」
「このまま!?」
「まさか収容所に!?」
「はい、そうです」
こう皆に告げるのだった。
「このまま正面に行き収容所に向かいます」
「って後ろの敵は?」
「いいのかよ」
「彼等は後でです」
そしてまた言うのだった。
「今叩いたならば時間のロスができます」
「まあそれはそうだけれど」
ナナもそれはわかるのだった。
「けれど。このまま追われてたら収容所に辿り着いた時に」
「その時のことはもう考えています」
ルリはまた言うのだった。
「ですから。御安心下さい」
「そうか。確実にやれる自信があるんだな」
「自信がなければ申し上げません」
京四郎に対しても答えは同じだった。
「絶対に」
「わかった。じゃあ任せる」
「後ろは気になるけれどな」
一矢も言った。
「ここはな」
「はい。今後方の敵軍を退けてもまた別の敵が来ます」
「あっ、そうですよね」
ハーリーは今のルリの言葉で気付いたのだった。
「今叩いてもまた来ますよね」
「そしてまた敵を迎え撃つことになります」
ルリはまた言った。
「そうなってしまっては何にもなりません」
「ですよね、やっぱり」
「向かうのなら一度にです」
ルリの考えはこうであった。
「後方の敵が合流してきてもです」
「わかりました」
ハーリーはここまで聞いて明るく答えるのだった。
「そういうことですね。じゃあ」
「このまま前進です」
ルリはまた言った。
「そして収容所にです」
「了解」
「それじゃあ」
こうして彼等は後方の敵に気付きながらもそのまま収容所に向かう。敵軍を率いるクロッペンはそれを見て仮面の下から言うのであった。
「ロンド=ベル。やはり切れるな」
「切れますか」
「ここで我々に対して向かって来ない」
彼はそれを言うのだった。
「これだ。向かわずに収容所にただ向かっている」
「はい、確かに」
「我が軍に気付いているようですが」
クロッペンの周りの将軍達もそれに応える。
「おそらく我が軍と戦っても時間の無駄だとわかっているのだ」
「時間の無駄ですか」
「そうだ。既に援軍は用意してある」
やはりルリの読み通りであった。
「その都度彼等を反転させそのうえで収容所に兵を固めさせる」
「はい」
「そして最後は挟み撃ちだ」
彼等はこう考えていたのだ。
「そのつもりだったがな」
「それを読んでですね」
「ロンド=ベル。ただ強いだけではありませんか」
「強いだけで常に圧倒的な数の我が軍を退けることはできない」
クロッペンはまた言った。
「そう、決してな」
「確かに。それは」
「その通りです」
将軍達はここでも彼の言葉に頷くことになった。
「では将軍、我等は」
「どうするべきでしょうか」
「我等もこのままだ」
クロッペンは言った。
「このまま追跡を続ける。いいな」
「はっ、それではそのように」
「このまま」
こうして両軍は奇妙な進撃を続けた。そうしてロンド=ベルは遂に収容所の前まで辿り着いた。見ればそれは巨大なコロニーであった。
「コロニーか」
「あそこが収容所か」
「そうだ」
ガスコンが彼等に対して答えた。
「あそこがだ」
「見れば敵はいないが」
「どうしてなの?」
「敵は中にいる」
ガスコンはその事情を彼等に説明した。
「もうすぐだ。来るぞ」
「来ますか」
「もう敵のレーダーには捉えられている」
既にそれを知らせる警報が鳴り響いていた。
「そして後ろから来ている連中からも連絡がいっているからな」
「まあそうだな」
弾児はガスコンの言葉を聞いて頷いた。
「そうなるのが道理だな」
「それでどうするんだ?」
剣人はそんなことはどうでもいいといった口調だった。
「このままやられるわけじゃねえよな」
「当然だ。俺は行く」
ガスコンが真っ先に前に出た。
「今からな」
「よし、じゃあ僕も行くか」
「はい、万丈様」
ギャリソンが万丈に対して答えてきた。
「ダイターンの整備とワックスがけは今終わりました」
「うん、グッドタイミングだよギャリソン」
「有り難うございます」
「よし、じゃあ囚われの人達を助けに行こう」
ここでダイターンも出撃するのだった。
「正義の味方らしくね」
「コロニーから敵が出て来ています」
イリアが報告する。
「数は二万です」
「少ないな」
「確かに」
ランスとニーはそれを聞いて述べた。
「彼等にしてみれば」
「その程度とは」
「ハマーン」
ミネバは彼等の話を聞いたうえでハマーンに通信を入れた。
「どう思うの?」
「はい」
そしてすぐにそれに応えてきたハマーンであった。彼女はこう言うのだ。
「収容所には元々それだけしかいないのでしょう」
「そうなの」
「ただ」
だがここでハマーンは言うのだった。
「おそらく後方以外にも敵が来ています」
「そうなの」
「その通りだ。奴隷はな」
黄金は忌々しげに言ってきた。
「帝国になくてはならない存在なんだよ」
「帝国に!?」
「そうさ。ガルラ帝国は奴隷制国家だ」
このことを言うのだった。
「それでだよ。奴隷がなくちゃ何もできやしねえ」
「今だにそんな国家があったのかよ」
「バルマー帝国よりひでえな」
あちらの世界の者達も言わずにいられなかった。
「俺達もそうだった」
「あんた達もか」
「そうさ。それでゴライオンに乗ってな」
そういうことだったのだ。
「あいつ等と戦うことになったんだよ」
「そうだったのかよ」
「そうさ。だからよ」
黄金の言葉がここで強いものになった。
「俺は何があっても奴隷を解放する」
「俺もだ」
「僕も」
「俺も」
そして青銅と錫石、黒銅もその考えは同じだった。
「何があってもやらせてもらう」
「かつての僕達と同じだった人達を」
「今ここでな」
「ガルラ帝国の奴隷は悲惨を極めています」
ファーラも皆に対して話すのだった。
「それはまさに地獄です」
「地獄か」
「そうです。地獄です」
ファーラの言葉は続く。
「そこでは食べるものもなく重労働を強いられ」
「それで?」
「まだ何か」
「かつての仲間の死体まで食べる程なのです」
「な・・・・・・」
皆それを聞いて流石に絶句してしまった。
「そんな状況なのかよ」
「帝国の奴隷は」
「そうです。ですから何があっても」
「よし、やってやらあ!」
最初に応えたのは甲児だった。
「ガルラ帝国!許しはしねえぜ!」
「俺もだ!」
「僕も!」
「私も!」
皆それに続くのだった。こうして彼等はその二万の敵に突き進む。そうしてその敵はすぐに倒すのだった。そのうえで二万の敵は倒した。
「さて、これでだ」
「後はだよ」
その二万の敵を倒してもだった。敵はまだいるのだった。
後方のその敵が来た。クロッペン率いる彼等だ。
「司令」
「うむ」
クロッペンはカブトの言葉に応えていた。
「それではだ。すぐに向かうぞ」
「二万の収容所守備兵は倒されました」
「そうだな」
今度はミズカの言葉に頷くクロッペンだった。
「とりあえずはな。しかし」
「しかし?」
「周囲の帝国軍に指示は出したな」
「はい」
「それは既に」
将軍達が一斉にそれに応えるのだった。
「出しております」
「それはもう」
「ではこのまま囲む」
クロッペンはまた指示を出した。
「そうして彼等を倒す。いいな」
「わかりました」
「しかしだ」
だがここでクロッペンはまた言うのだった。
「どうしたものか」
「どうしたとは?」
「司令、一体何が」
「奴隷達だ」
不意にこのことを言うのだった。
「奴隷達だ。どうしたものか」
「どうしたとは一体」
「何かあるのですか?」
「いや、いい」
言葉を引っ込めるのだった。
「やはりこのまま攻める。いいな」
「はい、それでは」
「このまま」
「ガルラ帝国」
彼は一人呟いた。
「やはり。悪なのか」
そう呟きながらロンド=ベルに向かう。そうして今彼等に対して攻撃を仕掛けるのだたt。
「来たぞ!」
「帝国軍だ!」
収容所のコロニーの前に展開するロンド=ベルの面々は周りを見て言うのだった。
「追ってきた奴等だけじゃない!」
「周りからもかよ!」
「数、これは」
サコンがレーダーを見て言う。
「二百万を超えています」
「博士、これは」
ミドリもまた言う。言いながら大文字に顔を向ける。
「これだけの数が一度に来るのは」
「そうだな。はじめてだ」
大文字もまたミドリの今の言葉に頷く。
「この世界の戦いでもな」
「どうしますか、博士」
サコンは大文字に対して問うてきた。
「二百万の大軍です」
「うむ」
「それに包囲されてはです」
また言う彼だった。
「おいそれと勝てるものじゃありません」
「そうだな」
それは大文字にもわかることだった。
「しかしだ。ここはだ」
「どうされますか?」
「戦う」
彼の決意はこれであった。
「ここで戦う。いいな諸君」
「しかし博士」
サコンはそれでも言うのだった。
「二百万です」
またこの数について述べてきた。
「二百万の数はどうしようもありません」
「そうだな」
大文字は今の言葉は何気なく聞いている感じだった。
「普通ならここで一点集中突破でそのまま戦場を離脱する」
「そうです」
サコンもそれを言っているのだ。
「ですからここは」
「しかしだ」
ここで大文字の言葉が変わった。
「我々がここで逃げればだ」
「逃げればですか」
「そうだ。彼等はどうなる」
奴隷達のことである。
「彼等は一体どうなるか」
「それは」
「言うまでもないな」
サコンに顔を向けての言葉だった。
「だからだ。我々は彼等の為にここに留まって戦う」
「全滅しようとですね」
「全滅という言葉はロンド=ベルの辞書にはない」
強烈な断言であった。
「あるのは」
「あるのは」
「勝利!」
彼にしては珍しく強い言葉であった。
「そして正義。この二つだ」
「ですね」
ここで笑みを浮かべるサコンだった。我が意を得たりというように。
「では博士」
「うむ。全軍迎撃用意!」
「わかってるさ!」
「待ってましたその言葉!」
皆彼の言葉に一斉に声をあげた。
「敵軍を一兵残らず退け」
「奴隷の人達を解放する!」
「それですね!」
「そうだ。その為にここで戦うのだ!」
大文字もまたそれを誓っていた。
「よいな。それではだ!」
「よし!」
「やってやるぜ!」
皆一斉にそれぞれのマシンを構える。そうして球状の陣を組みそのうえで四方八方から迫り来る敵軍を次々と倒すのであった。
「撃て、撃て!」
「狙いは定める必要はねえな!」
帝国軍は数で迫る。かなり密集していた、そしてその密集が彼等にとって仇になった。
迫るところで攻撃を受け次々に吹き飛ばされていく。ロンド=ベルは陣形を崩さずそのうえで彼等の攻撃を受け続けているのだった。
「よし、まずはこれだけだ!」
「十万機です!」
ミリアリアが言う。
「今一分です!」
「一分でそれだけなのね」
ミネバは通信でそれを聞いて呟いた。
「あと十九分。全部倒すかそれとも」
「いえ、ミネバ様」
しかしここでハマーンがまた彼女に言ってきたのだった。
「十分です」
「十分!?」
「そうです。十分で敵は全て倒せます」
こうミネバに述べるのだった。
「ですから。御安心下さい」
「けれど数があまりにも」
「敵が多ければ多いだけの戦い方があります」
ハマーンの言葉は沈着そのものであった。
「ですから御安心を」
「安心していいのね」
「はい」
また応えるハマーンであった。
「ミネバ様はただ攻撃を命じておられればいいのです」
「そう。私は」
「ミネバ様」
ハマーンは不意に彼女の名前だけを呼んできた。
「私はミネバ様の忠実な僕です」
「ハマーン・・・・・・」
「ミネバ様を決して死なせはしません」
それは誓って言うのだった。
「例え。どのような状況でも」
「そうなの。ハマーンは」
「この戦い。勝ちます」
そしてこうも言うのだった。
「奴隷になっている者達の為、そしてミネバ様の為に」
「それじゃあハマーン」
ミネバも彼女の言葉を受けて言うのだった。
「私からも」
「何でしょうか」
「御願いがあるの」
真面目そのものの顔でハマーンに対して言うのだった。
「それはね」
「それは」
「死なないで」
言葉が実に切実なものになった。8
「絶対に。死なないで」
「絶対にですか」
「皆死んで欲しくないけれど特にハマーンは」
こう言うのである。
「死なないで。何があっても」
「ミネバ様・・・・・・」
「私はハマーンが好き」
ミネバの偽らざる本音だった。
「だから。絶対に」
「わかりました」
ハマーンはミネバのその心に対して微笑むのだった。普段の険のない穏やかな顔で。
「それではこのハマーン」
「ええ」
「必ず生きます」
こう言うのだった。
「ミネバ様の為に。何があろうとも」
「ええ。御願いね」
「わかりました。それでは」
ミネバとのやり取りのうえであらためて敵に対峙する。そうしてそのファンネルを敵に対してこれでもかという程放つのだった。
「行けっ、ファンネル!」
キュベレイのファンネル達がそれぞれ流星の様に流麗かつ生き物の如き複雑な動きを見せて敵に向かう。そうしてそのうえで敵を撃つのだった。
ゴットンはそのハマーンを見てマシュマーに囁いた。
「あの、マシュマー様」
「何だゴットン」
「ハマーン様ですけれど」
やはり言うのは彼女のことだった。
「強くなられてますよね」
「そうだな」
マシュマーにもそれは感じ取られるものだった。しっかりとした言葉でゴットンに対して頷く。
「アクシズにおられた時よりもな」
「ずっと。何なんでしょうか」
「護るものができたからだろうな」
こう答えるマシュマーだった。
「だからだ。それでさらに強くなられたのだ」
「それはやっぱりミネバ様ですか」
「その通りだ。真の意味でミネバ様を御護りされることに気付かれたのだ」
だからだというのである。
「だからこそ強くなられたのだ」
「そういうことですか。それで」
「そして私もだ」
ここでザクスリー改を前に出すマシュマーだった。
「私はそのハマーン様を御護りするのだ」
「ハマーン様をですか」
「それが騎士だ。だからこそ」
言いながらザクスリー改のその剣を構えて前にいた敵を上から下に両断する。すぐに目の前で派手な爆発が起こり敵はその中に消えた。
「戦う。行くぞゴットン」
「敵の中にですか!?」
「嫌ならそこにいろ」
こうまで彼に告げるのだった。
「私は行くぞ。マシュマー=セロ参る!」
「うわ、マシュマー様!」
ここでゴットンの乗るズサが攻撃を受けた。
「敵の攻撃滅茶苦茶激しいです!うわーーーーっ!」
「むっ、ゴットン」
マシュマーはそのゴットンのズサが集中攻撃の中に消えていくのを見届けた。そして言うのだった。
「御前の死は無駄にはしない。安らかに眠れ」
「ちょっと待ちなよマシュマー」
しかしここでゲーマルクに乗っているキャラが彼に声をかけてきた。
「何だ?」
「ゴットン生きてるよ」
こうマシュマーに言うのだった。
「ちゃんとね」
「何とっ!?」
キャラに言われ思わず声をあげてしまったマシュマーだった。
「あれだけの攻撃を受けてなのか」
「はい、そうですよ」
ここで出て来たゴットンであった。
「私生きてますよ」
「しかも撃墜されていないだと!?」
見ればズサも健在であった。
「何ということだ」
「ズサって頑丈ですから」
その頑丈なズサの中から言うのだった。
「ですから何とか」
「そうか。生きていて何よりだ」
「その割りに残念そうですよね」
マシュマーの言葉からそれを感じ取っていたのだった。
「これ俺の気のせいですか?」
「多分そうだ」
これまたいい加減な返事だった。
「気にするな。生きていればだ」
「ええ、闘えですよね」
「そうだ。戦いに向かえ」
やはり言葉はこれしかなかった。
「いいな」
「わかりましたよ。回復させてもらってから」
「はい、ゴットンさん」
ここでファが来てメタスでそっと回復させたのだった。
「それじゃあそれで」
「有り難う、ファちゃん」
笑顔で礼を述べるゴットンだった。キャラはそんな彼を見てまた言うのだった。
「しかしあんたもね」
「何ですか?」
「随分ここに馴染んでるね」
彼が言うのはこのことだった。
「また随分と」
「まあそうですね」
それは自覚しているゴットンなのだった。
「何か過ごしやすくて」
「そうだね。ここはね」
キャラも彼女と同じことを感じているのだった。
「いい部隊だよ、本当に」
「おかげで私も満足に戦えますよ」
「なら最前線に向かえ」
こう言えばすぐに言葉を入れてきたマシュマーだった。
「いいな、すぐにだ」
「鬼ですか、貴方は」
「今そんなことを言っている場合か」
ここでこんなことを言い返すマシュマーだった。
「二百万の敵だぞ」
「ええ。今やっと百万倒しましたよね」
「だからだ。御前のその力が必要だ」
言いたいのはこういうことなのだった。
「わかったら来い。キャラもだ」
「ああ、最初からそのつもりさ」
キャラは楽しそうに笑っていた。
「それじゃあ。やらせてもらうよ」
「参る!」
彼等もそれぞれ向かうのだった。戦いは包囲されながらも陣を崩さないロンド=ベルを帝国軍が攻めあぐねる形となってしまっていた。
「これはまずいな」
「うむ、そうだな」
プロザウルスとボイザーがそれぞれの乗艦の通信で言い合う。
「このままではな」
「どうする?ここは」
「クロッペン様に御聞きするか」
これが彼等の出した結論だった。
「やはりここはな」
「そうだ、やはりクロッペン様だ」
カブトも言うのだった。
「ここはな」
「うむ、そうしよう」
こうして彼等はクロッペンに対して今後の戦術を尋ねるのだった。そしてクロッペンの決断は。
「このまま攻める」
「攻めるのですか?」
「このまま」
「そうだ。攻める」
彼はまた言うのだった。
「さらに援軍を呼べ」
「援軍をですか」
「奴隷は我がガルラ帝国軍の柱」
奴隷制国家ならばこそであった。
「それを解放されては我が軍のここでも動きはかなり制限されてしまう」
「そうですな、若し奴隷がいなくなれば」
「基地の建設やその他の労働は」
そうしたものを全て奴隷達に頼っているのである。
「ではやはりここは」
「何としても」
「我がザールの力を集めよ」
クロッペンは言った。
「周辺の残る帝国軍の戦力もだ。よいな」
「はっ、それでは」
「そのように」
「奴隷がなくては帝国は動かない」
また言うクロッペンであった。
「しかし。そもそも奴隷は」
「!?」
ミズカは今のクロッペンの言葉にふと気付いた。そうしてすぐに彼に問うのだった。
「司令、何か」
「いや、何でもない」
ここでも己の言葉は打ち消すクロッペンだった。
「気にするな。いいな」
「そうですか。それでは」
「あるだけの戦力を投入せよ」
クロッペンの指示は続く。
「いいな、それでな」
「了解です」
「では」
帝国軍はそれに従い攻撃を浴びせる。しかしロンド=ベルは耐えそのうえで反撃で敵を倒していく。援軍が来たがそれでもだった。ロンド=ベルは凌ぎ続けていた。
「一時間か」
「敵の数は?」
一時間経ったところで皆尋ねるのだった。
「今どれ位だ?」
「どれだけ残っているんだ?」
「あと五十万よ」
ユンが皆に述べる。
「今までで四百万は倒してるわ」
「四百万・・・・・・」
「よく倒したわね」
「ああ、全くだぜ」
皆その数を聞いて思わず言うのだった。
「バルマー戦役の時もこんな感じでしたよね」
「まだ宇宙怪獣の時よりずっとましよ」
ジュンコは笑ってウッソに告げるのだった。
「まだね」
「そういえばそうですか」
「あの時は一億はいたじゃない」
宇宙怪獣の数は尋常なものではなかったのだ。
「その時と比べればね」
「そうですね、ましですね」
「収容所に補給タンクが一杯あってよかったぜ」
オデロはそのタンクのうちの一つを取りそれを使ったうえで述べた。
「ったくよ、次から次に出て来やがって」
「しかし。いい加減敵の数も尽きたみたいだな」
「ああ、そうだな」
今度はトマーシュの言葉に頷くオデロだった。
「どうやらな。あと五十万か」
「たった五十万だ」
オリファーはここであえてこう言ったのだった。
「たった五十万だ。いいな」
「わかったわ」
マーベットが今の彼の言葉に頷いた。
「それじゃあ。あと一踏ん張りで」
「頑張りましょう」
ウッソも言う。
「あと少しですから」
「確かに辛いことは辛いさ」
オデロはまた敵を倒しながら言った。ビームライフルは始終攻撃を放っている。
「けれどな。まだこの程度じゃな」
「宇宙怪獣のことを思えばだよね」
ウッソのブイツーが飛翔した。その光の翼で敵を纏めて薙ぎ払い爆発に変えていく。
「これ位はね」
「ああ、何とてもないさ」
言いながらまた攻撃を放つオデロであった。
「あと五十万ぽっちじゃな」
「あと四十五万よ」
マーベットも攻撃を仕掛けている。ビームライフルだけでなく接近した相手には素早くビームソードを抜きそれで突き倒すのだった。
「あと少しね」
「粘るだけ粘らせろ!」
リーもまた戦意を衰えさせてはいなかった。
「ここで敵の数を減らせばそれで楽なる。いいな!」
「了解!」
皆ここではリーの言葉に頷く。そうして相変わらず数を頼りに来る帝国軍を防いでいく。そうして遂に。帝国軍の数は殆どなくなってしまったのだった。
「援軍は」
「もう。これ以上は」
ミズカはクロッペンの言葉に首を横に振るばかりだった。
「どの基地も出せないそうです」
「そうか。尽きたか」
「はい・・・・・・」
無念に満ちた返事だった。
「これ以上は。何処も」
「わかった。では撤退だ」
こうなってはそれしかなかった。
「よいな。撤退だ」
「はい、それでは」
「ここは」
「ロンド=ベル。ここまでやるとはな」
クロッペンは軍を撤退させながら仮面の下で呟くのだった。
「予想を超えているということか」
「忌々しいことに」
ブロザウルスの言葉は歪んだものだった。
「どうやらその強さは」
「・・・・・・次に戦うことができるなら考えておこう」
クロッペンはまた言った。
「彼等に対してな」
「はい。ですがクロッペン様」
「その次ですが」
ここで将軍達が曇った顔で言うのだった。
「収容所を奪われたこの失態は」
「そしてシンクライン殿下の御気性を考えれば」
「案ずるな。責任は私が取る」
恐れさえ見せている彼等に対して告げた。
「だからだ。貴官等は安心するのだ」
「有り難うございます」
「それでは」
「そうだ。ここはだ」
また彼等に告げるのだった。
「私に任せておけ」
「はい」
こう告げたうえで戦場から姿を消すクロッペン達だった。戦いは終わり収容所は解放された。すぐに奴隷にされていた人々が解き放たれ場は歓喜に包まれた。
「よし、やったぜ!」
「これで奴隷の人達も解放されたな」
黄金と竜馬が満面の笑顔でいた。
「ああ、ガルラ帝国の奴等もその数をかなり減らしたしな」
「これでまずはよしだな」
「よくやってくれた」
ガスコンも彼等に言ってきた。
「御前達の戦い、見せてもらった」
「ガスコン・・・・・・」
「そしてその心もだ。
剣人が彼の言葉を聞いていた。
「御前達ならば大丈夫だ」
「大丈夫だって!?」
「そうだ。帝国を倒せる」
そしてこうも言うのだった。
「だからだ。俺も戦おう」
「おい、じゃあ一緒にかよ」
「そういうことだな」
「そうだ」
今度は弾児に対しても答えていた。
「俺も御前達と共にだ。いいか」
「ああ、頼む」
「是非な」
彼等にとっては待ちに待っていた言葉だ。頷かない筈がなかった。
「じゃあこれからは仲間だな」
「ずっと一緒なんだな」
「戦う」
ガスコンの今度の言葉は一言だった。
「そう、共にな」
「よし、いいこと尽くめってわけだな」
「奴隷の人達も解放できたし新たな仲間も入った」
剣人だけでなく弾児までも笑っていた。
「だよな。晴れてな」
「苦労のかいがあったというわけだ」
「それは俺もだ」
ガスコンもまた同じだと言うのである。
「御前達という仲間を手に入れることができたのだからな」
「ガスコン・・・・・・」
「では次はだ」
大文字はここで言うのだった。
「解放された人達を連れて月に行こう」
「はい、これで」
「そして整備や補給を受けて」
「今回の勝利は我が軍にとって非常に大きいものだ」
サコンはこう皆に話してきた。
「奴隷だった人達を解放しただけじゃない」
「他にもあるっていうのかよ」
「そうだ。五百万近い敵の戦力を倒した」
彼が次に言うのはこのことだった。
「そして収容所周辺の基地の戦力も潰した」
「そうだな。じゃあそこに連邦軍に言ってもらって」
サンシローも戦略というものがわかってきていた。
「敵の基地を占領していってだよな」
「これで火星方面は我々の手に戻った」
その火星がであった。
「そして次は月の方面だ」
「月にもかなりの敵がいるのか」
リーはそのことにあらためて気付いた。
「そうなのか」
「そうです。未確認ですがかなりの戦力が配置されているようです」
テッサが述べてきた。
「地下に基地を置いているらしく詳しいことはわかりませんが」
「そうなのか。やっぱりな」
ピートはそれを聞いてその目を顰めさせた。
「じゃあすぐに行こう。月に」
「今度は月での戦いですね」
ブンタも言ってきた。
「じゃあまずは補給や整備を受けて」
「ギッタンギッタンにしてやるぜ」
ヤマガタケはその指をボキボキと鳴らしていた。
「帝国の奴等をここでよ」
「では諸君」
大文字はあらためて一同に告げた。
「月に向かうぞ。いいな」
「はい」
「これで次は」
皆大文字の言葉に頷く月に向かうのだった。奴隷達だけでなく火星方面まで解放した彼等はそのうえで突きに向かうのだった。それこそが彼等のあらたな戦いであった。
「馬鹿者!」
シンクラインはその手に持っている杖でクロッペンを打ち据えつつ罵っていた。
「貴様の失態、どれだけのものかわかっているのか!」
「・・・・・・はい」
クロッペンは打たれながらも片膝をつき顔を俯かせているだけであった。
「申し訳ありません」
「貴様の失態万死に値する」
その怒りに満ちた言葉がまた出された。
「後で処刑の命を伝える。覚悟しておけ」
「わかりました」
「連れて行け!」
処刑のことを言ってからそのうえで周りの兵士達に叫ぶのだった。
「牢獄にだ。いいな!」
「はい!」
こうしてクロッペンは兵士達に両手を捉えられそのうえで連行されて姿を消した。シンクラインはそんな彼の姿を忌々しげに見送りつつそのうえで周りの者に問うのだった。
「奴等は月に向かっているそうだな」
「はい」
「その通りです」
すぐに周りの者がそれに応えてきた。
「月にはアルデバロン軍が展開しています」
「ゼオ=ガットラー司令の」
「ならばガットラーに伝えよ」
シンクラインの指示は迅速であった。
「すぐに奴等を迎え撃てとな」
「奴等をですか」
「それだけではない」
彼の言葉は続く。
「必要とあらば非常手段を取ってもよい」
「非常手段もですか」
「そうだ。手段は問わぬ」
彼はこうまで言い切った。
「だからだ。好きなようにせよとな」
「それではそのように」
「ガットラー司令には」
「何をしてもよい」
シンクラインの言葉は続く。
「奴等の地球がどうなろうとな」
「地球がですか」
「どのみち奴隷を手に入れるだけだった」
彼等はその為に地球を攻めているのだ。
「ならば生き残った者をそうしてもよい」
「おや、またそれは極論ですね」
ここで出て来たのはイノベイター達だった。リボンズがその先頭に立ってシンクラインに対して言ってきたのである。
「核ミサイルでもお使いになられるので?」
「何か不服か?」
「いえ」
リボンズは剣呑な顔で問うてきたシンクラインに対して涼しい顔で返した。
「僕としては人がどうなろうと構いません」
「貴様は地球人ではないのか?」
「まさか」
彼の問いも笑って否定するだけだった。
「僕は人ではありませんよ」
「では何だというのだ?」
「人よりも高位の存在なのですよ」
こう言うのである。
「僕達はね」
「人を治める存在とでもいうのか?」
「その通りです」
また平然として答えるのだった。
「僕達イノベイターはその通りです」
「ふん、だからこそ私の部下になったというわけか」
「はい」
平然とした返答は続く。
「その通りです。僕達は人を治める為にここにいるのです」
「そういうことか」
「はい、人を」
シンクラインは気付いてなかったがその目は彼をも蔑んでいるものであった。瞳の奥にそれを隠してわからないようにしていたが。
「治める為にです」
「では核は何だ?」
「神の裁きです」
こう言うだけであった。
「ただそれだけのものです」
「そうか。ならば御前達にも命じる」
シンクラインは彼等にも指示を出すことにしたのだった。
「その地球人共をだ」
「どうせよというのですか?」
「裁け」
左手の人差し指でリボンズを指差しながらの命令であった。
「御前達の言うそのやり方でな」
「はい、それでは今から」
「容赦するつもりはないな」
「無論です」
また平然とした顔で応えるリボンズだった。
「神は人を治めるものです」
「神か」
「そう、時として罰も下します」
傲然と言葉を続けるのだった。
「そしてその罰は無慈悲なものでなければなりません」
「無慈悲か」
「それでいて絶対の」
こうまで言うのだった。
「存在なのですから」
「だからこそか」
「そうです。容赦?何故する必要があるのです?」
リボンズの言葉は続く。
「人間なぞに」
「では御前達も行くがいい」
シンクラインは彼等に対して出撃命令を出した。
「そしてその裁きを与えるのだ」
「はい、それでは」
リボンズはにこやかな笑みを浮かべてその場を後にした。だがシンクラインの周りの者達はその彼等を見ていぶかしむ顔で主に告げてきた。
「殿下、あの者達は」
「信用は」
「わかっている」
彼等にもはっきりと答えるシンクラインだった。
「あの者達のあの傲慢さ」
「はい」
「好きになれぬ」
己のことは置いておいてだった。
「到底な」
「そうですか。やはり」
「あの者達が」
「しかもだ」
彼はさらに言った。
「企んでいるな」
「企んでいますな、確かに」
「間違いなく腹に何かあります」
それも読んでいる彼等なのだった。
「あの者達は」
「特にです。あの小僧」
リボンズのことだった。
「あの小僧は特に」
「これはまさかと思うのですが」
そしてさらに言うのだった。
「殿下の御命も」
「隙あらば、か」
「そう思うのだがな」
家臣同士でのやり取りだった。
「あの小僧ならやりかねないぞ」
「そうかもな。あの目はな」
「それもわかっている」
そしてシンクライン自身もそれを読んでいるといった目であった。
「あの小僧。野心も持っている」
「はい、間違いなく」
「あの小僧だけは」
「だからだ。消えてもらいたいものだ」
彼は言うのだった。
「できればな。ロンド=ベル共々な」
「だからこそ出陣させたのですね」
「今このようにして」
「その通りだ。失敗すればその咎を責める」
この考えもあるのだった。
「よいな。それでな」
「はっ、ではその用意もしておきましょう」
「そして用が済めば」
「消えてもらう」
シンクラインもまたイノベイター達を信じていないのだった。戦いの中でも謀略が渦巻きそれが戦いをさらに極彩色に彩っていたのだった。

第百二十二話完

2009・4・23


 
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