八条学園怪異譚
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第十八話 トイレの花子さんその十
「私がお母さんなのはいいとして」
「お姉ちゃんでも別にいいけれどね」
二人にとってそう言われることは特に悪い呼ばれ方ではなかった。愛実も聖花も末っ子なのでそうしたことについても詳しかったのだ。
それでまた言う二人だった。
「けれど花子さんは妹じゃないから」
「母親より年上の妹っていないでしょ」
「ううん、流石はお店の娘達ね」
花子さんもいい加減自分を妹設定として話を進めることには無理を感じたので諦めた。それで二人にこう言ったのだった。
「じゃあ話題変えるわ」
「ええ、今度の話題は何?」
「何だっていうの?」
「うん、あんた達おトイレは奇麗に使ってるわよね」
「そのことはね」
二人の言葉は同時だった。
「ちゃんとしてるわよ」
「お店のおトイレが汚いと売り上げに関わるから」
「お家の中のおトイレもしっかりお掃除してるから」
「勿論お店のおトイレもね」
「だったらいいわ。おトイレは奇麗に使ってね」
花子さんは自分の世界のことなので真面目に言う、二人のその話を聞いてそしてこう言ったのである。
「そして奇麗にお掃除してね」
「だからお店が潰れるから」
「おトイレが汚いとね」
「見事なまでにお店の娘ね」
うんうんと頷いて感心する花子さんだった。花子さんについても二人のそうした心掛けはいいものだった。そうした話をしてだった。
ここで聖花が自分の左手の腕時計をちらりと見た。それから愛実に顔を向けてこう言った。
「そろそろよ」
「時間なのね」
「五時間目はじまるから」
「五時間目体育だったわよね」
「体操服に着替えないといけないから」
更衣室で着替える。
「もう行かないとね」
「体育館でバスケよね」
愛実は体育の場所とやる種目のことを確認した。
「そうよね」
「ええ、そうよ」
聖花もその通りだと答える。
「バスケよ」
「バスケ自体はいいけれど」
愛実は聖花の話を聞いて眉を曇らせて述べた。
「男子が一緒だとね」
「見てくるのよね、どうしても」
「そうそう、ちらちらとね」
本能の赴くまま無意識のうちに見てしまう、これは十代の男としては至極当然のことではあるがそれでもだった。
二人、女子にとっては困ったことでありこう言い合うのだった。
「半ズボンの後ろのラインとか」
「胸の動きとか腰のくびれとかね」
「足だって見てくるし」
「それが嫌なのよね」
こう話す二人だった。だがそれは。
花子さんから聞くと微笑ましいことだった、それで二人に笑って言ってきた。
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