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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百十六話 ガルラ帝国総攻撃

                第百十六話 ガルラ帝国総攻撃
   今シンクラインの下に。多くの者が集まっていた。彼はその者達を不遜な目で見つつ言うのだった。
「遅かったな」
「はっ」
「申し訳ありません」
「だが。いいとしよう」
まずは彼等の言葉を聞いて止まった。
「しかしだ。わかっているなゼオ=ガットラーよ」
「はい」
「私は二度は許さん」
その大柄な男を見据えての言葉だった。
「二度の失態は貴様の死になるとわかっておけ」
「承知しております」
「他の者達も同じだ」
シンクラインの不遜な言葉が続く。
「こうして地球に集めたのは言うまでもない」
「はい」
「今や地球こそが我々にとって最大の障壁となっている」
彼は言うのだった。
「その地球を滅ぼす為に今我が軍の主力全てを集めたのだ」
「全てをですか」
「そうだ、全てをだ」
彼はまた言った。
「その我々に立ちはだかるのはロンド=ベル」
「彼等のことは聞いております」
一人進み出て来た。
「私も」
「知っているのだな、テラル」
「はい」
テラルと呼ばれたその者が応えた。
「急激に戦力を増強させ我等を圧しているとか」
「しかもだ」
シンクラインは彼女の言葉に応える形でまた言った。
「あのゴライオンもいる」
「ゴライオンもですか」
「容易な相手ではなくなっている」
彼はこのことを把握しているのだった。
「だからだ。我がガルラ帝国の主だった将官である御前達も全て呼び寄せたのだ」
「我等全員をですか」
「そうだ。この意味がわかるな」
今度は仮面の男を見ていた。
「グロッペンよ」
「無論です」
名前を呼ばれた仮面の男はすぐに応えてきた。
「それでは」
「ガストンは今は放っておく」
シンクラインは不意にある者の名前を出したがそれは一瞬だった。
「それよりもだ。まずは地球だ」
「わかりました」
「ロンド=ベルを倒すのだ」
彼はまた言った。
「それが私の御前達への命令だ。失敗は許さん」
「はっ」
皆彼の言葉に応えて敬礼する。
「それでは。そのように」
「今より地球を」
「これより総攻撃に移る」
シンクラインの決断は迅速なものだった。
「それぞれの兵を率いて出撃しろ。いいな」
「わかりました」
「それでは」
皆再び敬礼する。そうして今ガルラ帝国のこれまでにない大軍が出撃したのだった。
地球ではこの頃。ロンド=ベルの面々はエイジの復帰戦を終えてとりあえずは一息ついていたのだった。
「平和なもんやな」
「全くだ」
トウジの言葉に弾児が応えている。
「とりあえず今はな」
「ガルラ帝国の奴等また来よったけれどな」
「そのガルラ帝国だけれどね」
ヒカリがここで彼等に言ってきた。
「何か動きがあったみたいよ」
「動き!?」
「うん。何か木星の方でかなりのエネルギー反応があったんだ」
剣人にケンスケが応えた。
「それがどうやらね」
「じゃあもうすぐ」
「来るのかよ」
「それもかなりのが」
「今度はどれだけの数なんだ?」
「それがね」
この問いになると顔を曇らせたヒカリだった。
「どれだけになるかさえ」
「わからない位なんだ」
ケンスケも困った顔になっていた。
「ちょっとね。あまりにも多過ぎてね」
「それってまずいんじゃないの?」
シンジはそれを聞いて顔を曇らせた。
「それだけの数が来るなんて」
「あんた今更何言ってるのよ」
しかしアスカがその彼に言ってきた。
「そんなの今までと同じじゃない」
「今までとって?」
「あんたどれだけ戦ってきたのよ」
「数え切れない位」
彼も覚えていられない程の戦いを経てきている。その戦いの全てが。
「どれもこれも尋常じゃない数の相手だったでしょ?」
「宇宙怪獣とかバルマー帝国とか?」
「そうよ。三十一原種との戦いだってそうだったでしょ?」
「うん」
「ミケーネ帝国とかティターンズとか。そんな戦い山程あったじゃない」
「こっちの世界でも大概そんなのばっかりやな」
トウジもそれ程悲観してはいなかった。
「それ考えたらどんだけ数が多うてもな」
「気にすることないんだね」
「十倍や二十倍でガタガタ言わないの」
アスカはあくまで強気だった。
「百倍とかで言いなさい。二百倍かしらね」
「そんなに来るかな?」
「流石に来ないわよ」
アスカはその可能性は否定した。
「どんだけいるのよ、それって」
「まあそうだけれど」
「わかったらうじうじしない。一杯飲みなさい」
「一杯って?」
「おう、シンジ」
「やってる?」
ここで顔を真っ赤にさせたアラドとゼオラが出て来た。
「酒、美味いぜ」
「飲んで飲んで」
「君達やっぱり」
「ウォッカって美味いよな」
「病み付きになるわね」
観れば二人はそのウォッカをストレートで飲んでいたのだった。そのせいで顔は真っ赤になっていてそのうえ泥酔寸前になっていた。しかも酒癖も悪い。
「さあ、だからよ」
「あんたも飲んで」
「ウォッカをストレートって」
「あんたあたしの酒が飲めないの?」
いきなりアスカが言ってきた。
「飲まないとどうなるかわからないわよ」
「えっ、アスカも?」
「ウォッカって美味しいじゃない」
彼女もそのウォッカを飲んでいるのだった。
「少しで酔えるし幾らでも飲めるし」
「うわ、九十六パーセント・・・・・・」
シンジはボトルを見て唖然とした。
「こんなのストレートで飲んだらそれこそ」
「そうよ。うじうじしたのを退治しなさい」
早速ボトルを一本出してきたのだった。
「いいわね」
「わかったよ。それじゃあ」
「戦いはまだまだ続くのよ」
ウォッカをラッパ飲みしながらの言葉だった。
「それでどうして落ち込んでいられるのよ」
「そうなんだ」
「そうよ」
アスカの論理を無視した言葉だった。
「わかったら飲むの。いいわね」
「うん。それじゃあ」
「ほらほら、あんた達も」
アスカは剣人や弾児にもそのボトルを差し出した。
「飲んで騒ぐのよ。いいわね」
「ああ、それじゃあよ」
「楽しくやるか」
「ノリがいいのはいいことよ」
アスカは真っ赤な顔で言う。
「そんなのは馬鹿シンジだけで充分よ」
「僕は別に」
一応酒は飲みはじめているシンジだった。
「ノリがいいとか悪いとかは」
「おらおら、だったら飲め飲めって」
「ぐぐっとね」
アラドとゼオラに左右を抑えられそのうえで飲まされていく。
「飲んだら気持ちも切り替わるからな」
「どんどんやればいいわ」
「わかったよ。じゃあ」
とりあえず飲むシンジだった。彼等は今は酒を楽しんでいた。それから数日後。彼等に対して敵襲の報告が届いたのだった。
「敵!?」
「やっぱり来たか」
「そうよ」
ミリアリアが一同に答える。
「わかったら出撃するわよ」
「よし来た」
「場所は?」
「新潟よ」
場所も報告される。
「そこに出て来たわ」
「新潟か」
「数は。ええと」
ここでミリアリアの言葉が止まった。
「これって」
「おい、どうしたんだ?」
ムウがその彼女に問うた。
「まさか数がわからないっていうんじゃないよな」
「何十万かしら」
ミリアリアは困った顔になって言うのだった。
「これって」
「おい、何十万!?」
「何だそりゃ」
ムウだけでなくキースも声をあげる。
「その数は本当か?」
「何万の間違いじゃないんだな」
「はい、間違いありません」
ミリアリアの今度の返事ははっきりしたものだった。
「ざっと見ただけでも五十万」
「五十万・・・・・・」
「何て数なんだ」
「それだけの数が日本海に展開しているのよ」
こう言うのだった。
「だから。早く新潟にね」
「五十万か」
カナードはその数を聞いて考える顔になった。
「それだけで済めばいいけれどな」
「そうはいかないかもな」
エドが言う。
「奴等が本気を入れてきたんならな」
「この世界の宇宙を支配していたな」
モーガンはそこを見ていた。
「だったら。今までが大人し過ぎたんだ」
「今までがですか」
プレアにとっては驚きべき話だった。
「あれだけの数を送り込んできていて」
「驚くことはないわ」
そのプレアにジェーンが言ってきた。
「さっきモーガンが言ったけれど宇宙を支配しているのよ」
「はい」
「だったらこれ位動員しても当然よ」
こうプレアに言うのだった。
「それだけの力があればね」
「そうなるんですか」
「そうよ。さて」
「新潟だ」
ミナは迷ってはいなかった。
「すぐに行くぞ」
「また全軍出撃ね」
プロフェッサーもいつもの通りだった。
「行きましょう。すぐにね」
「さて、それじゃあ」
バリーが彼女に続く。
「早速新潟に行きますか」
「総員出撃だ」
ナタルが全軍に命じる。
「すぐに新潟に入る。いいな」
「わかりました」
こうしてロンド=ベルが新潟に向かった。新潟に入った彼等はすぐにその目の前に信じられないだけの数の敵軍を見たのだった。
「おい、本当に五十万か?」
「もっといるんじゃないのか?」
誰もがその数を見て呆然としていた。
「百万はいるな」
「ああ、そうかもな」
「百万か」
ブライトはその数を聞いてまずは己を落ち着かせた。
「尋常な数ではない」
「ああ」
彼にアムロが応える。
「バルマー戦役での宇宙怪獣との戦い以来だな」
「いや、あの時は今よりも多かった」
ブライトはその時のことを思い出して述べた。
「それを考えれば怯むことはないか」
「そういうことだ。いいか皆」
アムロが全軍に告げる。
「敵は数を頼んで正面から来る」
「はい」
「そこを狙え」
こう言うのだった。
「補給タンクは幾らでもある。エネルギーや弾丸が切れればそれで補給してまた戦うんだ」
「またですか」
「今回は戦艦に戻って補給を受けている余裕はない」
敵の数を見ての言葉である。
「だからだ。いいな」
「過酷だねえ」
カイはアムロの言葉を聞いてわざとシニカルな笑みを浮かべて言った。
「まあいいさ。それは覚悟のうえだからな」
「だから戦場にいる」
「そういうことさ」
親友のハヤトにもその調子だった。
「だったらな。ここは」
「ああ。早速来たな」
「敵、動きました」
命が言った。
「どんどん来ます」
「総員、攻撃開始!」
大河がそれを受けて叫ぶ。
「遠慮することはない。好きなだけ撃つのだ!」
「よし、やってやるぜ!」
「数だけで勝てるか!」
彼等も歴戦の勇士達だ。やはりこの程度では怯まなかった。
「次から次に来てもな!」
「ここは行かせるかよ!」
その言葉と共に総攻撃に入る。今ここにロンド=ベルとガルラ帝国の新潟での戦いがはじまったのだった。
シンジも当然ながらその中にいる。そうして今敵に対して派手にライフルを乱射していた。
乱射だが狙いは正確だった。その正確な攻撃により敵をどんどん撃ち落としていく。
「ここは行かせない・・・・・・!」
真剣そのものの顔で戦っていた。
「どれだけ数が多くても!」
「へえ、度胸座ってるじゃない」
その彼にガーネットが声をかけてきた。
「何日か前は怖気付いていたのに」
「やっぱり敵を前にしたら」
シンジは攻撃を続けながら彼女の言葉に応える。
「身体が自然に動くんです」
「そうよね。やっぱりそうよね」
ガーネットも彼のその言葉に同意するのだった。
「戦いが続いているからね」
「はい」
「私だってそうよ」
ガーネットのヒュッケバインはスラッシュリッパーを放っていた。
「こうやってね。敵をね」
「自然と身体が動いてですか」
「そうよ。こうやるのよ」
そのスラッシュリッパーで倒していく。彼女の動きもかなりいい。
「とにかく。敵の数が洒落じゃないから」
「もう弾薬もエネルギーもいちいち気にしなくてですね」
「補給タンク。幾らでもあるから」
「だからですか」
「そんなの気にしないでどんどん撃ってね」
「わかりました」
それを受けてさらに攻撃を仕掛けていく。ロンド=ベルは水際でガルラ帝国のその大軍を倒していく。その数は次第に減ってはきていた。
「減ったわね」
「うん」
シンジはレイの言葉に頷く。
「何とかね」
「十万は減ったわ」
「そんだけ!?」
アスカは十万と聞いて思わず声をあげた。
「っていうかまた増えてるわよ。十万どころか二十万も」
「そうね」
レイもそれは見てはいた。
「増えてるわ」
「だったら何でそんなに冷静なのよ」
アスカはすぐにレイに言い返した。
「増えてるのに」
「安心していいのよ」
しかしレイはそのアスカにこう言うのだった。
「今は」
「いいっていうの!?こんなに洒落にならない数なのに」
「来れば来るだけ倒すわ」
レイはまた言う。
「それだけよ」
「それだけって!?」
「そう。それだけよ」
言うその側から一斉射撃を放つのだった。それで帝国軍の敵を小隊単位で吹き飛ばす。しかしそこから先にまた敵が出て来たのだった。
「それだけよ」
「って言ってもね」
アスカはATフィールドで敵を薙ぎ倒していた。
「百万以上はいてもやるのね。こっちは千もいないのに」
「おい、こっちもダース単位で倒してるんだぞ!」
ディアッカはフリーダムの一斉発射を続けていた。
「これでまだ倒れないのかよ!」
「倒れても倒れてもですね」
シホもストライクで戦い続けている。
「これで海岸を突破されないのが不思議です」
「当たり前だ!」
シンは得意とする接近戦よりもドラグーンを多用していた。
「俺達がいるんだ!だから行かせるか!」
「そうよ!」
ルーもリガズィを縦横無尽に動かしている。
「私達がいる限りね!やらせないわよ!」
「数がどうしたってんだよ!」
ジュドーのダブルゼータもいる。
「そんなもん!今まで幾らでも相手にしてきただろうがよ!」
「まだだ!」
イザークのジャスティスも吠える。
「まだ俺はやれる!」
「倒れたら承知しねえぞ!」
そのイザークにビーチャが叫ぶ。
「数が多かったらな!」
「それ以上の敵を倒す」
アルトは反応弾を放っていた。
「そうだな」
「そうだよ!」
モンドもビームライフルで敵を次々と撃ち抜く。
「数が多くても!」
「数が多いのは理由にはならないですよ」
ニコルはデスティニーの特性である接近戦をメインにしている。ミラージュコロイドを使ってその身体を複数に見せることも忘れてはいない。
「それで負けても!」
「負けないわよ!」
エルも吠える。
「百万でも二百万でもね!」
「数が多くても」
イーノも普段以上に敵を倒していた。
「僕達、そんなのじゃ負けないから」
「ほら、そこ!」
ルナマリアがまた敵を一機倒していた。
「そんなもんじゃ私達には勝てないわよ!」
「敵の増援は止まった」
レイのプロヴィデンスレジェンドがドラグーンを一斉に放っていた。
「後は。今いる敵を倒すだけだ」
「皆いいわね」
タリアはミネルバのタンホイザーを放ち続けている。
「敵は正面から来るだけよ」
「はい」
「だったら。正面に一斉攻撃を続ける」
それであった。
「それだけよ。わかったわね」
「ナデシコ、ミサイル一斉発射です」
「わかりました」
ナデシコもまた攻撃を止めない。ルリがユリカの言葉に応える。
「とにかく。今は的を選ぶ必要はありません」
「敵を減らすだけですね」
「そうです」
ルリに対しても述べる。
「敵は向こうから来ます。それなら」
「その通りです」
ルリも同じ考えだった。
「これだけ敵がいれば的を選ぶ必要もありません」
「その通りだ」
ここでまた新たな声がしてきた。
「!?」
「その声は」
「決めた」
四機のガンダムが戦場に姿を現わしたのだった。
「僕達も戦おう」
「ティエリア」
「御前等も来たのかよ」
「今まで僕達は僕達だけで戦ってきた」
アレルヤはこう彼等に告げる。
「しかし。それも終わる時が来た」
「終わり!?」
「そうだ。ガルラ帝国が総攻撃に出て来た」
「もう俺達だけで戦っている時じゃない」
刹那も言う。
「一つになる時が来た」
「一つになる時!?」
「それじゃあ御前等」
「そうだ」
ロックオンが彼等の言葉に応える。
「御前等さえよかったらだけれどな」
「僕達も入れて欲しい」
アレルアも言う。
「そしてこれからは共に」
「それでいいか」
最後にティエリアが問う。彼等もロンド=ベルと共に戦うというのだ。
「僕達もロンド=ベルに」
「では聞こう」
ウーヒェイが彼等に問うてきた。そのトライデントを縦横に振り回しそのうえで周りを取り囲む敵を切り倒しながらであった。
「御前達は最後まで戦うのだな」
「そうだ」
刹那が彼の問いに答える。
「だからこそここに来た」
「そうか」
「じゃあよ、早速で悪いけれどよ」
デュオの鎌が前の戦艦を真っ二つにした。
「この連中、どんどん倒していってくれよ」
「それでいいのか?」
「御願いします」
カトルがロックオンに告げた。マグアナック隊も攻撃を止めることがない。
「今すぐにでも」
「敵の数は多いな」
「大したことはない」
トロワもミサイルを放ち続けている。それで前の敵達を吹き飛ばしている。
「この程度。いつものことだ」
「いつもか」
ティエリアはその言葉にかえって落ち着いたようだった。
「では僕達もいつも通り」
「戦えばいい」
ヒイロのツインバスターライフルも火を噴き続ける。
「御前達のやりたいようにな」
「なら」
刹那が最初に動いた。そして。
前にいた戦艦を一撃で叩き斬った。これが挨拶となった。
「一つ言っておく」
「何だ?」
「手加減をする余裕はない」
彼はヒイロに応えて述べた。
「それでいいな」
「それは敵に対する言葉だな」
彼の今の言葉に言ったのはノインだった。
「私達にではない」
「わかっている。しかしだ」
「貴方の言いたいことはわかったわ」
ヒルデはそれでいいとしたのだった。
「それなら」
「君達の参入を歓迎する」
ミリアルドはそれだけだった。
「それならばだ」
「守る必要はない」
セラヴィーのがードを外した。
「ただ。倒すだけだ」
こうして四機のガンダムもロンド=ベルに参加したのだった。彼等の参戦もありロンド=ベルは次第に敵の数を減らしていった。そして遂に敵の数は十万を切ったのだった。
「よし、あと少しだ!」
「そうね!」
朝にはじまった戦いは夕刻になっていた。しかしまだ戦いは続いていた。
「あと十万、もう少しだ!」
「撃て!撃て!」
攻撃を繰り出しながら叫ぶ。
「敵がどれだけ多くてもな!」
「やってやる!」
彼等の攻撃は続く。しかしだった。
遂にガルラ帝国の本陣が動いた。それを見て皆言うのだった。
「あれは?」
「敵の本陣ね」
ミサトがそれを見て言った。
「どうやら。遂に出て来たのね」
「敵の本陣!?」
「あれが」
「そういえば」
その本陣を見て皆言うのだった。
「戦艦の種類が多い」
「何か何隻か特別な艦がいるわ」
「じゃあやっぱり」
「いい?皆」
ミサトはその本陣を見ながらまた一同に告げるのだった。
「あの本陣を倒せばガルラ帝国との戦いは終わるわ」
「はい」
「わかりました」
皆ミサトのその言葉に頷くのだった。
「それじゃあ。今すぐに」
「あの本陣を」
「ただし。前には出ないで」
ミサトはこのことも彼等に告げたのだった。
「いいわね」
「前に出ない?」
「どうして」
「まだ敵はいるわ」
減ったとはいってもだった。まだ彼等は残っていた。十万を切ってもそれでもロンド=ベルの軍勢よりは遥かに多いのであった。
「だからよ。まだ彼等を倒すのよ」
「連中をですか」
「本陣が来たらその時によ」
つまり待ちということであった。
「それでいいわね」
「待てっていうのね」
アスカはミサトの言葉を聞いて呟いた。
「待つのってあたしの性分じゃないけれど」
「御前馬鹿だからな」
ここでまたシンが言わなくていいことを言った。
「だからそれは仕方ないな」
「あんたに言われたくないわよ!」
そしていつもの展開になる。
「あたしの何処が馬鹿だって言うのよ!このあたしが!」
「手前を馬鹿って言わないで何だってんだよ!」
シンも相変わらずだった。
「大体俺は馬鹿じゃねえぞ!」
「何処が馬鹿じゃないってのよ!」
「俺はザフトのトップガンだったんだぞ!」
「それとどう関係があるのよ!」
「座学もトップクラスだったんだぞ!」
「えっ!?」
「嘘だろ!?」
「マジ!?」
皆今のシンの言葉には目が点になった。
「あいつが座学できんのか?」
「軍で座学っていったら」
「なあ」
皆それはわかっていた。
「てっきり座学はビリばかりだって思ってたけれど」
「マジかよ」
「シン隊員」
ボルフォッグも珍しく彼に言ってきた。
「あまり。虚言は宜しくないかと」
「信じてねえんだな」
「いえ、信じております」
だがボルフォッグはこう答えたのだった。
「シン隊員のことは心から」
「じゃあ何でそんなこと言うんだよ」
「信じているからです」
だからだというのだった。
「今の発言は。嘘ではないのですか?」
「そこまで信じられねえ言葉か?」
ボルフォッグにまで言われて言葉を失うシンだった。
「俺が座学でもトップだったってよ」
「ちょっとどころじゃなくてな」
「全然な」
「嘘にしか思えないっていうかな」
ケーンもタップもライトもこうした意見だった。
「御前嘘つけたんだな」
「っていうかな」
「それも驚きなんだけれどな」
「だから嘘じゃねえ!」
あくまでこう主張するシンだった。
「俺はな!ちゃんと座学もトップだったんだよ!」
「座学もトップって」
「マジだったのかよ」
「はっきり言ったら本当よ」
ここでメイリンが皆に告げてきた。
「シンアカデミーじゃ何でもできたから。勿論実技の方が凄かったんだけれどね」
「ほらな、本当だったろ?」
シンはここぞとばかりに皆に話した。
「だから赤服だったんだよ。今じゃ尉官が自然に赤服になるけれどな」
「てっきりアカデミーがミスしていたと思ってたわ」
ここでタリアが言った。
「身元調査見てもね」
「艦長まで疑ってたのかよ」
「だってね」
タリアは包み隠さずだった。
「私だって。信じられなかったし」
「貴方俺の上司でしょ!?」
「上司だからよ」
身も蓋もない言葉が続く。
「信じられなかったのよ。アカデミーの報告を聞いてね」
「何でなんだよ」
シンはタリアの言葉を聞いてかなりやさぐれた顔になっていた。
「俺ってそんなにできないように見えるか?」
「っていうか誰か座学はさっぱりだって言ってたような」
「なあ」
皆の記憶にある限りはそうであった。
「けれどそうじゃないっていうのが」
「マジですか!?って感じで」
「だからそれは実技と比べてなんだよ」
シンはこう皆に説明する。
「だからなんだよ」
「そうだったのか!?」
「本当だったのかよ」
皆相変わらず驚き続けていた。
「まあとにかくよ」
「実技だけれどよ」
「ああ」
「見せてくれるか?」
話はそこだった。
「今すぐにな。派手にな」
「来てるからよ」
「あ、ああ」
見ればそうだった。またガルラ帝国軍が彼等の前に迫っていた。
「なら見せてやる!」
早速ドラグーンを放ったのだった。そしてそれで敵を数機撃墜した。
「これでいいか?」
「やることはやれるのね」
ルナマリアはシンを見て言った。
「それじゃあ。これからもね」
「ああ、どんどん叩き落してやる!」
実際にさらにドラグーンで撃墜していく。
「こうやってな!」
「頼んだわよ。この戦いももうちょっとで終わりだから」
遂に敵の数が五万を切ったのだった。
「しっかりとね」
「よし、じゃあな!」
「あと一息だ!」
奮い立ったのはシンだけではなかった。
全軍最後の力を振り絞りそのうえで最後の敵を倒していく。シンクラインはその彼等を本陣の己の乗艦から静かに見ていた。
そしてそのうえで。彼は言うのだった。
「注ぎ込んだ戦力は幾らだったか」
「戦闘用マシンで百三十万機」
参謀の一人が彼に答える。
「そして戦艦は七万隻でした」
「その殆どが破壊されたか」
「はい」
参謀は彼に対して述べた。
「残る戦力は全体の五パーセントです」
「ふむ」
ここまでの損害を受けてもシンクラインは動じてはいない。
「それでよし」
「よいのですか!?」
「まさか」
「今投入した戦力はどれも不要な存在ばかりだ」
「不要!?」
「殿下、それは一体」
参謀達は今の彼の言葉に眉を顰めさせて問い返した。
「不要とは」
「どういうことですか?」
「不要な戦力とは」
「あの者達は不穏分子だった」
彼は言うのだった。
「だからだ。ここで消したのだ」
「消した!?」
「あれだけの戦力をですか」
「我がガルラ帝国、いや」
シンクラインはここで言葉を変えてきた。
「私に二心ある者は不要だ」
こう言うのだった。
「だからだ。ここで消えてもらったのだ」
「何と・・・・・・」
「あれだけの戦力を」
「何度も言うが不穏分子は不要だ」
彼はまた言うのだった。
「ロンド=ベルにぶつけて。そのうえでそうさせてもらったのだ」
「それではそのつもりで」
「この度の総攻撃は」
「残った者にはだ」
参謀達の言葉に応えずまた言うのだった。
「撤退を許すな」
「撤退を!?」
「それでは」
「死ねと言っておけ」
冷酷な笑みが顔にあった。
「撤退するならば容赦するな。撃て」
「友軍をですか」
「撃てと」
「何度も言うがあの者達は不穏分子だ」
またこのことを話した。
「不穏分子なぞ不要だ。死ねと伝えよ」
「そうですか。それでは」
「そのように」
「御前達もだ」
今度は自身の周りの参謀達に対して言ってきた。
「私に逆らえばああなる」
「死ぬ・・・・・・」
「そうだ。そして死ぬのは御前達自身だけではない」
言葉をさらに続ける。
「御前達の一族もだ。皆ああなるのだ」
「・・・・・・・・・」
誰もが今の言葉には何も言えなくなってしまった。
「わかればだ」
「は、はい」
「分際をわきまえよ」
次の言葉はこれであった。
「よいな。それぞれのな」
「わかりました」
「では全ての不穏分子がいなくなればだ」
彼の言葉は相変わらず平然としたものだった。
「撤退するぞ」
「撤退ですか」
「そうだ。下がる」
彼はまた言った。
「それでよいな」
「はい」
「それでは」
こんな話をしたうえで一切動かない彼等だった。シンクラインはそのまま戦局を見ていた。遂に帝国軍は消滅してしまった。そのうえで本陣は撤退したのだった。
「逃げた?」
「いや、撤退って言うべきか?」
ロンド=ベルの面々は今の彼等の動きを見てそれぞれ言った。
「だがとにかく戦いは終わった」
「ああ」
「俺達は勝ったんだ」
このことは間違いない現実だった。
「とりあえず戦闘の後始末をして」
「捕虜がいたら救出するか」
「だが。いるか?」
こうした言葉も出された。
「見たところどの機体にも脱出装置はなかった」
「そういえば」
皆このことにも気付いたのだった。
「そうしたものはなかった」
「どういうことだ?」
皆そのことに疑念を抱いた。
「普通はあるというのに」
「何故だ?」
「とにかくだ」
だがその中でブライトが言った。
「戦闘の後始末に取り掛かれ」
「はい」
「それじゃ今から」
「そのうえでだ」
彼はさらに指示を出し続ける。
「捕虜がいたら保護するのだ」
「わかりました」
「それでは」
こうして戦いが終わった。彼等はすぐに戦場の整理と捕虜の収容にあたった。そしてかなりの数の捕虜が保護されたが彼等はすぐに捕虜収容所に送られることになった。
「とりあえず捕虜の収容は終わったな」
「はい」
ビリーがセティの問いに応えていた。
「それは終わりました」
「そうか、では彼等はすぐに収容所に送り」
「それですが少佐」
ビリーはここで彼女に言ってきた。
「風間博士が」
「あの博士がどうした?」
「捕虜の引渡しを求めてきています」
「何故だ?」
グラハムはその言葉を聞いて目を顰めさせてきた。
「何故ゴッドシグマの開発者である博士が捕虜に」
「それは僕にはわからないことだが」
ビリーはまずはこうグラハムに答えた。
「しかしだ」
「しかし?」
「不吉な感じがする」
こう言うのだった。
「何か。不吉なものがな」
「あるというのか」
「感じるだけだ」
彼はまた言った。
「何処かな。何か不吉なものを感じるな」
「風間博士にか?」
アンドレイはその言葉には懐疑的な顔を見せてきた。
「まさかとは思うが」
「風間博士といえば確かな方です」
ソーマも言う。
「それは闘志也さん達が最も御存知の筈です」
「ああ、そうだよ」
「その通りさ」
闘志也だけでなくジュリイと謙作も話に加わってきた。
「あの人はいい人だ」
「そうだ」
謙作はジュリイの言葉に頷いた。
「何かをするような人じゃない」
「その博士が捕虜の引渡しを求めても。心配することはないと思うよ」
ジュリイはこうビリーに述べたのだった。
「別にね」
「僕もそう思うが」
ビリーは少しだけ気持ちを落ち着かせようとしながら応えた。
「しかし」
「しかし?」
「やっぱり気になる。どうして捕虜収容所に入れることをせずに引渡しを?」
「考えれば考える程おかしいな」
セティもビリーの考えの方に傾こうとしていた。
「どうするべきか。ここは」
「博士は連邦政府にも顔が広いけれどな」
パトリックは軽い調子ではあった。
「それでもな。どうもな」
「君もおかしいと思っているのか」
「まあな」
ビリーに対して微笑んで言葉を返してみせた。
「これも直感ってやつだけれどな」
「では。どうするか」
セティはここで決断を躊躇った。
「引き渡すべきか。どうするべきか」
「普通に考えると全員捕虜収容所に送るべきだ」
グラハムが言った。
「ここはな」
「ではそうしましょう」
テッサは収容所案を支持した。
「ここはすぐに」
「そうだな」
宗介もそれに同意する。
「それでは。すぐにだ」
「!?いや」
だがここで。ビリーが声をあげてきた。
「どうもそうはいかなくなったようだ」
「どういうことですか?」
アンドレイが彼に問うた。
「いかなくなったとは」
「今連絡があった」
彼は言うのだった。
「連邦政府からの直接の」
「連邦政府の?」
「そうだ。博士に捕虜を何人か引き渡すべきだと言っている」
「捕虜を」
「連邦政府が」
彼等はこの命令を聞いて話しが彼等の手に離れたことを実感した。
「それでは。もう我々のできることはない」
「捕虜を風間博士に引き渡す」
「そうなるのか」
口々に言うのだった。
「しかし。それでも」
まだ不吉なものを感じているビリーだった。
「何かあるのか・・・・・・むっ!?」
「どうしたビリー」
「また指示だ」
またしても指示が届いたのだった。
「しかも連邦政府からだ。風間博士がこちらに来るそうだ」
「風間博士が?」
「ああ。ロンド=ベルと合流するらしい」
「ロンド=ベルと」
「あの博士が?」
「風間博士が来るのか」
ここでティエリアがやって来た。そして彼等の話に入るのだった。
「やはり来たか」
「やはり!?」
「どういうことだ、それは」
「今だから言うが僕達がロンド=ベルに来た目的は一つじゃない」
「一つじゃない?」
「俺達と一緒に戦うのじゃなかったのかよ」
「勿論それが最大の理由さ」
アレルヤも来ていた。彼もそのことには頷く。
「それが。けれど」
「けれど?」
「もう一つの目的は風間博士の監視だったんだよ」
「風間博士の?」
「どうして」
「君達は博士を高潔な人物だと思っている」
ティエリアが言ってきた。
「それは確かにその通りだ」
「何言ってんだよ」
闘志也は彼等の言葉に眉を顰めさせた。
「そんなの誰だって知ってることじゃねえかよ」
「しかしだ」
だがティエリアはまた言うのだった。
「それは一つとは限らない」
「一つとは?」
「人には複数の顔がある」
今度はこう述べるのだった。
「複数の。そのうちの一つが問題なのだ」
「博士を疑うっていうのかよ」
「疑うってはいない」
それは否定するのだった。
「しかし。それでもだ」
「それでも?」
「あの博士は極端に走る傾向が強い。その為よからぬことを考えているようだ」
「よからぬこと?」
「そう言われても」
「何が何なんだ?」
闘志也だけでなくジュリイと謙作もこの言葉に目を顰めさせる。
「博士にそんなのあるわけないじゃねえか」
「そうだよ」
「おかしなことを言うな」
「俺達の杞憂であればいい」
刹那が言った。
「できればな」
「どちらにしろ。俺達は監視させてもらうぜ」
ロックオンの言葉は真剣そのものだった。
「あの博士はな。これからな」
「好きにしやがれ」
闘志也はこう彼等に言い捨てた。
「すぐにその疑惑は晴れるからな」
「しかし。風間博士が加わる」
ビリーはこのことに考えを切り替えていた。
「このことは重要だな」
「風間博士は連邦政府にとって要人でもある」
またセティが言ってきた。
「失礼はないようにな」
「わかってんだろうな」
闘志也はここでまた刹那につっかかった。
「このことはよ」
「わかっている」
刹那は彼の問いに無表情に応えるだけだった。
「それではだ。出迎えだな」
「すぐに取り掛かる」
最後にセティの言葉が告げられた。こうして刹那達の参戦を喜ぶ間もなく次の参加者を出迎えるのだった。戦いが急転しようとしていた。

第百十六話完

2009・3・30
 
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