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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百十話 ネゴシエイター

             第百十話 ネゴシエイター
パラダイムシティに辿り着いたロンド=ベル。しかし彼等は今はその海に身を潜めそのうえで情報収集に専念しているだけであった。
「あ~~~あ」
その中でビルギットが身体を伸ばして大きな欠伸を出していた。
「暇だな」
「あんた今日のトレーニングは?」
「そんなのもうやっちまったさ」
こうアンナマリーに返す。今は娯楽室で漫画を読んでいた。
「暇だからな」
「そうなの」
「何ならもう一回やってもいいぜ」
「だったらプールにでも行ったら?」
アンナマリーは水泳を提案してきた。
「あれもいい運動になるじゃない」
「そうだな。マクロスにでも行ってな」
「ええ」
「それもいいか」
アンナマリーの提案にまんざらでもないようだった。
「そうでないと退屈で仕方ねえぜ」
「私は今はこれがあるけれど」
彼女はテレビゲームに興じていた。
「これがね。結構ね」
「格闘ゲームか?」
「ええ、そうよ」
見れば本当に格闘ゲームをしている。三次元でポリゴンのキャラが画面で動き回っている。
「今はまってるのよ」
「そういうの好きだったのかよ」
「結構若い子がしてるから」
ロンド=ベルはとにかく十代の人間が多い。
「だからね。私もちょっとやってみたら」
「成程な」
ビルギットはこれで話を理解した。
「そういうことかよ」
「あんたもする?」
アンナマリーは彼にも薦めてきた。
「対戦で。どう?」
「ああ、俺はいいさ」
しかし彼はその申し出を断った。
「今はな。漫画でも読んでるさ」
「そうなの」
「ああ。とにかくな」
身体を大きく伸ばした。
「暇だな」
「そうね」
「パラダイムシティに来られたのはいいけれどな」
まずはそれはよし、であった。しかしであったのだ。
「それでも。何もねえのはな」
「ずっと海の底に隠れたままだしね」
「各艦の移動はできるけれどな」
潜水艇によってである。
「それでもな。やっぱりな」
「そうね。暇ね」
彼等はとにかく暇であった。そしてそのパラダイムシティに潜入し情報収集に努めている面々もまた。彼等は彼等で困惑していた。
「おかしいですね」
ジョルジュは街の中の喫茶店で顎に右手を当てて考える顔になっていた。
「この街は」
「そうだね」
彼の言葉にサイシーが頷いた。
「何か。孤立した街なのに」
「これだけ発展してるってのはよ」
ヂボデーも同じものを見ていた。
「どうやってここまで発展してるんだ?」
「エネルギーや食料だけではない」
アルゴも言う。
「その他の様々なものは。どうなっている」
「エネルギーは原子力等、食料は郊外の農園でしたが」
ジョルジュはまた話す。
「ですが。果たしてそれで全てまかなえるかというと」
「この街には何でもあるな」
加持もいた。
「そう、今ここでコーヒーを頼むことができる」
「はい、そうです」
「しかも最高級のコーヒーだ」
加持は八雲に応えていた。
「だが」
「だが?」
「これだけ高度に都市化している場所でどうやって手に入れるか」
「その問題ですか」
「郊外のその農園にはコーヒー畑もあった」
加持はそれも見ていた。
「しかしこの豆はなかったな」
「それですか」
「外界と接触はない筈だ」
加持は今度はこのことを述べた。
「完全に孤立したパラダイムシティ」
「はい」
「それでどうしてこうしたコーヒーが手に入るのか。そしてその他の様々な、しかも豊富な物資は何処からやって来るのか」
「考えてみればおかしな話ですよね」
キムも彼の言葉に頷く。彼等は怪しまれないよう普段着であった。シャッフル同盟の面々はそうではないが。
「考えてみれば一つの街だけで存在できる筈がないです」
「しかし存在している」
加持はまた言う。
「しかも四十年前からの記憶がない」
「物語としてはあれね」
ミサトがここで述べた。
「あまりにも矛盾が多くて。ミステリー中のミステリーね」
「しかもロボットまでいるんだから」
リツコが言うのはここに来た時にシュウが話したロボットだ。
「さらに訳がわからないわ」
「鍵はそのネゴシエイターになるか」
加持が注目するのはその彼だった。
「会えればいいけれどな」
「あれっ、そういえば」
ミサトがふと気付いたような声を出した。
「ドモン君は?まだ情報収集してるの?」
「あの人ならレインさんと一緒ですよ」
恵がミサトの問いに答える。
「それで今も」
「そう。レインちゃんも大変ね」
ミサトはドモンではなくレインを気遣うのだった。
「ずっとドモン君のお守りなんだから」
「あれだけとんでもない人いるなんて思いませんでした」
キムは真顔でミサト達に語る。
「人間ですよね、一応は」
「一応はね」
ミサトも一応という言葉を出す。
「人間よ。身体が普通じゃないだけで」
「普通じゃないんですか」
「どう見てもそうでしょ」
ミサトも容赦がない。
「あれは」
「はい、それは」
「それにもっと凄い人がいるから」
「あっ、聞いてます」
ここでまた恵が言ってきた。
「マスターアジアさんですよね」
「そうよ。流派東方不敗」
彼女達の本来の世界では最早伝説の存在である。
「素手で何でも破壊するしいきなり出て来るし」
「しかも不死身なんですよね」
「まず死なないわ」
ミサトもそのことはよくわかっていた。
「原爆の直撃を受けてもね。絶対にね」
「そうらしいですね」
「シュバルツ=ブルーダーっていうのもいるし」
彼についても話すのだった。
「あの人もね」
「ドイツ忍者でしたっけ」
「ドイツに忍者なんていないから」
リツコはこのことを強調する。
「アスカにそれ行ったら本気で怒るから注意しなさい」
「アスカちゃんがですか」
「彼女マスターアジアとかそのシュバルツ=ブルーダーに拒否反応強いから」
それは全く消えていないのである。
「だから。それはね」
「わかりました」
キムもその言葉を受けて頷く。
「それじゃあそれは」
「ええ、注意してね」
釘を刺すのだった。
「言ったらもう大変だから」
「あっちの世界も本当に大変なんですね」
「ええ。何処もかしこもみたいね」
ミサトはキムの言葉に応えながら腕を組んで考える顔になった。
「どうしてかしら。とにかく色々あるけれど」
「この街にしろ」
加持は今度は街を見回していた。
「謎だらけだしな。何処までもおかしなっことが続くな」
彼は言うのだった。そしてそのうえでまた情報収集に回る。そしてこの頃ドモンとレインは街の中を進みそこで色々と情報収集にあたっていた。
「さて、街の大きさは」
「それもわかったのか」
「ニューヨークと同じ位ね」
レインは言った。
「この大きさは」
「そうなのか」
「ええ。人口も同じ位ね」
レインはそれも分析していた。
「これだけの街が存在できる規模のエネルギーや食料はちょっと」
「ないのか」
「無理ね」
彼女もまた加持達と同じ分析をしていた。
「流石にね。それは」
「だがこの街はある」
ドモンが言うのはこのことだった。
「しかも」
「しかも?」
「誰も。それに何も思っていないな」
彼は今街を行き交う人々を見ていた。
「誰もな。その人間達も」
「どうしたの?」
「心が見られない」
こう言うのである。
「少なくとも感情が乏しい。機械のように」
「機械ね」
「レイン」
ドモンはまたレインに言ってきた。
「街の端に行ったな」
「いえ」
ドモンの言葉には首を横に振った。
「行ったことは行ったわよね」
「ああ」
「けれど」
端に辿り着いたという実感はあるのだ。
「そこから着くのはいつも反対側のある場所」
「そうだったな」
「この街がまるで地球みたいに」
レインは言葉を続ける。
「辿り着く場所は元の場所。本当におかしいわ」
「そして街の人間もだ」
「おかしいことばかりね」
レインもこう言わずにはいられなかった。
「この街は」
「しかもだ」
ここでドモンの言葉が変わった。
「あれを見ろ」
「えっ!?」
目の前で丁度カーチェイスが行われていた。
「治安も悪い」
「そうね」
しかも銃撃戦にまでなっている。パトカーが一台の黒い車を追っていた。
「本当におかしな場所ね」
「やはり。謎だらけだな」
二人は今はそおカーチェイスを見ているだけだった。しかしだった。
二人の前から姿を消した車はそのままあるビルに直撃した。するとその車の中から数人の男達がほうほうのていで出て来たのであった。
「ああ、ひでえ目に遭ったぜ」
その先頭にいるのは黄色いスーツを着た黄色の髪と髭の男だ。
「全く。運転位ちゃんとしやがれ」
「す、すいやせんボス」
「まあいい。それでだ」
その黄色の男は周りの謝罪の言葉を受けてから迫り来るパトカー達に目をやった。
「早くずらかるぞ」
「へい」
「それであれを出す」
今度はその目が光った。
「あれをな」
「あれっていいやすと」
「何でか?」
「馬鹿、あれっていったらあれしかねえだろうが」
部下達のとぼけた声にまた怒る彼だった。
「あれだよ。わかったな」
「ああ。まあ」
「一応は」
「わかったらとっととずらかるぞ」
まずは何よりそれであった。
「いいな」
「へい、それじゃあ」
「今は!」
とにかく逃げる三人だった。彼等はそのまま何処かに逃げる。しかしすぐにその黄色のスーツの男が何やら変わった形のロボットに乗って出て来たのだった。
「これで形勢逆転ってわけだ!」
彼はそのロボットのコクピットから叫ぶ。
「さあ、警察はこれで蹴散らしてやるぜ!」
「ドモン!」
レインがそのロボットを見てドモンに叫ぶ。
「あれは」
「わかってる!」
ドモンもすぐにレインのその言葉に頷く。
「ガンダァァァァァァァァァァァァァァァァム!」
ゴッドガンダムを呼ぶ。すぐにそれに乗りパラダイムシティに出た。そのうえでその黄色のスーツの男の前にその巨体を見せたのだった。
「何だ手前はよ」
男はドモンに対して問うた。
「見慣れねえ奴だな」
「俺の名はドモン」
彼はこう男に名乗った。
「ドモン=カッシュだ。覚えておけ」
「ドモン=カッシュ?」
「ガンダムファイターだ」
今度はこのことを彼に告げた。
「これでわかったな」
「ガンダムファイター!?何だそりゃ」
しかし男は首を傾げるばかりだった。
「そんなの見たことも聞いたこともねえな」
「何っ!?」
「当たり前よ、ドモン」
ここでライジングガンダムに乗ったレインも出て来た。
「パラダイムシティは。いえこっちの世界でのガンダムは違うのよ」
「レイン」
「ガンダムマイスター」
彼等のことを話に出してきた。
「彼等はガンダムなのだから」
「そうだったか」
言われてやっと思い出すドモンだった。
「そういえばな」
「そういえばなって」
ドモンの今の言葉に呆れるレインだった。
「全く。相変わらず大切なことは頭に入ってないのね」
「拳だけでいい!」
しかしドモンはこう言うのだった。
「全ては拳で語り合う!だからだ!」
「それならそれでいいけれど」
流石にもうドモンのことはよくわかっているレインだった。
「とにかく。このマシンを倒すわよ」
「わかっている」
それはわかっていた。
「行くぞ!ガンダムファイト!」
早速強引にガンダムファイトに入ろうとする。
「レェェェェェェェェェディ」
「おい、ちょっと待て!」
だが男はそのドモンに声を返すのだった。
「手前人の話も聞け!」
「むっ!?」
「大体手前は何者だ!」
「俺か」
「そうだ。ガンダムだあ!?」
彼の口調は相変わらずはじめて聞くといった感じだった。
「何だそりゃ。見たこともねえマシンだしよ」
「答える必要はない」
こんな態度のドモンだった。
「知りたければ俺を倒せ!」
「だから待てって言ってんだろ!」
とにかくドモンに言う。
「手前は何だってんだよ!そこの女もよ!」
「私も?」
「何者なんだ!」
今度はレインに対して問うのだった。
「パラダイムシティの人間なんだよな」
「それは」
「外の世界なんてねえ筈だ」
彼はこう思っているようである。
「噂には聞いてるけれどな」
「ドモン、どうやらこの人は」
「そうだな」
二人にはわかって男にはわからないことだった。
「外の世界のことは知らないみたいね」
「やはり。この街は何か」
彼等はその何かを感じようとしていた。しかしこの時。
また新たなアクターが現われた。それは。
「ビッグオー」
まずはこの言葉からだった。
「ショータイム!」
その言葉と共に黒いマシンが姿を現わした。それに乗るのは黒いオールバックのこれまた黒づくめの端整な男であった。
「あのマシンは!?」
「一体」
ドモンとレインは彼等の姿を見てまた言う。
「何者だ!?」
「しかも乗っているのはあの人だけじゃないわ」
マシンからはもう一人の存在が感じられていた。
「けれどこれって」
「どうしたレイン」
「この反応。人間のものじゃないわ」
レインはこうドモンに告げた。
「この反応は機械のものよ」
「機械のか」
ドモンはそれを聞いてこの街の人間達と同じだと思った。
「この街の人間と」
「同じだっていうの!?」
「俺が感じたのはな。だが」
「だが?」
「そこにもいたのか」
またレインに言うのだった。
「その機械が」
「この反応は間違いないわ」
レインはまたドモンに答える。
「アンドロイドなのかも」
「アンドロイド」
「やっぱりこの街にはかなり高度の技術があるわ」
レインはあらためてこのことを認識した。
「その出所は不明だけれど」
「不明か」
「それであのマシンにも」
「アンドロイドがいるのか」
「そうよ。間違いないわ」
またドモンに告げる。そうした話をしている間にその黒いマシンに乗る男が二人に問うてきた。
「そこの二人だが」
「何だ?」
「君達は何者なのだ?」
こうドモン達に問うのだった。
「一体。見たことのないマシンだが」
「貴方は?」
レインは答える前に彼に問い返した。
「貴方は誰なの?そしてそのマシンは」
「私の名前はロジャー」
彼はまずは名乗ってきた。
「ロジャー=スミス。この街のネゴシエイターだ」
「ネゴシエイター!?」
レインがその職業を聞いて目を光らせた。
「まさか貴方が」
「私がどうしたのだ?」
「若しかしてシュウ=シラカワ博士のことは」
「彼のことか」
やはり彼もシュウのことを知っていた。
「私の顧客の一人だが。それがどうかしたのかな」
「やっぱり」
レインはドモンの返事を聞いて納得した顔で頷いた。
「貴方がそうだったのね」
「私が?」
ロジャーにはわからない言葉だった。
「私がどうかしたのか」
「話はいいわ」
とりあえず長くなると思いそれは置くレインだった。
「それよりスミスさん」
「ロジャーでいい」
ロジャーはレインに言葉を返した。
「そう呼ばれる方が気に入っている」
「わかったわ。じゃあロジャーさん」
「うむ」
あらためてレインの言葉に応える。
「何の用かな」
「詳しい話は後で」
まずはそれは置いていた。
「それよりも今は」
「そうだな」
ロジャーもレインの言いたいことは察しているようであった。
「まずはこのベックを倒そう」
「ベック!?」
「この男のことだ」
彼はその黄色のスーツの男に目をやっていた。
「この男の名をベックという」
「へっ、自分から名乗ろうと思っていたのによ」
その男ベックはそれが不満そうだった。
「それは残念だったな」
「よりによって手前に言われたしな」
やはり不満に思っていた。
「で、俺がそのベックだ」
「交渉は決裂した」
ロジャーは今度は交渉のことを話した。
「だが。私にはまだやるべき仕事がある」
「俺を倒すってことかよ」
「そうだ。貴様を倒し警察に引き渡す」
ロジャーは冷静に彼に告げた。
「それが私の今回の仕事だ」
「今度はやられねえぜ」
乗っているマシンのその赤い腕を自慢げに振っての言葉だった。
「もう別荘暮らしには飽きちまったからな」
「飽きる飽きないの問題でもない」
やはりロジャーの返答はクールである。
「私は私の仕事で貴様を警察に引き渡す。いいな」
「へっ、できるのかよ!」
ベックの方から先に動いてきた。
「今度の俺のマシンは前みたいにはいかねえぜ!」
「レイン!」
「ええ!」
ドモンとレインはベックが動いたのを見て前に出ようとする。
「ロジャーさんだったな!」
「私達も!」
「いや、それには及ばない」
しかし彼はこう二人に言葉を返すだけだった。
「これは私の仕事だ」
「私の!?」
「それじゃあ」
「そう、私一人でやらせてもらう」
こう二人にも言うのだった。
「私一人で。だから」
「手出しは無用か」
「そうなのですね」
「その通りだ。ではやらせてもらう」
ビッグオーも前に出る。そのうえでロジャーはコクピットにいるもう一人に声をかけるのだった。
「ドロシー」
「何かしら、ロジャー」
そこにいるのは赤い髪に黒い服の色の白い少女だった。
「揺れるが我慢してくれ」
「構わないわ」
ドロシーと呼ばれた少女はこう答えるだけだった。
「私には関係のないことだから」
「そうか」
「ええ。だから」
ドロシーはさらに彼に告げる。
「ロジャー」
「うむ」
「闘って」
こうロジャーに言う。
「この闘いも」
「わかっている」
ロジャーは落ち着いた声でドロシーの言葉に応えた。そのうえで再びベックに対して言うのだった。
「ベック、また刑務所に行ってもらう」
「へっ、誰が行くかよ!」
やはり彼も素直にそうするつもりはなかった。
「俺はな!別荘から豪邸に移るんだよ!」
「残念だがそれは刑期を終えてからだ」
やはりロジャーの声は落ち着いている。
「では。行くぞ」
「させるかよ!
ベックの方から動いた。
「ほらよ!さっさと引き下がりな!
叫びながら攻撃を繰り出しロジャーもそれに応える。二人の闘いは街の中ではじまった。そこに今度はシャッフル同盟の面々がやって来た。
「何だって思えばよ」
「また随分と変わった形のマシンだね」
まずヂボデーとサイシーが言う。
「あれか?あれに乗ってるのがその」
「ネゴシエイター?」
「どうもそうらしいわ」
レインはこう二人に答えた。
「ロジャー=スミスさんって人だけれど」
「そうか。あれがか」
「では。本隊に連絡しておきましょう」
アルゴは頷きジョルジュはそれに移った。
「今からすぐに」
「そうだな。そうしておこう」
アルゴはジョルジュのその行動に賛成した。こうしてロジャーとビッグオーのことが本隊に連絡されるのだった。その間にもロジャーとベックの闘いは続いていた。
「今度も行ってもらおう」
やはりロジャーの言葉は変わらない。
「御前にはその別荘にな」
「だから行かねえって言ってるだろうが!」
ベックもベックで変わらない。
「手前を倒してよ!とんずらしてやるぜ!」
「悪いがこちらも仕事だ」
ベックの攻撃を受けても動じず告げた。
「これで終わらせてもらう」
言いながらキャノンを放った。
「キャノンパーティーーーー!」
それでベックのマシンを止めてしまった。ベックはあちこちから火があがるマシンからほうほうのていで逃げ出した。
「ちっ、またかよ!」
「後は警察の仕事だな」
見ればその彼等は早速マシンから逃げ出したベックの身柄を拘束していた。彼の部下達も一緒であった。
「さて、仕事の話は終わりだ」
「全て終わりじゃないのね」
「私もそう思っていた」
言葉が少し変わっていた。
「しかしだ」
「そうね」
ドロシーも彼の言葉に応える。
「あの人達がいるから」
「済まないが」
ロジャーはドモン達に対して問うた。ビッグオーに乗ったまま。
「君達は一体何者だ?」
「私達ですか」
「話は闘いが終わってからだと話した」
闘いの前のあの話である。
「そして今闘いは終わった」
「はい」
「これでゆっくりと話ができるようになった」
まずはであった。
「それで聞きたい。君達は一体」
「はい、私達は」
レインが彼に答えようとする。しかしその時だった。
「むっ!?」
「あれは」
青いマシンがその場に姿を現わした。ネオグランゾンであった。
「シュウ=シラカワ」
「シュウ=シラカワ!?」
ロジャーはネオグランゾンを見て発したドモンの言葉を聞いて目を動かした。
「彼があのマシンに」
「はい、そうです」
ネオグランゾンからそのシュウの声がした。
「ロジャーさん」
「貴方か」
ロジャーはシュウの声を聞いて応えた。
「今回はどういった用件なのかな」
やはり彼を知っていた。言葉にそれが出ていた。
「仕事の話なら自宅でといきたいのだが」
「仕事のお話ではありません」
シュウはそれは否定した。
「ですが」
「ですが?」
「お話したいことはあります」
こう彼に告げるのだった。
「それで今日はこちらにお伺いしました」
「そのマシンは?」
「これはネオグランゾン」
己のマシンの名も話した。
「私があちらの世界の地球」
「あちらの世界!?」
ロジャーはその言葉に素早く反応した。
「あちらの世界とは。外の世界とは別の世界なのか」
「そうです。そしてラングランの」
「ラングランだと」
ロジャーにとってははじめて聞く言葉だった。
「何処なのだ、そこは」
「お話を御聞きしたいですね」
何かを含んだ笑みでロジャーに言ってきた。
「私の話を」
「ああ、是非共」
ロジャーは感情は露わにさせずに彼に返した。
「聞きたくなった。よかったら聞かせてもらえないか」
「わかりました。それでは」
慇懃にロジャーに言葉を返す。
「こちらへ。案内致しましょう」
こうしてロジャーはドロシーと共にシュウに連れられロンド=ベルがいる海の底に入った。そこからクロガネのブリーフィングルームに入りそこであらゆることを聞いたのだった。
「素性は知れないと思っていた」
全ての話を聞いたロジャーはまずシュウを見た。
「若しかしたらとも思った」
「気付いてはおられましたか」
「空気が違う」
ロジャーはシュウをこう評した。
「この街の人間とはな。空気が違っていた」
「その通りですね」
シュウもまたそれを認める。
「私はこの街とは根本的に異なる存在ですから」
「外の世界から。しかも別の世界から来たとはな」
「はい」
あらためてロジャーの言葉に応えるシュウだった。
「あえて隠していました」
「この街では外の世界のことは全く知られていない」
「つまりこういうことか」
シリウスは彼の話を聞いたうえで述べた。
「この街で完全に一つの世界になっているのだな」
「その通りだ」
ロジャーは彼にも言葉を返した。
「外の世界から来る人間もいることにはいるが」
「ですがその方法はあまりにも特殊です」
シュウはまた述べた。
「少なくとも私もネオグランゾンの力を使わなければこの世界に出入りすることはできません」
「そうなんですよね」
チカが主に続く。
「本当にね。こんな街ないですよ、おまけに外の世界のことを殆ど誰も興味を持ってないですし」
「それにです」
今度はレインが言う。
「この街は端に辿り着いても何か円形みたいで」
「つまり終わりがない」
加持も言う。
「まあ有り得ない街だな。街自体が地球みたいになってるんだからな」
「地球って」
ルナはそのことに首を傾げる。
「そんなことってあるのかしら」
「どう考えてもないでしょ」
ルナマリアがそれを否定する。
「幾ら何でも」
「そうよね。やっぱり」
「しかも四十年前の記憶がない」
アムロはこのことを指摘した。
「それは今の貴方の話からも確認できたが」
「私も知らない」
ロジャーもそれは同じだった。
「過去に何があったのかも一切わかっていないのだ」
「おかしなことばかりね」
恵子はそれを聞いて言うのだった。
「この街って。何が何だか」
「だからこそ私達はこの街にお邪魔したのです」
だがシュウはここでこう言った。
「全ての謎を解く為に」
「この街の謎を」
「解く!?」
「ロジャーさん」
またロジャーに声をかけてきた。
「それで御願いがあります」
「今度は仕事の話か」
「はい」
彼の問いにこくりと頷いた。
「その通りです」
「仕事の話は自宅でと決めているのだが」
「申し訳ありません。それでは」
「だが。今はいい」
今は、と付け加えたがいいとしたのだった。
「話を聞きたい」
「左様ですか」
「その仕事とは」
「この街の全ての謎を解くことです」
彼は言うのだった。
「それが依頼です」
「この街の全ての謎に」
「貴方も思っておられた筈です」
ロジャーの心を見るような言葉だった。
「この街はあまりにも不自然だと」
「・・・・・・・・・」
ロジャーはこの言葉には答えなかった。無言である。
「それがどうしてか。知りたいと」
「否定はしない」
ここでは感情を隠さなかった。
「私も誰も何も知らないのだから。この街に対して」
「では。引き受けて下さいますね」
あらためてロジャーに顔を向けて問うた。
「この依頼を」
「うむ」
シュウの言葉に対して頷いた。
「それでは。受けさせてもらおう」
「有り難うございます」
シュウはロジャーの今の言葉を満足した顔で受けた。
「それでは。早速」
「だが。ロンド=ベルか」
当然ロンド=ベルの話を聞いている。
「ざっと見たところ」
「何ですか?」
「多いな」
今ここに集まっている面々を見ての言葉だった。
「これだけ多いとこの街では騒ぎになる」
「騒ぎに?ああ、そうか」
「俺達外から来た人間だしな」
「そんな人間が大勢潜入したら」
「やっぱり怪しいよな」
「そういうことだ」
ロジャーはあらためて彼等に述べた。
「だからここは私一人でもいいが」
「何人か交代で行かせましょう」
大河が提案してきた。
「それで宜しいでしょうか」
「そうですね」
ロジャーは彼の提案に考える顔になった。
「それではそのように」
「はい」
大河は彼の言葉に頷いた。
「御願いします」
「わかりました。それでは」
大河の言葉に紳士的に応える。
「この仕事受けさせて頂きます」
「有り難うございます」
「確かにこの街にはあまりにも謎が多い」
ロジャーは右手の人差し指を鍵型にしてそのうえで顎に添えて考える顔になっていた。
「私も以前から不思議に思っていた」
「何故四十年前の記憶がないのか」
「そして外の世界と隔絶されてきたか」
ロジャーはシュウに応えて言う。
「謎はかなり深いのは間違いない」
「それを解いた時に何かがわかります」
「それでは。今から」
ロジャーはシュウに応え続ける。
「この街の謎。解かせてもらう」
こうしてロジャーはパラダイムシティの謎に挑むことになった。だがそれは彼にとっても、そしてロンド=ベルにとっても途方もないものなのであった。

第百十話完

2009・2・27  
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