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真・恋姫†無双~俺の従姉は孫伯符~

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楠根+流那=え? 実は新ヒロインだったりするの?

「うあ゛ー……づがれだー……」

 疲労が溜りに溜まった右肩をグルングルン回しながらボヤく俺。
 冥琳の書斎に孫子を届けたまではよかったのだが、結局雑用として働かされる羽目に。
 穏のヤツもいつの間にかどこかに行っちまってたし……あのお調子者め。
 そんなわけで再び退屈になってしまったのだった。
 ……しかし、時刻はもう夕方。夕日も鮮やかな朱色に染まっている。

「今からどうすっかな……」

 食堂は……まだ飯時じゃないから行っても無駄だな。かといって冥琳の所に戻るのも癪だし……。
 そんなことを思案しながらテクテクと足を進めていく。
 五分ほど城内を歩き回ったときだった。

「はっ! とりゃっ! でぇい!!」
「ほらほら、どうしたどうした! そんなんじゃいつまでたっても雹霞には追いつけんぞ!」
「まだ……やれる!」

 中庭にある鍛錬場。その中心で、二人の美少女と一人の年m―――――ゲフンゲフン。三人の美少女が訓練用の武器を持って模擬戦を行っていた。
 どうやら、新兵の二人をウチの最高齢が相手取っているようである。
 俺は試合の邪魔にならないように気を付けながらのんびりと様子を見守ることにした。

流那(るな)! 右から責めて! アタシは黄蓋様の左から!!」
「了解。しくじらないように、楠根(くすね)

 槍を持った少女と短剣を持った少女が二手に分かれて左右から攻撃を加えていく。……ん? よく見るとあの子達はこの前俺と戦った二人じゃないか。
 楠根と呼ばれた少女が小刻みに軌道を変えながら突きを繰り出す。なるほど、そうやって防御を難しくするってわけか。
 
「甘い!」

 しかし祭はそれに長剣を軽くあてることで難なく回避する。素人の俺からしてみれば楠根の突きも尋常じゃなく速いのだが……相変わらずとんでもない動体視力である。
 突きを回避したことで、祭の左右ががら空きになる。そこを流那と呼ばれた短剣使いの少女が攻めた。

「……隙あり」
「ぬぅっ!?」

 全く気配を感じさせない静かな動きに、祭は気が付くことができない。結局、首元に短剣を突き付けられ敗北となってしまった。
 祭が「ふぅ」と溜息をつく。

「やれやれ、儂もそろそろ引退かのぅ」
「そ、そんなことないですよ! 黄蓋様はまだまだ現役ですって‼」
「動きに衰えが見えない」
「わっはっは、そういってくれると悪い気はせんのぅ。……さて、感想でも聞かせてくれぬか? 雹霞」
『!?』

 祭がこちらを向くと同時に、バッと振り向く二人。その顔はわずかにだが淡い朱色に染まっている。
 俺は先ほど淹れておいたお茶を三人に手渡しながら言った。

「いやー、二人とも凄かったよ? なんたってあの祭から一本取っちゃうんだからさ」
「そ、そんなことありません! こんなの別に大したことじゃありませんよっ!」
「楽勝だった」
「お主ら、それは儂に対する挑戦状と受け取ってもよいのかの?」

 まずい。祭の額に青筋が何本も浮き出ている。
 俺は話をすり替える目的で、二人との会話を進めた。

「そ、それよりさっ、二人の名前を教えてくれないか? せっかくの機会だし、そこそこ仲良くもなったんだからさ!」
「……はっ! こ、これは無礼を! アタシの姓は(かい)、名は(めい)、字は枢依(すうい)です! 以後、お見知りおきをお願いいたします!」
杜梓(とし)影月(えいげつ)。よろしく」

 勢いよく頭を下げる快鳴と無表情で立ち尽くす杜梓。なんでここまで対照的な反応をするんだろうか。
 俺はそんな二人に笑顔を向けながら、自己紹介を開始する。

「俺の名前は知ってるよな? 孫瑜仲異だ。ちなみに、真名は雹霞っていうんだ。よろしくな」
「ま、真名を教えて頂いてよろしかったのですか!? アタシ達はあくまでただの一般兵ですよ!?」
「ん? 別に構わねえさ。俺はただ女の子と親密になりたいだけだからね。その代わり、君たちの真名も教えてくれないか?」

 顔を真っ赤にして慌てている快鳴の頭を優しく撫でながら大人しくさせる。なんだか頭から湯気が立ち上っているような感じがしているが、大丈夫か?
 いまだに機能停止している快鳴をジト目で見ながら、杜梓は溜息をついていた。

「はぁ……相変わらずの純情っぷり……。私は流那。そっちが楠根。真名を教えてくれてありがとう」
「流那に楠根ね……いい真名だな。可愛いよ」
「っ!? ……ホント、天然女たらし」
「? なにか言ったかい?」
「なんでもない」

 流那がなぜだか顔を赤く染めていたような……ま、いっか。
 ……と、ようやく再起動した楠根が「あ、あのっ」と俺に詰め寄ってきた。

「どうした?」
「さ、さっきのアタシ達の組手……助言とかありませんか? 雹霞様の視点での改善方法を知りたいんです」

 真剣な表情で言う楠根。それほどまでに自分の力量を上げたいのだろう。……喜ばしいことだ。
 俺は先ほどの試合を思い浮かべると一つの回答に思い当たった。

「楠根はさ、今は槍を使ってるよな?」
「あ、はい。昔から訓練しているので……でも、それがどうかしたんですか?」
「俺から見て、なんだけど……多分、槍よりかは偃月刀や薙刀なんかを使ったほうが戦いやすいと思うぞ?」
「……と、言うと?」
「槍の攻撃形態は基本的に突きだろ? 確かに斬撃よりかわしにくいっていう利点はあるけどさ……ぶっちゃけ、攻撃が直線的になるんだよな」
「なるほど……」
「だからさ、偃月刀なら振り回せるし、その気になれば突くことだってできる。槍に比べて戦いの汎用性が広がるんだよ」
「……言われてみれば、そうですね。分かりました。これからは偃月刀の訓練に励みたいと思います!」
「いや、俺の話を鵜呑みにする必要は―――――」
「それでは! 今から行ってまいります!」

 俺の話も聞かず、ダダダッと駆けていく楠根。取り残された俺達は呆然と彼女の背中を見送っていた。
 しばらくして、再び溜息をついた流那が「すいません」と言って後を追いかけ始める。
 そして、残された俺と祭は顔を見合わせるとおかしそうにクスクスと笑っていた。

「まったく、面白いね、彼女達は」
「本当にのぅ……恋愛感情というのは恐ろしいものじゃな」
「恋愛? 何の話?」
「お主には一生かかっても分からぬよ」

 そう言うと、ワッハッハと笑いながら立ち去ってしまう祭。しばらくその意味を考えていた俺だったが、結局わからなかったので、再び城内散策へと行動を開始したのであった。 
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