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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第九十話 修羅王の拳

               第九十話 修羅王の拳
ダカールにおいて。今二隻の戦艦が出航しようとしていた。
「それにしてもです」
「どうしました?」
イゴールがアデナウアーの言葉に応えていた。カムランも同じ場所にいる。
「今回は正直思い切ったことをしました」
「今回も、ではなく」
「はい。私の場合は今回は、です」
こう言うのである。
「第一遊撃隊についてはノータッチでしたから」
「成程」
「それは彼の仕事でした」
そしてここでカムランを指し示すのであった。
「このカムラン=ブルーム君の」
「そういうことでしたか」
「戦力の集中は当然のことです」
カムランは落ち着いた声でイゴールに述べた。
「ですから。彼等をロンド=ベルに合流させました」
「ふむ。英断だな」
そしてイゴールも彼のその決断に頷くのだった。
「そのせいでロンド=ベルの戦力はさらに強いものになった」
「有り難うございます」
「君をサイド6から呼び戻して正解だったよ」
アデナウアーはこのことを言った。
「三輪長官がいなくなって。随分とやり易くなった」
「左様ですか」
「岡長官にはね。いつも助けてもらっている」
今度は岡の名前も出した。
「私は今は政務に専念していられる。剛博士達もおられるしな」
「では今は随分と連邦政府も動き易いようですな」
「ええ、その通りです」
イゴールに対しても答える。
「おかげで。今のところ敵にも大きな動きはありませんし」
「特にバルマーに」
「無論油断はしていません」
このことは念を押すアデナウアーであった。
「だからこそあの二隻をです」
「そういうわけですか。しかし」
ここでイゴールはその二隻の戦艦を見て述べた。
「キングビアルとマクロスF」
「はい」
「この二隻が加わればロンド=ベルはさらに」
「その力を増すでしょう」
キングビアルとマクロスFはゆっくりと出航しようとしていた。そのうちの一隻キングビアルの艦橋には神ファミリーの主立った面々が詰めていた。
「遂にこのダカールを離れますな」
「うむ」
兵左衛門が源五郎の言葉に頷いていた。
「いよいよな」
「思えばです」
源五郎はさらに言う。
「我々は勝平達ばかりに苦労をかけてきました」
「確かにな」
兵左衛門もそれを認める。
「ただこのダカールにいただけじゃからのう」
「ですがこれからは違いますか」
「父ちゃん」
一太郎がここで源太郎に対して問うてきた。
「それはいいけれどさ。これでいいのかい?」
「いいとは何がだ?」
「俺達はいいよ」
まず自分達はいいと言ってみせる。
「けれどさ。母ちゃんや子供達は」
「ははは、何言ってるのよ一太郎」
その一太郎に対して恰幅のいい中年女が言ってきた。
「あたし達だってね、神ファミリーなんだよ」
「母ちゃん」
「だったら覚悟はできてるさ。喜んで行かせてもらうよ」
「そうなのかい」
「そうだよ一太郎君」
今度は宇宙太の父である神江大太が言ってきた。
「僕達も迷ったさ。けれどね」
「恵子も戦っているんだ」
次に出て来たのは恵子の父久作だった。
「わし等だけ逃げるというのもな。女房も一緒の考えだよ」
「そうなのか。いいのかい」
「一人より皆じゃないかい」
梅江はこう言う。
「だからだよ。張り切っていかないとね」
「だが。子供達はな」
兵左衛門はこのことはちゃんと考えていた。
「直接の戦闘からは外れてもらうだろう」
「そうですね」
源五郎は兵左衛門のその言葉に静かに頷いた。
「これからの戦いは想像を絶するものになるでしょうし」
「ガイゾックがいなくなっても戦いは続くなんてね」
花江はこのことが不満であるようだった。
「世の中上手くいかないよ」
「それは言ってもはじまらん。とにかくじゃ」
「ええ」
皆兵左衛門の言葉に頷く。
「行こうぞ、いざな」
「はい、わかりました」
「それでは」
こうしてキングビアルも出航した。その隣にはマクロスFがいた。
「ところでですね」
「どうした?」
兵左衛門が一太郎の言葉に応える。
「今度のマクロスですけれど」
「マクロス=クウォーターか」
「ええ。それが正式名称でしたね」
「俗にFと呼ばれているようだがな」
「フロンティアのFでしたね」
「そうだ」
やはりそれであった。
「そのFだ」
「そうだったんですか。けれど正式名称はそれで」
「うむ」
「それにしても。小さいですね」
今度はこう言う一太郎だった。
「マクロスにしては」
「確かに」
「あれでマクロスって言われても」
「ちょっとねえ」
これは皆同じ意見であった。見ればこれまでのマクロスの三分の一程度の大きさしかない。そこまで小さいのである。
「あんなに小さいので大丈夫なのかな」
「マクロスっていったらやっぱり」
「だが戦闘力は従来通りらしいぞ」
兵左衛門はこのことを皆に告げた。
「それはな」
「そうなんですか」
「うむ。それどころかだ」
さらに言う。
「機動力及び格闘能力もな」
「高いんですね」
「バルキリーに匹敵する程だという」
「うわ・・・・・・」
「それは」
皆それを聞いて絶句する。
「かなりのものですね」
「凄いってものじゃ」
「そうじゃ。だからこそロンド=ベルに配属されるのじゃよ」
「そんなのが来るとなると大きいですね」
一太郎の言葉は冷静だった。
「ロンド=ベルにとっても」
「うむ」
「ですが」
しかしここで大太は言うのであった。
「戦艦だけですか?」
「というと?」
「いえ、我々はまずいいです」
自分達はいいとする。
「艦載機がなくても戦えますから。ですがマスロスは」
「そういえばそうよね」
花江が大太の言葉に頷く。
「マクロスっていえばバルキリーだけれどね」
「バルキリー。今回は搭載していないんですか?」
「パイロットは?」
「無論それも配属されておる」
「そうですか。やっぱり」
「それもですか」
「モビルスーツも運んでおるらしいぞ」
兵左衛門はこのことも一同に述べた。
「モビルスーツもな」
「それもですか」
「まずマクロスは五機」
マクロスの数が述べられた。
「新型がな」
「新型が五機ですか」
「ではデトロイトは」
マクロスのもう一つの艦載機である。マクロスにおいてもデトロイトは各種揃えられており輝達は時としてそれ等に乗り込むのである。
「それも新型が一機。それにゼントラーディのパイロットも一人じゃよ」
「全部で七機ですか」
「戦力としては大きいですね」
「そういうことじゃ。ではそのマクロス=クウォーターと共にな」
「はい」
「行きましょう」
こうして二隻の戦艦はロンド=ベルに合流することになった。しかし彼等はその途中で消息を立った。記録ではそうはなっていなかったが物理的にはそうだったのだ。
その頃ロンド=ベルは遂に修羅王の宮殿に入った。既に戦闘態勢は整えている。
「さあてと」
「行きましょう」
ティスとラリアーがまず言う。
「敵は多いんでしょうね」
「多分」
デスピニスがティスに答える。
「数はかなりのものだと思うわ」
「修羅の残り全ての戦力が集まっている筈だよ」
ラリアーもティスに述べる。
「最後の戦いだからね。彼等にとっては」
「面白いわね。決戦ね」
ティスはそれを聞いて述べた。
「修羅とのね」
「行くぞ」
フォルカはそれを前にしてもいつもの調子だった。
「戦いにな」
「あんた、随分冷静ね」
ティスは思わずフォルカに対して突っ込みを入れた。
「あんたの闘いでしょ?」
「そうだ」
それは否定すらしなかった。
「だからだ」
「あえてクールにってわけ?」
「いや、違うみたいだよ」
だがここでティスに対してラリアーが言った。
「フォルカさんも。熱くなっているよ」
「何処がよ」
「ほら、気を感じないかい?」
「気!?」
「うん、フォルカさんのね」
こう言うのである。彼の言葉を受けてフォルカをまた見てみると。確かにその気配はかなりのものになっていた。ティスも今それに気付いたのだった。
「うわ、確かにね」
「わかったよね。こういうことだよ」
「そうね」
ティスもこれでわかった。
「結局この人が一番熱くなってるってことね」
「じゃあ私達も」
デスピニスも言った。
「行くのね」
「うん」
ラリアーは今度はデスピニスの言葉に頷いた。
「そうだよ。修羅との最後の戦いにね」
「中はかなり広いです」
ユンがここで皆に告げた。
「その中は。戦艦も全て入られます」
「おいおい、マクロスもかよ」
ジャーダがそれを聞いて思わず声をあげた。
「また随分とだだっ広い場所なんだな」
「ええ。ですがそれは」
レフィーナは緊張した顔で述べてきた。
「それだけ敵の戦力も多く存在できるということです」
「敵の数ですが」
ユンがここでまた報告する。
「およそ三万程度と思われます」
「まあそれだけはいるだろうな」
イルムはそれを聞いても至って冷静な顔であった。
「向こうも必死だしな」
「残る戦力は全てか」
「闘える修羅は全員ってことだろ」
こうリンに返した。
「とどのつまりはな」
「そうか。総動員か」
「では皆さん」
レフィーナがそれを聞いて一同に告げる。
「我々もまた」
「よし!」
「このまま殴り込みだ!」
「全軍進撃開始!」
宮殿内にということだった。
「このまま敵地に乗り込む。いいな!」
「了解!」
こうしてロンド=ベルは全軍で修羅王の宮殿に乗り込んだ。王宮のその巨大な間に入るとそこは岩と機械の宮殿だった。そこには偵察通りかなりの数の修羅達がいた。
「三万か」
「はい」
「よし、それではだ」
ブライトが全軍に指示を出す。
「敵はこのまま我等に対して向かって来る」
「どうやらそのようだな」
クワトロがブライトの今の言葉に頷いた。
「このプレッシャー。確かにな」
「では大尉」
「ここは」
「そうだ。まずは向かって来る修羅達を倒す」
第一の戦術方針はこれであった。
「そしてそのうえで次の行動に移るぞ」
「はっ、わかりました」
「それでは」
アポリーとロベルトが彼の言葉に応える。丁度ここで修羅達が来たので二人のシュツルム=ディアスが早速ビームを広範囲に放ち彼等を倒した。
「受けろっ!」
「これをなっ!」
「よし、まずはだ」
クワトロは二人が修羅達を倒すのを見ながら述べていた。
「敵の数を減らしていくことだ」
「その通りだ」
彼の横でアムロが動いた。彼はフィンファンネルを放った。
「シャア、御前も動くのだな」
「勿論だ」
クワトロはシャアと呼ばれても感情を特に見せることはなかった。
「そうでなければ生き残れないからな」
「ああ、そういうことだ」
「しかしだ」
「何だ?」
アムロの言葉に応える。
「この戦いが終わればだ」
「どうするつもりだ?」
「また戦いがある」
返答は素っ気無いものだった。
「修羅達を倒してもな」
「御前は戦い続けるのだな」
「それしかないだろう」
言葉には少し苦笑があった。
「今はな」
「御前は人類に絶望したりはしないのか?」
「ふふふ、またその話か」
今度は少し笑みになった。
「その話は。もう何度もしていると思うが」
「それでもな。聞きたくなった」
これがアムロが問うた理由である。
「御前が今はどう考えているのかな」
「私は何かを起こすには歳を取り過ぎたようだ」
「そこまで歳は取っていないんじゃないのか?」
「若い人材が多くなったということだよ」
アムロの問いを受けてこう言葉を代えた。
「私が何かをするにはな」
「成程、そういうことか」
「人類は既に私の予想を越えた」
クワトロはこうも言う。
「宇宙に出て。さらに」
「さらに?」
「多くの世界を知り学んでいる」
これはその通りだった。確かに世界は大きくなっていた。
「もうな。私が何かをする時代ではない」
「だからこそ戦うんだな?」
「そうだ。ニュータイプとしてではなく人間としてだ」
最早ニュータイプにも大きなこだわりを持ってはいなかった。
「戦場に立つ。それだけだ」
「そういうわけだな」
「君はどうなのだ?」
今度はクワトロがアムロに問うた。二人はそれぞれファンネルを放ち目の前の修羅達をまとめて倒していく。彼等二人だけで修羅はかなり倒していた。
「アムロ君。君は」
「俺は変わらない」
これがアムロの返事だった。
「俺はな。今迄通り戦うだけだ」
「そうか」
「俺は人間はこうなると思っていた」
ここにアムロとクワトロの違いがあった。
「人間は馬鹿じゃない。地球という殻を軽々と越えると思っていた」
「しかしここまでとは思っていたかな?」
「いや」
今のクワトロの問いには首を横に振った。
「ここまではな。流石にな」
「そうか。やはりな」
「人間はニュータイプもコーディネイターもサイボーグも越えた」
「そうした垣根はな。最早何の意味もない」
「そして他の星人であっても」
「人間として認めるようになっている」
「そういうことだ。俺もここまで至るとは思っていなかった」
そうさせているのは他ならぬロンド=ベルである。彼等はその中に多くの異質なものを包み込み彼等を認めて戦っているからだ。
「人間はな」
「人間とは?」
「心が人間なら人間だと思う」
「心か」
「そうだ。人間だ」
また言うアムロだった。
「人間を決めるのは心だ。心さえ人間ならそれは人間なんだ」
「だからこそここにいる者は全員人間だ」
「そういうことだ。では行くぞシャア」
「人間としてな。アムロ君」
「ああ。行けっ!」
アムロがまた攻撃に移った。
「フィン=ファンネル!」
「ファンネルオールレンジ攻撃!」
クワトロもまた攻撃に入る。やはり二人の存在はかなり大きかった。修羅達を次々と倒しそれに続いて皆敵を次々と倒していた。
「今どの位かしら」
「今で一万機撃墜ってところです」
アーサーがタリアに答える。
「あと二万ですね」
「そう。随分倒したと思ったけれどまだ二万いるのね」
「多いですねえ」
アーサーは少しうんざりとした顔になっていた。
「よくもこれだけいるもんですよ」
「まあ言っても仕方ないわね」
タリアは正面を見据えていた。
「じゃあこっちもね」
「何するんですか?」
「タンホイザーよ」
彼女が選んだのはこれだった。
「タンホイザー。正面にね」
「わかりました。それじゃあ」
「正面、開けて」
全軍に指示を出す。
「タンホイザーで一気にやるわ」
「こちらもだ」
ダイテツも同じ動きを見せていた。
「正面に。主砲一斉発射だ」
「よし!じゃあやってくれよな!」
「その後であれだな」
ヤザンとジェリドはこれまでの戦いで次の動きを考えていた。
「総攻撃ってやつだよな」
「待っていたかいがあったな」
「二人共、はやるんじゃないよ」
ライラがここで二人に声をかけてきた。
「焦って動いても何にもならないからね」
「へっ、辛抱ってのは嫌いなんだがな」
「まあ今はそうしておくか」
こう言って彼らも主砲の攻撃から道を開けた。その直後にタンホイザーやローエングリン、それに主砲の一斉発射が立て続けに放たれた。
「主砲一斉発射!」
「ローエングリン一番二番、手ーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「タンホイザー発射!」
これでかなりの数の修羅が薙ぎ倒された。そして修羅全体にとっても大きなダメージとなった。これを見たロンド=ベルは一斉攻撃に転じたのだった。
「喰らえっ!」
ヤザンがそれを待っていたかのように舞う。その腕から海蛇を放つ。
「幾ら数が多くてもな、俺達は質が違うんだよ!」
「おいヤザン!」
そのヤザンにジェリドが声をかける。
「御前にばかりやらせるか!俺もだ!」
「ちっ、手前もかよ!」
「ジ=オの機動力、舐めるな!」
こう叫んで突っ込み縦横無尽に動き回りビームを放っていく。残像こそ見えないがその動きはかなりのものだった。その動きを活かして修羅達を倒している。
「こうやってな!」
「ぐっ!」
「うわっ!」
「どうだ!」
修羅達の断末魔を聞きながらの言葉だった。
「伊達に俺だったな。ティターンズのエースだったわけじゃないんだよ!」
「それはいいけれど」
ここでマウアーがジェリドに言ってきた。
「ジェリド」
「どうしたんだ、マウアー」
「敵の指揮官がいないわね」
「んっ!?そういえばそうだな」
そしてジェリドもそれに気付いたのだった。
「修羅王だったか?」
「ええ」
「そういえば指揮官らしい奴は誰もいねえな」
「おかしいわね、どう見ても」
語るマウアーの目が鋭くなっていた。
「これは」
「そうだな、どう見てもな」
「ねえ」
そしてマウアーは戦艦に通信を入れた。出て来たのはラーディッシュのナタルだった。
「どうしました?」
「レーダーに反応はありませんか」
マウアーは出て来たナタルに対して尋ねるのだった。
「今出ている機体の他は」
「とりあえずはありません」
こう答えるナタルだった。
「今のところは」
「そうですか」
「はい。あくまで今のところはですが」
ナタルの言葉も何かを感じているものだった。
「ただ。メサ大尉」
「んっ!?」
「貴方は何か感じませんか」
「そうですね。プレッシャーは感じますね」
これはニュータイプとしての言葉だった。
「まあ俺がわかるのは少しですがね」
「了解です」
「それでですよ。俺よりはですね」
ジェリドはここでナタルに対して言う。
「サラの方が感じてると思いますよ」
「ザビアロフ少尉がですか」
「ええ。おいサラ」
ジェリドは実際にサラに声をかけた。
「何か感じているか?」
「はい」
そしてサラの返答は彼等の予想した通りのものだった。
「感じます。このプレッシャーは」
「ザビアロフ少尉」
ナタルはここで直接サラに問うた。
「ボリノーク=サマーンのレーダーに反応は?」
「それはありません」
それはないというのだった。
「一応は。ですが」
「あくまで一応は、なのね」
「はい、そうです」
やはり結論の一つはこれであった。
「あくまで今のところは、です」
「わかったわ。有り難う」
「いえ」
「こういう時は素直に受け取って欲しいわね」
にこやかな笑顔でサラに言ってみせた。
「折角なんだから」
「あっ、すいません」
「また君も随分と変わったな」
ヘンケンがナタルのそのにこやかな笑みを見て言った。
「明るくなったというか柔らかくなったというかな」
「私だって変わります」
それを受けてこうヘンケンに返した。
「そうさせてくれたのはロンド=ベルですが」
「成程、そういうことか」
「はい、そうです」
「わかった。それではだ」
「どうされますか?」
「ラーディッシュはこのままだ」
「主砲での攻撃を続けますか」
「そういうことだ。主砲が溶けても構わん」
これは表現であったが本気でもあった。
「どんどん撃て。いいな」
「わかりました」
「主砲、発射!」
それを受けてまた指示を出す。
「前方の敵。撃て!」
「てーーーーーーーーーーっ!」
ナタルもまた叫び砲撃が放たれる。戦いは相変わらず激しいままであった。
「今はどうだ!?」
「どれだけ減った!?」
「残り約一万!」
エイタが叫ぶ。
「あと一万です!」
「そうか。あと一万か」
「そうです」
こうダイテツにも答える。
「あと一万です」
「わかった。三分の一だ」
単純に数だけを述べての言葉ではあった。
「あともう少しだな」
「そうですね。とりあえずは」
テツヤが彼の言葉に応える。
「ですが。それでもまだ」
「わかっている。くれぐれも気を抜くな」
「はい」
「こちらも主砲の砲撃を続けよ」
「はっ」
「その他の攻撃もだ」
これについても指示を出す。
「続けろ。攻撃の手を緩めるな」
「了解です」
「ダイテツ艦長」
ここでモニターにユリカとルリが出て来た。
「そちらはどうなっていますか?」
「クロガネは御無事ですか」
「うむ、こちらは何とかな」
こう二人に答えるダイテツだった。
「大丈夫だ」
「そうですか」
「それならいいのですが」
「ナデシコはどうなっているか」
「正直なところ危険な状況です」
ルリが答えてきた。
「敵はこちらにかなりの数を向けて来ていますので」
「そうなのか」
「ですが御安心下さい」
しかしルリはこう言ってきた。
「今のところはナデシコも健在です」
「大丈夫か?」
「サイバスター一機があれば」
こう言うルリであった。
「充分持ち堪えられます」
「わかった。ではこちらにいるサイバスターに行ってもらおう」
「御願いします」
「これでナデシコも何とか戦えます」
ユリカが笑顔になっていた。
「撃沈されずに」
「助かりました」
「そちらはそんなに大変なのか」
「大丈夫だって!」
ここでリョーコが出て来た。
「あたしがいるからな!」
「俺もだ!」
そしてダイゴウジもだった。
「このダイゴウジ=ガイがいるからな!」
「おい旦那何言ってるんだよ」
しかしリョーコはそのダイゴウジにクレームをつけるのだった。
「旦那大破して今ナデシコで整備受けてるだろ」
「あと一分で戻れる!」
どうやらナデシコの危機はダイゴウジの機体の大破にあるらしい。
「あと一分だ!待っていろ!」
「ヤマダさん、焦らないで下さい」
ルリがここでダイゴウジに言ってきた。
「一分といっても長いのですから」
「くうっ!その通りだ!」
「焦りは禁物ですよ」
また言うルリだった。
「とにかく一分ですから」
「くっ、わかった」
「それではサイバスターを御願いします」
「もうそっちに行ってるぜ!」
「くれぐれも方向には御注意を」
「わかってらあ!」
ルリの突込みにも応える。彼等もまたかなり激しい戦いの中にいた。
その中でも確実に修羅達の数を減らしていく。そして遂にであった。修羅達の数の底が見えてきたのであった。
「あと三千です」
「やっとかよ」
報告を聞いたディアッカが思わず言った。
「やっとそれだけかよ」
「はい、十分の一です」
メイリンがこうディアッカに述べた。
「今は」
「そうか。十分の一なんだな」
「そうよ。あともう少しよ」
「頑張っていきなさいよ」
ミリアリアも皆に言う。
「底が見えてきたから」
「よっし、じゃあよ」
「もう一踏ん張りだな」
「いや」
だがここでフェルナンドが皆に言ってきた。
「そうはいかないな」
「!?っていうと」
「何が」
「来るぞ」
ここでまた言った。
「いよいよな」
「いよいよっていうと」
「まさか」
「!?」
この瞬間だった。ニュータイプ能力を持つ者達の顔が一変した。
「何だこのプレッシャーは!!」
「これは!!」
「そうだ、これだ」
フェルナンドはここぞとばかりにまた言った。
「このプレッシャー、まさしく」
「これが修羅王ってわけだ」
アリオンも皆に話してきた。
「これがな」
「くっ、これだけのプレッシャー」
「今まで感じたことは」
「お、おい見ろ!」
「あそこだ!」
部屋の奥を指差す者がいた。
「あの巨大なマシンが」
「まさか」
「まずは見事と言っておこう」
地の底から響き渡るような声であった。
「ここまで来たこと。そして我に出陣させたことを」
「な、何て巨大な姿なんだよ・・・・・・」
「化け物か!?」
「しかもこの殺気」
「闘気も」
皆同じものをその彼から感じていた。
「あれが修羅の覇者ってわけかよ」
「あの巨大なマシン、そして中にいる男が」
「修羅王」
「そういうことだ」
フェルナンドの声は何時になく強いものがあった。
「あれがだ」
「あの三本足のマシン」
「それが」
「エクスティムだ」
今度はフォルカが述べた。8
「あのマシンがな」
「そしてそこにいるのが」
「修羅王ってわけですか」
「何てプレッシャー」
「別世界の戦士達よ」
またあの声が聞こえてきた。
「よくぞ来た」
「修羅王!」
「そうだ」
彼等の声に対して返してきた。
「我こそは修羅王」
「やはり」
「あんたがかよ」
「修羅を治める男だ」
「やっとお出ましってわけかよ!」
ケーンが彼に対して叫んだ。
「勿体ぶっただけはありやがるぜ。如何にも強そうだなおい!」
「まずはここまで来たことを褒めておこう」
修羅王は彼等に対してまた述べてきた。
「だが。それも最後だ」
「何っ!?」
「どういう意味だ!」
「我を倒すことは不可能だ」
修羅王はまた言ってきた。
「この我を倒すことはな。決して」
「へん、そんなのすぐにおつりつけて返してやるぜ!」
ケーンは相変わらず強気だった。
「今までな。どんな相手だって叩き潰してきたんだ!」
「そうだ、もうどんな相手でも怖かねえんだよ!」
タップもケーンに続く。
「修羅王だろうが何でもな!倒してやるぜ!」
「しかし。これはね」
だがここでライトは二人とは違う言葉を言うのだった。
「洒落にならないものがあるな」
「洒落にならないもの?」
「ライト、何だよそれって」
「ルリちゃん」
ライトはケーンとタップには応えずルリに対して声をかけた。
「どうだい、そっちのハッキングでわかったことは」
「ここまでのパワーだとは思いませんでした」
こう答えるルリだった。
「今の状態で私達の戦力に匹敵します」
「おい、たった一機でかよ」
「マジかよ」
これには二人も驚きを隠せなかった。
「修羅王の名前は伊達じゃねえのかよ」
「まさかな」
「これはな。洒落にならないぜ」
ライトは軽口だったが冷や汗をかいていた。
「強さが半端じゃねえ。どうするよ」
「俺が行く」
だがここでフォルカは出て来た。
「俺が」
「おい、フォルカさんよ」
「幾ら何でもそれは」
コウタとショウコが顔を暗くさせてフォルカに言ってきた。
「一機じゃあの修羅王は」
「無理なんじゃ」
「これは俺の闘いだ」
フォルカは彼等の言葉を聞き入れようとはしなかった。
「だからだ。行く」
「いや、俺も行く」
「私もです」
しかし二人はそれでも前に出るのだった。
「あんた一人は行かせないぜ」
「そうです。フォルカさんだけでは」
「どうしてもか」
「俺は馬鹿なんだよ」
コウタの言葉は捨て身だった。
「だからな。何処にだって突っ込むぜ」
「私もです」
ショウコの今の言葉は彼女にとっては意外なものであった。
「私も。行きます」
「そうか」
「いいな、それで」
「もう止めても」
二人も退かない。二言はないといった感じだった。
「退かないぜ」
「いいですね」
「好きにすればいい」
フォルカもその二人を止めようとはしなかった。
「そこまで言うのならな」
「よし、それならだ」
「行きます」
『だが気をつけろ』
『いいですね』
ここでロアとエミィが二人に言ってきた。
『修羅王の力はこれまでのどの相手よりも強大だ』
『まさに闘う為の神よ』
こうまで言う。
『いいな、だから』
『命懸けよ』
「そんなことは覚悟のうえだ」
「私もです」
そして二人の決意も変わらなかった。
「俺は行く」
またフォルカが言う。
「今からな」
「よし!」
「それじゃあ!」
「将軍」
メイシスもまたアルティスに声をかけてきた。
「ここは私にお任せ下さい」
「メイシス・・・・・・」
「修羅王の下へ」
こうアルティスに言うのだった。
「行って下さい」
「いいのだな?」
「はい」
彼女にも二言はなかった。
「ですから。今こそ」
「わかった」
彼もまたメイシスの言葉を受けて頷くのだった。
「それならばな」
「ええ。どうぞ」
こうして彼も進むのだった。今アルティスも戦場に向かう。
そしてフェルナンドも。修羅王に向かっていた。
「フォルカ!御前にだけは行かせないぞ!」
「フェルナンド、御前もか」
「俺も・・・・・・闘う」
これが彼の言葉だった。
「御前と共に。だからだ」
「そうか」
「そうだ。まだ答えは出てはいない」
このことはまだであった。
「だが。それでも」
「闘うのか」
「それが今の俺の答えだ」
こういうことであった。
「だから。今」
「よし、では来い」
「わかった!」
こうして彼もまた修羅王に向かう。既に彼の周りではロンド=ベルと修羅王の最後の修羅達の戦いになっていた。そして四機のマシンが今。修羅王の前にいた。
「神化か」
「そうだ」
修羅王はまずヤルダバオトを見た。それに乗るフォルカが述べる。
「俺だ」
「フォルカ=アルバークだったな」
修羅王はここでフォルカの名を呼んだ。
「そうだったな」
「その通りだ」
フォルカもそれに返す。
「俺がフォルカ=アルバークだ」
「そうか。名前は知っていた」
修羅王は彼を見据えてまた言うのだった。
「そして神化したこともな」
「そうだったか」
「我はまだだ」
修羅王はふと己のことを述べてきた。
「しかし貴様はそれを果たした」
「何が言いたい」
「それだけだ」
しかしここでフォルカには答えようとはしなかった。
「ただ。それだけのことだ」
「そうか」
「しかし一つ思うことがある」
「むっ!?」
「貴様が神化したというそのこと」
彼が言うのはこのことだった。
「それに意味は間違いなくある」
「俺が修羅となったことに」
「そうだ。そして今の闘いは」
修羅王の言葉が続く。
「それを見極める為の闘いだ。我か貴様か」
「修羅王として」
「どちらが正しいのか。今な」
「ならばだ」
「来るのだ」
修羅王は構えはじめた。その構えは重厚にして威圧感に満ちたものであった。
「今修羅王の力。見せようぞ」
「何てプレッシャー・・・・・・」
ショウコは構える修羅王を見て呟いた。
「さっきよりもまだ」
『これで驚いていたら駄目よ』
その彼女にエミィが言った。
「エミィ」
『修羅王の力、まだこれだけではない筈よ』
「底が見えないのね」
『ええ』
そういうことだった。
『さっきも言ったけれどね。これ程までの力の持ち主は見たことがなかったから』
「そうなの。やっぱり」
『だから。今は』
「わかってるわ」
エミィの言葉に再び顔を上げるショウコだった。
「いえ、わかったって言うべきかしら」
『ショウコ・・・・・・』
「いい、お兄ちゃん」
そしていつものショウコに戻っていた。
「正面から来るわ」
「正面からか」
「受け止められないわ」
そしてこうも告げた。
「それ程までのパワーよ」
「じゃあどうしろっていうんだ?」
「よけて」
これが彼女の判断だった。
「ここは。よけて」
「修羅王の攻撃をか」
「それ以外には。防ぐ方法はないわ」
修羅王の構えを見ての言葉であった。
「これはね」
「くっ、そうか」
「よけて」
躊躇いを見せる兄に対してまた告げる。
「そうじゃないと本当に」
「くっ、わかった」
「来たわ!」
そしてその時だった。
「修羅王の拳が!」
「くっ、速い!」
ただ威力があるだけではなかったのだった。速さもまたかなりのものだった。そのあまりもの速さにコウタは咄嗟に上に飛んだ。まさに紙一重だった。
「危なかったな」
「え、ええ」
あらためて兄の言葉に頷くのだった。
「本当にね」
「受けていれば命はなかった」
「そうよ。だから」
「このコンパチブルカイザーでもだ」
『その通りだ』
ロアがここでコウタに告げた。
『あの拳を受ければ間違いなく』
「わかった。なら!」
「どうするの、お兄ちゃん」
「一撃離脱だ!」
彼の出した結論はこれだった。
「それでやる。いいなショウコ!」
「そうね。それが一番ね」
ショウコもまた彼のその言葉に頷いた。
「それなら」
「ええ、御願い!」
「喰らえ!」
拳を放ったばかりの修羅王に対して突き進んでの言葉だった。
「この拳!これで!」
「来たか」
修羅王は迫るコンパチブルカイザーを見て言った。
「ならば来るがいい。異界の戦士よ」
「これを受けて無事で済むと思うな!」
コウタの言葉は虚勢ではなかった。
「これなら!」
拳を打ち込む。だが。
「なっ!?」
「えっ!?」
コウタもショウコも思わず呆然となったしまった。
「効いていない!?」
「コンパチブルカイザーの拳が」
「中々見事な拳だ」
受けた修羅王は彼等の拳を認めはした。
「だが。その程度でこの修羅王を倒すことは不可能だ」
「くっ、この拳でもか!」
「何て奴なの!」
「これが修羅王だ」
驚く彼等にフォルカが言ってきた。
「これがな」
「修羅王・・・・・・」
「何て力・・・・・・」
「一撃で倒せる相手ではない」
フォルカはまた言った。
「いいか、何度も拳を打ち込め」
「わかった」
「それじゃあ」
「受けろ!」
頷く彼等の横で今度はフェルナンドが修羅王に拳を打ち込む。だがそれも通じない。
「まだだ」
「おのれ!」
「その程度では我は倒せぬ」
「ならば!」
「よせ、フェルナンド!」
さらに拳を打ち込もうとする彼をアルティスが制止する。
「何っ!?」
「退け!」
「むっ!」
彼が叫んだその瞬間に咄嗟に後ろに跳んですんでのところでかわすことができた。丁度そこに修羅王の拳が横薙ぎに来たのである。
「今のを受ければ」
「そうだ。御前は死んでいた」
こう述べるアルティスだった。
「間違いなくな。だからだ」
「迂闊には。攻撃できないか」
「そういうことだ。いいか」
「ああ」
アルティスの言葉に頷く。
「ならば」
「一撃離脱で攻めていくことだ」
アルティスはフェルナンドだけでなく他の者に対しても話した。
「いいな。それしかない」
「わかった」
「なら!」
「それで!」
修羅王と対する彼等はその言葉に従い一撃離脱で徐々に修羅王を攻めていた。その攻防は激しいものだった。そしてその中で。フォルカがあの二匹の紅蓮の龍を放った。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
「それが汝の技か」
「そうだ!」
修羅王に対して叫ぶ。
「これなら。どうだ!」
「むっ!」
「修羅王!」
フォルカはまた叫ぶ。
「この龍を防ぐことはできまい!」
「むうっ!」
「俺の・・・・・・」
そしてまた叫ぶのだった。
「勝ちだ!」
「ぬうううううううううううっ!」
二匹の紅蓮の龍が修羅王を襲った。それにより激しい衝撃が彼の全身を襲う。誰もがフォルカの勝利を信じて疑わなかった。
「やったな!」
「勝った!」
口々にこう言うのである。
「これで!」
「フォルカの勝利だ!」
「ふむ」
しかしだった。思わぬ声が聞こえてきた。
「何っ!?」
「まさか!」
「流石だ」
それは紛れもなく修羅王の声だった。
「これこそが神化の技だというのか」
「お、おい嘘だろ!?」
「まさか」
勝平と宇宙太が呆然として声をあげた。
「あれを受けて生きているなんてよ」
「ダメージは限界を超えている筈だ」
「けれど間違いないわ」
驚く二人に言う恵子の言葉も呆然としたものであった。
「修羅王は」
「ちっ、化け物かよ!」
「今のを受けて生きているなんて!」
忍と沙羅も声をあげた。
「くたばってねえだと!」
「どういうことなのよ」
「いや、待て」
「どうしたの、亮」
雅人が亮に対して問う。
「生きているどころではないようだ」
「どういうこと!?」
「!?ハマーン」
ミネバが青い顔をしていた。
「まさか・・・・・・このプレッシャーは」
「はい、間違いありません」
答えるハマーンの顔も強張っている。
「生きているどころではなく」
「力が増しているなんて」
「明らかに・・・・・・」
「馬鹿な、今ので倒れないどころか」
「まだ立ってるだけじゃなくて」
コウタとショウコも言う。
「こんなことが」
「有り得ないわよ・・・・・・」
「フォルカ=アルバークよ」
彼等の驚きの中で修羅王がまたフォルカの名を呼んできた。白煙の中でその声だけが聞こえている。
「確かに見事だ」
「立っているだけではないな」
「その通りだ」
フォルカに対して答える。
「汝が神化するのならば我もまたできるということだ」
「やはりな。そうか」
フォルカは特に驚いた様子もなかった。
「修羅王という称号は伊達ではないか」
「そういうことだ。だからこそ我は」
「神化!?」
「まさか」
「いや、そのまさかだ」
フォルカがまだ驚きを隠せない一同に対して述べた。
「修羅王もまた」
「何てこった・・・・・・」
「唯でさえ化け物だっていうのによ」
「我の真の力」
ここでこの白煙が消えてきた。
「今ここで見せよう」
「逃げるつもりはない」
フォルカはその白煙から姿を現わす巨大なマシンを見て告げた。
「ここでな」
「フォルカ」
その横にアルティスが来た。
「私も行くぞ」
「俺もだ」
そしてフェルナンドもまた。
「ここまで来たならばだ」
「逃げはしない」
「いいのだな」
フォルカはその二人に対して問い返した。
「今の修羅王は」
「構わん」
「覚悟のうえだ」
だが二人はそれを言われても言葉を変えはしない。
「それはな。もう」
「御前と共に行くと決めたその時からだ」
「わかった」
フォルカもまた彼等の言葉を受けて頷いた。
「それならばだ」
「フォルカ」
その彼に凱が声をかける。
「死ぬな」
「わかっている」
修羅王を見据えたまま彼の言葉に頷く。
「俺は・・・・・・敗れはしない」
「わかった。では俺達は」
「残る敵を倒していくぞ」
今度は宙が言った。
「あと少しだ。修羅王は任せたぞ!」
「承知している。それならばだ」
「来るのだ」
修羅王もまたフォルカに対して告げる。
「今ここで。拳で決めようぞ」
「承知のうえだ。ならば今こそ」
「行くぞ。うおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!」
「私もだ!」
「俺も!」
その彼にアルティスとフェルナンドが続く。だがその三人に対して今修羅王は構えた。
「何っ!?」
「これ程までのプレッシャーなのか!」
皆その気迫を感じて驚愕の声をあげざるを得なかった。
「まさか・・・・・・」
「今まで以上に」
「わかっていた」
だがここでもフォルカは冷静なままであった。
「だからこそ。俺は」
「フォルカ!」
「けれどこれは!」
「この相手は!」
「安心しろ。勝つ!」
彼の言葉には寸分の迷いもなかった。
「俺は必ず。そして修羅の果てしなき闘いを終わらせてみれる!」
「言ったな、フォルカ=アルバークよ!」
修羅王も彼の言葉を聞いて言った。14
「ならば見せてみよ。その志を我に!」
「今こそここで!」
「修羅は闘いにより生きるもの」
またこの言葉が出された。今度は修羅王により。
「しかし。それを変えようと思うのならばまずは我に勝つことだ」
「それは承知している」
「ならば!」
その闘気がまた増した。
「今我も!最大の拳を今!」
「ぬうっ!」
「一度奮えば敵なぞ残らぬ!」
今その左拳に紅い気が宿った。
「秘奥義!」
「なっ!?まだ闘志が!」
「大きくなるなんて!」
「覇皇破滅拳!受けよ!」
「ぐうっ!!」
この拳はフォルカとて避けきれるものではなかった。ガードこそしたが大きく吹き飛ばされる。それにより遥か後ろの岩にまで吹き飛ばされその身体を叩き付けられる。実に恐るべき一撃だった。
「何てパワーなんだよ・・・・・・」
「あれが修羅王の真の力・・・・・・」
皆そのあまりにも圧倒的な力を見て呆然となっていた。
「化け物かよ・・・・・・」
「あれじゃあ幾ら何でも」
「フォルカも・・・・・・」
「もう・・・・・・」
駄目だと誰もが思った。しかしその時だった。
「まだだ」
「!?」
「まさか」
「フォルカ!」
「フォルカさん!!」
「俺はまだ立っている」
こう言って岩から出て来たのだった。
「俺はまだ。生きている!」
「ほう、我の秘奥義を受けて立っているか」
修羅王は岩から出て来た彼を見て言った。
「見事だ。流石に神化しただけのことはあるな」
「修羅王、やはりその力は伊達ではない」
ヤルダバオトも実際に満身創痍になっていた。動くのが奇跡な程だ。
「しかしこの俺もまた」
「倒れんというのだな」
「そうだ」
こう返すのだった。
「俺は倒れん。修羅の世界を変えるまでは」
「面白い。ならば来るのだ」
修羅王は彼のその言葉を受けてまた構えに入った。
「その拳で。それを掴んでみるのだ」
「言われずとも。ならば!」
「フォルカ!」
「いけるのか!」
その彼にアルティスとフェルナンドが声をかける。
「その身体で」
「まだ。大丈夫なのか!?」
「言った筈だ。俺は倒れはしない」
だが彼はこう言うのだった。
「修羅の因果を終わらせる為に。今!」
「よし、わかった」
「それならば俺達も!」
「行くぞフェルナンド!」
「よし、アルティス!」
二人が修羅王に攻撃を浴びせる。そこにフォルカも加わる。
「はあああああああああああああっ!!」
「喰らえっ!」
二人もまた己の持てる力を全て出してきていた。三人が今一つになって修羅王と闘う。修羅王の拳は確かに強く三人はその一撃を受けただけで死にも等しい傷を受ける。だがやがて修羅王も立てなくなってきていた。そして遂に。彼とフォルカが対峙するのだった。
「これで最後になる」
「そうだな」
互いに睨み合っていた。フォルカは修羅王の巨体を見上げていたが完全に対峙していた。
「ならばここで!俺も!」
「我も!また!」
「最大の奥義を出そう!」
「受けよ!」
互いに奥義の構えに入った。
「はああああああああああああああああああああああああっ!!」
「ぬうううううううううううううううううううううううううううううううううううっ!!」
それぞれの全身が紅蓮の闘気に包まれていく。
「真覇猛撃烈破!!」
「覇皇破滅拳!!」
それぞれの拳がこれまで以上に激しくぶつかり合った。
「これで・・・・・・全てが!」
「終わる!」
二人はその中でまた叫ぶ。
「修羅の因果が!」
「この闘いが!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーっ!!」
二人の叫びが今一つになった。そうして激しい衝撃が今世界を包み込み。ヤルダバオトは今にも倒れようとしていた。
「くっ、フォルカ!」
「フォルカさん!」
皆そのヤルダバオトを見てまた叫んだ。
「まさか、勝負は」
「修羅王が」
「見事だったぞ」
その修羅王が口を開いた。
「フォルカ=アルバークよ」
「うう・・・・・・」
「貴様の拳、見せてもらった」
いつもの地の底から響き渡るような声であった。
「その拳、その拳こそ」
さらに言う。
「次の修羅王に、闘いを終わらせる者として相応しい」
「何っ!?まさか」
「修羅王は!?」
「・・・・・・貴様の勝ちだ」
ここで彼は血を吐いた。
「見事だったぞ」
「修羅王・・・・・・」
「今ここに言おう。新たな修羅王は貴様だ」
マシンがあちこちで火を噴く。その中での言葉だった。
「貴様の望む通りに修羅達を導け。よいな」
「いいのだな、それで」
「言った筈だ。修羅を統べるのは修羅王」
つまり修羅においては修羅王こそが絶対の法なのである。
「その言葉こそが絶対だ。ならば貴様こそが」
「そうだったな」
「我を倒した。さあ胸を張るのだ」
こうも彼に告げるのだった。
「そして行け。新たな時代にな」
「・・・・・・わかった」
彼のその言葉に対して頷いた。
「ならば今」
「そういうことだ。では我は去ろう」
今まさにその全身を爆発が包んだ。
「修羅の長い闘いの歴史と共に・・・・・・今」
「・・・・・・さらばだ」
フォルカは今修羅王のラハ=エクスティムが最後の爆発に包まれるところを見た。
「修羅王アルカイドよ」
そして今修羅王は爆発の中に消えた。これが修羅との戦いの終わりであった。
「終わったな」
「そうだな」
アムロがブライトの言葉に頷いていた。
「これでな」
「デュミナスと修羅との戦いはこれで完全に終わった」
ブライトはあらためてこのことを言うのだった。
「これでまた一つ。敵が消えた」
「この世界での戦いもな」
「そうだ。では帰るとしよう」
ブライトは一同に声をかけた。
「我々の本来の世界に」
「いえ、それがです」
だがここでシュウが言ってきた。
「どうやらそうもいかないようです」
「えっ!?」
「何だって!?」
「これは」
ネオ=グランゾンのモニターの一つを見ての声だった。
「重力等に異常が出ています」
「重力に!?」
「まさか」
「勿論それだけではありません。具体的に言えばですね」
「おい、どうなってんだよ!」
マサキがシュウに対して問う。
「そもそもよ。どうなってやがるんだよ!」
「時空の歪が大きくなっています」
彼が言うのはこのことだった。
「このままでは。おそらく」
「おそらく!?」
「何が。起ころうとしているんだ!?」
「総員すぐに艦艇に戻って下さい」
危険を察したユリカが全軍に声をかけた。
「そして艦艇もそれぞれ集結して下さい」
「何っ、ここで!?」
「一体何が」
「いや、理屈は後でよい」
アスカもまたユリカと同じ危険を察していた。
「さもなければ皆離れ離れになってしまうぞよ」
「離れ離れだって!?」
「今度は何処に」
「わかりません。ですがまさか」
イーグルが言う。
「また。他の世界に!?」
「今度は何処や!?何処なんや」
タータもマシンの収容を急がせながら言う。
「一体全体」
「わからん。だが総員集結せよ!」
大河もまた果断に指示を出した。
「まずはそれからだ!いいな!」
「くっ、なら!」
「皆戻れ!」
とにかくまずはそれだった。
「総員集結だ!」
「各艦も集まれ!」
「密集しろ!」
こうして各艦も触れ合わんばかりに集まった。皆収容され集結したその時だった。時空が。
「なっ、今度は一体!」
「何処へ!」
「どうやら私の危惧が当たったようですね」
「何っ、シュウ!?」
「そういえばあんた!」
ここでマサキとセニアが彼に気付いた。
「どの船にも乗ってねえじゃねえか!」
「しかもそんなに離れて。どうするつもりよ!」
「元々ここでの戦いが終われば離れるつもりでした」
こう二人に答えるシュウであった。
「ですから今は」
「馬鹿な、ネオ=グランゾンだって何処に行くかわかったものじゃねえのによ」
「あんた、何考えてるのよ」
「安心なさい、このネオ=グランゾンはあらゆる次元を超えて動くことができます」
それもまたネオ=グランゾンの力の一つであるのだ。
「ですからまた会えますよ」
「それはいいけれどさ」
「あたし達はどうなるのよ」
シモーヌとベッキーはこのことをシュウに対して問うのだった。
「一体今度は何処に」
「どの世界に」
「それもおそらく運命の導きでしょう」
だがシュウはこう言うだけだった。
「元の世界には私が案内します。ですが今は」
「今は!?」
「その世界に行けってことなのね」
「そういうことです。それではまた」
ネオ=グランゾンもまた何処かに消えた。時空に飲み込まれてしまったのだ。
「御会いしましょう」
「へっ、何が何だかわからねえけれどよ!」
リュウセイはまた他の世界に行くと聞いてもいつもの調子だった。
「こうなったら行ってやるぜ。何処までもな!」
「おお、そうさ!」
それにタスクが乗った。
「こうなったら何処までも行ってやろうぜ!」
「全く。これからどうなるかわからないのに」
エレナはそんな二人を見て呆れてはいた。
「それでも仕方ないわね。それじゃあ」
「ああ、行くぜ!」
「その世界にな!」
こうして彼等は何処かの世界へと飛ばされたのだった。これがまた一つの戦いのはじまりであった。

第九十話完

2008・11・10
 
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