スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第八十二話 デュミナスの答え
第八十二話 デュミナスの答え
「ううう・・・・・・」
「デュミナス!」
「しっかりして下さい!」
三人は呻き声をあげるデュミナスに必死に声をかけていた。
「デュミナスがいなくなったら僕達は」
「どうなるのよ!」
「私は・・・・・・」
デュミナスは三人が気遣う中で声を漏らした。
「このまま消えるのか」
「消えないでよ!」
ティスの声は今にも泣きそうなものだった。
「消えちゃ嫌よ、絶対に!」
「何もわからず、存在自体を否定されたまま」
デュミナスは呟き続ける。
「消えるのか」
「消えない」
ラリアーは虚ろになった言葉で言った。
「デュミナスは。絶対に」
「どうしたら」
デスピニスは完全に狼狽していた。
「どうしたらいいの?」
「わからない」
ラリアーが彼女の言葉に首を横に振る。
「僕にはわからないよ」
「馬鹿!」
しかしそんな二人をティスが叱った。
「あたし達が諦めてどうするのよ!」
「けれど」
「それでも」
「けれどもそれでももないわよ!」
ティスは何時にも増して感情的になっていた。
「それでもデュミナスの子供なの!?」
「ティス・・・・・・」
「デュミナスは頑張ってきたのよ」
ティスはもう泣いていた。
「何十年、何百年も」
「それは確かに」
「知ってるわ」
「知ってるなら余計によ」
ティスは二人にさらに言う。
「そんなデュミナスに造られたのにこんなことですぐに諦めるの!?」
「わかったよ、ティス」
ラリアーはここで遂に言った。
「一つだけ方法があるよ」
「一つだけ!?」
「うん」
深刻だが意を決した顔だった。
「一つだけね」
「ラリアー」
しかしここでデスピニスがラリアーに声をかけてきた。
「それってまさか」
「そう、そのまさかだよ」
こう答えたラリアーだった。
「それしかないよ、もうね」
「そうね」
ティスも深刻な顔になってラリアーの言葉に応えた。
「それならデュミナスを復活させられるわ」
「けれど」
デスピニスは強張り震えた顔になっている。
「それをやったら私達は」
「ラリアー」
デュミナスは彼の名を呼んできた。
「デスピニス、ティス」
「デュミナス・・・・・・」
「ここを去りなさい」
こう三人に告げるデュミナスだった。
「私は御前達の創造主」
「だからよ」
「僕達はデュミナスの為に」
「何があっても」
「私は御前達の存在を否定することはできない」
このことを三人に言うのだった。
「けれど」
ラリアーがそのデュミナスに対して話す。
「ロンド=ベルがすぐそこに」
「だからもう」
「デュミナス、時間がないのよ」
デスピニスとティスも言う。あくまでデュミナスを気遣っていた。
「大丈夫です」
しかしそれでもデュミナスは言うのだった。
「時を超える方法はまだあります」
「でもデュミナス」
デスピニスはそれがわかっているようだがそれでも話すのだった。
「それでは」
「それしかないよね」
ラリアーは俯いて言った。
「ここは」
「えっ!?」
「デスピニスとティスは逃げて」
こう二人に告げてきた。
「何とか僕だけでデスピニスを」
「ラリアー・・・・・・」
ティスはラリアーのその心を受け取ったうえで彼の顔を見た。
「あんたやっぱり男の子だね」
「えっ!?」
「凄いよ、その責任感」
「ティス、何を言っているんだい」
「それでもね」
ここでティスの言葉の調子が変わった。
「無茶言うんじゃないよ」
「無茶を!?」
「そうよ。あんた一人で間に合う傷じゃない」
こうラリアーに言うのだった。
「あたしもいないとね」
「ティス・・・・・・」
「あんただけには残らせないよ。いいわね」
「いいのかい、本当に」
「あたしがいいって言ってるのよ」
微笑みを作っての言葉だった。
「あたし自身がね。今回も我儘と言わせてね」
「有り難う、ティス」
「じゃあデスピニス、あんたは」
「ずるいです」
しかしデスピニスはティスに対してこう告げたのだった。
「それは。ずるいです」
「けれどデスピニス」
「あんたまでって」
「私達は三人ですよね」
このことを二人に話すのだった。
「ですから。いいですよね」
「どうしてもっていうのね」
「はい」
やはりいつものようにおどおどとしているがしっかりとした言葉だった。
「どうしてもです」
「負けたわ」
「わかったよ」
ティスとラリアーはデスピニスの心を受け取った。
「それなら。やるわよ」
「三人で」
「ええ」
「御前達・・・・・・」
デュミナスはずっと三人の話を聞いていた。そしてその決意まで聞いて言うのだった。
「新たに造りなおす時どの様な姿を望む?」
「どの様な姿って」
「これ位しか私には出来ない」
こう三人に告げるのだった。
「これ位しか。私には」
「デュミナス・・・・・・」
「言ってくれ」
三人に対して言った。
「是非。どの様な姿だ?」
「私は」
まずはデスピニスが答えた。
「もっと元気な心と身体を」
「心と身体をか」
「はい、私は」
「わかった」
「あたしはね」
今度はティスが言う。
「もうちょっと大人になりたいわね」
「大人に」
「そうよ。胸だってね」
自分の胸を見つつ語る。
「こんなに小さいのじゃなくて大きくね」
「そうだったな。ティス、御前は」
「頼むわよ、絶対にね」
「わかった。それでは」
「僕は」
最後に言ったのはラリアーだった。
「皆を守れるだけの力が欲しいです」
「わかった。三人共」
デュミナスは静かに三人に語った。
「有り難う、最後まで」
「デュミナス・・・・・・」
デュミナスと三人は最後に心を重ね合わせた。そしてそこに遂にロンド=ベルがやって来た。
「来たぜ、最後の戦いだ!」
「デュミナス、来たわよ!」
その先頭には二機のエクサランスがいる。ラウルとフィオナがその中にいる。
「ここで決めてやるぜ!」
「私達が勝つかあんたが時間を超えるかね!」
「来たわね、遂に」
ティスが彼等に顔を向けて応える。
「本当にこれで最後になるわね」
「ええ、その通りですよ」
ジョルジュがティスに対して応えた。
「私達が勝つか貴方達が勝つかです」
「どうやら退く気はないようだな」
「勿論」
アルゴに対しても言葉を返すティスだった。
「何があってもね」
「そうか。ならいい」
「こっちも手を抜かないぜ!」
「いくよ、全力でね!」
ヂボデーとサイシーは既に闘志に燃えていた。
「この拳が唸るぜ!」
「やっちゃうよ。いいね!」
「いい?ラリアー、デスピニス」
「うん、用意はできているわよ」
「私も」
二人も頷く。そして三人の前に残った全ての戦力が出された。
「さて、これで全部よ」
「僕達の戦力は」
「後はもう」
三人はロンド=ベルに対して話す。
「逆さに振っても出ないわよ」
「最後だから」
「もう。何があっても」
「よし、ならば来い!」
ドモンもまた他のシャッフル同盟の仲間達と同じく闘志に燃えていた。
「この拳で。御前達を倒す!!」
「デスピニス、ティス」
しかしここでラリアーが二人に声をかけた。
「いいね」
「ええ」
「じゃあ!」
「デュミナス!!」
三人は同時に叫んだ。そして」
「!?あの三人」
「何をするつもり!?」
最初に気付いたのはラウルとフィオナだった。
その次の瞬間三人から光の柱があがった。そしてその柱は矢となりあるポイントに突き刺さった。その瞬間轟音が起こりそこにはデュミナスが現われた。
「力が・・・・・・」
「何ィ!?」
今度叫んだのはカズマだった。
「デュミナスが復活しやがった!?」
「ええ、間違いないわ!」
ミナキも叫ぶ。
「あれは・・・・・・デュミナスが」
「何でだよ!」
トウマは今の事態を理解できなかった。
「何でここでデュミナスが復活したんだよ!」
「それは私にも」
「おい、見ろ!」
戸惑うトウマとミナキにカズマが声をかける。
「デュミナスが!何か言ってるぞ!」
「えっ!?」
「私はデュミナス」
彼は言うのだった。
「三人のエネルギーを受け今、蘇った」
「おいおい、嘘だろ!?」
リョーコはまだ驚いていた。
「あの三人の力を受けてかよ」
「けれどリョーコさん、あれは」
ヒカルも普段の明るさがなかった。
「確かに。デュミナスが」
「ちっ!洒落になってねえぞ!」
「これは大変ね」
イズミもいつもの駄洒落がない。
「まさかの復活なんてね」
「どうしたものでしょうか」
ジュンは冷静にこれからのことを考えていた。
「デュミナスが復活するとは。思わぬ事態ですね」
「このパワーよ、感じるよな」
サブロウタは何とか痩せ我慢で笑っているだけだった。
「おいおい、洒落になってねえぜ」
「くっ、行くべきだが」
さしものダイゴウジも前に出られなかった。
「このプレッシャーは・・・・・・」
「迂闊な動きは避けた方がいい」
ナガレが彼等を制止する。
「これは。尋常ではない相手だ」
「そうですね」
アキトはブラックサレナの中でごくり、と喉を鳴らしている。
「これは。どう見ても」
「ラリアー」
「・・・・・・・・・」
デュミナスはラリアーに声をかけた。しかし返事はない。
「デスピニス」
「・・・・・・・・・」
「ティス」
「・・・・・・・・・」
二人も同じだった。やはり返事はないのだった。
「心を失い、抜け殻となったか」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
やはり返事はなかった。デュミナスはそれを見て言った。
「私の為に」
「あの連中、本当に」
「ええ、そうね」
さやかが甲児の言葉に頷く。
「本当にデュミナスのことをね」
「思っていたってのかよ」
「まるで親子みたいに」
「ああ、そうだな」
甲児にも今彼等の気持ちがわかったのだった。一人で密かに黙祷しようとする。しかしその時だった。その三人のマシンが突如として。
「なっ!?」
「動いた!?」
そう、動いたのだった。心がなくなろうとも。彼等が動いたのだ・
「まだ動くなんて・・・・・・」
「おいおい、マジかよ」
「私を護ろうという意志が残っているのか」
それがどうしてか、デュミナスは今わかった。
「だからか。それが御前達を戦わせるのか」
「!?見て下さい」
ここでユリカが皆に告げた。
「どうしました!?艦長」
「デュミナスが」
「あっ・・・・・・」
その時彼等は見たのだった。デュミナスの目を。そこからは。
「泣いている・・・・・・」
「間違いない、そんな・・・・・・」
「こんなことははじめてだ」
そのデュミナスもまた驚きを隠せなかった。
「この様な水がしみ出るとは」
「止めろ」
アムロがここでデュミナスに言った。
「デュミナス、もう止めろ」
「止めろだと」
「そうだ」
今はっきりとデュミナスに言った。
「もうこれ以上は。三人の犠牲を無駄にするつもりか?」
「無駄にはしない」
アムロのその言葉に答えて述べてきた。
「だからこそ私は戦う」
「だからこそだと!?」
「私が手に入れた時流エンジンは失われた」
彼もそれは認めるのだった。
「だが、時流エンジンはまだ残っている」
「残っているだと!?」
「それはまさか」
「そう、そのまさかだ」
「しかも小細工のしていない完全なものがだ」
「!?それはまさか」
「私達の!?」
「そうだ」
ラウルとフィオナに対しての言葉だった。
「エクサランス、御前達の英流エンジンをもらう」
「勝手なこと言うなよ」
「そうよ!」
二人が真っ先に巨富反応を見せた。
「時間を時間をってな!」
「そこまでして行きたいの!?」
「そうだ、行きたい」
それを隠そうともしないデュミナスだった。
「私は。何としても。だから」
「もう話し合いは無駄だな」
「そうね」
ここに至ってロンド=ベルは決心した。それしかなかった。
「止むを得るませんね」
「はい」
ラスクの言葉にバルトフェルドが頷く。
「最早」
「残念ですがどうやら」
「わかりました。それでは」
「ラクスはその手を大きくあげた。そのうえで指示を出した。
「全軍攻撃です」
「了解しました」
「時流エンジン始動」
ラウルもフィオナも既に始動に入っていた。
「エネルギー変数効率五〇から七〇へ上昇」
「フレーム各駆動系及び全システム異常なし」
「時流エンジン出力六〇パーセントから七〇パーセントに」
ミズホとラージも言う。いよいよだった。
「エクサランス=ライトニング、スタンバイオーケー!」
「エクサランス=エターナル、スタンバイオーケー!
「エクサランス=ライトニング、発進!!」
「エクサランス=エターナル、オーケー!」
「狙うのはただ一人です」
ラクスは今胸を張り指示を出した。
「デュミナスだけです。いいですね」
「わかりました」
「他のマシンには目もくれなくていいです」
こうまで言う。
「ただ。前に立ちはだかれば」
「その時に倒すだけですね」
「そうです」
ダコスタに対して答える。
「ただそれだけです」
「艦長」
「ああ、わかってるさ」
バルトフェルドはダコスタの言葉に頷いた。
「では全軍進撃開始といこう」
「この戦い、迅速に終わらせましょう」
ラクスは短期決戦を考えていた。
「この様な悲しい戦いは。一刻も早く」
「ラクス・・・・・・」
「さあキラ、行きましょう」
自身を気遣うキラにも言う。
「悲しみを終わらせる為に、今」
「よし、それなら」
「行くぜキラ!」
「先に言ってるわ!」
ラウルとフィオナはもう前に出ていた。既にデュミナスを護る最後のマシン達と戦っている。
「こいつ等倒して!」
「デュミナスよ!」
「二人を援護します」
ラクスはその二人の援護を命じた。
「全軍突撃です。今は!」
「了解!」
こうしてデュミナスとの最後の戦いが幕を開けた。ロンド=ベルは突き進みデュミナスの最後の軍を倒していく。そして瞬く間に。ラウルとフィオナはデュミナスの前にまで達したのであった。
「現われたか」
「時の流れよ!」
「エクサランスの力に!」
二人にエネルギーが集まっていく。そのうえで再び向かう。
「行くぞデュミナス!」
「勝負よ!」
「私の存在を否定する」
「違う!」
「そんなことに興味はないわ」
二人はそうではなかった。
「ただな。御前を行かせるわけにはいかないんだ!」
「そうよ!だから、ここであんたを倒す!」
「しかし」
だがデュミナスは二人を前にして言うのだった。
「御前達の力では」
「何っ!?」
「何だっていうのよ」
「私と戦うには非力!」
はっきりと言い切った。
「私は否定されはしない。その意志の前には」
「そうかもね」
「ええ」
フィオナもラウルもそれは認める。
「けれどね」
「それでもな」
しかしそれでも二人は言うのだった。
「私は戦うわ!」
「俺もだ!」
「あんたを止める為に!」
「何があってもな!」
「ラウル!」
フィオナが最初にラウルに声をかけた。
「いいわね!」
「ああ!!」
二人並んで突き進む。それぞれの手に持つ剣が輝く。
「これでな」
「終わりよ!」
叫びつつその剣をデュミナスに突き刺す。それは彼の急所を的確に貫いていた。それを受けたデュミナスは動きを止めた。これで終わりかと思われた。
しかし。彼はまだ浮かんでいた。そして声をあげるのだった。
「まだだ」
「まだだと!?」
「生きているっていうの!?」
「私は存在する」
こう二人に言うのだった。
「今の私が敗れるならば」
「敗れるならば!?」
「私は別の形となって存在する」
「一体何を言ってるんだ!?」
「しかもまだ生きてるなんて」
二人にはわからなかった。しかしデュミナスはまだ生きている。これだけは事実だった。
そのうえで。彼の身体は光った。そして。
「な、何だあれ!?」
「デュミナスの身体が変わった!?」
リョウトとリンがそれぞれ言った。
「変形か!?」
「いえ、違うわ」
「違う!?」
「ええ、あれは進化よ」
リンはこうリョウトに話すのだった。
「あれは変形というよりは」
「進化なんて」
「くそっ、どちらにしろまだ倒さないといけないのかよ」
「それだけは確かね」
ラウルとフィオナにはそれだけがわかった。
「何てこった」
「じゃあラウル」
あらためて兄に声をかけるフィオナだった。
「また。やるわよ」
「ああ、それならな」
「待て、二人共!」
しかしここでダイテツが二人に声をかけてきた。
「艦長!?」
「援護ですか!?」
「そうだ、今度は二人では無理だ」
「俺達もいるぞ!」
「だから無理はしないで下さい!」
テツヤとエイタも言う。彼等もまたデュミナスへの攻撃に参加しようとする。
「いいか、副長」
「はい」
「二人への道を開く」
クロガネを前にやりつつ言うのだった。
「一気に。突っ込むぞ」
「わかりました。総員衝撃に備えろ!」
「艦長、副長、あれですね」
「そうだ、それだ」
「行くぞ」
テツヤとダイテツがそれぞれエイタに答える。
「このまま突撃だ」
「はい!」
「行くぞ。このまま!」
そのまま勢いよくデュミナスに突き進む。主砲を放ちつつそのまま向かう。デュミナスからの攻撃を受けてもそれでもだ。
「このままだ。ダメージは気にするな!」
「はい!」
そうして体当たりを仕掛ける。これでデュミナスに隙が生じた。
「よし、これで!」
「隙が出来たわ!」
ラウルとフィオナはこの気を逃さない。まずはラウルが動いた。
「行くぞフィオナ、リアクタースマッシャーをかける!」
「じゃあ私はこれよ!」
フィオナもそれに応える。
「リアクターフラッシュで!」
「いっけええええーーーーーーーーーっ!」
「これで!!」
二人合わせてリアクターで放ちダメージを浴びせる。二人の渾身の攻撃でデュミナスはまたしてもその動きを止めた。これで終わりかと思われた。
「これなら!」
「どうかしら!」
「何故だ」
しかしだった。彼はまだ立っている。
「御前達は何故存在できる?」
「何だと!?」
「まだ立っている!?それに」
「何故御前達の創造主は御前達の存在を認める」
「何を言っているんだ、こいつは」
首を傾げたのはドモンだった。
「親が子の存在を守るのは当然のことだ!」
「そうよ!」
レインも言う。
「貴方は何を言っているの!?そもそも」
「認められないものは存在してはいけない」
デュミナスはそのドモンとレインの言葉に応えて言う。
「ならば何故」
「まだ言うというのか」
「何なの、この執念は」
「私は存在している?」
なおも言うのだった。
「創造主に存在を否定された私は何故存在する?」
「ホワット!?」
ジャックも遂に首を捻った。
「言っていることが理解できないデーーーース!」
「創造主は我を作り我を否定し」
言葉を続ける。
「子わし滅ぼしただし攻め恐れ笑い脅え」
「!?何だこいつ」
「言っていることが段々と」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す・・・・・・」
「おかしくなってきているぞ!?何なんだ!?」
「そうか」
ここで万丈が頷いた。
「所詮は失敗作なんだ」
「失敗作!?」
「だからデュミナスなんだ」
こう皆に話すのだった。
「欠陥品、だからデュミナスなんだよ」
「そう、だから」
「ああして」
「理論を繰り返すあまり矛盾を産み出し」
アムロもまた言う。
「事故崩壊をはじめているんだ」
「私は存在を否定されしもの」
デュミナスはまだ言っている。
「存在することを許されぬもの・・・・・・」
「また変わる!?」
「今度は!?」
「我は存在する」
また言うのだった。
「何故私の存在を否定する」
「まだ言っていやがる」
「けれど。また姿が」
「何故私の存在を否定する」
このことを問う。しかしそれは答えの出ないものだった。
「何故御前達は存在できる。存在とは何だ」
「まだ言うのか!?」
「それに」
「ピウトロン、デウトロンで駄目ならば」
「ピウトロン!?デウトロン!?」
「それは何なの!?」
ラウルとフィオナはその言葉にも首を捻る。
「はじめて聞く言葉だぜ」
「一体全体」
「デュミナスの姿ですね」
こう二人に話したのはラージだった。
「どうやら。先程までの」
「先程までの!?」
「そうです、おそらくですが」
「そうなのか」
「じゃあ今度の姿は」
「トリトン」
ここでデュミナスが言った。
「この最後の姿トリトンで。今度こそ」
「デュミナス=トリトン」
ミズホがこの名で呼んだ。
「あれが最後なのですね」
「存在とは何だ」
デュミナスはまだこのことを言っていた。
「間違いとは何だ、私は一体何なのだ」
「余計なものを排除することにより問題を簡略化したのか」
クワトロはデュミナスが先程よりも壊れていないことを見て言った。
「どうやらな」
「そうみたいだね。しかし」
ここで万丈の目が光った。
「倒すべき敵であることに変わりはない」
「総員攻撃開始!」
既にクロガネを後方に戻していたダイテツが指示を出す。
「いいか、怯むな!」
「デュミナスからエネルギー反応!」
エイタが報告する。
「攻撃です!」
「異物の存在が」
デュミナスが言う。
「過ちを生み出す原因となるのです」
「ビッグバン!?」
「いや、違う!」
「来る!」
それは今までにない異質の攻撃だった。
「器楽外の個体は排除します。メタノイア」
「来る、これは!」
「総員回避!?」
皆慌てて回避運動に入る。しかし間に合わない。誰もが大なり小なりダメージを受けてしまっていた。
「損害は!?」
「何とか皆撃墜、撃沈は避けました!」
エイタがダイテツに報告する。
「しかし大破多数、損害は軽微とは言えません!」
「くっ、それは避けられなかったか」
「艦長、どうしますか!?」
テツヤがダイテツに対して問う。
「ダメージは甚大です。このまま再び受ければ」
「迷っている暇はない!」
こうした時にこそダイテツの決断の早さが効いた。
「このまま総員攻撃だ!ありったけの力をデュミナスに叩き込め!」
「了解!」
「主砲一斉発射!」
まずクロガネからはじめる。それに全員続く。
これでかなりのダメージを与えた。しかしまだデュミナスは倒れない。そして再びメタノイアを放とうとする。だがここでラウルとフィオナが動いた。
「行くぞフィオナ!」
「ええ、勿論よラウル」
「行けるな!?」
ここで妹に対して問う。見れば二機のエクサランスのダメージも尋常ではない。
「まだ。動けるな」
「攻撃一回分位はね」
不敵に笑ってラウルに答えてみせた。
「いけるわよ」
「そうか、それならな」
「行くわ!」
「ああ!」
まずはフィオナが攻撃に入る。高々と舞った。
「時流エンジン出力一二〇パーセント!」
またあの攻撃に入る。エクサランス=エターナルの緑色の身体が輝く。
「罪の十字架を背負いなさい!ファイナル=グランドクロス!」
再びあの十字の裁きが下される。そしてラウルもまた攻撃に入る。
「時の流れよ!ライトニングに力を!」
青い腕に神の光が宿る。
「リアクター=クラッシュ!でやあああああああああああああああああーーーーーーーーーっ!」
その光がデュミナスを一閃する。今二人はここに全ての力を注ぎ込んだ攻撃を浴びせたのであった。
「やったな!」
「今度こそ!」
「おおお・・・・・・」
「デュミナスのエネルギー増大」
断末魔の呻き声をあげるデュミナスを見つつルリが言う。
「このままでは爆発します」
「いかん、全機退避!」
ブライトが急いで指示を出す。
「デュミナスから離れろ!」
「いや、まだだ!」
「まだよ!」
しかしここでラウルとフィオナだけは違っていた。何とここでデュミナスにさらに接近するのだった。皆それを見て思わず声をあげた。
「馬鹿な、何を考えているんだ!」
「どうして!」
「行くな!」
皆が止める。
「ここで行けば爆発に巻き込まれるぞ!」
「死ぬぞ!」
「いや、ここは行かせてあげよう」
しかし万丈はここで言うのだった。
「ここはね」
「そうか、それなら」
「信じてみるか」
「ああ」
皆万丈の言葉を受けてここは二人を信じることにした。ラージがそのラウルとフィオナに対して通信を入れる。彼は二人を最初から信じていた。
「いいですか、二人共」
「ああ、わかってるさ」
「私もね」
「タイミングを間違えないで下さい」
このことを二人に対して念押しする。
「絶対に」
「絶対にだな」
「そうなのね」
「そうです。間違えたら爆発に巻き込まれて消し飛びますよ」
「命懸けなのはわかってるさ」
「私もね」
二人もそれはよく認識していた。見ればその顔が緊張で強張っている。
「デュミナスはまだ生きています」
今度言ったのはミズホだった。
「まだ。生きています」
「何故か」
デュミナスは呻いていた。
「私は。何故存在を否定される」
「またかよ」
「またこのことを」
「私は何だったのだ」
「知るかよ!」
ラウルは怒った声で彼に言い放った。
「そんなことな!大体な!」
「大体?」
「御前のせいでどれだけの血が流れたと思ってるんだ!」
「私は何もわからないまま消えていくのか」
「まだ言っているなんて」
フィオナはこのことに呆れていた。
「その執念だけは凄いわね」
「はい、確かに」
フィオナの言葉にラージが頷く。
「それははっきりと感じます」
「ええ、そうね」
「私・・・・・・」
だがここでミズホが言った。
「何となくわかる気がします」
「何だと?」
「デュミナス、貴方は自分を否定されて怒り、哀しみ」
深い悲しみをたたえた目でデュミナスを見ていた。
「そして戦い、自分が何者であるかを求めてあがき」
「!?それって」
「まさか」
ロンド=ベルの面々の中には今のミズホの言葉であることに気付く者達もいた。
「行動し、決して諦めなかった」
「それが」
デュミナスはそのミズホに対して問う。
「それで。私が何者かわかるというのか」
「貴方は我儘で矛盾して自分の要求の為に他の命も犠牲にした」
「ブライト」
アムロはここまで聞いてブライトに問うてきた。
「それはまさか」
「御前もそう思うか、アムロ」
「ああ」
深刻な顔でこくり、と頷くブライトだった。
「そうだな、間違いない」
「その通りだな」
二人は確信した。デュミナスが何なのかを。
「しかしその一方で命を産み出し、育て」
「ティス達か」
「そうです。彼等が心を失った時には涙を流した」
「今も悲しい」
まだ自分の周りにいる三人を見て言う。三人は戦場に生き残っている。抜け殻となってもまだデュミナスを守ろうとしているのだった。
「この子達は。私の為に全てを」
「私はそれを行う存在を知っています」
「それは何だ?」
デュミナスはさらにミズホに対して尋ねた。
「私は何なのだ?それでは」
「貴方は人間です」
「私が人間?」
「そうです」
今このことをデュミナスに対して告げる。それを聞いてロンド=ベルの面々は遂に確信するのだった。デュミナスは本来何であったのかを。
「貴方は人間になるべく作られたのでしょう」
「しかし創造主は私を否定した」
デュミナスはまたこのことを言う。
「私が人間ではないから」
「デュミナス」
ラウルは悲しい顔でデュミナスに語る。
「人間ってのは自分の本質を映す鏡を見せられた時」
「鏡を見せられた時」
「その時激しい怒りと憎しみを覚えるものなんだよ」
「そうか、私は」
デュミナスはここで全てがわかったのだった。
「私は・・・・・・人間だったのか」
「デュミナスも気の毒です」
ここでラージは言った。
「思えば」
「えっ!?」
「僕達人間はまず存在自体が認められ」
こうフィオナに話す。
「その後で存在理由を問われる。けれどデュミナスは違いました」
「違ったのね」
「そうです」
またフィオナに話す。
「まず存在理由があってそれから存在が許される」
「存在理由があってから」
「芸術家が自分の気に入らない作品を壊すのと同じです」
今度はこう述べる。
「デュミナスは創造主に気に入られなかったから壊されそうになったのです」
「そしてデュミナスはそれに歯向かった」
フィオナにもこのことはわかった。
「そうだったのね」
「デュミナスは創造主の呪縛から逃れることができなかったのです」
「トラウマってやつだな」
「ええ」
今度はラウルに答えるラージだった。
「創造主から存在を否定されたことがデュミナスの自己を縛り、狂わせたのです」
「私は何故作られた」
まだこのことを言っていた。
「創造主は私に何を求めたのだ」
「デュミナス、貴方は創造主にこだわるべきではなかった」
ここでもラージの言葉は悲しみに満ちていた。
「貴方程の力があれば幾らでも自分の道を切り開くことができた」
「それが私に対する答えなのか」
「答えなんてないわ」
今度言ったのはフィオナだった。
「あんたは答えを他人に求めるべきではなかったのよ」
「ならばどうして答えを見つければよかったのだ」
「自分が求める答えを他人が答えてくれることでしか得られないから」
ラージの言葉はさらに悲しみに満ちた。
「だから創造主は貴方を否定したのですよ」
「そうだったのか・・・・・・」
「答えは見つけるものじゃないんだよ」
ラウルの言葉もラージと同じ悲しみに包まれていた。
「作るものなんだよ、未来と同じでな」
「未来・・・・・・」
デュミナスは今度はこの言葉について思った。
「それはどうすれば作れる。誰か教えてくれ」
「誰も御前にそれを教えることはできないさ」
ラウルがまた彼に告げた。
「御前が自分で作り出さないといけなかったんだ」
「そうだったのか・・・・・・」
「エネルギーさらに増大しました」
また言うミズホだった。
「このままでは」
「このエネルギーを」
だがここでデュミナスは言うのだった。
「御前達に。戻そう」
「!?デュミナス」
「一体何を」
「今まで私の為によく働いてくれた」
あの三人にいとおしむ声をかけていた。
「そしてこれからは。未来は」
また未来という言葉を口にした。
「御前達が。生きるのだ」
「!?デュミナス」
「まさか。僕達に命を」
「どうして。そんな」
「私は間も無く死ぬ」
彼は最後にまた言うデュミナスだった。
「だが御前達は。これからは」
「そんなの嫌よ!」
ティスがまず叫ぶ。
「あたし達デュミナスの為にいるのに。どうして」
「そうです」
ラリアーも言う。
「僕達は。だから生きているのね」
「どうして私達だけが」
最後に言うのはデスピニスだった。
「生き残るなんて」
「御前達には未来がある」
あちこちから火を吹きながらデュミナスは言う。光も漏れだしている。
「だからだ」
「だからってそれでも」
「どうして、こんな」
「私達を見捨てるの?」
「見捨てるのではない」
それは否定するのだった。
「ただ。生きて欲しい」
「生きて?」
「これから?」
「そうだ。生きて。未来を切り開いて欲しいのだ」
ラージ達に言われたことをそのまま三人に言うのだった。
「私とは違って。だから」
「デュミナス・・・・・・」
「だからなのか」
「私達に・・・・・・」
「さあ、行くのだ」
これまでにない優しいデュミナスの言葉だった。
「三人共、今まで有り難う。そして」
最後に言う。
「さようなら」
「待って、待ってよ!」
「デュミナス、そんな・・・・・・」
「死なないで!」
だがもう手遅れだった。デュミナスは事切れていた。そのまま爆発と光に巻き込まれていく。ロンド=ベルはもう一斉に退避に移っていた。
「おいラウル、フィオナ!」
「あんた達もよ!」
ディアッカとアスカが二人にも声をかける。
「早くこっちに来い!」
「死ぬつもりなの!」
「大丈夫だって言ってるだろ!」
「そうよ!」
しかし二人はまだ退避しようとしない。
「まだだ!この連中を!」
「連れて行かないと」
「この連中だと!?」
イザークがその言葉に顔を顰めさせる。
「まさかと思うが」
「そうだよ、このガキ共だよ」
「絶対に連れて行くわよ」
「馬鹿を言え」
それに対して言ったのはオリファーだった。
「その連中は敵だぞ。敵をどうして」
「助けるんだっていうんだよな」
「そうよね、オリファーさん」
「ああ、そうだ」
オリファーは二人の言いたいことはわかっていた。
「そうだが」
「だからですよ。俺達は」
「この二人を」
「仕方ない奴等だ」
オリファーはここで苦笑いになるしかなかった。
「全くな。どういうつもりだ」
「とか何とか言ってもいいのね」
マーベットが彼の横から笑ってきた。
「オリファーも」
「ふん、言っても聞かない奴等だからな」
「そうなのね」
「全く。困った奴等だ」
「ぎりぎりまで待つわよ」
ジュンコも待つことにしたのだった。
「ここはね」
「そうですね。ラウルさん、フィオナさん」
ウッソは二人に声をかけた。
「待ちますよ、ですから」
「だからよ。いいなフィオナ!」
「ええ!」
二人で三人を纏めて囲い込んだ。
「最大出力だ!」
「最後の脱出ってわけね!」
「えっ、ちょっとあんた達」
「一体何を」
ティスとラリアーが驚きの声をあげる。
「あたし達は敵よ、どうして」
「僕達を」
「もうデュミナスは倒れたんだ」
「戦いは終わったのよ」
二人はこう三人に反論する。
「だからだよ。うだうだ言ってないで早く来い!」
「死にたくないのならね!」
「死ぬ」
その言葉に反応したのはデスピニスだった。
「デュミナスは生きろと言ったわ」
「ええ、それは」
「そうだけれど」
ティスとラリアーもそれに応える。
「けれどもうあたし達は」
「デュミナスはいないんだ。もう」
「それでも。デュミナスは生きろって言ったわ」
デスピニスはまたこのことを言う。
「だから。ここは」
「生きろっていうのね」
「僕達に。君も」
「ええ、御願い」
二人に対して頼み込むのだった。
「私達は生きましょう、絶対に」
「・・・・・・わかったわ」
「じゃあ」
「よし、決まったな!」
「行くわよ!」
「おい、ウッソ!」
ここでオデロがウッソに声をかけた。
「二人だけじゃ無理だよな!」
「うん」
「行くぜ、助けにな!」
言いながら早速自分のブイワンを動かすのだった。
「御前はあの小さな男にするか!?それとも」
「それはまず向こうに行ってから決めようよ」
「そうだな。じゃあな!」
「俺も行くぞ」
トマーシュも出た。
「二人だけで行くのはちょっとずるいぜ」
「おいおい、御前もかよ」
「トマーシュも」
二人はこれには少し驚いたがそれでもそれを受け入れた。
「しかしな。二人より三人だな」
「じゃあ。行こう」
「ああ」
「ラウル!フィオナ!」
オデロが二人に声をかける。
「皆で行くぞ!いいな!」
「あっ、ああ!」
「恩に着るわ!」
「よし!これでな!」
「行きましょう!」
オデロとウッソが声をかけ一気に全速離脱に入る。こうして三人は間一髪でロンド=ベルの面々に救われ神殿を後にした。ロンド=ベルの面々が神殿を脱出したその瞬間に神殿は爆発し炎に包まれたのだった。デュミナスとの戦いが完全に終わった瞬間だった。
「終わったな」
「ああ」
ロンド=ベルの者達はその燃え上がる神殿を見て言う。
「これでな。戦いは終わりだ」
「デュミナス・・・・・・」
ティスはクロガネの艦橋にいた。そこにはラリアーとデスピニスもいる。
「本当にお別れなんだね、もう」
「さようなら、お父さん」
ラリアーはデュミナスを父と呼んだ。
「いや、むしろ」
「お母さんかしら」
デスピニスはこう考えた。
「けれどどちらにしろ」
「あたし達の親は死んだのね」
ティスは悲しい顔で呟いた。
「もう。これで」
「その通りです」
ラージがティスのその言葉に頷いた。
「もうデュミナスは死にました」
「そうよね、もうね」
「僕達はもう」
「親が」
「ですが。彼は生きています」
ラージはここで一見矛盾することを言った。
「生きているのですよ」
「馬鹿言わないでよ」
ティスは泣きそうな声で返した。
「死んだじゃない。どうしてそれで」
「生きているなんて」
「嘘です、そんな」
「嘘ではありませんよ」
しかし三人に対してまた言うラージだった。
「デュミナスは貴方達の中に生きています」
「あたし達の中に?」
「そうですよ」
ミズホは優しく微笑んで三人に告げた。
「貴方達の中にです。何時までも」
「何時までも・・・・・・」
「デュミナスのことが大切でしたよね」
「ええ」
「それは」
三人はミズホのその言葉にこくりと頷く。
「だから。悲しいんです」
「私達も」
「だからです。デュミナスは最後の力で貴方達を救った」
これがデュミナスの答えだったのだ。
「そのおかげです。貴方達は」
「あたし達は」
「それじゃあ」
「生きて下さい」
ラージもまた優しい言葉になっていた。
「人間として。これからも」
「ずっと。デュミナスのかわりに」
「デュミナスはね」
ティスはここで言うのだった。
「確かに間違いだったかも知れないわ。多くの人に迷惑かけてきたし」
「けれどそれでもデュミナスは」
「必死に自分を探していたの」
「完璧な人間なんていはしないさ」
今度言ったのは万丈だった。
「一人たりともね」
「一人たりとも」
「欠陥品って言ったよね、僕は」
「ええ」
ティスは少しむっとした顔になって万丈に答えた。
「そうだったわね」
「けれどそれは皆なんだよ」
「皆!?」
「僕だって。欠陥品なんだ」
このことをあえて言う万丈だった。
「皆同じ欠陥品なんだよ、人間はね」
「そうだったの」
「デュミナスは人間だったんだ」
万丈もまた今このことを言う。
「人間だったんだ。だから君達を愛し守ったんだよ」
「そうだったんですか」
「デュミナスは」
「そして君達も人間だよ」
万丈が次に言うのはこのことだった。
「君達もね」
「僕達も人間・・・・・・」
「そうなのですか」
「だから。生きて下さい」
またこのことを言うミズホだった。
「絶対に。何があっても」
「デュミナスの為に」
「・・・・・・わかったわ」
最後に頷いたのはティスだった。
「あたしは生きるわ、デュミナスの為に」
「暫くここにいることになるよ」
万丈はこのことも三人に話した。
「君達は。それでいいかな」
「ええ、それはもうわかってるから」
「暫く御願いします」
「これからのこと。考えさせて下さい」
「ああ、そうしろよ」
「そうしてね」
ラウルとフィオナが声をかける。三人は生きる決意を固めたのだった。
「それでは。次はです」
話が終わったところでシュウが言った。
「修羅との戦いです。宜しいですね」
「次はそれか」
「あの連中ってわけだな」
ロウとシンが声をあげる。
「じゃあよ、また整備と補給が終わったらな」
「修羅の奴等と決戦だぜ」
「そうですね。若しかすると」
シュウはここでまた言うのだった。
「また別の敵が出て来るかも知れませんがね」
「別の敵!?」
「それは一体」
「いえ、ただそんな気がするだけです」
シュウはこう言うのだった。
「今は。それだけです」
「また随分と引っ掛かる言い方だな」
マサキが彼に対して言う。
「知ってるんだな、何か」
「さて、それはどうでしょうか」
「まあいいさ。手前の秘密を持ちたがる癖はいつものことさ」
「ではいいというのですか?」
「どうせそのうちわかるからな」
今はいいというマサキだった。
「すぐにな。手前がもう俺達の敵じゃねえのはわかってるしな」
「それでは。行きますね」
「ああ、今からな」
デュミナスとの戦いを終えたロンド=ベルはすぐに修羅との戦いに向かうのだった。彼等との戦いもまた一つの佳境に向かおうとしていたのであった。
第八十二話完
2008・9・29
ページ上へ戻る