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八条学園怪異譚

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第十八話 トイレの花子さんその二

 だからここで聖花はこう愛実に言うのだった。
「そういう意味でもね」
「学校のトイレに行ってそうして」
「そう、花子さんに会ってみよう」
「そもそも幽霊かどうかもわからないわよね」
「いや、幽霊って」
 ここで聖花はこのことに気付いた。
「霊魂よね」
「そうだけれど」
「霊魂って。一つしかない筈だけれど」
「そんなあちこちの学校を行き来するとか同時に出るとか?」
「そこまで忙しいものかしら」
 聖花はこのことに疑問を感じたのだ。
「その辺りどうなのかしら」
「ううん、そういえば」
「でしょ?そこが気になるけれど」
「確かに。言われてみれば」 
 愛実も言われて気付いた。
「そうよね」
「幽霊とは少し性質が違う気がするのよ」
「その辺りも調べるというか」
「本人に聞いた方が早いと思うわ」
 聖花はこう愛実に提案した。
「それはね」
「じゃあ実際におトイレに行ってみて」
「おトイレの扉をノックして花子さんを呼べば出て来るっていうから」
「奥から何番目とかなかったかしら」
「ああ、そのことね」
 聖花もそれは知っているという感じだった。
「奥から三番目とか四番目とか」
「そんなこと本に書いてなかったかしら」
「三番目だったかしら」
 聖花は首を傾げさせながら愛実に答えた。
「その場所は」
「三番目なのね」
「確かね」 
 ここでの言葉は曖昧なものだった。
「その辺り私も曖昧だけれど」
「そうなのね。けれどとりあえずはトイレに行って」
「そう、それからよね」
「とりあえず行きましょう。花子さんは行く時間は何時でもいいわよね」
「そう思うわ。それじゃあ」
「今日のお昼にでも行こう」
 愛実の方からの提案だった。昼に妖怪に会いに行くというのは二人にとってはじめてで彼女はこんなことも言った。
「まあ。お昼に妖怪さん達と会うっていうのも」
「そうよね。はじめてよね」
 聖花もこのことについて言う。
「何か妖怪さん達って夜のイメージが強いから」
「それか物陰とかね」
「おトイレも物陰が多いけれど」
「夜ってイメージだからね」
「だから新鮮な感じね」
 愛実は腕を組んで考える顔になっていた。
 そのうえで聖花に顔を向けてまた言った。
「それにおトイレの扉を開けたらそこがね」
「あっ、泉ね」
「そういうことも考えられない?」
「そうね。それもあるわね」
「そうでしょ、あるでしょ」
「ええ、それを調べる意味でもいいわね」
「おトイレって実はね」
 聖花は愛実にあることを話した。今度は彼女が知っていることだ。
「こちらの世界とあちらの世界の境目でもあるの」
「そうだったの」
「だから花子さんみたいな妖怪さんもいて他にもね」
「ああ、がんばり入道さんとか」
 この妖怪は二人の馴染みの妖怪である。
「そういえば結構いるわね」
「ものを出してね」
 何を出すかはもう言うまでもない。
「それへの扉がある、それでだと思うけれど」
「出すのって深い意味があるのね」
「出さないと生きていられないしね」
 飲んで食べて出す、人間にとって欠かせない生物活動だ。若し出ないとなるとそれだけで死に至る、どちらもだ。 
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