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マクベス

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第二幕その二


第二幕その二

「グラーミス、コーダー、そして王か。もっともその為には何かあったようだが」
 ダンカン王の死について気付いていたふしがあった。それも呟く。
「だがそれもいい。あの予言通りなら」
 ここで不敵に笑った。
「わしの子孫が王なるのだからな」
「父上」
 ここで彼の息子が来た。彼に似た顔だが若い。その名をフリーアンスという。
「そろそろ時間です」
「うむ、そうか」
 我が子に顔を向けて応えた。
「それではな。行くとするか」
「はい」
 彼は我が子を連れて城を出て森に入る。その森には不気味な濃緑のフードとマントにみを包んだ不気味な男達が潜んでいたのであった。
「そろそろか」
「そうだな」
 彼等は森の闇に潜んでいた。もう日も落ち森全体が闇の中に沈もうとしていた。
「来るぞ、バンクォー卿が」
「その息子もだな」
「そうだ、間違いなく来る」
 彼等はその闇の中で話をしていた。
「だからだ。待っていればいい」
「獲物は二人」
 そしてまた囁き合う。
「父と息子」
「それが陛下の望まれるもの」
「さすれば」
 目の前にその二人が来た。バンクォーとフリーアンスが。二人は辺りを見回しながら森の中を進んでいた。
「フリーアンスよ」
 バンクォーは彼に対して言葉をかけてきた。
「はい」
「気をつけよ。嫌な予感がする」
「左様ですか」
「思えば陛下が殺された時もそうだった」
 ダンカン王と自身のことを重ね合わせていた。それは予言の影響からであった。
「こうした感じがした。夜の闇の中で」
「父上っ」
 そこで闇の中から何かが出て来た。それは。
「何かが」
「いかんっ、我が子よ」
 バンクォーは彼等を見て咄嗟に息子の前に出た。
「逃げよ、ここは」
「ですが父上」
「私も後から行くっ」
 剣を抜いて立ち向かおうとするフリーアンスに対して告げた。彼ももう剣を抜いている。
「だから」
「わかりました。それでは」
「そなたは生きろ」
 父の言葉を受けて逃げ去るフリーアンスを見送って呟く。
「そうすればやがては」
「バンクォー殿」
 目の前に影の男達が来ていた。
「お覚悟は宜しいですか」
「くっ、多いな」
「御子息は何処へ」
「知らん」
 そう刺客達に告げた。
「だが。もう追いつくことはできぬぞ」
「そのようですな。ですが御身だけは」
 バンクォーに剣を指し示して言う。
「一つ聞きたい」
 観念したバンクォーは彼等に対して問うことにしたのだった。
「何でしょうか」
「これはマクベス卿、いや陛下の為されたことか」
「答えるつもりはありません」
 それが答えであった。
「それで宜しいでしょうか」
「わかった」
 そこまで聞けばもう充分であった。
「では。好きにするがいい」
「はい。それでは」
「せめて苦しまれぬように」
 刺客達の剣が彼の身体を貫いた。そうしてバンクォーも倒れたのであった。
 マクベスの居城。そこの大広間で宴の準備が為されていた。
 上等の酒に肉が出される。彼等はそれをテーブルの上に置いて王を讃える言葉を告げていた。
「マクベス王万歳!」
「スコットランドに栄光あれ!」
「いや、ようこそ」
 マクベスは上機嫌で彼等に応えていた。
「ようこそおいでくださいました皆様」
「さあまずはお楽しみ下さい」
 夫人も言う。彼女も上機嫌であった。キャンドルが宴の場を華やかに照らし出しそこに着飾った貴人達と御馳走があった。
 
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