マクベス
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第三幕その二
第三幕その二
「だからこそ。さあ」
「呼び出そう、我等が主を」
「あの主ではないな」
キリスト教の神ではない。マクベスはそのことに内心怯えを感じた。
「やはり」
「それがどうしたというのだ?」
魔女達は素っ気無くそう返した。
「大したことではない」
「それがわかっていてここに来たのではないのか」
「そうだ」
マクベスも頷く。まさにその通りだ。
「では。頼む」
「前置きが長くなったが」
「では。呼ぼう」
「いざ来たれ」
魔女達は告げる。
「神々よ」
まず現われたのは騎士であった。暗い鎧に身を包んだ漆黒の騎士であった。
「マクベス王だな」
「わしの名を知っているのだな」
「無論」
騎士はマクベスの言葉に答えてきた。
「既に話は聞いている」
「では教えて欲しい」
マクベスは騎士に対して問うた。
「わしは。どうすればいいのだ」
「気をつけよ」
それが騎士の返答であった。
「気をつけよだと」
「そうだ。マクダフにだ」
「マクダフ。あの者か」
既に彼は感じていた。彼が自分に対して不信感を抱いているということを。それに気付かないマクベスではなかった。
「気をつけるがいい」
「わかった。それでは」
マクベスはさらに彼に問おうとする。
「他には」
「私の役目は終わった」
だが騎士はマクベスの問いには答えようとはしなかった。
「それでは」
「待てっ、話はまだ」
「王よ、残念だがその神はそれまでだ」
「どういうことだ」
制止した魔女の一人に顔を向けて問う。
「これまでというのは」
「神は命令されないからな」
「しかしだ」
別の魔女がマクベスに告げる。
「また別の神が姿を現わす」
「そして王に告げるだろう」
「次の神か」
マクベスはそれを聞いて心を少し落ち着けさせた。
「それでは聞こう。次の神は」
「うむ」
「もう出る」
窯の前が指差された。
「そこにな」
「出られたぞ」
その言葉と共に。今度は血に塗れた子供が姿を現わした。
「これが神だと」
マクベスはその子供のおぞましい姿を見て言葉を失った。
「まことなのか」
「そう、まことだ」
「我等にとっては」
魔女達はマクベスに対して答えた。
「だから安心するがいい」
「ほら、言葉を告げられるぞ」
「スコットランドの今の王よ」
子供は魔女達の言葉通りマクベスに声をかけてきた。
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