【完結】剣製の魔法少女戦記
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第一章 無印編
第十四話 『時空管理局との接触』
前書き
アースラで説明回です。
Side シホ・E・シュバインオーグ
クロノに連れられてゲートから転送されてアースラという戦艦に乗り込んだのはいいけど…。
「デバイスとかいう意思を持つ機械式の杖ならまだ許せる範囲だわ。魔法系統も認められる。
でもさすがに戦艦だなんて…SFもここまで来ると笑えてくるわね」
「何を言っているんだ? この戦艦だってすべてとは言わないけど魔法を動力に使っているんだかられっきとした魔法文明の遺産の産物だ」
「…ごめんなさい。私には少し、いやかなり理解できないわ。もうこの話はしないで、お願いだから…」
「なにか事情があるのか?」
「とりあえず相応の場になったら説明してあげるから…」
「わかった。それで君は先程武器を消したようだけど、他の三人も魔法やバリアジャケットを解除してくれ」
「あ、はい。わかりました」
話に着いていけずにおどおどしていたなのはもやっと反応できたのかバリアジャケットを解いて制服姿に戻った。
ユーノも変身魔法を解き人間の姿になった。
そしてフィアはというと、
「お姉様…この棒はどうしましょう?」
「また後であげるから今は消しておくわよ? 投影、解除」
私の詠唱でフィアの棒は霧散と化した。
「君は本当に不思議な魔法を使うな。転送系かなにかか?」
「そうよ。…まぁあなた達とはそもそも系統からして違うものだけどね」
「どういうことだ? 君は魔導師じゃないのか?」
「だからそれも含めて後で説明するわ」
「そうか…まぁ無理に詮索はしない。さて、ではこれからこの艦の艦長の場所に案内するから着いてきてくれ」
この艦の艦長か…。さて、どういう人物だろうか?
私の嫌いなタイプでないことを切に祈っておこう。
だが、その期待はいい意味で裏切られた。
艦長室に入った途端、迎え入れてくれたのは何ゆえに和室…?
畳みや盆栽は趣味なのだろうか…?
というよりここまでアレな部屋だと職権乱用ではないのだろうか…?
そんな事を思っていたら、部屋にいた緑色の髪の女性が話しかけてきた。
「クロノ、お疲れ様ね。それとよく来てくれたわね。さ、疲れているようですし座ってちょうだい」
「あ、はい。失礼します…」
なのは達がそれに答えて座っていく。
なので私も一応警戒しながらも座することにした。
なにかあればすぐにでも魔術回路は起動できるようにスタンバイしておく。
この世界の魔法は神秘なんてものは理解していないところがあるから気づかれないだろうし。
そして自己紹介がお互いにすんだ後、これまでの詳しい経緯をユーノが代表して話していく。
「…それで僕達は散らばってしまったジュエルシードを回収しようとなのは達の世界に来たんです」
「それは立派なことだわ」
リンディさんは温和な表情でユーノを褒めるが、その一方でクロノは無謀だと降す。
まぁそれは私としても賛成な意見だから口を出さない。
まず最初からこの機関に説明していれば私達…特に一般人であるなのはは巻き込まれずに済んだわけだし。
それから次はロストロギアの説明に入った。
ここら辺はフィアと会話した内容とほぼ一致していたので良いとするけど、やはりロストロギアとはその一部は私達の世界で言う抑止力。
そしてそれに付随して『次元震』と『次元断層』という実に物騒な言葉が出てきた。
発達しすぎた文明が滅びたのもこの世界の人達はおそらく理解していないだろうけど、次元震と次元断層は「 」に準備もなしに近づき過ぎたからの結果。
世界そのものを滅ぼしてしまうのだから守護者より性質が悪すぎる。
それとあの脈動が次元震の吉兆だと知らされ私はえらく納得できた。
純度はどうあれ、あれはおそらく聖杯以上の魔力を秘めている。
それと話がある程度まとまったらしく、
「これより、ロストロギア『ジュエルシード』の回収は時空管理局が全権を持ちます」
なのは達は驚いているが、あちらとしてはこれは当然の処置だ。
それにもともと私達の行動は例えでいうなら警察が到着する前に勝手に現場を動き回っている一般人のようなものだ。
普通なら違法すれすれで補導されてもおかしくない。
実際今がその状況だし。
でも、ジュエルシードが起こす事件は海鳴市が中心になる。
ましてたった一つだけで抑止力を発生させようとするものをどうして放っておけようか?
だが今は余計な発言はしない。
無意味に反論しても手痛い一手をもらうのが目に見えている。
そしてクロノが裏のない顔で、
「もう君達は今回の事件は身を引いて、もとの生活に戻った方がいい」
と、言っていたので最初の印象から少し好印象になった。
しかしそこから続けてリンディさんが放った言葉は少し反論したい気持ちになった。
「クロノの言うことはもっともね。
まあ、急に言われても気持ちの整理もできないでしょう。
一度家に帰って、今晩ゆっくりと話し合うといいわ。その上で、改めてお話ししましょう」
優しい笑みでリンディさんはそう言った。
だけどこれは誘導に等しい言葉だ。
クロノの言葉はまだ信用に値する。
でもリンディさんからは不穏な空気が漂ってくる。
それはそうだろう?
ここまで関わってしまい、記憶を消す事ならまだしもそんな魔法はない以上、ただで帰すわけがない。
それにユーノ達の話ではなのはと私の魔力量を持つ人物は管理局でも5%くらいしかいないという、ぶっちゃければ上位の魔導師の人員不足らしい。
そこで私はまだわからないけど、なのはは確保しておきたい人員だろう。
先の未来を見据えれば管理局にも入ってほしい魂胆だろうし…。
そこで口を出させてもらうことにする。
「…別に、一晩なくても大丈夫じゃないですか?
クロノの言った通り、関わりを断つなら今この場でなのはからデバイスを没収してユーノとフィアも元の世界に強制送還してしまえば済む話。
それなのに一晩時間を与えるという事はそれだけこの事件について考える時間を与えるということ。
そしてこれからどうするか後に聞く…これは私の予想が正しいならこちらから協力を申し出てほしいという所かな…?
なのはの性格からしてこんな中途半端なところで手は引きたくないだろうし。
そうでしょ? なのは」
私の物言いに驚いているけどなのはは一度頷いて、
「まだフェイトちゃんとお話ができていないからこんなところで引きたくないの…」
「そう…。そうすればリンディさんの誘導は見事成功してこちらは協力せざる得なくなる。
そちらはどうかは分からないけどまだ子供の私達にそちらから協力を申し出るのは管理局としての体裁に関わってくる問題かもしれない。
おまけだけど、なのはの魔導師としての適正はおそらくかなり高いと思うからそちらとしては手に入れたい人員でもある。
そして私の使うそちらとしてはまったく違う体系の技術の提供をしてほしい。
…これはただの私の思った予想ですが…間違っていてくれれば苦労に越したことはないですね。
クロノはどう思う…?」
ここでリンディさんの息子のクロノに話を振ってみる。
だがここで自身に問われるとは思っていなかったらしく少し考え込んでいるが、
「…僕自身はさっきと言った事は変えるつもりはないよ」
「そう。クロノはまだ素直でよかったわ。それでリンディさん…私の勝手な推論はどう受け止めますか?」
「………そうね。シホさんの言った事はだいたい合っているわ。
管理局としては一般人にこちらから協力を要請するのは極力ご法度。
だから私としても要請することはできなかったからこういう回りくどい方法を取りました。
そしてなのはさんの魔導師としての潜在能力と、シホさんの未知の魔法もこれからの管理局に貴重なものだと思ってしたこと。
意地の悪い言い方をしてしまったことを謝罪するわ」
リンディさんはそういって頭を下げてきてくれた。
おそらく根はとても優しい人なのだろうけど自身の気持ちと管理局としての立場で板ばさみになった結果だろう。
その事を伝えてみると、
「そこまで読まれているなんて…私の気持ちも汲んでくれるなんて。これだとシホさんには言葉では敵わないかもしれないわ」
「苦労しているんですね…」
「口には出さないわ。ですが厚かましいかもしれませんが、出来たら協力してくれませんか?
まだこちらは情報が少なすぎるしあの黒衣の少女の事も調べないといけない。
そしてジュエルシードを追う事になればおのずと彼女は出てくる。
こちらにも戦力はありますがクロノ級の魔導師は今のところ他にこの艦にはいません。
それで協力をしてほしいところが本心です。
ですが、なにかが起こらない事に越した事はありませんが安全は保障します」
「それを聞いて安心しました。
無理に協力させようものならこの部屋はすでに使い物にならなくなっていたでしょうから…」
さらっとお返しに笑顔で脅しをかけておく。
これは効果覿面でリンディさんとクロノは顔を少し青くした。
なのは達も受けているがここはこの際放っておこう。
「ですがいくつかお願いがあります。
そちらの手伝いをするのは構いませんがこちらはあくまで一般協力者…そちらの法はわかりませんが、ある程度はこちらで判断して行動する権利をもらいます。
そして私のまったく違う体系の技術の提供の件ですが残念ですが教えることはできません。
知識などはお教えできますが私のものはそうやすやすと教えられるものではないですから…それと拾った知識から技術を盗むのには一向に構いません。
この二点が私の提示する等価交換…これだけなら破格な条件だと思いますが…?」
そう、私はともかくなのは達にはまだ自由に動き回れる時間があったほうがいい。
その為のこの条件…いざという時には有効に使わせてもらおう。
「…わかりました。その条件を呑みましょう」
「艦長!?」
「いいのよ、クロノ。もう私達はすでにシホさんの広げた交渉というテーブルの上で『こちらからの協力要請』という等価を先に支払ってしまった。
…だからこれはもう私が返事を返した時点で交渉成立という形になる。分かって、クロノ」
「………わかりました」
「条件を呑んでいただいてありがとうございます。さて、それで話はまとまりましたからこの話はこれで終了しましょうか」
「…ええ。そうね。でもシホさんはまだその歳なのにこういった交渉の場には慣れているのね」
「こういった手合いは今まで何度も経験してきましたから。
私としてはリンディさんはまだ優しい部類に入るくらいですから」
「そうなの…」
「詮索はしないといったが以前君はなにをしていたんだ?」
「まぁ、色々と…」
目を閉じながらそう答える。
「そうか。まぁ今はいいとして、それとは別に小規模の次元震が観測されたと聞くが、同時に瞬時に消滅したとも聞く…それで君達は何をしたんだ?」
「あ、それはシホちゃんが「なのは!」…え!? なに、シホちゃん!?」
私はその情報を相手に教えたくなかった。
そんな代物を“消滅”させましたなんて言ったらどんな目で見られるか…。
今はなのはのその素直な性格が恨めしい…。
ほら、気づくとリンディさんとクロノは私に感心をしめしてしる。
「詳しい事情を説明してもらっていいかな…?」
「…別にもう構わないわよ。でもこれだけは約束してくれませんか? 私が使う技術は映像に残しはしてもあまりおおやけには公表は避けてもらいたいです」
「どうして…?」
リンディさんが優しい顔で尋ねてくる。
だけど素直に答えていいか迷う。
だが意を決して、
「私は魔導師ではなく魔術師だから」
「魔術師…?」
「ええ。魔術師とはこの世の理…世界に刻まれた魔術基盤に語りかけて神秘を扱う者達の事です」
それからフィアがなのは達に説明した内容に付け足してリンカーコアとは違う魔術回路や概念などを同じように二人に伝えた。
それを聞き二人はひどく驚いたがすぐに落ち着きを取り戻した。
「つまり結論から言えばあなたはもう元の世界に帰ることは不可能なのね」
「ええ。それにもうあの世界には私の居場所は存在していませんから…。
それとこの話はもう止しましょう? なのはを悲しませたくないですから」
見ればなのはは大粒の涙を流していた。
それを私はポケットからハンカチを取り出して拭きとってあげる。
少ししてなのはは落ち着いたので私はレイジングハートを貸してもらい、
「レイジングハート。あの時の映像を映し出すことは可能…?」
《All right.》
そしてレイジングハートから光が発せられ画面が現れる。
そこではジュエルシードの暴走によって私がロー・アイアスでそれを防いだ後、カラド・ボルクでそれを破壊した映像が映っていた。
クロノ達はそれを見て驚愕していた。
なのは達も今一度同じ光景を見てそのすごさをあらためて実感しているようである。
「なるほど…だからすぐに次元震の反応が消えたわけか。
元が消滅すれば消えるのは必然というわけだ。
だが、それとは別に疑問が生まれた。
シホ…君のそれは魔術だというがあれらすべての武器は作り出しているのか…?」
「いいえ、あれはある場所、私の家系の魔術の集大成とも言える『武器庫』から取り出して使うものよ。
ちょうどいいわ。ここで概念武装というものを説明しておくわ」
先程の概念の説明に付け足すように、
「概念武装とは長い年月を得て魔力を帯びた代物」や「概念武装一つ一つにそれぞれ違う効果や能力が存在する」などを伝えた。
もちろん宝具の説明はしない。
しても理解できないだろうし、理解したとしたらしたで軍事目的に使われるかもしれないからだ。
…まぁ何度か真名開放しているのでバレルのにはそう時間はかからないと思うけど。
「その『武器庫』っていうのはどこに存在しているの?
シホさんはこの世界には必要最低限の物しか持ってきていないのでしょう?」
「それは黙秘させてもらいます。本来魔術とは隠匿されるものですから…まして私の魔術の秘奥をそう簡単に人様に教えるわけがありません。
それとさっそく等価交換に違反しますよ?」
「うっ! そ、そう…それは残念ね」
リンディさんが心底残念そうにしているがクロノが話を振ってきた。
「しかし…ジュエルシードそのものを破壊するほどの概念武装といったか? そんなものが君の武器庫には他にも存在するのか…?」
「あるかないかと聞かれれば答えはYesよ」
「そうか。それで先程の槍だがあれにはどんな効果がついているんだ?」
「さっきの…ゲイ・ジャルグの事ね。残念だけどさすがに教えることはできないわ。検証はそちらで行ってちょうだい」
「それがあの槍の名前か。まぁそちらが話さないのならこちらで調べさせてもらうが…」
「別に構わないわ。私には特に被害は及ばないものだから」
「なにか引っかかる物言いだな…」
「気のせいでしょう…?」
それで話は一度途絶えた。
だがそこでリンディさんが口を開き、
「シホさんはつらくないの…?
元の世界にも家族はいたのでしょう…?
帰りたいとは思わないの?」
「…まぁ家族のような人達はいましたが基本私は一人暮らしでしたから。
それに魔術の世界に入るということは殺す殺される覚悟を持って挑むもの。
そしてもし帰る事が出来たとしても私の知人の人達は、私を追っていた組織に人質にとられてしまうかもしれない。
それくらい私の世界の魔術師は平気で行える集団ですから。
だから帰りたいとは思いません。
それに今は…」
「あ…」
なのはの手を取り、
「なのはとその家族の人達のおかげで家族の一員になれましたから寂しくありません」
「シホちゃん…」
「ほら泣かないの。悪い事をしているみたいで嫌だから」
「…うん。わかっているの。でも嬉しくて涙が止まらないの」
それでしかたなく泣き止むまで手を握り締めてあげていた。
◆◇―――――――――◇◆
それからしばらくして一人の女性が艦長室に入ってきた。
なぜか目元が赤く腫れているのは気のせいかな?
「あの、彼女は…?」
「彼女はエイミィ。エイミィ・リミエッタ。この艦のオペレーターをしているものよ」
「エイミィ・リミエッタです。よろしくね!」
エイミィさんは私の手を握って挨拶をしてきた。
なぜか抱きしめられたりもしたけどなぜだろう?
まさか…。
「あの、もしかして先程の会話を艦内に流していませんよね?」
「そこは安心して。おそらく聞いていたのは彼女だけだから。エイミィ、後でおしおきね?」
「許してください、艦長~…」
それからクロノも含めて三人で色々話し合っているけど私としてはシリアスな話が終わったので、そろそろ突っ込みを入れたい衝動に駆られていた。
なのはも話の途中で「うぇ…」という表現がピッタリな顔をしていたし…。
「ところでリンディさん。一ついいでしょうか…?」
「なにかしら?」
「その、緑茶なんですけど…」
そこでクロノとエイミィさんの表情が真剣なものになる。
…どうやら我慢はしているようだ。
だけど私がここにいる以上、手加減はしない。
「あら? もしかしてシホさんもミルクと砂糖を入れたい?」
リンディさんはさもそれが一般常識のように問いただしてくる。
クロノはそれで少し顔を顰めた。
私は首を横に振って遠慮した。
というより、あなたは緑茶をなめているのか? と、問いただしたい。
「…私はですね。この世界に飛ばされてくる前は統計時間的に特に多く滞在していた場所が日本なんですよ。
それで世界を回る間に多くの料理文化も学び和洋中頼まれればなんでも作ってやろうという意気込みと自負の念もあります。
そして私は日本のお茶類は他の国にはない独特の苦味と酸味、同時に甘味も存在すると理解しています。
それで我慢ならないので言わせてもらいます。
リンディさん、今後一切とはいいません。せめて私の前ではそのお茶の飲み方は禁止してください!」
私の発した言葉にリンディさんの背後にコミカルな雷が落ちたような気がするが無視。
まわり…特にクロノは「よく言った!」とばかりに感動している。他もまちまちだが拍手をしている。
そこでやっと正気に戻ったリンディさんが先程の交渉の時にも出さなかったうろたえを出して、
「シ、シホさん…きっとあなたも飲めば良さがわかると…」
「わからないです。いえ、むしろ分かりたくないです。
それは私からすれば日本茶に対しての冒涜行為に見えてしかたがないです」
クロノが同意し頷いてくれている。
なのはも同様だ。
飲んだ事が無いスクライア兄妹は状況が状況だけにあたふたしているから戦力外。
エイミィさんは状況を楽しんでいる節があるから即除外。
それからしばらく膠着状態が続き、結果…力技『甘味作り』で勝利した。
…や、ここまでこのゲテモノ茶にこだわりを持っているとは思っていなかった。
終止リンディさんは打ちひしがれていたのが印象的だったと後にクロノが語った。
◆◇―――――――――◇◆
その後、シホ達はエイミィに連れられて検査を受けていた。
その際、なのはは既に映像で解析されていたようでやっぱり管理局全体で5%しかいない魔力保持者。
フェイトも同様だったらしい。
「それにしてもなのはちゃんと黒い方がフェイトちゃんって言ったっけ?
二人とも映像で見た限りすごい魔力量だよね。
なのはちゃんは127万でフェイトちゃんは143万…最大発揮時はその3倍以上。魔力だけならクロノくんよりも強いよね」
「別に魔力だけが強さの基準じゃないだろ?
その場の状況に合わせた応用力とどの魔法を使用するかの判断力が大事だ。
さらに…当たらなければ意味はなさない」
「クロノの意見には賛成ね。結局はしっかりと作戦を練らなければ後で倍になって返ってくるケースが多々あるしね…」
クロノが少し苦しい言い訳をしたが、意外にシホがそれを援護した。
そしてクロノも意外だったのか、
「君が賛同してくれるとは思っていなかったよ」
「別に不思議なことではないわ。私には武術や魔術全般の才能がないから必死に甘い点や弱点をしらみつぶしに減らしていったから」
「え…? シホちゃんって才能なかったの?」
「お姉様ほどの腕で、ですか…?」
「ええ…師匠達全員の共通認識で私には武や魔術の才がないから一流には絶対になれないと言われてきたのよ。
だから二流は二流なりに必死に努力して鍛錬し様々な体術、武術を自己で取り入れ足りない部分は違うもので補い研鑽してきた。
…後はいつ終わるとも限らない実戦経験の賜物が今の私を形作ったのよ」
『………』
シホの悲しみもない普段どおりの言葉に一同は沈黙した。
そしてどうしたらここまでシホは強くなったのかという疑問が解消されたと同時に気づけなかった申し訳なさが勝っていた。
だが、それをエイミィが話題を変えることで重たい空気を振り払おうとした。
「で、でもシホちゃんもすごいよね。
ついさっきの検査で分かったことなんだけどシホちゃんの魔術回路っていうものがなぜか状況によって変動してCからAAA+まで常に変わるものなんだよ」
「なんだ、それは? やっぱり基本からして体系がまったく違うからなのか?」
「そこは私にも分からないよ。なにせまったく未知の力なんだから…。
ちなみに色々レイジングハートから映像を見させてもらって分かったことなんだけど、シホちゃんが魔術回路を起動しない時はFランクで一般人と変わらないね。
そして起動したときには最低でCランクに跳ね上がってそこから魔術を行使する時に使う魔術や武器によって変動するみたい。
ジュエルシードの暴走を止めた時に計測した数値はAA+で、その後になにか捻じれた剣を放つ時に観測された数値はほぼSランクに近いAAA+ランクだったの。
もちろんそれに応じてシホちゃんの使う武装も込められている魔力量のランクは同じって事になるね。
だからもっと具体的に言うとSに最も近いAAA++ってところかな」
「…シホ。君の世界の魔術師というのはこんな桁外れな者達がゴロゴロといるのか?」
「そうね…? まぁおそらく分からないけど結構いるんじゃないかしら?
魔術師は一子相伝でさっきも説明したけどその家系に伝わる魔術を魔術刻印というものに残して次の世代に伝えていくから代に応じて魔術回路の本数・魔力量や使える魔術は効果を高めていく。
私の知っている限りで続いていた家系は1000年以上もの歴史を持つもので私なんか比べ物にならない者たちがたくさんだったわ。
それに魔力量がなくても体術に特化している魔術師は私以外にもたくさんいる。
そして魔術師の総本山である魔術協会と相対している聖堂教会という組織では魔術はほぼ使用しないけど変わりに動きが人外じみているものがほとんど。
束でこられたらそれこそ私なんかすぐに殺されてしまうわ。
…まぁこれ以上元の世界の話をしてもなんにも利にはならないからやめときましょう」
「そ、そうだな…すまない。変なことを聞いて」
「別に…。もう過ぎたことだから気にしないで」
シホは少し苦笑をもらしながらもクロノを見た。
だがそこでクロノは顔を赤くしてしまった。
それに気づいたのかエイミィがクロノの事をからかっていたが、
シホは思考の中で、
(…カラド・ボルクでAAA+ランク相当か。
それじゃカリバーンやゲイ・ボルクはいってSランク突破…エクスカリバーなどはおそらく計測できない数値までいってしまうのでないだろうか?
神剣や霊剣なんてもってのほか。
まして固有結界…考えるだけ無駄だけど計測装置が吹っ飛ぶのではないか?
…はぁ、考えるだけで私の戦略の幅が減っていく事が嫌でも自覚できる。
これはもう話の途中で出たレアスキル判定というものに望みを託すしかないわね)
シホは考えがまとまったのでそれを心のメモに書きとめておいた。
そこで気づくと周りが騒がしいことに気づいたのでシホはどうしたのかと聞いてみた。
けど、クロノが顔を赤くして「なんでもない!」と言ったのでなにか良くない事なのだとわかったのでシホは素直に言葉に従った。
「それとだけど次はシホちゃんのリンカーコアの方ね?
なんていうか正直言ってなのはちゃんやフェイトちゃんよりすごいかも…」
「…やっぱりお姉様のリンカーコアがなのはさんよりでかい事が関係しているのですか?」
「うん、そう…普通この歳でなのはちゃんやフェイトって娘も十分異常なんだけどね。
シホちゃんは二人から群を抜いて魔導師の推定ランクはSランクなんだよね…」
『なっ!?』
エイミィの話を聞いてシホも含めた全員が驚愕した。
だがエイミィはまだまだあるよ? といって別のパネルを操作してフィアットの映像を映し出した。
「フィア…? フィアにもなにかあったんですか?」
「うん。以前のデータだとフィアちゃんは双子のユーノ君と同じで推定魔導師ランクはAランクだったよね?」
「はい。そうですけど…それがなにか?」
「うん。それでよくわかった。フィアちゃんってシホちゃんと魔力の回復を早める為にリンカーコア同士でパスを繋いだって言っていたよね?」
「はい」
「それが作用してかフィアちゃんのリンカーコアがシホちゃんの未知の魔力によって活性化したのか魔力貯蔵量が倍以上に膨れ上がってランクにしてAA+まで上がっているんだよね」
「えっ!? 私が、ですか!?」
「うん。こんな事例は今までなかったからこそ私は驚きを通り越してもう呆れちゃったよ…」
エイミィの言葉にクロノも同意して呆れた表情をしてシホを見た。
当のシホはここまで影響を及ぼしてしまった事に対してフィアットに謝罪したが、フィアットはむしろ喜んでいた。
「お姉様に責任はありません。むしろこれでお姉様に着いていけるという希望がわいてきました!」
「そう。それならこれからも修行は続けていくけど構わないわね?」
「はい! 私は一向に構いません! これからもよろしくお願いします、お姉様!」
二人が熱い友情を誓い合っている中、
「それじゃ…フィアちゃん用にデバイスを作らせてもらう?」
エイミィがそう切り出した事にフィアットは盛大な笑顔で「いいんですか!?」と喜びを表現していた。
それにエイミィは「艦長の許可しだいだけどね」と言った。
だがそこでフィアットはある事を思い出した。
「あ、そうでした」
「…ん? どうしたのフィア?」
「兄さん。デバイスといえばまだ伝えていないことがありましたよね…?」
「え…? うーん…あ、そうだ! シホの宝石に融合した謎のデバイス!」
クロノはまた未知の話が出てきたので少しうんざりした表情を浮かべながらも「謎のデバイス…?」という事で表情を切り替えて話しかけてきた。
それでシホは首にかけているサファイア色に変化した宝石をクロノに差し出した。
「これはもともと魔力を溜めるだけのただの宝石だったのよ。
だけどフィアがジュエルシードとは別に発掘したという未知のデバイスだって事で輸送事故がなければ管理局に届けられる予定だったらしいのよ」
「それで使い方はわからないけどジュエルシードを探す際にお守り代わりに持っていたんですけどお姉様のルビーの宝石に融合しちゃいまして…」
「なるほど…事情は理解した。とりあえず今日中に専門に調べさせてもらうから一時だけど預かるけど構わないか?」
「ええ。でも私にとってとても大事なものだからすぐに返してね?」
「ああ。それはこの謎のデバイス次第だけど返す件は約束しよう。エイミィ、マリーに後で連絡を取っておいてくれ」
「了解~!」
それでシホは宝石を一時預けることにしたが、なぜかシホにはあの宝石にはラインらしきものを感じて解析で調べてみたところそのラインの先は自身だと知り少し不安になった。
(まさか、あれもロストロギアとか言わないわよね?
いや、でも一応発掘されたものだからロストロギアなのよね。
…はぁ、ここで幸運Dが発動するなんて…願うならちゃんと使えるものにしてもらいたいものだわ。
暴走されたらこちらも対処が困るし…)
後書き
シホのランクが高いのは隠された秘密があるからです。
シロウのままだったらおそらくDかCそこらだったでしょう。
それと縁茶に砂糖やシロップを入れるのも普通にあるそうですね。
私は飲めそうにありませんが…。
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