スーパーロボット大戦パーフェクト　第三次篇

　　　　　　　　　　　　　　第六十七話　争覇の宴
アフリカに入ったロンド＝ベル。今は整備と補給を受けていた。それと共に砂漠戦の準備も進めていたのだった。
「砂漠か」
テツヤは今一つ浮かない顔をしていた。
「エンジンには気をつけないとな」
「そうですね」
彼にレフィーナが答える。
「砂は大敵ですから」
「そう、砂だな」
テツヤはレフィーナに応える。
「砂を何とかしないとな。戦えたものじゃない」
「そう、それです」
レフィーナも言う。
「今はその整備を何とかしないといけません」
「今度の敵はあのパリでの敵か」
「そうです」
ユンが言ってきた。
「彼等が何者なのか。まだわかっていませんが」
「その彼等への調査は進んでいるか？」
テツヤはそれをユンに対して問う。
「いえ、残念ですが」
「そうだな、それは仕方がない」
テツヤもそれはいいとするしかなかった。
「何分出て来てから少ししか経っていないしな」
「はい。ですが」
しかしここでユンは言うのだった。
「あの敵は二つの系統があるようです」
「二つの！？」
「まずはあの格闘主体の敵達です」
「あの連中か」
「そうです。そしてもう一つは」
「あの魔法使いみたいなマシンですか？」
レフィーナはこう表現した。
「あの三機の」
「あの三機か」
テツヤはその三機のことを考えて目を鋭いものにさせた。
「何者なんだ、あれは」
「わかりません。ですが」
ユンは言う。
「あの敵はかなり妙なマシンですね」
「完全に異質なマシンだな」
これはテツヤもわかっていた。
「何なのか。正体が見えない」
「乗っているのは子供ですしね」
レフィーナはそこを指摘した。
「やはり異質です。あの中にあっても」
「異質なものを抱えた闘う為だけの集団」
テツヤはこう表現した。
「こう言えば余計にわからないか」
「わからないのならこう考えればいい」
ここでリーが話に入って来た。
「リー」
「敵だとな」
「敵か」
「情報収集は確かに最重要だ。だがそれで迷いができては何にもならない」
「時には思いきりってことか」
「少なくとも敵としてのデータはある」
リーはそれについても言及する。
「攻略方法はわかっている。今はそれだけでいい」
「敵の素性や目的はまだいいのか」
「そういうことだ。雑念は不要だ」
言い切ってみせた。
「では。行くぞ」
「ああ、わかった」
テツヤはリーのその言葉に頷いた。
「ではそれで行くか。しかし」
「しかし。何だ？」
「御前にしては随分と思い切りがいいな」
テツヤはリーに対してそれを言うのだった。
「前はもっと慎重に話を進めていたが」
「私も変わった」
感情を込めずに述べた言葉だった。
「何かとあれこれ考えるより果断に動くべき時もある。今がそれだ」
「そうか、そういうことか」
「そういう考えになった。ここに入ってな」
「ロンド＝ベルでか」
「不満は多いがな」
特にブレスフィールドとの関係においてはそうであった。彼との関係は相変わらずであった。
「だがそれでも学ぶべきものは多い」
「学ぶべきものか」
「そういうことだ。だからな」
彼は言う。
「ここは積極的に行く」
こうして彼等は整備を受けた後で戦場に向かうのだった。戦場はカイロ近辺だった。ピラミッドやスフィンクスがある砂漠の中で布陣している。
その布陣の中で彼等は。目の前の敵を見て話をしていた。
「あの連中はいないな」
「そうだね」
ガーネットがジャーダの言葉に頷いていた。
「あの三人のお子様達はね」
「しかし奴等はいるか」
「パリでの奴等がね」
「奴等、それにしても」
ジャーダは鋭い目でその敵を見据えていた。
「また随分と敵意をこっちに向けているな」
「ああ、そうだね」
ガーネットはジャーダのその言葉に対して応えた。
「あの敵はね。凄まじいね」
「数は少ないが激しい戦いになるな」
「それはわかっている」
コウタはもうスタンバイに入っていた。
「あいつもいる。だから」
見れば敵にはあの赤いマシンもいた。彼が指揮官であるようだ。
「戦ってやる。絶対にな」
「よし、全軍攻撃開始！」
ダイテツが指示を出す。
「敵は正面から向かって来ている。受けて立て！」
「了解！」
彼等は正面から来る敵に対して彼等もまた正面から向かった。こうして力と力がぶつかり合う。今カイロでの激しい戦いがはじまったのだった。
その中でコウタとショウコは。あの赤いマシンと戦っていた。
「御前か！」
「残念だが俺は御前という名前じゃない」
「何っ！？」
「俺はフォルカ」
まずは名前を名乗ってきた。
「フォルカ＝アルバーク」
「フォルカか」
「そうだ。そしてこれはヤルダバオト」
マシンの名も告げた。
「覚えておくのだ。この修羅の戦士をな」
「覚えた。じゃあ死ね！」
叫びつつそのフォルカに対して攻撃を浴びせる。
「御前をここで倒してやる！」
「何のっ！」
コンパチブルカイザーの攻撃を拳で受け止めた。
「何っ！」
「その程度で俺は倒せん！」
そのうえでコウタに対して言うのだった。
「言っておくがな！」
「くっ、こいつ！」
「待ってお兄ちゃん！」
ここでショウコが兄に声をかけてきた。
「焦ったら駄目よ！」
「何っ！？俺は焦ってなんか」
「いえ、焦ってるわ」
妹として兄に忠告していた。
「だから。落ち着いてね」
「くっ・・・・・・」
「我等修羅は戦うことが宿命」
フォルカは激しい闘志を撒き散らしつつコウタと対峙していた。
「だからだ。貴様を倒す！」
「それはこっちの台詞だ！」
「だから待ってお兄ちゃん！」
彼等は激しい闘いに入った。ショウコの言葉は届かない。その周りでも戦いが激しくなっていた。
激しい闘争心そのままに突っ込んで来る修羅達に対してロンド＝ベルも正面から受けていた。激しい戦いが繰り広げられていた。
暫くは互角だった。しかしだった。次第にロンド＝ベルが優勢に立ってきていた。
「質の差か」
ダイテツは戦局を冷静に見つつ述べた。
「個々の兵士の質では我等の方が上か」
「はい」
彼の言葉にテツヤが頷く。
「修羅ですか」
「そうだな」
彼等の名前が完全にインプットされてきた。
「それはな。ただ」
「ただ？」
「彼等の戦闘力、かなりのものだ」
ダイテツはその中で修羅の戦闘能力を冷静に分析していた。
「個々で戦っては不利になる場合もあるな」
「そうですね。ではやはり」
「全軍個々では戦うな」
ダイテツは話を纏めてこう指示を出した。
「いいな、今はな」
「わかりました。それでは」
猛獣の様に向かって来る修羅達に対してロンド＝ベルは戦術で以って対抗した。それにより修羅達はその数を少しずつ減らしていく。それはフォルカにもわかっていた。
「くっ、流石がロンド＝ベルか」
「！？今の言葉は」
リョウトは今のフォルカの言葉に気付いた。
「まさか僕達のことをもう」
「ええ、そうね」
今の言葉にリオもわかったのだった。
「彼等は私達のことを」
「そうみたいだね。これは」
「しかしだ」
ユウキはここで眉を顰めさせた。
「それはあの修羅とやらの行動か？」
「どういうこと、ユウキ」
ユウキの今の言葉にカーラが問う。
「今ここにいないあの三機だ」
「子供達ね」
「見たところあの三機は」
ユウキの言葉は続く。
「いや、あの三人か。あの三人はそういうことに長けている」
「そうね。多分ね」
「だからだ」
ユウキはまた言う。
「あの連中がいないということとも何かあるな」
「そうね。多分」
「ここは慎重に行くべきか」
「かつ果断によね」
くすりと笑ってユウキに言ってきた。
「そうでしょ。ここは」
「今一つ気に入らない言葉だがその通りだ」
リーの言葉なのでそういうことになるのだった。
「そうするのが一番だな」
「そういうことね。それにしても」
「やっぱり。強いね」
リョウトはその横で戦いに向かっていた。ヒュッケバインを駆っている。リオも同じだった。
「この修羅は」
「確かに強いわ」
リオもそれは認める。
「けれどね」
「だからこそやり甲斐があるってことよ！」
リオより先にタスクが前に出た。
「叩き潰してやるぜ！ここでな！」
「そうね。タスク」
レオナはそのタスクの横にいた。
「横は任せて」
「レオナ」
「さっきダイテツ艦長が言われたわよね。戦術はしっかりしろって」
「おっと、そうか」
「数では勝ってきたわ」
レオナは冷静に戦局を見ていた。
「だからね。ここはね」
「戦術を冷静に守ってかよ」
「そうよ。貴方いつも戦術はあまりないじゃない」
「別に俺は」
「本当にないじゃない」
しかしレオナの言葉はきついままだ。
「ギャンブルだって」
「め、滅茶苦茶言われるな俺って」
「滅茶苦茶も滅茶苦茶じゃない」
レオナの容赦のない言葉は続く。
「ギャンブルは何時かその身を滅ぼすわよ」
「とほほ・・・・・・」
「それでも前に出るのはいいことよ」
さりげなくフォローを忘れない。
「だからタスク」
「ああ、それならよ」
「前から思っていたけれど」
「言いたいことわかるわ」
カーラに対してリオが応える。
「タスクってねえ。やっぱり」
「異常に単純ね」
これは誰もが思うことだった。
「まあそれがかえっていいけれど」
「いいの？」
「あっ、ちょっと」
今のはレオナの失言だった。
「何でもないわ」
「何でもないの！？」
今の言葉はカーラには疑わしいものだった。
「本当に！？」
「本当にっていうか」
言葉を言い繕うと何とかするが無理だった。
「うう・・・・・・」
「まあいいけれどね」
カーラはここで言葉を止めた。
「それはね」
「しまったわ」
「皆わかってるし」
「あのね、カーラ」
今のカーラの言葉には突っ込みを入れる。
「わかってるっていうとひょっとして」
「だってレオナ嘘下手だし」
「そうね」
それにリオも同意して頷く。
「すぐにわかるのよね」
「わかっていたら」
「はいはい、これで終わり」
流石にここで話を中断するのだった。
「終わりにしましょう。それはそうと」
「ええ」
「攻撃再開よ」
カーラが言う。
「それでいいわね」
「っていうかそれしかないだろ」
今まで攻撃に専念して話に加わっていなかったタスク本人が話に入って来た.。
「結局よ」
「ひょっとしてタスクって」
「そうだな」
リョウトの言葉にユウキが頷く。
「かなり鈍いな」
「そうだね」
「けれどまあ僕達もね」
「どうにもな。カーラには」
「はいはい、わかってるから」
そのカーラが言ってきた。
「行くわよ、いいわね」
「わかってるよ、じゃあ」
「そろそろケリつけましょう」
今度はリオの言葉だ。
「皆でね」
「だからそう言ってるだろ！早くよ！」
また話を聞いていなかったタスクが叫ぶ。
「戦い終わらせてパーティーと行こうぜ！」
「わかったわ」
レオナが呆れながらタスクのその言葉に応える。
「わかってないけれど」
「！？わかってるのにわかってない？」
タスクには今のレオナの言葉の意味がわからなかった。
「どういうことだよ、それって」
「だから。いいわよ」
もう話は聞かないのだった。
「行きましょう、それいいわよね」
「だからさっきから言ってるじゃねえか」
「全く。自分ははっきり言う癖に」
「！？何か今日のレオナおかしいぜ」
「もういいわよ」
「あいつ、ちょっと有り得ないだろ」
豹馬がそんなタスクを見て言う。
「何だよ、レオナだってはっきりしてるのによ」
「あんたが言うな」
速攻で突っ込んだのはミンだった。
「はっきり言っておくぜ、おい」
「お、おでもそう思う」
ゴルまで言う。
「豹馬、それは言えない」
「御前よ、本当に自覚ねえのか？」
ガナンは半分呆然としていた。
「自分のことは」
「呆れたっていうかな」
ジンも言葉がない。
「何ていうかな」
「だから何なんだよ、俺が何したってんだよ」
「豹馬」
グン＝ジェムの声は暖かい。しかしそれは豹馬に向けたものではなかった。
「御前はもう少し周りを見ろ」
「俺が何したってんだよ、一体」
「こりゃ駄目だわ」
「そうね」
レトラーデもミスティも言葉がない。
「ちずるも大変ね」
「こんなのだとね」
「御前等までこう言うし。俺がどうして」
「とりあえずいいからな」
霧生が完全に呆れて豹馬に対して言う。
「さっさと勝負に出るぞ」
「ああ、そうだよな」
「けれどな、豹馬」
彼にしろ見るに見かねて声をかけてきた。
「何だよ、だからよ」
「御前本当に自分の周りをほんのちょっと見ろ。いいな」
「何かわからないけれどわかったぜ」
わかっていない人間の返事だった。
「そうじゃないと戦いにならないしな」
「こいつ、有り得ねえ」
霧生もこう言うしかなかった。
「本当にな」
何はともあれ戦いは続く。ロンド＝ベルは一気に総攻撃に出て劣勢に傾いていた修羅達を完全に押した。それで勝利を掴もうとしていた。
しかしまだ。コウタ、ショウコとフォルカの闘いは続いていた。
『コウタ』
「何だよ、ロウ」
コウタはロウの言葉を聞いて応えた。
『この男、手強いだけじゃない』
「手強いだけじゃない？」
『そうだ、だから注意しろ』
こう忠告するのだった。
『若しかしたらこいつは修羅を』
「修羅を！？何なんだよ」
「今日のところはこれで終わりだ」
ロウに対して問うたところでそのフォルカがコウタに対して言ってきた。
「また会おう」
「何言ってやがる！勝負はこれからだ！」
「駄目よ兄さん！」
まだ闘いを続けようとするコウタに対してショウコが言う。
「もうエネルギーが！」
「ちっ、こんなところでかよ！」
『コンパチブルカイザーも限界だ』
『そうよ』
ロウだけでなくエミィも言うのだった。
『だからここは』
「くそっ、どうにもできねえのかよ」
「またチャンスはあるわ」
ショウコが慰めるようにフォローしていく。
「だからね」
「ちっ、わかったぜ」
止むを得ないといった感じで頷くコウタだった。
「ここは大人しくすればいいんだろ」
「わかったらさっさと行きやがれ」
苦虫を噛み潰した顔でフォルカに対して言うしかなかった。
「けれどな、御前を倒すのは俺だ！覚えていやがれ！」
「その言葉、そっくり返す」
フォルカもフォルカでこう言葉を返すのだった。
「修羅の名にかけてな」
「修羅かよ！」
「戦いこそが修羅の宿命」
フォルカの返答だった。
「だからこそ」
「じゃあ俺もそれに乗ってやる！」
コウタもまた修羅と同じになっていた。
「この手で貴様を倒してやる！いいな！」
これがこの戦いでの最後の言葉だった。後にはフォルカの消えた先を怒りに燃えた目で見ているコウタがいるだけだった。彼だけが。
戦いが終わってロンド＝ベルは。まずは修羅についての話になるのだった。
「あの修羅という連中は」
「何かあるの？ドモン」
「ガンダムファイターに似ている」
まずはこう言うのだった。
「そうね、やっぱり」
「ただしだ」
そのうえでまた言う。
「あの連中は俺達とは違うところがある」
「違うところ？」
「そうだ、あの連中は命を糧にして戦っているな」
「命を！？」
「ああ、そうだな」
ヂボデーがそれに頷いた。
「そこが俺達とは違うな」
「あの修羅ってのが何者かはよくわからないけれど」
サイシーもまた同じものを感じていた。
「あいつ等は何か命を何とも思っていないね」
「命は何ともない」
アルゴはここを重視していた。
「それだな。多分な」
「彼等の世界は戦いが何よりも重要な世界」
ジョルジュはそう考えていた。
「それが修羅の世界なのでしょう。ですから命もまた」
「そうね。けれど」
アレンビーはここで彼等と共にいるもう一つの存在を見ていた。
「あの三人はまた違うわね」
「そうだな、何かが決定的に違う」
「ええ」
ヒューゴの言葉にアクアが頷く。
「それはね。完全に異質よ」
「修羅が戦いならあの連中は」
「マリオネット！？」
アクアはこう言った。
「そんな感じがするわ」
「マリオネットですか」
ルリはそのマリオネットという言葉に反応を見せた。
「それは確かに」
「それで合っているのかよ」
「私はそう思います」
リョーコの問いに答えた。
「何故かわかりません。直感で」
「ルリルリが直感で言うなんて珍しいわね」
ハルカはそれを少し意外に思うのだった。
「またどうして？」
「ロンド＝ベルで変わりました」
これがルリの返答だった。
「何か急に」
「そうなの」
「勿論直感だけではありませんが」
しかし同時にこうも言うのだった。
「あれはやはり」
「マリオネットってこと！？」
「ハッキングしました」
メグミに対して答えた。
「その結果見えました。それでです」
「そういうことなのね」
ヒカルがそれで納得した。
「それでマリオネットだって」
「その通りです」
答えは変わらなかった。
「ですから。その操っているのは誰かはわかりませんが」
「どちらにしろ謎は続く」
イズミが呟いた。
「はい。それがはっきりするとすればまだまだ先です」
「もどかしい話だな、おい」
ダイゴウジはそのことにかなり不満のようだった。
「もっとあっさりと終わらないのか！」
「終わる話か！？これって」
サブロウタは今のダイゴウジの言葉に甚だ懐疑的だった。
「謎が謎を呼びって展開じゃねえか」
「はい。ですから混乱しています」
ジュンがそれに応える。
「このまま何もわからないままだと」
「どうしようもないな。けれどどうしようもないしな」
アキトもぼやくしかできなかった。
「相手が修羅だってことがわかっただけでも」
「もう一つの敵がいることがわかっただけでも今は大きいです」
ルリはアキトを宥めるようにして言った。
「それでよしとしましょう」
「その通りですね。それで今後ですが」
ユリカは今後の作戦について述べてきた。
「暫くこのエジプトに留まります」
「エジプトに？」
「はい」
アキトに対して答える。
「敵の今までの行動パターンから分析してまた来ることが考えられますので」
「そうだな、それは確かに」
アキトもこれはこれまでの多くの戦いで認識していた。
「考えられる。それじゃあ」
「カイロで観光でもして英気を養って下さい」
ユリカはこうも言った。
「それでお願いします」
「了解。じゃあまずは」
「羽根を休めるか」
修羅との戦いを終えたロンド＝ベルはカイロでの休息に入った。しかし彼等はわかってもいた。またすぐに戦いがはじまることを。

第六十七話完

２００８・６・８