スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇
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第六十五話 神よ百鬼の為に泣け
第六十五話 神よ百鬼の為に泣け
ゲッターチームが捕まり撤退を余儀なくされたロンド=ベル。彼等は一歩退いた場所でこれからのことに関して話し合いに入っていた。
「こうなったら仕方ねえだろ!」
オルガが強硬に主張していた。
「一気に鬼共を倒すんだよ!」
「それしかないって!」
クロトもまた同じだった。
「折角目の前にあいつ等がいるのにな!」
「そうだ」
二人の言葉に残るシャニも頷く。
「一気に倒すべき」
「馬鹿か、御前等」
だがその意見はアウルによって退けられた。
「竜馬さん達がいるだろうが」
「それで撤退したんだろ!?」
スティングもそこを指摘する。
「それでどうして攻めるんだろ」
「人質だから」
ステラも言うのだった。
「だからよくない」
「チッ、じゃあどうしろってんだよ!」
「助けられないのかよ!」
「困った」
一応彼等にしろ最低限の仲間意識はあるようである。彼等なりに悩んでいることからそれがわかる。かなり破天荒なものではあっても。
「しかし。困ったねえ」
ユウナもほとほと困り果てている顔だった。
「本当にね。人質だなんて」
「けれどユウナさん」
恵子がそのユウナに対して言う。
「こんなことは何度でもありましたよ」
「いや、それはそうだけれどね」
「だったら別に」
「そうだぜ。気にすることないって」
勝平はまた無意味に向こう見ずだった。
「竜馬さん達を信じて一気にやろうぜ」
「だからそれはできないんだよ」
宇宙太が勝平の今の言葉に突っ込みを入れる。
「竜馬さん達が殺されたらどうするんだ」
「だから何度もあったじゃねえかよ」
「馬鹿っ、話がわかっていないのか!」
「おろっ!?」
「その人質を救い出す方法がないんだろ、今は!」
「そういえばそうか」
「全くこいつは」
「相変わらずなんだから」
宇宙太も恵子も呆れる他なかった。だがそんな間も危機感が彼等を覆っていた。
「とにかくこのままじゃどうしようもない」
「そうだな」
ギャブレーの言葉にダバが頷く。
「何か手を打たないと」
「しかし。その手がな」
レッシィが難しい顔を見せてきた。
「見当たらない。どうしたものか」
「強引に敵を攻めたら竜馬さん達が危ないし」
アムもぼやくしかない。
「どうしたものかしらね」
「困ったことだ」
ギャブレーはまた言う。
「このままではどうしようもない」
「しかしそれにしても」
ダバはここでふとした感じで呟いた。
「何かおかしな感じもするな」
「おかしな感じ?」
「竜馬さん達は捕虜になるような戦いをするかな」
キャオに返す言葉はこれだった。
「隼人さんが止めると思うんだが」
「ああ、それはそうだな」
かつて彼等と同じゲッターに乗っていた武蔵が今のダバの言葉に応える。
「そうした無鉄砲な戦いはあいつ等はしないぜ」
「真ゲッターはかなり強力だし」
ダバはそこも考える。
「それでどうして捕虜なんかに」
「おそらくこれは作戦だな」
京四郎がここでこう読んできた。
「あいつ等のな」
「作戦なのか!?」
「そうだ」
彼は一矢の問いに答えた。
「内部から入って時が来ればというわけだ」
「まさか」
「けれどそれって」
ナナは京四郎の今の言葉に顔を曇らせて述べた。
「かなり危険よ。下手しなくても生きて帰れないような」
「そうだ、賭けだ」
京四郎はあえてこうも言ってみせる。
「危険な賭けだ。しかし成功すれば」
「大きいな」
これは一矢にもすぐにわかった。
「内部から一気に攻めることができるし俺達もそれに呼応すれば」
「さらに効果は高まる」
京四郎はまた述べた。
「二乗どころじゃないだろうな」
「じゃあやっぱり竜馬君達は?」
ちずるが考える顔で言った。
「わざと囮になったっていうの?」
「間違いないですね」
小介は右手を自分の眼鏡にかけてちずるに答えた。
「今の状況から考えますと」
「凄い話でごわすな」
大作はこう言うしかなかった。
「そこまでかんがえてのこととは」
「しかしやで」
だがここで十三が言ってきた。
「失敗したら竜馬達お陀仏やで」
「そうだよ。それでやるのかよ」
無鉄砲な豹馬も言葉がない。
「あいつ等、何処まで覚悟を決めていやがるんだ」
「それならその覚悟を受けないといけないな」
フォッカーが一同に言ってきた。
「だからこそ今は」
「攻撃なのね」
「ああ」
クローディアに対して答える。
「俺はそう思う。どうだ?」
「そうね」
クローディアは今のフォッカーの言葉を否定しなかった。
「そうするべきだと思うわ」
「そうだろう?じゃあ決まりだな」
「うむ」
それにグローバルも頷いてみせた。
「ではそのようにな。行くか」
「はい、わかりました」
未沙が最初にグローバルのその言葉に応えた。
「それでは全軍進撃再開ですね」
「攻撃目標は百鬼帝国軍」
グローバルはまた告げる。
「それで決まりだ」
「わかりました」
皆それに頷く。こうしてロンド=ベルは竜馬達を信じて戦いに向かうのだった。再び百鬼帝国との戦いがはじまろうとしていた。
「よし、バルキリー全機いいか!」
「はい!」
「総員出撃準備完了です!」
輝と金竜がフォッカーに応える。
「よし、じゃあ派手に暴れるぞ」
「派手にですか?」
「何か問題があるか?」
フォッカーはフィジカに対して問い返した。
「人質を気にしているのか?」
「ええ、まあ」
フィジカの懸念はやはりそれであった。
「間違えれば」
「大丈夫だ」
だがフォッカーはにこりと笑ってフィジカのその危惧を打ち消すのだった。
「あいつ等ならな。その心配はいらんさ」
「そうですか」
「ああ、だから行くぞ」
あらためてバルキリー各機に告げる。
「鬼退治だ」
「わかりました」
「しかし。巨人が鬼退治とはな」
カムジンの言葉は少しシニカルであった。
「これが流転ってやつかな」
「巨人と鬼って関係あるの?」
レトラーデはそれをカムジンに対して尋ねる。
「なかったんじゃないの?」
「たまたま言っただけだよ」
しかしカムジンは軽くレトラーデに言葉を返すのだった。
「気にしないなら別に気にしないでいいさ」
「そうなの。それじゃあ」
「それにしても。凄い数ね」
ミスティは目の前の百鬼帝国軍を見ていた。
「邪魔大王国の時と同じね」
「敵が必死ってことだな」
霧生はこう読んでいた。
「だからだよ。驚くことじゃない」
「その通りだね」
霧生の今の言葉にマックスが頷く。
「数が多くて当然だよ、今はね」
「何かこういう戦いばかりだよな」
柿崎はぼやいていた。
「俺達の戦いってな」
「けれどそれだけ敵が減っていくっていうことです」
ガムリンはここでも真面目だった。
「それを考えれば」
「そうだな。それでいい」
輝は今のガムリンの言葉に頷いた。
「激しい戦いの後で敵が減っていくのならそれでな」
「いえ、どうなんでしょうそれって」
「違うかい?」
「確かに敵は減ることは減っていますけれど」
ドッカーが言っていた。
「その分増えるからねえ」
イサムも冗談めかしてぼやいてみせる。
「よくもまあ次から次に出て来ることで」
「ぼやくなイサム」
その彼をガルドが咎める。
「ぼやいても鬱陶しいだけだ」
「へっ、そういうところは相変わらずだな」
「何とでもいえ」
二人も相変わらずだった。その中でシルビーは冷静にレーダーを見ていた。
「敵の数は」
「どれだけだい?」
「三千かしら」
こうネックスに答えた。
「そんなところね。いえ」
「いえ!?」
「後方にまだいるわ。合計五千」
「五千か」
その数を聞いたヒビキの顔が曇る。
「凄いなんてものじゃないな」
「それだけの数だけれどね」
「やるしかないな」
ネックスが話に入ってきた。
「決戦だからな」
「決戦ばかりね、私達って」
ミリアはネックスのその言葉に突っ込みを入れた。
「何か」
「安心しろ皆!」
しかしバサラが叫ぶのだった。
「こんな奴等に俺達は負けちゃしねえぞ!」
「負けないの?」
「当たり前だろ!」
いぶかしむミレーヌの言葉にも動じない。
「俺の歌は不滅だ!」
「俺の歌はって」
「俺の歌はどいつもこいつも黙らせる!」
こう豪語する。
「鬼だろうがな!」
「じゃあ今回も歌うのね!」
「ああ!」
こんな状況でもバサラはバサラだった。
「皆、俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「全く」
そんなバサラに対して呆れることしきりだった。
「竜馬さん達が捕まってるうえにこの数でよくそんなことが言えるわね」
「全くだ。しかし」
レイがそれでも言う。
「そんなバサラがいるからこそ俺達も頑張れる」
「前向きになれるってこと?」
「そういうことだ」
こうミレーヌにも語る。
「だからだミレーヌ、御前もな」
「歌うってことね」
「歌えるな」
「まあね」
歌うにはやぶさめではなかった。それどころか積極的ですらあった。
「歌うわ、最後の最後までね」
「よし、じゃあ歌え」
「ええ。バサラ!」
バサラに対して声をかける。
「付き合うわよ!それでいいのよね!」
「来やがれ!誰でもな!」
「人の話耳に入ってるのかしら」
「入っていないでしょうね」
エマはそう見ていた。
「実際のところ」
「やっぱり」
「それでもよ」
エマは言う。
「バサラの歌を聴いて何か元気が出て来たわ」
「ええ、私も」
フォウもそれは同じだった。
「やるわよ、何があっても」
「竜馬君達を助け出して」
「百鬼帝国!」
カミーユが彼等に対して声をかける。
「ここでも御前達を倒す。いいな!」
「ふん、小賢しい!」
ヒドラーのその言葉を一笑に伏してみせた。
「我等百鬼一族を倒せるものか。帝王よ!」
「うむ。全軍に告ぐ!」
ブライはヒドラーの言葉を受けて指示を出した。
「全軍総攻撃!ロンド=ベルを倒せ!」
「百鬼ブラーーーーーーーイ!!」
「百鬼ブラーーーーーーーイ!!」
ブライを讃えてから全軍で進撃を開始する。ロンド=ベルがそれを迎え撃ち今ここに彼等の決戦がはじまったのであった。
圧倒的な数で攻める百鬼帝国。だがロンド=ベルはそれを正面から受け敵を的確に倒していっていた。
ヤザンがハンブラビを変形させる。そのうえで海蛇を放つ。
「喰らえっ!」
それで数機の鬼のマシンを電流に包み込み破壊する。しかしそれでも数は圧倒的なものがあった。次から次に後ろから出て来る。
「ちっ、五千ってのは伊達じゃねえな」
「ですが少佐」
「まだ充分戦えます」
ヤザンに対してラムサスとダンケルが言ってきた。
「我々もいます」
「ですから」
「ああ、後ろは頼むぜ」
「はい」
「わかっています」
二人はヤザンの言葉に対して応える。
「お任せ下さい」
「是非」
「おいヤザン」
ここでジェリドがヤザンに通信を入れてきた。
「どうした?ジェリド」
「そっちは大丈夫なんだな」
「ああ、大丈夫だ」
すぐにこう答えた。
「安心しろ、サラもいるからな」
「サラはどうだ?」
「今また一機撃墜した」
サラも奮戦していた。ヤザン達と共に戦っている。
「こっちは任せろ」
「わかった。じゃあこっちはこっちでやらせてもらうぞ」
「御前の方はいけるのか?」
「俺を誰だと思ってるんだ」
傲慢な程の自信を見せる言葉だった。
「ジェリド=メサだぞ」
「だからいけるんだな」
「ああ、そうだ」
はっきりと答えてみせる。
「だから大丈夫だ。わかったな」
「じゃあそっちは任せるぞ」
「ああ、何かまた援軍が出て来たみたいだがな」
「へっ、ここぞってばかり出してきやがるな」
「敵も必死ってことだな」
ジェリドも笑っていた。
「ここが決戦だからな」
「それでだ」
カクリコンも通信に入って来た。
「捕虜になったあの三人をどうするかだな」
「とりあえずは敵の数を減らすことだね」
ライラはこう考えていた。
「さもないととてもやれないさ」
「人質の救出もか」
「そうさ。だから今は」
「わかった」
カクリコンはライラのその言葉に頷いた。
「では一機でも多くな」
「援軍が戦場に出て来たわ」
マウアーが報告する。
「今度は三千よ」
「一万を超えましたね」
サラがそれを聞いて言う。
「遂に」
「まあじっくりやるしかないね」
ライラの言葉はそれでも落ち着いたものだった。
「こっちは質じゃ圧倒的だしね」
「それで戦うしかないですか」
「サラ、あんたにも頑張ってもらうよ」
「おいおい、サラは今で充分頑張ってるぜ」
「今以上にってことだよ」
こうヤザンにも言う。
「今以上にね。いいね」
「そうかよ」
「そうだよ。じゃあやるよ」
「ああ。お互いな」
元ティターンズの面々も必死に戦っていた。そのかいあってか敵の数は少しずつ減ってはいた。しかしそれでも激しい戦いが続く。
「おのれ、より攻めよ!」
「前に出るぞ!」
ヒドラーとゲラーがそれぞれ叫ぶ。
「我等も前に!」
「ロンド=ベルの奴等を粉砕せよ!」
「はっ!」
「了解!」
部下達もそれに応える。そうしてそれぞれの乗る移動式要塞を移動させる。だがその時だった。
「よーーーーし、狙い目デーーーーース!」
「ええ、兄さん!」
メリーがジャックの言葉に応える。彼はゲラーのマシンを狙っていた。
「撃って!」
「シューーーーート!」
銃をゲラーに向けて放つ。それでゲラーを撃ち抜いたのだった。
「お、おのれ」
撃ち抜かれたゲラーの乗機は瞬く間に炎に包まれていく。最早脱出も不可能だった。
「このわしがこんなところで」
「やりましたデーーーーーーース!」
「百鬼帝国ばんざーーーーーーーーい!」
ジャックの声が響く。今ゲラーが戦死した。
続いてヒドラーも。彼は武蔵のブラックゲッターの攻撃を受けていた。
「貴様の仲間は我等の捕虜なんだぞ!」
「そんなことはわかってる!」
武蔵はこうヒドラーに答える。
「最初からな!」
「わかっているだと!」
「そうだ!あいつ等は必ず助け出す!」
「愚かな。それより前に我等が処刑してやる」
酷薄な笑みと共の言葉だった。本気である。
「それでもよいのだな」
「それより前にあいつ等なら自分の力で抜け出してみせるさ」
こうも言ってみせる。
「だからだ。おいらはここで!」
「ここで。何だ!」
「貴様を倒す。覚悟しろ!」
「ぬううっ!」
「死ねーーーーーーーーーっ!」
その爪でヒドラーの要塞を切り裂いた。
「これで終わりだっ!」
「う、うわああああっ!」
ヒドラーもまた爆発に巻き込まれる。その中で最後の言葉を叫んだ。
「偉大なる帝王ブライに栄光あれーーーーーーーーっ!」
こうしてヒドラーもまた死んだ。百鬼帝国の両翼が散ったのだった。
「ヒドラー元帥とゲラー博士が戦死しました」
「立派な最期であったな」
「はい」
部下はブライに対して答えた。
「最後まで帝王、帝国を讃えられておりました」
「流石だ」
ブライはそれを聞いて彼等を称賛した。
「二人の死は無駄にはせぬぞ」
「御意」
「だからこそだ」
彼は言う。
「このままロンド=ベルを攻め立てよ!」
「はっ!」
「そしてだ!」
さらに言うのだった。
「捕虜達を出せ!」
遂にこの指示を出した。
「人質として盾にせよ。よいな」
「人間の盾ですね」
「よもや仲間は撃てまい」
そう言って残忍な笑みを浮かべるのだった。
「そこが狙い目だ。いいな」
「はっ、それでは」
「この戦いは我等百鬼帝国の命運がかかっている」
彼はそのうえで言った。
「手段を選ぶことはない」
「確かに」
「その通りです」
「だからだ。今こそ出すのだ!」
「御意!」
それに従い竜馬達を牢から出そうとする。しかし。
「大帝、大変です!」
「どうした!」
「捕虜達がいません!」
「何だと!」
それを聞いてさしものブライも驚きの声をあげた。
「どういうことだ、それは!」
「わかりません。ですがいません」
「くっ、探せ!」
それを聞いてすぐに危機を感じた。そのうえでの指示だった。
「この中をだ。いいな!」
「は、はい!」
「この中にいる筈だ」
これはもう確信していた。
「逃げられん何処に逃げようともな」
「確かに」
部下達も彼の言葉に頷く。
「どうあがいても脱出はできません」
「その通りです。あがくだけでしょう」
「あがきか」
ブライはその言葉を自分でも呟いた。
「確かにな。だが」
「だが?」
「要所も閉鎖しておけ」
こうも指示を出すのだった。
「それもよいな」
「はっ、それではそちらも」
「心得ました」
「蟻一匹逃れられぬようにしろ」
ブライはまた言った。
「それを徹底しろ。とりわけ格納庫をだ」
「格納庫を」
「考えられる限りあそこしかない」
彼もそう読んでいた。
「ゲッターを使って逃げるしかない。だからこそだ」
「言われてみれば」
「あそこしか」
「格納庫に精鋭を向けよ!」
ブライはあらためて指示を告げた。
「よいな!」
「はっ!」
「それでは!」
しかし指示を出したその瞬間だった。また部下が部屋に飛び込んできた。
「帝王、大変です!」
「今度はどうした!」
「格納庫が襲撃されました!」
「何だと、もうか!」
「捕虜の三人が襲撃を仕掛け」
「うむ!」
「ゲッターを奪い去りました!今ゲッターは奴等に奪われました!」
これこそブライが最も聞きたくなかった言葉だ。しかしそれが今告げられたのだった。
「まことか!」
「残念ですが」
その部下はこうも述べる。
「奪われました。そして」
「そして」
「帝王!」
また別の部下から声があがった。
「格納庫が完全に破壊されました!」
「むっ!」
「そしてそこから!」
「あれは!」
その時だった。艦橋からも見えた。
「ゲッターだ!」
「くっ、脱出したというのか!」
「おのれ、逃げおおせたか!」
ブライもまた艦橋からゲッターを見て声をあげる。そこには紛れもなく巨大な翼を持つ赤い悪魔がいた。悪を倒す禍々しい悪魔が。
「見ろ、ゲッターだ!」
カットナルがそのゲッターを見て言う。
「あれが出て来たということは」
「そうよ!無事であったか!」
それにケルナグールが続く。
「小童共、見事だ!」
「危機に陥りながらもそこから脱し再び姿を現わす」
そしてブンドルもまた言う。
「これこそが」
「美しい・・・・・・」
「くっ・・・・・・」
また二人に台詞を奪われて顔を顰めさせる。
「そういうことは止めてもらいたいものだが」
「五月蝿い!今は気取っている場合ではないぞ!」
「その通り!確かにあの連中は脱出した!」
ケルナグールもカットナルもここぞとばかりにブンドルに言う。
「援護だ援護!」
「急げ!」
「言われずともわかっている」
その程度のことはもう承知しているブンドルであった。
「ではこれより我が艦は」
「前進だ!」
「前にいる連中は踏み潰せ!」
カットナルとケルナグールがまた叫ぶ。
「そうだなブンドル!」
「踏み潰すのだな!」
「美しくない表現だがその通りだ」
彼もそれを認める。しかも今回は顔を顰めさせてはいない。
「前の敵を粉砕していく。よいな」
「よし、それならばだ!」
「突撃せよ!突撃だ!」
まずは三人が突撃する。文字通り前にいる鬼達を粉砕しながら。
「どけどけ!」
「この戦いもらった!」
「さて、戦士達よ」
三人はそれぞれ艦橋において戦局を見据えていた。
「小童共への道を開けよ!」
「開けぬと倒す!」
「今助けに行こう」
三人に続いてロンド=ベル全軍が動く。今を好機と見てだ。
「よし、今だ!」
大河が叫ぶ。
「ゲッターチームの登場で敵軍は浮き足立っている」
「ハイ」
スワンが大河の今の言葉に頷く。
「その通りデス」
「ならば今こそ戦いを決める!」
「そして戦術は?」
「こうした場合勇気あるものならば!」
彼もまた勇気あるものだ。だからこそ言うのだった。
「総員総攻撃!」
やはりこれであった。これしかなかった。
「敵を一体一体確実に、だが纏めて粉砕していこうではないか!」
「了解デス!」
「では総攻撃発動!」
今その指示を叫ぶ。伝えたのではなかった。
「ファイナルアタック承認!」
「了解、ファイナルアタック承認!」
命もそれに応えて全軍に通信する。
「勝利は我等の手に!各員奮闘せよ!」
こうしてロンド=ベルはここぞとばかりに総攻撃に移った。総攻撃を仕掛けられた百鬼帝国軍は内部からのゲッターの攻撃もあり総崩れとなった。一万を超える大軍は忽ちのうちにその数を減らしていくのだった。
「お、おのれ!」
だがまだブライは健在だった。彼は自身が座すその艦橋においてまだ戦場に留まっていた。その彼の前には因縁あるゲッターが空にあった。
「ゲッターロボ!よくもやってくれたな!」
「それはこっちの台詞だぜ!」
弁慶が彼に言葉を返す。
「捕虜にしてくれやがって!」
「もっともわかってやったことだがな」
「何っ!?」
ブライは今の隼人の言葉に眉をピクリと動かした。
「それは一体どういうことだ」
「つまりだ。わざと捕まってってことさ」
「何だとっ!?」
「俺達は今の状況を作り出す為にあえて捕まったということだ!」
「くっ、では!」
「そうだ、これが俺達の策だ!」
竜馬はこう言い切ってみせた。
「御前達を倒す為のな!」
「おのれ、そうだったか!」
「帝王ブライ、策に溺れたな」
隼人はこうブライに告げた。
「俺達を人質に取るつもりが逆にこうなった」
「くっ・・・・・・!」
「しかしだ!」
弁慶が叫ぶ。
「戦いは別だ!正面から行くぜ!」
「よかろう、ならば来い!」
観念したか誇りか。ブライは今の弁慶の言葉に彼もまた正面から応えた。
「こうなっては是非もなし。貴様等を倒し返す刀でロンド=ベルをも!」
「ならば行くぞ!」
「覚悟しやがれ!」
まずは隼人と弁慶の言葉だった。
「貴様にも味あわせてやる!」
そして竜馬が叫んだ。
「ゲッターの恐ろしさをな!」
「むっ!」
「ゲッタァァァァァァァァァシャアァァァァァァァァァイン!!」
ゲッターが全身に力を溜める。するとその身体がオレンジに輝き光を放つ。
それと共に青い光になり空を舞い。複雑な動きを示しながらブライに向かう。
「おのれ、撃て!」
「はっ!」
ブライはそれを見て攻撃命令を下す。部下もそれに応える。しかしそれは間に合わずゲッターの周囲を空しく爆発するだけだった。その間にゲッターは直線運動に入った。
「真・シャイィィィィィンスパァァァァァァク!」
「真シャインスパークだと!」
「そうだ!」
ブライに対して叫んで答える。
「真ゲッターの力!」
「今こそ!」
「見せてやる!」
三人の言葉が完全に重なった。心も。そして今その青白い光がブライの身体を包み込んだ。
「オープンゲット!」
「うぐおおおおおおおおおおおおおっ!」
「帝王ブライ!」
爆発と光に包まれるブライを見て竜馬は最期に叫ぶ。
「これが最後だ!」
「貴様と!そして!!」
「百鬼帝国のな!成仏しやがれ!」
「うう・・・・・・、おのれ!」
しかしまだブライは倒れてはいなかった。爆発と光に包まれながらもまだ生きていた。そして。
「わしは・・・・・・わしは・・・・・・!」
爆発の中で言う言葉、それは。
「偉大なる帝王ブライ!帝王の最後は!」
まだ立っていた。全身を炎で覆われようと。
「栄光の中においてこそある。我が帝国に栄光あれ!!」
最後にこう叫び爆発の中に消えた。帝王ブライも今ここに倒れた。
そして他の鬼達も皆倒れていた。戦場に残っているのはロンド=ベルの戦士達だけであった。彼等は勝利を収めたのであった。
「やったな、リョウ!」
「ああ!」
竜馬は凱に対して笑顔で応える。
「これで百鬼帝国との戦いも終わった」
「ああ」
凱もまた笑顔で竜馬の言葉に頷いた。
「これでな。奴等は滅んだ」
「また一つだ」
竜馬はこうも言った。
「敵が倒れた」
「ああ、また一つだな」
「けれどよ」
隼人と弁慶も竜馬に続く。
「戦いはまだ終わらないぜ」
「その通りだ。リョウ」
隼人は竜馬に声をかけてきた。
「次もまた戦いがある。奇を引き締めていかないとな」
「わかっている。だが百鬼帝国は滅んだ」
それでもこれは否定できない事実だった。
「間違いなくな」
「おいリョウ」
「武蔵」
ここで武蔵も彼等のところに来た。
「皆待ってるぜ」
「皆!?」
「そう、皆だよ」
そう彼に言うのだった。
「皆待ってるからな。帰ろうぜ」
「ああ、そうだったな」
武蔵のその言葉に頷く。
「戦いは間違いなく終わったからな」
「そういうことさ。祝勝会がはじまるぜ」
「わかった。それじゃあな」
「ああ」
こうして彼等は戻った。その瞬間に宴がはじまった。
「まあ今回は上手くいったな」
「そうだよな」
甲児は凱の言葉に頷いた。
「何とかな」
「何とかか?」
「だってそうだろ。リョウ達が捕まって危ないところだったじゃねえか」
「何言ってるのよ、この馬鹿」
今の甲児の言葉にアスカが突っ込みを入れる。
「何が危ないところよ」
「捕まっていたのが危なくねえのかよ」
「捕まっていたんじゃないでしょ」
アスカが言うのはそこであった。
「捕まっていたんじゃなくてわざと捕まったんでしょ」
「そういやそうだったか」
「全く。相変わらず馬鹿なんだから」
「何ィ!?馬鹿って言ったな!」
「馬鹿に馬鹿って言わなくて何なのよ!」
アスカもアスカで言い返す。
「竜馬さん達が何考えていたか全然知らなかったじゃない!あれだけの大騒ぎで!」
「大騒ぎだったか!?」
やはり甲児はわかっていなかった。
「何処がだよ」
「・・・・・・あんたやっぱり馬鹿ね」
完全に呆れ果てた声になっていた。
「それもどうしようもない」
「俺の何処が馬鹿なんだよ」
「馬鹿以前に鈍感じゃないのかしら」
めぐみは今の甲児を見てこう思った。
「ひょっとしたら」
「そうでごわすな」
それに大次郎が頷く。
「どうにもこうにも」
「甲児兄ちゃんは相変わらずだね」
日吉も完全に呆れていた。
「こうしたところは」
「どうしようもないようだな」
一平の声は醒めていた。
「わかってはいたが」
「だが。何はともあれ助かったからよしとするか」
健一はこれで話を収めることにした。
「作戦が成功してな」
「ちょっと健一さん」
アスカは健一には今一つ歯切れが悪い。
「この馬鹿それだけで終わらせていいんですか?」
「何か俺と健一で全然態度が違うじゃねえか」
「当然でしょ」
やはり甲児に対してはきつい。
「あんたみたいなスーパー馬鹿は」
「俺はスーパー馬鹿だったのかよ」
「そうじゃなくて何なのよ」
また言い返す。
「そんな馬鹿で何時までも生きていられるわよね」
「俺は不死身だからな」
悪びれず言う甲児だった。
「何があっても平気なんだよ」
「やっぱり鈍感じゃない」
「俺が鈍感かよ!」
「そうよ、スーパー馬鹿なうえに鈍感」
やはり馬鹿なのは外さない。
「それがあんたなのよ」
「このクソアマ・・・・・・!」
「クソアマァ!?」
今度はアスカが激昂する番だった。
「言ってはならないことをよくも!」
「何度でも言ってやるぜこの猿女!」
「もう許さないわよ!」
猿と言われたのはアスカにとって逆鱗だった。
「今度こそ!容赦しないわよ!」
「望むところだ来やがれ!」
「来てやるわよ!」
二人は喧嘩に入った。何処でもこの二人は二人であった。
その戦いをよそに。ロンド=ベルの面々は祝いに入っていた。キラがふと京四郎に突っ込まれていた。
「そういえばキラ」
「どうかしたんですか?」
「御前と俺が最近仲が悪いと噂があるな」
「そういえばそうですね」
キラもそれに気付いていた。
「何かどうも」
「別にそんなことはないが。俺は大地がどうとか不潔とかな」
「おかしなことになっていますね」
「そうだな。何か妙な口癖がつきそうだ」
「おじゃるとかですか?」
「いや、それはない」
じゃるではないと答えた。
「しかしそれでもな」
「おかしい感触ですよね」
「ああ。それはな」
京四郎はさらに言葉を続ける。
「クワトロ大尉やタケルにしろ前は色々あったようだしな」
「ええ、今は僕ですか」
「それと俺だ。今度は炎神らしいしな」
「炎神・・・・・・いい響きですね」
「俺はどうも微妙だがな」
京四郎は首を傾げさせる。
「どうにもな」
「俺は何か」
ブリットも話に加わってきた。
「吸血鬼になったみたいな気分なんだが」
「キバ!?」
キラがブリットに問う。
「ひょっとして」
「ひょっとしてっていうか」
ブリットは今のキラの言葉にまた微妙な顔を見せてきた。
「悪い感触はないんだよ、どうにも」
「そうなの」
「しかし、あれだよな」
ここでブリットは言うのだった。
「前アスランは貧乏くじだったらしいな」
「蝿だったっけ」
「ああ、それだ」
ブリットはそこを指摘する。
「それでシンが何か優遇されていたっぽいな」
「あとリュウセイさんもだね」
「今回の御前はどうだ?」
「悪くない感じだよ」
こうブリットに答える。
「何かね。明るい感じで」
「明るいか」
「最近バサラになったりするし。明るくなれるんだよ」
「それはいいな」
「ブリットはどうなの?」
「俺は何か」
少し微妙な顔になった。
「気張っていっている感じだな」
「そうなの」
「ああ。それでだ」
ブリットはさらに言う。
「御前のところは何か車が多いみたいだな」
「ブリットのところはバイク!?」
「これは伝統だな」
伝統だと言ってみせる。
「そういうところはな」
「伝統なんだね」
「そっちの伝統は色々変わるみたいだな」
「そうみたいだね」
話が微妙になってきていた。
「今は炎神で前は獣拳だしね」
「俺のところは前は電車で今は吸血鬼か」
「それでもバイクは一緒だからね」
「そうだな」
二人はそんな話をしていた。二人は和気藹々としたものだった。それを見るプロフェッサーは少し微妙な顔をして宴の場にいたのだった。
「さて、それでね」
「うむ」
ミナが彼女に答える。
「あの新型ガンダムだな」
「そちらの開発状況はどうかしら」
「まだ先だな」
こうプロフェッサーに答えた。
「完成するのは」
「そう、やっぱりね」
「とりあえず急がないで済みそうだが」
「そうね。まだそれはね」
プロフェッサーもそれはわかっていた。
「今のところは大丈夫ね」
「けれどあれだな」
エドが言う。
「戦いはこれからまだ激しくなるだろうな」
「そうね、それはね」
ジェーンがそれに頷く。
「はじまったばかりだから」
「じゃあやっぱりあれですね」
プレアが言う。
「開発は確実に進めないと」
「そうだな。さもないとバルマーがさらに軍を増強してきたならば」
グリアノスが険しい顔をさせていた。
「戦力が苦しくなっていくな」
「ガンダムが三機あればさらにいい」
ユーレクの言葉は冷静だった。
「そしてそれをキラ=ヤマト達が乗ればな」
「それでです」
ラクスも話に入って来た。
「資金の方は大丈夫でしょうか」
「資金!?」
「はい、お困りでしたら」
ラクスは言う。
「プラントの方でも援助を」
「いえいえ、それには及びません」
しかしここでアズラエルが出て来て述べた。
「我々が資金を出していますから」
「オーブもです」
ユウナもいた。
「資金は充分です」
「そうですか。それではこちらはそれで」
「しかし。何だよな」
ここで口を開いたのは加持であった。
「これでとにかく敵は二つ減ったしな」
「そうね。それだけ楽になったわね」
リツコがそれに応える。
「一応はね」
「とりあえず今度の作戦はどうするんだ?それで」
「ミサトが今いないから」
「いない?」
「マリュー艦長と飲んでるのよ」
そういうことだった。
「バジルール少佐を引き擦り込んでね」
「引き擦り込んでか」
「そういうこと。今頃少佐はね」
「全く。バジルール少佐も災難だな」
こう答えるが動かない加持だった。
「まあそれでも生きているだけ楽だしな」
「そうね。楽なことは楽ね」
「ああ。生きているからだからな」
彼等が話すのはそれであった。
「まあとにかくだ」
「とにかく?」
「一応は暫く休息だな」
そういうことだった。
「敵の動きもこれといってないしな」
「じゃあその間はあれね」
リツコが言う。
「休憩ってわけね」
「そのうちあの訳のわからねえ連中が出て来るしな」
「シャドウミラーとか?」
「いや、この前パリで出て来たあの連中だ」
彼が言うのは彼等だった。
「あの連中が出て来ることも考えられるだろ」
「そうね。神出鬼没みたいだしね、彼等も」
「そういうことだ。しかし」
「しかし?」
「どうもそんな敵ばかりだな」
彼が今度言うのはそれだった。
「どうしたものかな」
「言っても仕方ないわよ。そういう相手なんだから」
「それもそうか」
「そういうこと。じゃあ今はとりあえず」
「休むとするか」
加持は自分の言葉を反芻するのだった。
「ここはな」
「ええ。じゃあ付き合うわ」
「飲むか」
「たまにはね」
くすりと笑って加持に言う。
「飲むわよ」
「たまっていう割にはいつも飲んでないか?」
「お酒は百薬の長よ」
飲みたがりがよく言う言葉であった。
「だからいいのよ」
「そうかい。じゃあまあ」
「ギュネイ君も呼んでたわよ」
「あいつがか」
ギュネイの名前を聞いて微妙な顔になるのであった。
「そうか」
「不満かしら」
「いや、それはないな」
加持はそれは否定する。
「ただな。どうも」
「どうも?」
「あいつと話してると自分自身と話してる気分になるんだよ」
彼が言うのはそういうことだった。
「どういうことかな」
「じゃあ止めておく?」
「いや、それでいい」
しかしそれでも彼はそれを受けることにした。
「あいつと飲むのは楽しいしな」
「そうなの。じゃあ」
「あんたにはそういう人間がいないんだな」
「今のところはそうね」
リツコ自身もそれを認める。
「どういうわけかね」
「いいのか悪いのかは別としてな。いると何か有り難いな」
「みたいね。ミサトとマリュー艦長なんてもう一心同体だし」
「意外なところだと凱とアズラエルの旦那だな」
この二人もそうなのだった。
「シローとかな」
「ロンド=ベルはそういう集まり多いからね」
「ああ。だから俺は助かる」
にこりと笑って述べる。
「あの二人がいてくれてな」
「少し羨ましいなね、どうにも」
「まあそうした人間が来るのを待つんだな」
「そうさせてもらうわ」
そんな話をしながら今は宴を楽しむ。次の戦いまでの僅かな間の休息を。
第六十五話完
2008・6・1
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