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レッドバロン

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第四章

「俺もはじめて見たぜ」
「感動してるか?やっぱり」
「そうか?」
「してるよ」
 その気持ちを抑えることもなかった。
「この目で見られるなんて夢みたいだよ」
「だよな、英雄をな」
「この目で見られるなんてな」
「あの人と一緒に戦えるんだな」
 こうも言うルードだった。
「そう考えるだけで違うよ」
「だよな。じゃあ行くか」
「あの人と一緒に」
「勝てるな、今日は」
 ルードは勝利さえ確信していた。
「この戦いは」
「そうだな、絶対に勝てるな」
「俺達にはレッドバロンがいるからな」
「英雄がな」
 彼等は英雄を見ながらそのうえで戦場予想ポイントに向かう、だが。
 ここでリヒトホーフェン、隊の先頭の彼がこう言ってきた。
「あそこにはいないな」
「これから行くポイントに敵はいませんか」
「そうなのですか」
「そこにいると見せかけてな」
 リヒトホーフェンは空を見ていた、今日の空は雲が低い場所にある。
 青い空のその白い雲達を見てそして言うのだ。
「近くに雲があればな」
「そこにいますか」
「イギリス軍は」
「ああ、そこにいるよ」
 こう言うのだった。
「彼等はね」
「では我々は、ですね」
「ここは」
 ルード達はリヒトホーフェンの話を聞いて言った。
「その雲の方に向かってですか」
「攻撃を仕掛けるんですね」
「そうしよう」 
 これがリヒトホーフェンの考えだった。
「雲に向かってね」
「そこにいるイギリス軍をつつき出してですか」
「そうして」
 銃撃で一旦脅すというのだ、そして出て来たところを。
「攻撃しますか」
「そうしますか」
「その通りだよ」
 リヒトホーフェンもそうだと答える。
「上から攻めてね」
「一旦上から銃撃ですか」
「そしてまた上からですか」
「二度攻撃を仕掛ける」
「そうしますか」
「この辺りで編隊が隠れることが出来る雲は」
 空を見る、するとそこまで大きな雲は。
 一つだった。巨大な羊に見える雲だった。
 その雲を見てルード達も言う。
「確かに、あの雲しかないな」
「あの雲に入れば隠れることが出来る」
「あそこに隠れて」我々を見ている」
「そして奇襲を仕掛けるつもりなんですね」
「我々に対して」
「彼等も馬鹿ではないよ」
 リヒトホーフェンは決してイギリス軍を侮っていなかった、むしろ手強い敵と見ていてそのうえで彼等のにも言うのだった。
「我々がポイントに来て」
「そこで自分達がいないことに戸惑っている」
「そこで雲から出て来て攻める」
「そう考えている彼等にですね」
「逆に、ですね」
「そう、まさにね」
 裏の裏をかく、そうするというのだ。 
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